11 グレートボア 2
ダークたちエルフ部隊が偵察に出発し、私は武器の製作に追われていた。
色々と検討した結果、現時点で作れない部品のみを「創造の木」で作り、細かい組み立てなんかは、フリンたちドワーフが担うことになった。
部品のみだと、格段に早く作れるし、魔力の節約にもなる。
というのも、調子に乗って魔力を込めていた私は、一度魔力切れで倒れてしまった。
なので、「創作の木」を使っているときは、必ずゴブリナが付き添うようになった。自分の魔力の限界が分かったから、もう魔力切れを起こすことはないんだけどね。
そして今日、偵察に出ていたダークたちが帰還した。
早速報告を聞く。
「現在の状況だが・・・」
ゴブゾウやその集落の者たちが悲痛な表情を浮かべる。
「食料庫の食料だけに飽き足らず、畑を掘り返して根こそぎ食っている。もう3日もすれば、食い尽くしてしまうだろう」
グリューンが冷静に問う。
「群れの規模は?」
「約20だ」
「すぐにでも動き出しそうか?」
「それはないな。腹が減るまでは、のんびり寝るはずだ。それで腹が減ったらまた動き出す。奴らは意外に鼻が利くから、こちらに来ないとも限らん」
場が暗い雰囲気になる。
そんな中、空気の読めないゴブリナが話し始めた。
「何を迷っているのです。今こそ立ち上がり、グレートボアを殲滅するのです!!」
これに呼応するようにゴブゾウとその集落の者たちが騒ぎ出す。
「そうだ!!俺たちはやるぞ」
「自分たちの手で取り返すんだ!!」
「グリューン、すまんが助力を頼む」
いつの間にか、こちらから攻め込む流れになってしまった。
グリューンが迷っていると、ゴブリナが言う。
「そうですよね?聖女様?」
ここで私に振るのか・・・
「もう少し、検討してみてはどうでしょうか?」
私はとりあえず、結論を先延ばしするのだった。
★★★
結局、グレートボアが動き出す前に討伐に向かうことになった。
理由はいつ襲撃してくるか分からない状況下で対策を練るより、今の段階で討伐したほうが危険性が少ないと判断したからだ。また、集団戦術も確立したみたいで、戦力的に勝てると判断したことが大きい。
そして、私も同行することになってしまった。ゴブリナが言うには、私がいるのといないのとでは、士気が全く違うとのことだった。そう言われたら行くしかない。
装備を整え、半日程でゴブゾウのたちの集落に到着した。
遠巻きに見ても、荒れ果てているのが分かる。建物の多くが倒壊し、畑が掘り返されている。ゴブゾウが悔しそうにつぶやく。
「クソ・・・絶対に許さん」
それを聞いていたグリューンが宥める。
「気持ちは分かるが、落ち着け。訓練通り冷静にな」
「分かっている。そこまで馬鹿じゃない」
準備が整ったところで、ゴブリナが声を上げる。
「さあ皆さん!!これは聖戦です!!凶悪な魔物を討ち倒すのです」
「「「オオオー!!」」」
それに合わせて、ゴブリンたちが一斉に槍衾の態勢を取る。
そして、槍衾の態勢のまま、ゆっくりと集落に近づいていく。私はというと後方で待機だ。一応護衛はオーク御一家の奥さんオークナさんがしてくれることになった。
「グレートボアの1匹や2匹なら、私一人で倒せるわ」
「そ、そうなんですか?」
「ただ、ここまで多いと、流石に私たちだけでは倒せないわね」
今回、群の規模が小さかったら、集落から戦闘力の高い者を選抜して、少数精鋭で討伐に向かうことになっていたという。しかし、ここまでの規模だと流石に無理だということになり、集落の戦力を結集して戦うことになったのだった。
ある程度接近したところで、ダークエルフたちが弓による一斉射撃を始めた。
遠距離なので、致命傷は与えれないがダメージは入っている。怒り狂ったグレートボアの集団がこちらに突進してくる。
グレートボアは体調が3メートル程で、イノシシと比にならないくらい大きい。そんな集団が突進して来る。怖くないはずはない。
そんな空気を察したゴブリナが鼓舞する。
「恐れてはなりません!!我らには女神ネフィス様がついているのです!!」
「そうだ!!」
「逃げるな!!」
「故郷を取り戻すんだ!!」
ゴブリンたちは勇気を振り絞り、突進して来るグレートボアの群を槍衾で止めていた。
そこに一斉射撃を喰らわせる。
グリューンが指示を出す。
「焦るな!!このまま我慢していれば勝てるぞ!!」
ゴブリンの槍衾戦術は積極的な攻撃にはあまり向いていない。
またゴブリンのボウガン部隊とダークエルフたちの遠距離攻撃は、固い表皮に覆われていグレートボアにはあまり相性が良くないようで、ダメージは入るが、未だに致命傷は与えられていない。
グレートボアはというと、突進攻撃を止め、弓やボウガンの射程外で集合して、こちらを窺っている。
膠着状態だ。
「ゆっくりと前へ進め!!」
グリューンの号令に合わせて、ゆっくりと槍衾の部隊が進んで行く。
それに反応して、グレートボアが後ずさる。
「止まれ!!これ以上近づくと包囲されるぞ!!ここまで知能が高いとは・・・」
グレートボアも私たちも、無理に動いたほうが負ける。なので、どちらも動くに動けない。
そんな時、普通のグレートボアよりも一回り大きなグレートボアが姿を現した。
「な、何だ!?あの大きさは異常だ」
「も、もしかしたら、主って奴じゃないのか?」
「ああ・・・主は頭がいいって言うしな」
「だからグレートボアが組織立って動いていたんだな・・・」
しばらくして、主と呼ばれる大きなグレートボアが一体だけ、ゆっくりと私たちに近づいてきた。
「射撃用意!!」
いつでも矢を放てる状態で待機する。
そんな時、なんと主が喋りだした。
「ゴブリンどもよ!!話がある!!」
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