27 ガウラの花の必要性
日が立つのも早いもので早くも当日に。
その日は朝早くから叩き起こされて湯浴みだのマッサージだのでとてつもなく忙しかった。
そうそう、フラン兄は三日前からこちらに来ていて久しぶりにアストランティア家のお手伝いをしていた。厳密に言えばお父様のお手伝いかな。
わざわざ来てもらって申し訳ない……。
相変わらずフラン兄は父親譲りのお顔で、うちのお父様とは違ったおっとりとした雰囲気は久しぶりに私への癒やしとなった。
最近は何かと忙しかったからね……。
3日に一回は真冬くんかウィルに合ってたからたまにはこういうのもいいと思う。
だが久しぶりだからと言ってずっと一緒にいられるわけではない。昨日と一昨日は半日くらいは一緒にいてお茶とかもしてたけど今日はお昼というのに顔すらも見ていない。
まあ私の準備が忙しすぎて私が部屋から出ていないだけなのだけれども。
先程ミラーさんが到着したらしく、昨日完成したばかりだというドレスの着付けに来てくれた。
そしてなんと……フラン兄の服まで準備していてくれたのだ!! お礼を言ってもいい足りない……。
もともとフラン兄も私と同じで服にこだわりの無い人だったから一時はどうなるかと思ったけど、真冬くんがしぶしぶお願いしてたらしい。
"仮にもエリーの横に並ぶ男がダサかったらエリーがかわいそうだ"とのこと。
それを作っていたため少し予定よりの遅れてしまったと言われたときはもう。
て言うわけで準備に戻ります。
出発まであと1時間をきっているためそろそろ仕上げに入らないと間に合わないそうで。
ミラーさんが持ってきてくれたドレスは控えめなエメラルドグリーンに、いつもは私が着ないようなふわっとしたドレスだった。所々に散りばめられているのは……、詮索しないでおこう。きっと聞いたら倒れてしまう。
せっかくのオーダーメイドのドレスだということで髪は上げることにする。
後ろで器用にルピアが結っていき、あっという間に編み込み&お団子のシンプルかつ綺麗な髪型だ。こういうことできるのほんとに流石だと思う。
「エリーナ、出来た?」
ほぼピッタリのタイミングでドア越しからフラン兄の声が聞こえた。
「うん、あと花をさすだけだから入ってきても大丈夫だよ」
と、入ってきたフラン兄についつい目を奪われる。
流石はアリスティア家の血縁者というか雰囲気が甘い。
あ、ちゃんとフラン兄の胸元についているペンダントがエメラルドだ。
やっぱりあれだな。ミラーさん一回おこったことは根に持つタイプだ。
「花はどこにさすの?」
花。
そう。とてつもなく面倒くさいことにこのパーティーには第二王子と同じ名前の「ガウラ」の花をつけていかなければいけない。ガウラ自身はとても綺麗だし、白色ということもあってどんなドレスにも合わせやすいのはいいのだが……、いかんせんこれが"婚約者がいない"という印だというのが嫌なのだ。
たぶん婚約者選びも兼ねているから王子に分かりやすいようにしているのだろうけど。
一部公開処刑のようなとこあるよね。
「あ、あの人将来を約束している人いないんだ」って一発でバレるという大変ご迷惑な代物である。
貴族間の情報網はびっくりするくらい早いから誰が未婚なのか、とか誰それがまだ婚約者を捕まえてないーだとかって言うのはすぐに分かるけど……なんかこう……嫌じゃない?
私、一回ガウラ王子との婚約断ってるんだよねえ。それなら必要なくない? 何ならこのパーティーに出席する必要性すらも感じないんだけど。
一回断られた相手って私的には気まずいからあんまり会いたくないけどむこうは違うのかな。
いや、呼ばざるをえないのか? 仮にも婚約者なしの伯爵令嬢を呼ばないのは周りから見れば何故? って感じになるか。
「あんまり目立つところにはつけたくないんだけど……」
できればポケットに突っ込んでおきたい。
「そうだねえ……大体の令嬢は自分をアピールしたいから髪につけたりとか数を増やしたりとかしてるんだけど……、エリーナはしないの?」
「しないよ?」
てかなんでしなくちゃいけないの?
そんなことしてる人いるんだ。それ自体も初耳だけど、それをするっていう気もすごい。
なんだかんだいってガウラ王子、モテてるんだから早く誰か捕まえたらいいのに。
別に彼、時期国王ってわけでもないからどこかの婿に入ってもいいわけでしょ? 伯爵家以上の令嬢だったらよっぽどじゃない限りは反対されないと思うんだけど……。
「なら……ここでいいかな」
フラン兄が付けてくれたのはドレスのレース部分の場所だった。ここはガウラ以外にも他の種類の花を模した飾りもついているので、うまく調和している。言われないと気づかないレベルだ。
流石フラン兄。
「ありがとう! これなら大丈夫!」
「お役に立てて何より」
ほわんとした空気が流れる。思わず私や侍女たちも癒やされるが……結構時間がギリギリに迫っていた。
私達はお母様とお父様と一緒の馬車で行く。この時間だともう二人とも乗っているかもしれない。
私とフラン兄は慌てながら馬車へと急いだ。
Twitterふたたび再開。




