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乙女ゲー異世界転生者(♂)は悪役令嬢を救いたい   その六十六

 やっぱり隣に座るのが正解だったらしい。


 きっと優花を隣に座らせて、式が始まるまで話をしたかったのだろう。


 それにしても……この位置はなんだかなあ……。


 凛香の隣なのは良いのだが、今の優花の位置は、クラスメイトがなんとなく男女に分かれているうちの女子側。


 正直居心地が悪いったらなかった。


 これなら初めから隣に座っておけば良かった……。


 今度同じような状況になったら最初から隣に座ろうと優花がひそかに決めている内に、女子に囲まれた席に座っていた翡翠がやってきた。


「同士、隣良いか? 少し話があるんだが……」


 隣良いか? と言われても、そもそも優花の隣は既に埋まっている。


「……いや、隣はもう空いてないから」


 どうせろくでもない話なので、隣の席が埋まっていることを理由に断り、あっち行けオーラを放ってみたものの、翡翠は全く気にしていない。


 そうこうしている内に、凛香とは反対側の優花の隣に座っていた女子が翡翠に席を譲ってしまった。


 翡翠がイケメンスマイルを浮かべて礼を言うだけで、席を譲った方の女子が顔を赤くして嬉しそうにするのだから、イケメンは得だ。


 何はともあれ、これで真央、凛香、優花、翡翠の順で並んだことになる。


「それで? 話ってなんだよ?」


 ジト目で見ながら問いかけると、ふっと翡翠がまたイケメンスマイルを浮かべた。


「イベントに行きたくないなら、普通に遊ぼうと思っただけだぜ。どうせ暇だろ?」


 ……勝手に決めつけんな! と言ってやりたかったが、実際夏休みの予定は補習以外真っ白なので暇と言えば暇なので強く否定はできない。


 まあ遊ぶくらいなら良い……のか?


 マジハイの攻略的には、夏休み期間中は基本的に一緒に遊ぶ形で攻略が進む。


 翡翠の攻略をするべきかどうかは、まだ悩み中ではあるものの、ちょっと遊ぶくらいなら心の欠片も入手には至らないだろうし別に良いのかもしれない。


「ゆうかくんと翡翠くんが一緒に遊ぶの? 二人ってそんなに仲良かったんだ!」


 翡翠の遊びの誘いを聞いて真っ先に反応したのは優花ではなく、翡翠から少し離れた真央だった。


「まあな、同士とは趣味が一緒だからな!」

「いや、一緒じゃないけど……」


 BL好きだと言いたいんだろうが、趣味が何なのか真央に追及されたらどうするつもりなんだろうこのバカは……。


 幸いにも真央が翡翠の趣味について聞いてくる前に、凛香が横から口を挟んできた。


「勝手なことを言わないでくださる? ゆうかさんは予定がとても詰まっていますわ」


 ……いや……詰まってませんけど。


 凛香が何を言いだすつもりなのかと戸惑う優花に、翡翠が顔を向けた。


「そうなのか同士?」

「いや……うん……まあ……」


 なんと言って良いかわからず迷っていると、凛香がふふんと鼻を鳴らした。


「ゆうかさんには夏休み中わたくしの執事をしていただく予定ですので、他の方と遊ぶ予定などどうあっても入りませんわ」


 どうやら凛香の中では既に決定事項らしい。


 優花としては夏休み中も凛香に会えるのは嬉しいのだが、さすがに夏休み中ずっとは色々と厳しいかもしれないと思い、ちゃんと否定しておこうとしたところ、


『静かに、これより終業式を始めます』


 ちょうど式が始まってしまった。

 厳粛な雰囲気で始まった式は当然私語厳禁なので、後で否定すれば良いだろう。



 終業式が終わったのは一時間後。


 通常なら三十分ほどで終わるはずの終業式だったが、終了時間が遅くなったのは、学院長の話が異様に長かったからだ。


 学院長は人の好さそうな顔をした白髪で細身の中年男性で、にこにこと笑いながらゆっくりと話す特徴があるようで、眠気に抗うのが大変だった。


 学院長の話で寝ないように頑張っている内に、結局夏休み中の執事の件を否定することを忘れてしまい、教室に戻ると軽いホームルームの後すぐに解散。


 解散になってすぐに凛香が足早に優花の元までやって来た。

 普段凛香の方から優花の所にやってくることはないので、クラス中の注目が集まった。



「それでは行きましょうか、ゆうかさん」

「えっと……どこへですか?」

「決まっているでしょう、ゆうかさんはこのままわたくしの執事をするのですから、わたくしの家にですわ。ああ、それと花恋さんには既に連絡をしていますから大丈夫ですわ」


 あー……そう言えばまだ、執事の件ちゃんと断ってなかったな。


 それと執事の件を知らなかったのは優花だけで、花恋にはちゃんと話をしてあったらしい。


 ……いや、もしかしたら凛香と花恋の間で勝手に決まった話なのかもしれない。


 まあ執事をすること自体は別に良い。さすがに二か月家をまるまる空けるわけにはいかないので、二か月ずっとは無理なものの、それだってたまに家に帰れば良いだけだ。問題は……。


 凛香さんに赤点取って補習だって言ってないことだな……。


 怒られるのか、呆れられるのか、はたまた変に責任を感じてしまうのかわからず、正直言いたくはなかった。


「ちょっと待て虚空院! 俺様はまだ同士と遊ぶのを諦めてないぜ!」

「……諦めの悪い、しつこい男は嫌われますわよ?」

「ふっ、俺様が誰に嫌われるって?」


 自分が女子から人気だと自覚している翡翠が自信満々に笑うと、凛香はくすりと笑った。


「誰に嫌われるかって? 決まっているでしょう? 優花さんですわ!」


 びしりと優花を指さした凛香に、翡翠が胸を押さえてひるんだ。


「……くっ、同士に嫌われるのはたしかにきついな!」


 きついのか……。


「ふふん! わかったらゆうかさんは諦めることですわね!」


 おーほっほっほっ! といつもの高笑いを見せる凛香と、悔しそうに歯噛みをする翡翠。


 何となく凛香優勢で話が進んでいる内に、ばあんと大きな音を立てて教室の扉が開いた。


「兄貴! まだいますか!」

「うわっなんだ! ……って竜二か」


 優花達の教室に入ってきたのは竜二で、優花の顔を見ると何故かほっとしたように息を吐いていた。

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