20 謎が深まる真冬くん像
自宅待機中です。
さっさと終わらせてくるからちょっと待っててねと言われ、私は女の人に一室に通された。
塔の上の方にあったが、登るときは魔法を使ってくれたらしく、ふわっと体が浮き上がったと思うとこの部屋の前に到着していた。自分はまだしも他人も一緒に浮かせることができるなんて、やっぱり魔法師団の皆さんはすごいんだなあと改めて感じる。
ここは、、真冬くんの部屋だな。
必要最低限のものしか置いてないのと、仮眠用のベッドがあることから私室だということがわかる。
「あの……失礼ながらお名前を聞いても……?」
お茶を出されてからずっと観察ばかりされているような気がしていたたまれなくなり、ボブヘアの綺麗な女の人に尋ねる。
「ああ、ごめんなさいね。あの方が女の人を連れてきたっていうだけでも驚きだったんだけど、あんなふうに笑うところなんて初めて見たから、、。私はステラよ。よろしくね」
「エリーナです。こちらこそよろしくお願いします」
お互いにペコリとお辞儀をする。
立ったまま話もなんだということで、ステラさんには座ってもらうことにした。するといきなりステラさんの態度が豹変。
「ねえ、あなたは一体何者なの!?」
ステラさんが興味しんしんのようで、身を乗り出して聞いてきた。
お、お茶がこぼれますぜ……。
「何者かって言われても……ただの伯爵令嬢……」
自分とはなんだろうと考えてみてもこんなありきたりな答えしか思い浮かばない。強いて言えば前世の記憶がある伯爵令嬢かな。
「そんなはずないわ。だってフラジスト様が貴族の女の人を好きになるはずないもの」
たぶん真冬くんは私を好きって言うわけではないと思うな……。どちらかというと兄妹のような関係? あとお互いに唯一の転生者か。
「貴族の女の人を好きにならないっていうのは……?」
ここが一番気になるポイントだ。だって真冬くんは公爵令息だよ? 周りにも綺麗な人なんていっぱいいるはずなのに。
「あら、エリーナちゃん知らないの? フラジスト様は同性愛者なんじゃないかって噂もちらほらあるのに……。ほら、いつもパーティーとかではカルミア公爵子息様とはしの方で一緒にいるから……」
なんと……!! やっぱりウィルとは仲が良かったんだ!! 私の結論上どう見ても仲が悪くしか見えなかったけど……。
こっちの世界にも同性愛とかあるんだね。ウィルと真冬くんか……。なんとも危険な香りのする組み合わせ……。でも似合ってしまうのが令嬢たちの鼻血案件になる原因か……。
「そうなんですか」
「そうなんですかって……。私もこう見えて子爵家の次女だから貴族の端くれなのよ。もうこの魔法師団に入った時点でその名前は捨てたけど……。有名な話よ? フラジスト様とカルミア公爵子息様のことは」
まじか。また詳しい話は友人のセリナに聞いてみよ。
「ところで、、今日真冬く……フラジスト様が呼ばれたのはなにか緊急の用事が入ったのですか?」
「ええ……それがね……今開発している魔道具が爆発しちゃって……。結構な量の魔力を込めていたからフラジスト様にしか扱えなかったのよ。でもあの人今日に限って有給取ってるし……」
有給!? めっちゃ暇そうにしてたけど……。わざわざ休んでくれたのかな……。
「フラジスト様、休みなんか滅多に取らないからできるだけ呼び出したくはなかったんだけどね……。どうしても手に負えなくて。でもおかげで面白いものが見れたわ」
「面白いもの?」
なにかしたっけと思いながら首をかしげる。ただ来て真冬くんが仕事モードになってただけだと思うけど……。
「えっ……もしかして……フラジスト様はいつもああいうふうじゃないの……?」
ああいうふうとは?
いつもどおりといえばいつもどおりだったけど。
「嘘でしょ……。あのフラジスト様の様子は今じゃ魔法師団中で噂なのに……。エリーナちゃんの前ではいつもあんなに笑顔なの……?」
「? うん。今日は仕事モードのフラジスト様が見れて良かったなーっては思ったけど……」
ありえないわ……とつぶやき何やらぶつぶつ言っている。真冬くんはあんまり笑わないキャラなのかな? 謎が深まるばかり……。
「まあ、、いいわ。じゃああなたの前ではフラジスト様はどんなふうなの?」
「明るくてほわほわ……? 癒やしキャラ枠だと思ってたけど……」
「明るくてほわほわ……、癒やしキャラ……!?」
駄目だわ、ついていけないとまたもやぶつぶつと言い出して、しまいには頭を抱えだした。
何かまずいことでも言ったかな……。はっ、もしやこっちの世界ではあのほわほわは封印してるとか? 内緒にしているやつだったのかも……。
「ありがとう……。これで当分話題には困らないわ」
お役に立てたみたいなら何よりです。
いいのかな……。
「ちなみにこちらでのフラジスト様はどんな……?」
「そうね……氷の帝王……氷結の貴公子かしら」
ごホッと今飲んでいるお茶を吹き出しそうになる。
おおう、真冬くんと反対の言葉が出てきた……。
ほわほわはいっちゃまずかったやつなら後でちゃんと謝っておこう。
今はせめて心のなかで……と思っていると、ドアをノックして真冬くんが入ってきた。
「エリー、不自由してない? もしよかったら少し見に来てほしいんだけど……」
あ、いつもの真冬くんだ。
横でステラさんは目が飛び出るんじゃないかってくらい真冬くんのこと顔見してるけど真冬くんは気にしていない様子。
「仕事は終わった?」
「終わったってわけじゃないけど……もしかしたらエリーにも何かわかるかもしれないって思ってね」
よくわからないが私にも手伝えることがあるらしい。
真冬くんとステラさんと一緒に、さっき魔法師団のみなさんが集まっているところに向かった。




