第12話 ラブコメ
はぁ、明日からまた学校がある。何で私学校行ってるんだろう。宗治に会える訳でも無いのに。
学校行っている間に誰かに取られちゃったりしないかなぁ。宗治は魅力的だから心配になってしまう。
ここにあるコイツも宗治を狙ってたから、きっと同じような奴が湧いているかもしれないなぁ。
それはそうと、まだ宗治へのプレゼントには、更に改良を加えている。だってまだ時間があるし、より良いものをあげないとね。
ところで、この腕とかはどうしようかな?結構場所とるから邪魔だし、処分したいな。
◇
昨日は取り調べで、本当に疲れた。自分の為でもあるとはいえ、緊張からか、家のベッドに横たわった途端、そのまま寝てしまった。
朝、中途半端な目覚めのままに学校へ。教室に入っても人と話す気にならない。
「まーたため息ついてる。 幸せが逃げるぞ、宗治」
「ああ、涼袈か、今日は早いな」
「だって課題未提出なのが残ってたもん」
「それはお前が悪い」
「なんだよ、つまんない奴。 可愛い女の子にちょっとくらい同情してくれよ」
「自分で可愛いって言うやつに同情なんて無い」
「辛辣だなー」
「はいはい」
「よう、宗治!」
「おう、拓かおはよう」
「元気か? あの黒髪の人は」
「それストーカー(疑惑)の人だよな。 俺に聞くことじゃないよな」
「いいじゃねぇか、少しくらい宗治もラブコメしろよ」
「そうだよー。 宗治も最終回で刺されるんでしょ?」
「どこのクズの話だ」
「数多の女に手を出し、最終的には初恋の相手に刺されるなんて宗治らしいよな!」
「どういう意味だ!」
「でもでも、実は宗治意外とモテるだよね。 実際に私に宗治のことを聞きにくる子いるし」
「え? そうなのか?」
「そうそう。 だから、鈍感系のチーレム野郎って教えてるよ」
「俺がいつチート貰った! 内容が只の悪口だろうが!」
「いやー、ストーカーなんて羨ましいなぁ、宗治もついに刺されるのかぁ」
「お前覚えておけよ」
◇
「ありがとうございましたー」
今から昼休み。珍しく涼袈が俺の席に来て昼食に誘った。木の下のベンチで、横に並び弁当を食す。
「あのさぁ宗治、あの3日間って本当に何してたの?」
「前も言ったろ? 自分探しだって」
「だってさぁ、宗治って明らかにそんな人間じゃないじゃん。それに帰ってからも少しおかしいよ」
「それはだって……」
「それについて触れたのはごめん。 でも、帰って来てからは、メッセージ送っても返信遅いしやりとり続かないし、らしくない」
「……」
「どうしたの? いない間に何があったの、ねぇ?」
沈黙が続く。異世界行ってたなんてこんな空気で言えるわけない。
涼袈はつい感情的になってしまったことに気付いて、額に手を当てた後、
「……ごめんね、邪魔しちゃった。 先に席帰るから」
校舎の方へ走り去って行った。
◇
「お、宗治。 昼は涼袈と何話してたんだ?」
「別に何も」
「なんだよー、教えろよー。 どうせラブコメしてんだろ?」
「だから、違うって」
「涼袈が怒ってたのは振ったからか?」
「告られてねぇし」
なんだよつまんねえなと拓が呟きながら、当たり前のように俺の帰り道についてくる。
「お前こっちだったか?」
「いや、気分だぜ」
「いや迷惑だな」
「まぁ、お前のストーカーと会えるのが楽しみってわけでもあったりするんだがね」
「何興味持ってんだよ」
「いいじゃねえか、たまにはよぉ。 前のお前なら笑いながら許してたぜ」
「わけねえだろ。 ストーカーだぞ」
「警察に連絡はしてんの?」
「一応」
「えー、つまんねぇの」
「いや普通するだろうが!」
「それじゃあ時間の問題かもな。 おっとこれ以上行くと帰りが遅くなる。じゃあな」
拓はそう言い残し、来た道を戻って行く。
「やっと静かに帰れるぜ」
◇
「何てな、そんな所いたら流石にバレるぜ」
「なんだ、気付いてたんだ」
電柱の影から出たのは噂通りの長い黒髪の美少女。電柱の影に隠れるとか見本のようなストーカーだな。
「君、何者? あぁ、その前に俺が名乗るべきか」
「必要ないよ。 だってあなたに教える気は無いから」
「でしょうなぁ、不審者さんと仮で呼ばせてもらいますか」
「それは嫌」
「あんただろ? 春賀と智雄やったのは」
「もちろん。 邪魔だったからね」
「普通にサイコだな。 あんたで本が一冊書けそうだぜ」
「それはどうも。 でも残念、そんなこと言っている暇なんてないよ?」
「へぇ、自信があるんだな」
「"パラライズリング"」
光る輪が拓に向かって飛来するが、拓は左に飛び避ける。
「宗治がラブコメして、俺がバトルアクションか。 バライティがあって悪くないな。 おっと危ない」
「そうやって逃げても無駄だよ。 "チェーントラップ"」
ブロック塀が変形しチェーン状になったコンクリートに、拓は絡みとられる。
「残念だったね。 バトルアクションはおしまい」




