第9話 紅
「お? 宗治、そのマフラーなんだ?」
「あぁ、これ? もらった」
「なんだよ宗治! お前ってやつはよぉ!」
マフラーをつけて登校したら、校門でいきなりクラスのやつに絡まれた。校内入るまでには取るべきだな。
「なぁなぁ、誰にもらったんだよ? 何組の誰?」
「残念だが校外の人だぞ。 その、俺が失踪したときに知り合った人だ」
「なんだよそれ! 自分探しじゃなくて彼女探しかよ!」
勘違いしたクラスメイトの声が周りに響く。辺りの男からは殺気を向けられ、女子は俺の方を見てはこそこそと話をしている。
この野郎、後でしばいてやる。
◇
「んで、それがそのマフラーって訳か。 カバンの中に隠すとか、どれだけ恥ずかしんだよ」
「仕方ねえだろ? いちいち絡まれたくないんだよ」
「しっかし、消えた時にお前はどんな経験してたんだ? いつの間にか知り合いが増えてないか?」
「しょうがないだろ?結構遠くまで行ってたんだからさ」
「いいなー宗治ばっかり、俺にも欲しいよそういうの。 俺も自分探ししに行こうかなー」
「邪な動機だな」
そんなに皆気になるのかよ。てか、このマフラーのせいでリア充と勘違いされてるようだ。しまったな、着けてくるんじゃなかった。
「それはそうと宗治、何かこのマフラー誰が作ったんだ?」
「くれた本人が作ったそうだけど」
「そうなんだ、ソイツ、気をつけた方がいいかもだな」
「なぜ?」
「それさ、何か血みたいな色してるじゃん。 もしかしたらヤバいやつかもよ、ほら、お前ストーカーいるじゃん」
「あぁ、そうだったな」
「ストーカーと言えば血じゃん。 血糊とかで同じ文字延々と書くやつとかあるじゃん」
「ちょ、止めろよ」
そういえば俺にはストーカーがいるんだったな。今までの行動とかも全部監視されているかもしれない。今後はこういうのも控えるようにするか。
◇
「ただいまー」
今日は早めの帰宅。親はいないし、今日はゆっくり休むか。
マフラーを取り出し、洗面器に入れる。香織に何故かはわからないが手洗いでと指定されたので、面倒ながらも丁寧に水洗いしなければ。そう思った矢先に、鏡に写った自分の首に血がついていた。あれ? いつの間に?
どっかを引っ掻いた時に血がついたのか? でも首についているのは不自然だ。でも、まぁいいか。
◆
たく、宗治め、うらやましいなぁ。あの野郎失踪中に女作っていやがったか。俺も彼女欲しいな~。
しっかし、街灯がチカチカしてたり、気味悪い夜だ。早く帰って電話で宗治イジるか。
「あの」
「はい、なんですか?」
後ろから話しかけてきたのは黒髪の美少女。お、ラッキー。
「どうしたんですか?」
「あの、相模君の家ってここですか?」
住所の書かれた紙を見せ、宗治の家を指さす。
「あぁ、はい、そうですけど、宗治に何か?」
「ちょっと用があって」
「へーアイツもやるなぁ。 あんたみたいな可愛い女の子捕まえるなんて」
この子は宗治が自分探し中に出会った人なのだろう。アイツ確か彼女居ないらしいから、俺にもワンチャンあるかもしれない。
智雄ですと名乗り、宗治の家だとジェントルマン風に答えた。うん、完璧だ。
「お友達でしたか、それは丁度よかった。 今後プレゼントをあげようかと思っていたんです」
「そうですか、アイツも喜ぶんじゃないかな、いやーやるなー宗治は」
「ふふふ」
少女は嬉しそうに手で口を隠しながら笑う。
まぁ、俺も美少女と話せて嬉しいけどな! なんて思っていたら少女が笑いながら可愛らしい声で、
「よかったー。 こんな所でいい材料に出会えて」