43 予想以上に大変なことだったらしい
前半もう少しフラジスト視点続きます。せっかくウィルが頑張って告ったのになかなかウィルの出番が出てきません。すみませんm(__)m
後半は元のエリーナ視点に戻ります。
「この辺り一帯に解呪の魔術を使う」
「この辺り一帯ってお前……」
解呪の魔術は絶対ではない。しかもこの辺り一帯となると、結構な範囲になるため普段の量の何倍もの魔力を使わなければいけなくなるだろう。
だがこの方法がな一番可能性がある。
「僕の魔力だけだと少し足りない。お前の魔力も少しもらう」
「もらうってどうやって……うっ!!」
有無を言わさずウィルラインの魔力を取り出す。
魔力を取り出すことは魔術師団長しか許されていない。逆に言うと師団長になると嫌でも教えられる術である。何かあったときのために、仮に自分が魔力不足になっても国を守るため、他のものから貰えるように。
正直自分は絶対に使わないと思っていたが、覚えておいて良かった。
「…………おまえ……何か言う前に取り出すなよ……。一瞬死ぬかと思ったぞ……」
「ちゃんと魔力を取り出すと言ったはずだが?」
「それはそうだが……てかその術は何なんだ?」
「企業秘密だ」
先程よりもウィルラインの顔が少し青白くなっている。
ウィルラインには申し訳なかったがおかげで充分な魔力補充ができた。
解呪の魔術を発動させる。
……この感じだとどうやら避暑地全体にまで解呪の魔術が行き渡ったようだ。少しウィルラインから魔力をもらいすぎたかもしれない。まあ、範囲が広くなる分には全く問題ないが。
「……見つけた」
解呪に成功した瞬間、エリーに渡した魔法石の魔力が一気に存在感を主張し始めた。やはりなにかに遮られていたようだ。
その魔力の感じる方向に向かう。一刻も早く迎えに行かなくては。
「おいっ、黙っていくな! 仮にも俺、お前に魔力貸したんだぞ?」
フラジストとウィルラインは人並み外れた速さで走り出した。
◆◆◆
その後は……なんていうか呆気なかった。
飛び込んできた真冬くんとウィルはこの前のアナスタシア様御一行事件のように無表情に戻り、こてんぱんにギルアを打ちのめしていった。
それはもうギルアがかわいそうになるくらい。
ギルアは途中で何か言おうとしていたけど二人に遮られて、あ"ー、とかう"ーとかいううめき声にしかなっていなかった。
途中からグロくなりすぎて最後まで見ていられなかったけど。
もういいよと言われたときはギルアの姿はどこにもなく、真冬くんの片手には先程まではギルアの額であったろう大きな角だけが握られていた。
……深く考えるのはやめておこう。
「リーナ、大丈夫だったか? 遅くなってすまない」
「大丈夫! 特にこれといった怪我もないし、精神的にも……問題ないと思う」
むしろさっきの残虐さの方が心に来るよ。普通のご令嬢だったら卒倒案件よ? 今回は助けてくれたということで多目に目をつむるけど後で気をつけるように言っておこう。
「助けに来てくれてありがとう。でもどうしてここが分かったの?」
「ああ、それはエリーの魔法石だよ。その魔法石、魔力が他と違うんだ」
なるほど。
……? ちょっとまってね。それでわかったっていうことは……ちょっとしたGPSみたいなやつ……?
……とうとうこっちの世界でも作られてしまったか……。
「そ、そうなんだ」
「ところでエリー、ここ、何?」
この問いに今までギルアが言っていたことをすべて話す。二人とも神妙な面持ちで最後までじっと私の話を聞いていた。
と、すべてを話し終えたところで二人がはあと盛大なため息をついた。
「そうか、、やっぱり……」
「そうなると……」
何か二人でぶつぶつと言い出した。……話に入って行けぬ。
真冬くんは漢字も九字も知っているから思うことがあるのかな。真相がわかるのなら是非教えてほしい。
「……はあ、何となくだが話は見えた。これは……国に報告しなければいけないやつだ……。面倒くさいが一旦戻らないと」
「そうだな……。この角もうちの魔法師団員達で調べなければいけないし……。エリー」
突然話をふられ、変な声が出たことは許してほしい。
「何か分かった?」
「うん。結構大変なことだった。この部屋のことも……エリーならこの文字の意味がわかるでしょ?」
「うん」
「詳しいことはまた帰ってからちゃんと話すよ。今じゃ時間がなさすぎるからね」
今じゃないんかい!? 別に早く聞きたくて仕方がないって言うわけではないけどやっぱり気になるよ。漢字とか聖女とか。
それに今時間がないってどういうことだろう。
「一応このことは父上たちにも話して置かなければいけない。俺たちは先に馬で帰って国に報告しなければいけないからリーナは母上とエリザベッタ様と一緒に馬車でゆっくり帰ってきて」
どうやら男性陣は私達よりも先に帰るらしい。真冬くんのお父様もだそうだ。馬で行くっていうことは相当急ぐのか? まあ、何にしろ私にできることは今は無さそうだから大人しく言うとおりにしておこう。
このようにエリーナ誘拐事件は幕を閉じた。
それから、ウィルが正式に騎士団長へ就任したのは一週間後の話。




