乙女ゲー異世界転生者(♂)は悪役令嬢を救いたい その四十五
「それじゃあ私の番だね! えいっ!」
真央がルーレットを回すと再び恋愛ポイントプラスマスで恋愛ポイントが『330点』になり、これで真央がまた単独首位となった。
カップルになって恋愛ポイントが二人のポイントの合算した値にはなっても、ポイントを共有するわけではないので、勝敗はあくまで個人でつくようだ。
「それじゃあおれの番っすね……」
竜二が回すと恋愛ポイントが『50点』加算され、合計で『170点』になった。優花は現在『150』点なので、竜二にポイントを逆転されてしまったことになる。
「……じゃあ俺だな」
段々痛みが強くなりだした喉を竜二からもらったのど飴とスポーツドリンクで癒してから、優花がルーレットを回すと結果は……カップル成立マスだった。
「真央と翡翠がカップル成立したし、残ってるのは、竜二と六道生徒会長だけってことか?」
「いえいえ、違いますよ灰島先輩!」
優花が疑問を口にすると、楓がばっと立ち上がった。
「このゲーム一人の女子が二人の男子とカップルになっても大丈夫なんです! だから、灰島先輩の相手の男子も三人のままですよ!」
ゲームとは言え、同じ男子同士でカップルになりたくはないので、優花にとって当たりなのは『10』のカップル不成立だけ。
「……よし、回すぞ」
いざ優花がルーレットを回すと、一瞬胸の奥が温かくなった気がした。肝心のルーレットの結果は……。
「あっ、おれとっすね兄貴!」
「竜二か……」
竜二とカップルになってしまった。
ポイント的には『320点』となり、真央に僅差で負けている状態。
「……ゆうかさん? 浮気は許しませんわよ?」
「いや凛香さん、これゲーム何で……それにゲーム的には二股も許されてるみたいですし……」
じとっとした目で見てくる凛香に慌てて言い訳をすると、何故か少し離れた位置にいるめいまで半目になっていた。『そういうことではないんですよ……』と目で言っている気がするが……まあ気のせいだろう。
「では、自分の番だな」
優花の次は深雪の番。女子枠の真央と優花がカップル成立してしまい、楓は脱落したので、もしも深雪がカップル成立マスに止まってしまえば、真央と優花のどちらかが二股することになる。
「……む、自分もカップル成立マスか」
深雪も見事カップル成立マスに止まり、困ったような顔で眼鏡を直していた。
「六道先輩もカップル成立マスですか! もちろん狙いは真央先輩ですよね!」
ここぞとばかりに楓が深雪に問い掛けると、深雪は咳払いをした。
「……こほん。まあゲームの勝敗を考えれば、現在一位の八雲とのカップル成立を狙うべきではあるだろうな」
照れているのか深雪の顔が若干赤くなったのがわかった。
……この反応は、やっぱり六道生徒会長も真央を意識している感じか。
真央の攻略は順調と言えるだろう。
白桜の出現について言えば、良いことなのだが、優花が白桜に願いを叶えてもらえなかった場合は凛香のバッドエンドに近づいているとも言える状況なので、喜ぶべきかどうか非常に悩ましいところだ。
結局深雪がルーレットを回すと出た結果、カップルが成立した相手は……真央だった。
これで恋愛ポイント的には真央と深雪が『380点』で一位になったわけだが、問題はそこじゃなかった。
「俺様の女に手を出すとは……」
「……あくまでゲームだ。気にしすぎるな」
翡翠と深雪がばちばちと火花を散らしながら睨みあい、真央が困ったように笑っていた。
「ああ……またしても真央さんが不埒な男の毒牙に……」
「さすがは真央先輩ですね!」
くらりとしておでこに手を当てる凛香に、ここぞとばかりに真央を褒める楓。
「またポイントが離れちゃいましたね兄貴」
「……りゅうは……真面目すぎるよ」
あくまでゲームの勝敗しか気にしていないらしい竜二に淀がため息をついていた。
なかなか混沌とした状況になってきたが、ゲームはまだ続く。
「俺様の番だな! 『デートでお金を使った、カップルの場合恋愛ポイントプラス20点、所持金マイナス1000円』……」
「……見事に手持ちが無くなったな」
きらりと眼鏡を輝かせる深雪に翡翠がひくひくと頬をひきつらせた。
「……ま、まあ? 次に金のマスに止まれば」
そう言いかけた翡翠だったが、すぐに口を閉じることになった。
高校生マップは、カップルが成立している場合そのほとんどが恋愛ポイントマスになり、お金は消費される一方になるようで、所持金増加マスは数える程しかなかった。
「恋愛ポイントの増加も所持金の条件が付いてるのがあるっすからね、奥真先輩はもうだめっすね」
竜二の冷静な分析に翡翠ががっくりと肩を落とした。
真央、竜二はそれぞれ恋愛ポイントをわずかに上昇させ、優花の番。
「ええと……『彼氏(彼女)のおごりで映画と食事、恋愛ポイントプラス30点、パートナーの所持金マイナス1500円』か」
「地味にマイナス分がでかくてきついっすね……」
所持金のマイナス分を払う竜二の横で優花は、竜二のおごりでデートに行ったところを想像してしまい、頭が痛くなった。
続く深雪の番はあまりない所持金増加マス。
「この先所持金減らすマスばっかりっすから、生徒会長は今割と有利っすよね」
「……そのようだな」
ちらりと翡翠を見た深雪に翡翠がいつもの爽やかスマイル……ではなく、頬がひきつった笑みらしき何かを向けた。
「金で真央を釣るとはやり方が汚いぜ会長?」
「人聞きの悪い言い方は止せ奥真、お前が所持金がないのがいけないのだ」
険悪な感じで再び視線をぶつけ合う二人に、優花はこの先の展開を予想してため息をつきたくなった。
その後のゲームの展開は、所持金の無い翡翠は恋愛ポイントを獲得できず、ただただ駒を進めていくだけ、真央は順調に恋愛ポイントと所持金を伸ばし、深雪はひたすら数少ない所持金増加マスだけを踏み抜いていった。
優花と竜二はと言うと……。
「悪い竜二……まただ」
「……ま、またっすか」
竜二は真央同様、恋愛ポイントや所持金増加マスに止まるのだが、優花の方が竜二の所持金を減らす代わりに恋愛ポイントを大幅増加させるマスにばかり止まっていた。
……なんか金ばっかりかかる女みたいで嫌だなあ。
まあおかげで今の順位は真央が一位で、優花が僅差で二位。竜二が三位、あとは恋愛ポイントの増減の無い深雪、翡翠の順になっている。
恋愛ポイントマスで、所持金の条件が満たせていない場合は、マイナスになるマスが多く翡翠の恋愛ポイントは再びゼロに近くなっていて悲惨な状況だった。
優花がどんどん竜二の金を使うせいで、竜二は竜二で既に所持金が尽きかけていて、竜二も翡翠と同じ末路を辿りそうな感じであくまで現状は真央と優花の一対一の勝負になりつつあった。
「そろそろ高校マップも終わるけど……」
高校生マップも残りあと少し、ここまでで大体四十分くらいゲームをしているので、優花としてはそろそろやめたいところだが、まだマップはあるらしい。
「高校マップが終わったら、大学生マップでゴールですね」
楓が次のマップを広げる。マップを見るにまだニ十分以上はやることになりそうだった。
「恋愛が主題のゲームだから大学生くらいまでなのかな?」
「そうなんですかね? まあ今時大学卒業しても恋愛はすると楓は思いますけどねえ」
真央の素朴な疑問に楓がさあと肩を竦めていた。
この中で大学を卒業していそうなめいに優花が視線を向けると、めいはにっこりと綺麗に笑っていたが、何故かその笑顔が怖かった。
『私が恋愛をしてきたように思えますか?』
『……すいません』




