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乙女ゲー異世界転生者(♂)は悪役令嬢を救いたい   その四十七

 残ってる優花と真央が和やかに話している横で、凛香が……競争心に燃えていた。


「ふっ……ふふっ、ここでわたくしは真央さんに勝ち、どちらが真の勝者か証明してさしあげますわ!」


 ぐっと拳を握る凛香はどうやら優花の代わりにルーレットを回しているだけというのを忘れ、自分と真央の一騎打ちだと思ってしまっているらしい。


 まあさっきから優花はもう見ているだけになっているので、それでも問題は無いか。


 なんだかゲームをしている内に熱が上がってきたようで、少し頭がくらくらし始めていた。今までは割とゲームに集中していたので気にならなかったが喉も痛くなってきた。できればさっさとゲームを終わらせて寝てしまいたい。


「それじゃあ私だね!」


 意外にも接戦に見えた勝負は……その実、全然接戦などではなかった。


 真央はカップル解消状態にもかかわらず、恋愛ポイントを伸ばし、優花……いや、凛香は恋愛ポイントマイナスマスばかり。


「もう、搾り取る相手もいなくなってどんどん落ちてる感じっすね」

「あー……うん、まあそんな感じだな……」


 竜二も深雪も脱落し男子組は全滅、女子枠同士は妨害マスがあまりないため、勝負はもう火を見るより明らかだった。


「所持金勝ったままゴールすれば、凛香さんもまだ納得できたのかもしれないけどな……」

「……逆転されちまいましたね」


 ちょうど真央が数少ない女子枠同士での妨害マスに止まり、凛香から所持金の半分を奪い取り、恋愛ポイントでも所持金でもトップになったところだった。

 所持金まで奪われもはや勝ち目がなくなった凛香は明らかに涙目になっていた。

 

「……凛香さん。後は俺がやりますから、もう回さなくても大丈夫ですよ?」


 このまま凛香が真央に負けたような感じになるのは可哀想なので、そう言うと凛香は涙目のまま首を横に振った。


「いいえ! 虚空院凛香はここで逃げるような女ではありませんわ! それにまだ勝負は決まっていませんわ! あのマスをごらんなさい!」


 びしっと凛香が指さした先にあるマスを見るとその効果は……。


「『指定したプレイヤーと恋愛ポイントと所持金を交換する』……ってどんだけクソゲーなんだ」


 最後の逆転要素なんだろうが、さすがにやりすぎだ。


「最後に笑うのはわたくしですわ!」


 凛香が最後の賭けに挑んだが、結果は――――『恋愛ポイントマイナス1000000点』マス。もはや何点持ってようが問答無用でゲームオーバーになるマスだった。


 クソゲーにもほどがある。


 ともあれこれで残るプレイヤーは真央だけなので、自動的に真央が勝利した形になった。ようやく解放されると安堵した優花は、ふるふると体を震わせている凛香に気が付いた。


「く……」


 一気にゲームオーバーになった凛香は、うつむいて何かをつぶやいた。


「く?」


 優花が聞き返すと、凛香はばっと顔を上げて叫んだ。


「クソゲーですわ!」

「うわっ!」


 あまり汚い言葉を使わない凛香が珍しく声を荒げたところを見て、さすがに優花もびっくりしてしまった。


 叫ぶと同時に急に立ち上がった凛香は、あっけにとられるみんなの前でボードゲームを手早く片付ける。


「さあ! こんなクソゲーはもうおしまいですわ! ゆうかさんの体調が悪くなる前に皆さんは帰ってくださる!」

「えっ、ちょっ! 虚空院の姉御押さないでくださいっす!」

「……うう……引きずられる」


 力ずくで竜二と淀を玄関に連れていくと今度は翡翠と深雪、真央と楓の背を押し、あっという間に全員追い出してしまった。力づくにも程がある。


「さあ、ゆうかさんももう寝てくださいね?」

「……わかりました」


 最後に優花を見て、口角を少し上げただけのアルカイックスマイルを浮かべる凛香に優花は冷や汗をかいた。


 こ……怖い……。

 

 言われた通り自室に戻りベットに横になると、優花が横になったのを見届けてから凛香はどこかに行ってしまった。

 

 一人になった優花は今回のゲームを思い返す。


 今回のゲーム、結果だけを見れば真央が圧勝しただけだが、楓が無理やり風邪をひいている優花を巻き込んでまでやった以上、そこには何かの思惑があったはずだ。


 カップル成立したのは真央が翡翠と六道生徒会長、俺が竜二で、楓がなしで、楓は高校生マップに入ったら早々に離脱したんだっけ。


 この状況、実は今の優花達の攻略状況に似ていると言える。真央が翡翠と深雪を攻略していて、優花が竜二の想いの欠片を手に入れ、楓は誰も攻略していない。


「まあ、だから何だって話だけど……」


 今回のゲームの結果がそのまま、優花達のこの後の展開になるわけでもなし、結局楓は何がしたかったのかはわからないままだ。


「あーだめだ……考え事してたら頭痛くなってきた……」


 やっぱりゲームなんてするんじゃなかったと思いながら、優花は眠りについた。



*****


「んー……どういうことなの? あの人の指示通りやったけど、別に何も起きなかったじゃない」


 優花の家を追い出された後、無理やり真央と一緒に過ごし楓は自宅へと帰りつつ一人物思いにふけっていた。


 今回のボードゲームで真央を翡翠や深雪とくっつけるものと思っていたのだが、結局単純に真央が勝っただけで終了してしまった。あれでは、ただ単にゲームで遊んだだけだ。


 スマホを取り出し、メッセージを確認すると、新着のメッセージは無し。


「『ボードゲームのマジ恋を持って灰島ゆうかの家に行き遊ぶこと』……うーん、楓はやっぱり間違えてないわよね……」


 一個前に来たメッセージを確認して首を捻りながら楓はスマホをしまおうとするとスマホが急に鳴りだした。

 慌てて確認すると、来ていたのは今回の指示に対する説明だった。


「ええと……『今回のゲームの結果は、八雲真央の主人公補正に対し、灰島ゆうかがどの程度まで迫っているのかという検証。八雲真央が勝ったのなら問題ない、次の指示を待て』か……」


 この世界がゲームを元にした世界だというのは既に知っている楓だが、まさかゲーム内のゲームにまで主人公補正がかかるとは知らなかった。


「所詮モブの楓じゃ、真央先輩に初めから勝てるはずなかったってことね……」


 吐き捨てるようにそう言うと楓はスマホをしまった。

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