2 緑の聖女
転生後1分で、怖そうな魔物に取り囲まれて罵倒される。
「舐めやがって、人間め!!」
「八つ裂きにしてやる!!」
「殺していいですよね?」
そんな時、緑の肌をした人間に近いリーダー格の男が諫める。
「落ち着け。一応、話だけは聞こう。人間よ、なぜここに?」
うーん・・・困った。私だって、なぜここに来たのか、詳しくは分からないんだよね。
でも命の危機だ。とりあえず、必死に敵意がないことを訴えた。
「わ、私はミドリ・スズキ。緑の聖女です。皆さんを救いにやって来ました!!」
魔物たちが騒ぎ出す。
「人間がか!?」
「ふざけるのも、いい加減にしろ!!」
「人間が俺たちにどんな仕打ちをしたのか、忘れたのか!?」
これはヤバいパターンだ。私は死を覚悟した。
「お待ちください!!」
そこに割って入って来たのは、神官服を着た緑の肌をした小柄な少女だった。
「もしかしたら、女神ネフィス様が私たちの窮状を知って、この方を遣わしたのかもしれません」
女神ネフィス?
転生の時、名前が聞き取れなかったが、状況的に私を転生させた女神様が、女神ネフィスということだろう。それにここで「違います」と言おうものなら即処刑だろうし、私はこの少女の話に合わせることにした。
「そ、そうです!!私は女神ネフィス様に貴方たちを救うように言われて参りました」
「やはり、そうでしたか!!私はゴブリン族の神官ゴブリナです。私たちの祈りが通じたのですね。ウッウッウウ・・・」
少女は泣き崩れた。
よく分からないけど、私が救うべきは、目の前にいる魔物たちなのだろう。そう考えると辻褄が合う。敢えて救うべき対象を女神様が言わなかったのは、「魔物たちを救え」と言いづらかったに違いない。私は別に気にしないけど、人によっては拒否する者もいるかもしれないしね。
私はこれ幸いと更に話を合わせた。
「困っていることがありましたら、できる範囲でお助けしますよ。なんたって、私は女神ネフィス様に使命を授かって、ここに来たのですから」
「ああ・・・奇跡です」
「やったあ!!俺たちは救われたぞ!!」
「人間を皆殺しだ!!」
魔物たちの半数近くが、私の話を信じている。
よし、このまま押し切れば・・・
そんな時、私の話を聞くと言ってくれたリーダー格の男が声を上げた。
「少し落ち着け。それにこの人間が特別な力があるともかぎらない。信用するのはそれからだ」
リーダー格の男は冷静で頭がキレるようだ。まあ、当然といえば当然だけど。
とにかく私は能力があるということを証明しなければならないみたいだ。
一応、私には特別なスキルを与えてくれていることになっているが、どうやって使うんだ?
そういえば、詳しい使い方を教えてもらってなかった。システムウィンドウがどうとか言ってたけど・・・
私はパニックになりながらも頭の中で、闇雲に「スキル」、「ウィンドウ」、「魔法」・・・と手当たり次第に唱えた。すると目の間にシステムウィンドウが表示された。システムウィンドウを確認する。
「植える→マンドラゴラ×2」
表示されている文字の下に説明書きがあった。
「チュートリアルよ。とにかく植えなさい」
それ以外にないのなら仕方がない。私は「植える→マンドラゴラ×2」を選択した。
すると、拳大の種っぽいものが、どこからともなく飛んできて、地面にめり込んだ。ウィンドウに新たな文字が表示された。
「成長加速・・・成長が早くなるわ。とりあえず、使ってみたら?」
説明書きの適当な感じが、あの女神っぽい。
私は「成長加速」を選択する。すると地面から膝丈くらいの人参っぽい生物と白い大根っぽい生物が這い出てきた。根元が二股に分かれていて、とてとてと歩いている。
その二匹の生物から意思が伝わってきた。
(名前を付けて!!)
(その前に「鑑定」を教えてあげないと)
(そうだったね。とりあえず「鑑定」をしてみて)
私はウィンドウに表示された「鑑定」を選択した。
すると、目の前の謎の生物の鑑定結果が表示された。
「マンドラゴラ赤・・・前世が人参」
「マンドラゴラ白・・・前世が大根」
あれ?もしかして、私が育てていた人参と大根?
(そうだよ!!)
(名前を付けて!!)
あの女神、適当そうに見えていい所あるじゃないの!!
それにしても名前か・・・私って、ネーミングセンスが皆無なんだけどな。
しばらく考えた私は、謎の生物に向かって言った。
「じゃあ貴方は赤ドラ、貴方は白ドラね」
(わーい!!やったあ)
(分からないことや、困ったことがあれば聞いてね)
二匹がとてとてと、私に駆け寄って来て抱き着いてきた。
ちょっと変な奴らだけど、これはこれで可愛いな。
しばらく、二匹とじゃれ合っていたのだが、魔物たちが驚愕の表情を浮かべ、私たちを見つめているのに気づいた。
そういえば、私は変な生物を出現させただけで、危機的状況に変わりはない。とりあえず、説明をした。
「えっと・・・こちらの二匹はマンドラゴラで、赤いほうが赤ドラ、白いほうが白ドラ、前世は人参と大根で・・・」
「マンドラゴラだって!?」
「伝説のか?」
「叫び声を聞いたら死ぬやつか?」
「やっぱり、アイツは俺たちを殺しに来たんだな・・・」
そんな時、リーダー格の男が声を上げた。
「静まれ!!
聖女殿、非礼を詫びる。俺はグリューン、魔族の長をしている。こう見えて、種族はゴブリンだ」
そう言うと、グリューンと名乗った男は私に跪いた。
それに合わせて、他の魔物たちも一斉に私に跪く。
「聖女殿に頼みがある。どうか我らを救ってほしい」
「は、はい・・・」
この魔物たちを救えるかどうかは分からないけど、「はい」というしかなかった。
とりあえず、処刑は回避したようだ。
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