22 〈ウィルvsフラ〉フラ視点
文字数的に少なかったので最後のは余談です。
国王への納品が終わり、王宮の廊下を歩いていた。
一昨日はせっかくエリーと一緒にいられると思ったのに、予想外の緊急要請が入り嫌嫌ながら魔法師団に行かなければいけなくなった。
エリーと離れるのが嫌で一緒についてきてもらったが、まさかエリーの言葉のおかげでこんなにも早くスピーカーが完成するとは思わなかった。
僕は稀に見る天才とか計り知れない発想力とか言われているけれど、実際開発しているのは前世にあったものばかりで、僕が発明したわけではない。
昔から記憶力はいい方で、前に見たことがある設計図をそのまま映し出しているだけに過ぎなかった。
今回も、国王が演説をする際に声の広がるものがほしいと依頼を受けて、それならスピーカーにしようと思ったのだが、問題が起きた。
僕以外使うことができない。
雷魔法はそんなに珍しい魔法でもないから持っている人も多いが、スピーカーを操作するための調節がわからないのだそうだ。
電流を流す感じでと言ってもそもそも電流が何かわからないということから始まり、解決できずにいた。
納品の日までに間に合いそうにもなく、半分ほどは諦めていたが、エルーの助言でびっくりするほど事がうまく進んだ。
風魔法なら、魔石があるから僕達がいなくても操作することができる。
雷魔法はまだないから風魔法で代用できるとちょうどよかった。
エリーに褒められたのもあって、久しぶりに気分がよかったのだが……一番会いたくないやつにあってしまった。
騎士団で訓練でもしていたのだろう。
濡れた髪を拭きながら歩いてくるウィルラインと目があってしまった。
「……久しぶりだな……」
「……ああ」
前はあったら多少話はする仲だったが、エリーとずっと一緒だったと思うと腸が煮え返る。
幼馴染としての僕の特権を奪われたみたいだからだ。
今もあまり関わりたくないにも関わらず、ウィルラインは不機嫌さを隠そうともしないで僕に話しかけてくる。
「何故……リーナのことを構う」
何を言ってるんだ? こいつは。それはこちらのセリフだ。
「今まで令嬢の一人も気に留めなかったのに、何故リーナにだけ構うんだ? 俺から何かを奪いたいのか?」
本当に何を言ってるんだ。エリーを奪ったのはお前だろう。僕のエリーを僕から奪った。
いや、まだ奪われてはいない。エリー自身はウィルラインの気持ちに気づいていない。
「どうせお前は新しい玩具を見つけたくらいの気なんだろう。そんな気持ちでリーナを連れ出さないでくれ。リーナは……俺の大切な幼馴染だから」
ウィルラインにはそんなふうに俺が見えているのか。だがエリーをそんな気持ちで接したことは今までとして一度もない。
「玩具とはなんだ? エリーはエリーだ。僕の唯一。お前こそ一番近くにいるくせに守れていないじゃないか」
そうだ。最近エリーが誘拐されたと知った。首謀者はまだわかっておらず、エリーもその日のうちに帰れたと言っていたが……。どうやらその日はウィルラインと市民街に行っていたらしい。何故近くにいながらも守れないのか。俺なら一時も離れずエリーのそばにいるのに。
図星をつかれたのだろう。グッとウィルラインの体に力が入るのが分かった。
「それは……俺が悪かった。二度とあんな思いはさせない。けれど迎えに行ったときは笑顔だったぜ? 信じていた、と」
なん、だと……!?
エリーが僕以外の人を。男をっ……!!
勝ち誇ったような顔をしたウィルラインが今まで以上に憎々しく思えてくる。
やはり十数年という月日は長かったか。
ずっと側に居てやれなかったことが悔やまれる。それに知らない間に"幼馴染"という枠も奪われた。何故パーティーなどでもウィルラインとは話したことがあったのに、エリーのことに気が付かなかったのか。
……それは僕自身が原因だ。
ウィルラインが一人の女と仲がいいということは知っていたのだ。だがそれがエリーだと誰が思う?
もっと早くに気づいていれば、もっと早くにウィルラインからエリーを遠ざけていれば邪魔が減っていたかもしれない。
「リーナは、お前のようなやつには渡さない」
誰が誰を渡さないだって?
はっ、笑わせるな。まともにエリーを守れないやつに誰が渡すだって? 死んでも断る!!
「エリーは僕のものだ」
「っ!!」
酷く憎んだような視線を向けてくる。たぶん僕も同じような視線を送っているだろう。
……胸くそ悪い。
これ以上はお互い顔も見たくないと、それぞれ反対の方へと歩きだした。
ウィルラインについては……速めに対策を打たなければいけないな。
◆◆◆
「ねえねえ知ってる? さっきそこの廊下でウィルライン様とフラジスト様がお話してたんだけどね……」
何人かのメイドが洗濯を干しながら喋っていた。
「えっほんとに!? ラッキーじゃん!!」
「でもね、なんだか二人ともバチバチって感じだって……」
「バチバチ?」
「うん。何話してたかはわからいんだけどね、二人とも殺気がすごすぎて誰も近づけなかったの」
「あの仲がいいって有名な二人が!?」
「同性愛者って噂は本当だった?」
「いや、それはわかんないけど……。でも威圧がすごかったのは本当。それに話し終わったと思ったら二人とも別々の方向に歩いて言ってたし……」
「何話してたか気になるわね」
「でしょう!! どっちか告白でもしたのかな」
「いやいや、それはないでしょう」
「そうそう。もしそうだったとしたらそんなお互いに殺気飛ばし合うことなんてないしね」
「もしかして好きな人が被ったとか!?」
「「「まさか〜!!」」」
ないないと楽しそうに話している者たちの中に真実を知るものは誰もいない。




