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緑の聖女は転生先を間違えられたようです~植物スキルで、それなりに楽しくスローライフをしてます  作者: 楊楊
第一章 転生してスローライフ

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15 聖女の酒造り

 雪がちらつき始めた今日この頃、神殿から言い争う声が聞こえてきた。


「そんなこと、認められません」

「何でッスか!?火酒を造ればこの集落も発展するッス!!」

「ワインやビールだけで十分です」

「ワインやビールもいいッスけど、火酒も必要ッス」

「火酒が好きなのは、ドワーフだけでしょ!!ゴブリンには強すぎます」


 言い争っていたのは、フリンとゴブリナだった。

 とりあえず、落ちつかせて事情を聞く。揉めていたのは、火酒を造るかどうかだった。

 火酒というのは、かなり酒精が強いお酒のことで、前世でいうウイスキーやウォッカみたいな蒸留酒だ。ドワーフは火酒のことを「命の水」と呼ぶくらい神聖視しているのだが、他種族には人気がない。聞いた話だと、フリンはここに来る前に猫人族の商人ソマリに資金援助を申し出たが、採算が取れないということで断られた経緯があるようだった。


「つまり、採算が取れればいいということね?」

「それはそうですが、聖女様。あんなの誰が飲むのかっていう話ですよ。傷口の消毒には多少必要ですが、大量に作る必要はありません」


 フリンがいつになく真面目に頼んでくる。


「頼むッス、聖女様。絶対に美味しいッスから」


 考えた私は言う。


「とりあえず、実物を持って来てくれるかしら?それで決めましょう」


 すぐにフリンは火酒を持って来た。早速、味見をすることになった。

 確かに味はいいが、酒精が強すぎる。


「これはサツマイモから作った火酒ッス。甘い香りが素晴らしいッス」

「本当ね・・・水で割れば美味しいかもね」

「水で割るなんて、邪道ッス。続いてはジャガイモで作った火酒ッス。スッキリとした味わいが堪らないッス」

「これはこれで美味しいけど・・・やっぱり少し強いような気が・・・」

「続いては定番の小麦で作った火酒で・・・」


 いつの間にか記憶が無くなっていた。どうやら酔いつぶれてしまったようだ。

 目が覚めると、またフリンとゴブリナが言い争っていた。


「聖女様をこんなにして!!絶対に認めませんからね」

「そ、そんな・・・」


 今は止める気も起きない。とりあえず、寝よう。



 次の日、フリンが謝罪に来た。


「申し訳ないッス。火酒の味を知ってもらいたくて、つい・・・」


 気持ちは分かるんだけどね。

 ゴブリナはというと、まだ許していなかった。


「昨日も言いましたが、協力はしません。自分たちで飲む分を作ることは止めはしませんが、集落を上げて造るのは反対です。お引き取りください」

「そこを何とか頼むッス!!いい酒を造るには専用の施設が必要ッス。そうしたらダークドワーフやハーフドワーフの職人を集めて・・・」

「それでどうなるんですか?採算の取れない事業に投資するほど、余裕はありません」


 私はお酒は好きなほうだが、そんなに強くはない。火酒をガンガン飲みたいとは思わない。


「ところで、フリンは何でそんなに火酒にこだわるの?自分たちで飲む分の火酒は造れているのよね?」

「それはそうッスけど、私はダブルマイスターを目指しているんで、絶対に最高の火酒を造らないといけないんス」


 ダブルマイスター?


「ダブルマイスターとは、物作りと酒造りで多大な功績を上げた者に贈られる称号のことッス。ドワーフにとってみれば、大変名誉なことで、純血のドワーフ以外でダブルマイスターになった者はいないッス。ダブルマイスターになって、純血のドワーフたちをギャフンと言わせてやるッス」


 フリンが言うには、既にコンパウンドボウとクロスボウの開発で物作り関係の選考はクリアしているらしい。後はいい火酒が製造できればダブルマイスターになれるそうだ。

 それでもゴブリナが冷たく言う。


「プライドでお腹は膨れません」

「そこを何とか頼むッス」


 私は少し考えて言った。


「いきなり一か八かの設備投資をするのは賛成できないわね。でも少し、時間をくれるかしら?」

「それは構わないッスけど・・・」

「じゃあ、一週間後ここに来て。その時、ソマリも連れて来てね」



 ★★★


「これは美味しいです」

「これなら採算が取れるニャ。資金援助しても問題ないニャ。というか、是非協力さてほしいニャ」


 一週間前と打って変わって、ゴブリナもソマリも絶賛している。

 というのも、「フルーツの木」から採れたフルーツを癖のない火酒に漬け込んで、果実酒を造ったからだ。最近、サトウダイコンから砂糖が取れるようになったし、私もちょっと甘いお酒が飲みたいと思っていたしね。

 因みにゴブリナやソマリが飲みやすいように炭酸水で割っている。


 フリンはというと、あまり嬉しそうではなかった。


「確かに美味しいッスけど、これではドワーフたちは認めてくれないッス」

「フリン、まずは資金を稼ぐことと、火酒に親しみを持ってもらうことが重要だと思うわ。とりあえず、利益を上げて設備投資をして、それで最高の火酒造りに挑戦すればいいと思うんだけど?」


 ゴブリナが言う。


「その通りです!!それにこのお酒はネフィス様の息吹を感じます。火酒とフルーツの出会いは、まるでずっと会えなかった恋人が巡り会えたみたいな・・・」

「ロマンティックな表現だニャ。そのキャッチコピーはいただくニャ」

「実はこの言葉の背景には逸話がありましてね。それは聖女様がリザードマンやフロッグ族の住む集落に・・・」


 有難いゴブリナの話が始まってしまった。いつも通り、かなり誇張されている。

 もう止めても無駄だから、私は何も言わなかった。


 考え込んでいたフリンは、ゴブリナの話を聞き終えた後に言った。


「私に言わせれば、この果実酒はまだまだッスね。売るにしても、もっと改良しないと駄目ッス。とりあえず、誰にも負けない果実酒を造ってみるッス」

「頑張ってね。いいお酒ができたら、買いに行くからね」



 それから2週間で商品化に成功していた。

 魔法を使ったら、もっと早く美味しく造れるようだった。「先に言ってよ!!」と思ってしまう。


 それは置いておいて、商品名とラベルはいただけない。


「ちょっと、ソマリ。「聖女の恋」ってどういうことよ?それに私の姿絵がラベルになっているし・・・」

「それは粗悪なコピー商品を防ぐためニャ。そんなことをしたら、女神ネフィス様の天罰が下るっていう触れ込みニャ」

「それにしても、私に相談がないってどういうことよ?」

「ゴブリナに許可はもらっているニャ」


 私はゴブリナに文句を言おうと、神殿に向かった。

 そこでは驚きの光景が広がっていた。多くの信者たちを前にゴブリナが「聖女の恋」を持って、熱く語っていた。


「ああ・・・愛しい恋人よ!!やっと巡り会えたのですね。なんという奇跡!!ありがとうございます、ネフィス様!!

 こうして二人は結ばれ、その時にできたお酒がこの「聖女の恋」なのです」


 そんことはない。私が思いつきで、火酒にフルーツと砂糖をぶち込んで出来たのが、真実だ。


「いい宣伝になるニャ。ゴブリナとの提携を考えているニャ」


 ソマリを無視し、私はそっとその場を立ち去った。

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