22 移住者が増えました 2
各種族3~10名の移住者が、集落にやってきた。
猫人族、栗鼠人族、狐人族、コボルト族は獣人で、体型もゴブリンとほぼ同じだし、ソマリたちと常に接しているから、元から住んでいる住民は最初から好意的だった。
驚かれたのは、下半身が蜘蛛のアラクネ族と下半身が蛇のラミア族だ。
「蜘蛛と蛇か・・・」
「でもケンタウロスも馬だし、いい奴らかもしれないぞ」
「そうだな。いい奴だったらいいな」
ケンタウロスたちが真面目に働いていたことから、驚いてはいたものの、敵意を向けられることはなかった。
アラクネとラミアたちはというと、露骨に嫌な顔をされないことに驚いていた。
「人間の町なら、石を投げられてもおかしくないのに・・・」
「ケンタウロスの話は本当だったようだ」
彼らは新たに建設した仮説住宅に居住してもらうことになり、初日は集落を見て周ってもらい、次の日から仕事をしてもらうことになった。責任者はゴブリナで、アシスタントとして神官見習いの三姉妹ゴブナ、ゴブネ、ゴブノが担当する。
★★★
結果から言うと、一部の者を除いて大成功と言っていい。
まず猫人族だが、ソマリの商会で働いたり、その辺で露店を営んだり、飲食店を経営したりしている。元々猫人族は商売が得意らしいからね。それにソマリたちは住民に信頼されているから、それも大きかったのだと思う。
続いて栗鼠人族とコボルト族だが、彼らの特性を生かした仕事をしてもらっている。森林の管理だ。
実はウリの母親であるグレートボアの主さんから、前回の視察のお土産にエナジーナッツや色々な木の実をいただいた。それを空いている土地に植え、「成長加速」のスキルを使って育てた。計画性もなく、適当に木の実を撒いたので、森と言っていい規模になってしまった。木の実やキノコなどが採れるので重宝しているのだが、専門に管理してくれる者がおらず、彼らにお願いしたというわけだ。
栗鼠人族は木登りが得意だから、木の実を採取してくれるし、コボルト族は鼻が利くのでキノコや薬草採取の名人なのだ。
「木の実を集めるのが仕事って・・・まさに天職です。一生懸命にやってますよ。偶につまみ食いはしますけど・・・」
「キノコや薬草を採取するだけでいいなんて、本当に有難い」
農業やソマリの店で店員のような仕事をしている者もいるが、大体は新しくできた森での仕事がメインだ。
アラクネ族はスキルで蜘蛛の糸が出せるので、それを利用して織物を作ってもらっている。ソマリに言わせれば、かなり高値で売れるらしい。織物作りの傍ら、運送業も行っている。ケンタウロス程速くは走れないけど、力は強いし、険しい山や高い所にも移動できるからね。
そしてラミア族はというと、この集落に住まなくなった。
というのも、水中や湿地での活動が得意ということで、リザードマンたちの集落に移住することになった。集落の長であるザードの手紙には、「かなり助かっている。またラミアの移住者が来たら、こちらに優先的に回してほしい」と書かれていた。
今挙げた種族は真面目で、今のところ問題は起こしていない。
しかし、狐人族だけは違った。3人という今回の最小人数での移住だったのだが、一言で言えば、トラブルメーカーだ。ソマリの商店をクビになり、次に研修に行った農家の評判も良くない。ゴブリナ自ら指導しているが、あまり上手くいっていないようだ。
狐人族の移住者はフックスという、いかにもいい所の少年とメイド二人という構成だ。
今もゴブリナの指導を受けているが、フックスが反発している。
「いくらネフィス様に祈ったところで、全然効果がないじゃないか!?」
「そんなはずはありません。それで皆さんは上手くいっているのです。それは貴方の祈り方が悪いのです」
「ちゃんと言われたとおり、やってるよ!!」
それからゴブリナは実際にお祈りをフックスにやらせていた。皆とそんなに大差はない。
というか、そもそもの話、神様に祈ったからといって人生が好転するなんて、まずない。この集落で上手くいっていることが特殊なのだ。
移住者であっても、熱心にお祈りをしているだけで、元から住んでいる住民に褒められたり、食べ物をもらえたりする。
逸話を一つ話す。
一人のケンタウロスの男が神殿の賽銭箱を恨めしそうに見つめていた。そこを通りかがった住民がケンタウロスの男に声を掛けた。するとケンタウロスは男はこう言ったそうだ。
「我は強制労働を課されている身で、給料を貰えない。しかし、本当にネフィス様に感謝をしている。だから、望みが叶うなら賽銭を入れて感謝の気持ちを示したい」
これに感銘を受けた住民が強制労働中の者にも、少額でいいから給料をあげてほしいと嘆願に来たのだった。因みにこの男というのが、族長のタリアスだけどね。
今ではケンタウロスたちは、すっかり溶け込んでいる。
真面目に働いて、ちゃんと女神ネフィスに祈りを捧げていれば、何とかなるのがこの集落なのだ。移住者が増えても、トラブルが少ないのは、このよく分からない宗教のお蔭と言っていいだろう。
しかし、狐人族には当てはまらないようだった。
ゴブリナが言う。
「改善が認められないようなら、移住は勧められないとグリューン様に報告します」
「そ、それは・・・頑張るから、何とか頼む・・・」
「そう言われても・・・聖女様、そうですよね?」
ここで私に振るのか・・・
「とりあえず、問題点を整理しましょう。それからでも遅くないと思います。しばらくは、私が狐人族を担当します」
こうして、私は狐人族の面倒を見ることになってしまった。
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