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緑の聖女は転生先を間違えられたようです~植物スキルで、それなりに楽しくスローライフをしてます  作者: 楊楊
第一章 転生してスローライフ

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1 プロローグ 異世界転生

 何やら言い争う声が聞こえてきた。目を開けると、そこには見たこともない魔物たちが口論をしていた。

 緑色の小柄な魔物、褐色肌で長い耳を持つ魔物、顔が豚でかなり大きな体格をしている魔物・・・

 一応、言葉は話しているし、二足歩行だ。


「グリューン様、もう無理です。撤退を進言いたします」

「しかし、このままおめおめと帰還するわけにはいかない。このまま帰っても我らは滅びるだけだ」

「そうは言われましても、兵糧も水も武器も足りません。怪我人も増える一方で・・・」


 緑色の小柄な、魔物が叫ぶ。


「クソ!!元々は俺たちの土地なのに!!人間の所為で・・・絶対に許さない!!」


 豚の顔をした魔物が呼応する。


「人間、皆殺しにする!!人間卑怯、許さない」

「そうだ!!刺し違えても、ノーア平原は取り戻す!!」

「とりあえず、一旦落ち着きましょう・・・あれ?なぜ人間がここに?」


 一斉に魔物たちの視線が、私に集中する。

 私は絶望した。


 はい!!転生1分で第二の人生が終了しました!!


 どうして、こうなった?



 ★★★


 私、鈴木みどりは三十路手前のOLだ。

 多分、国内でもトップクラスのブラック企業に勤務し、連日、早朝から深夜まで休みなく働いている。特に係長に昇進した昨年から偶の休日もなくなった。係長でありながら、部下が一人もいないからだ。係長の仕事プラス部下の仕事も一人でこなすから、そりゃあ休んでなんかいられないよ。

 連日ブラックコーヒーとエナジードリンクをがぶ飲みして、何とかやり過ごしている。


 その日も深夜に帰宅し、プランターの芽吹いたばかりの人参と大根に水をやった。人参と大根は取引先で種をもらって育てているものだ。大して趣味のない私にとって、唯一の癒しと言っていいだろう。

 その時、強烈な頭痛に襲われた。最近は頭痛も酷く、頭痛薬も手放せなかったが、これ程の痛みは初めてだった。次第に目が回ってきた。


 これは流石にヤバいぞ。


 そう思っていたら、意識がなくなった。

 しばらくして目を覚ますと、そこは古代ギリシャ風の神殿のような場所だった。


 あれ?ここはどこだ?


 金髪の美人さんが近寄って来る。背中に光が差している。


「鈴木みどりよ。貴方は死にました」


 薄々そうではないかと思っていたけど・・・ショックだ。ここは天国なの?


「誰にも望まれず、誰にも評価されず、世間から無視され、不遇な人生を送ってきた貴方に新たな人生を用意しました。特殊なスキルを授けます。貴方たちの世界で言うとチート能力というやつですね」


 あれ?この人は誰だろうか?

 話し方からして、偉い人だとは思うけど・・・神様クラスかな?


 それにしても、「誰にも望まれず、誰にも評価されず、世間から無視され、不遇な人生・・・」って、酷すぎる。そりゃあ、ブラック企業に勤めていて、ここ1年程は碌に休みは無かったけど、それでも、どちらかと言えば、頼りにされていたほうだと思う。というか、そう思いたい。


 そんな私の気も知らないで、目の前の女性は話を続ける。


「どんな能力が欲しいですか?強力な魔法とか、剣術の才能とかですか?だいたい貴方たちは、そういった能力が好きなんでしょう?」

「えっと・・・話が見えないのですが、私が死んだということは理解しましたが、どういった世界に行くのでしょうか?」


 目の前の女性はため息をついて言った。


「そこからですか?こちらも暇ではないんですが、仕方ないですね・・・」


 それから女性の投げやりな説明が始まった。

 私が転生する世界はヴェルトラという異世界で、スキルや魔法が存在し、中世ヨーロッパ程度の文化レベルだそうだ。

 それで私は強力なスキルを与えられ、世界を救済することを求められているようだ。


「ところで、どんなスキルが欲しいですか?」


 私は少し考えて言った。


「植物を育てる能力が欲しいです。前世では忙しく、のんびりと農業でもと思っています。その中で、農業を通じて、人々を幸せに・・・」


 前世に未練がないわけではないが、少しほっとしたところもある。今にして思えば、私の人生は何だったんだと思うしね。

 だから、できるなら第二の人生は農業でもして、のんびりと暮らしたい。その中で関わった人たちを幸せにしていきたいと思う。


 また、ため息をついて女性が言う。


「はあ・・・分かりました。貴方は今日から「緑の聖女」です。前世でやり残したことや心配事があれば、できる範囲で対処致しますよ」


「でしたら、育てていた人参と大根をどうにかしてもらえませんか?家族に引き渡すか、会社の同僚に引き渡してもらえたら・・・」


「分かりました。何とかします。それでは転生を開始します」


 私は慌てて、女性の言葉を遮った。

 だって何をするか、どんな能力をもらえるか、全く教えてもらってない。というか途中から、かなりやっつけ仕事になっているように感じた。


「申し訳ありません。私の能力や使命について、詳しく教えてくれませんか?」

「ヴェルトラに行けば分かりますよ。困っている人が目の前にいるし、スキルや魔法なんかもその内使えるようになります。前の世界で言うシステムウィンドウが表示されますから、現地で色々とやってください。とにかく時間がないんです。世界の危機なんです。ああ、忙しい・・・」

「わ、分かりました。ところで、貴方は女神様なのでしょうか?」

「そういえば、言ってなかったですね。私は光り輝く創造神にして、美貌と英知を兼ね備えた絶対神。その名も偉大なる女神・・・」


 名前を聞く前に私の意識は無くなっていた。



 ★★★


 ~鈴木みどり転生後、天界にて~


 女神ララーナが叫ぶ。


「あっ!?転生先間違えちゃった・・・てへ・・・まあいいか。代わりはいくらでもいるんだしね」


 背中に羽の生えた大天使ガブリエラが、女神ララーナに声を掛ける。


「偉大なる女神ララーナ様。矮小な我の忠言をお聞きください。最近、ララーナ様は転生者の扱いが雑に・・・」


 話を遮る女神ララーナ。


「うるさいわね!!今回の転生者は大ハズレだわ。早く死んでもらって、次を送り込まないと・・・」

「ララーナ様、流石にそれは・・・こんなことが続けば、流石に天界規定に抵触するかと」

「だ・か・ら!!転生者なんて、一時でも「俺ツええ!!」って、できたらそれで満足でしょ。前世はゴミみたいな人生を送ってきたんだから、感謝してもらわないと。そんなことよりも、ちゃんと仕事をしてよね」

「は、はい・・・」


 大天使ガブリエラは女神ララーナの元を辞して、執務室に戻った。

 部下の天使たちが駆け寄ってくる。


「ガブリエラ様、ララーナ様は?」

「聞き入れてくれなかった。すまない・・・」

「そうですか・・・」


 大天使ガブリエラが苦渋に満ちた表情で言う。


「仕事は仕事だ、神託の準備を。文言は「緑の聖女は()()()()()に降り立った。聖女を救え」で頼む」


 天使たちがざわつく。


「そ、そんな・・・あんまりです」

「敵地のど真ん中じゃないですか!?」


「ララーナ様のミスだ。すまないが、次の神託の準備も頼む。文言は「聖女は醜悪な魔族に殺された。仇を取れ」だ・・・」


 大天使ガブリエラと天使たちは、悲痛な表情で仕事に戻るのであった。

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