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乙女ゲー異世界転生者(♂)は悪役令嬢を救いたい  作者: 雪ノ


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乙女ゲー異世界転生者(♂)は悪役令嬢を救いたい   その三十三

「ゆうかさん? な、なんですの? その大きなぬいぐるみは!」

「うわあ! お兄ちゃん何それ!」


 待ち合わせ場所に少し早く着いた優花が一人で待っていると、まずは凛香と花恋がやってきた。


「いや、くじをやってみたら当たってさ……ははは」


 巨大なディスミー君人形を手に入れるためにした苦労を思い出しながら遠い目をしてそう言うと、花恋が優花の持つぬいぐるみを見ながら感心していた。


「へー! そんなのあったんだ! このわたしでも見つけられないものを見つけるなんて……やるねお兄ちゃん!」

「ま、まあな」

「ディスミー君ですわね……」


 じーっと物欲しそうな目で見てくる凛香には……気が付かないふりをする。


「それより花恋達もなんか重そうな物もってるけど……」

「これ? 中身全部お土産だよ! 友達に配るんだ! 凛香お姉ちゃんが買った物も入ってるから結構重いよ」


 笑いながら花恋がパンパンに膨らんだバッグをぐっと持ちあげた。

 

「重そうだし俺が持つよ」

「うん! ありがと!」

「ええ、お願いできますか?」


 見るからに重そうなバッグを持つ花恋と凛香から、ひょいと荷物を取ると確かにかなり重かった。


 背中に巨大なディスミー君ぬいぐるみを背負い、両手にはパンパンのバッグを持つ優花を見て、最後に来た真央達が目を丸めていた。


「兄貴……完全に荷物持ちにされてますね……」


 なんだか誤解されているが、都合が良いところもあるので、そのままにしておくことにした。


「そんなことより、そろそろパレードなんだろ? 場所取りとかはしなくても良いのか?」


 自称ディスミーパーク上級者の花恋にそう言うと、花恋はえへんと胸を張った。


「この花恋軍曹に任せなさい! さあ! 皆の者続けー!」

「お、おー」


 皆の者って……。


 なんだか軍曹というものを勘違いしてそうな花恋の後に続き、着いた先はあまり人がいない少し高台になったディスミーパーク中央から外れた隅の方だった。


「え? こんなところで見るのか? 遠くてよく見えないんじゃないのか?」

「まあまあ、見ればわかるよ」


 見ればわかるってどういうことだ?

 花恋にも何か考えがあるらしいので、そのまま素直にその場で待っていると、パレードが始まった。


 薄闇の中を、飾りつけを施されライトアップされた車、正確にはフロート車がゆっくりと園内を巡っていく。フロート車は機関車や、宇宙船、トロッコ等今日乗ったアトラクションを象った形のものが多かった。


 夜でライトアップされているおかげでうす暗い中に浮かび上がるような感じになっていて、遠くからでも良く見える。


「わあ……」


 初めてパレードを目にしたのか、凛香が子供のような素直な感嘆の声をもらしていた。ちらりと盗み見た凛香の瞳がきらきらと輝いて見えるのは、きっとライトアップのおかげだけではないだろう。


 静かにパレードに魅入っている凛香の隣には真央。今だけは、二人は一緒にパレードを見る普通の友達に見えた。

 その光景に優花が確かに前に進んだという手応えを感じていると、花恋が優花の横に並んだ。


「にははっ! ほらね! ここは夜のパレードだと意外と穴場なんだよ!」

「そっか、ありがとな」


 パレードの綺麗な光景が見られたことよりも、この光景を凛香が見られたことの方が嬉しかったのだが、そんなことは口に出せるはずもなく、花恋の頭に優しく手を乗せた。


 パレードも終わってしまい後は晩御飯でも食べて帰るだけなのだが……。


「え、お兄ちゃんお金全部使っちゃったの!」

「ばっ、ばか! 大声出すなって!」


 みんなから離れこっそり花恋にお金がないことを言うと、ひどく驚いていた。


「ええと、くじをやったんだっけ? 何回やったの?」

「……二十回くらい」

「一回いくらだったの?」

「……七百円です」


 素直に白状すると花恋は呆れたような目になっていた。


「お兄ちゃん……お金は計画的に使わないとだめだよ?」

「はい、反省します……」

「それじゃあ今だけは花恋がおごってあげるから、後でちゃんと返してね」

「はい、すみません……」


 妹に怒られるのって……精神的にきついな……。


 ディスミーパークを出て、少し歩いたとこにあったファミレスでみんなで晩御飯を取った後、電車に乗って帰る。


 ファミレスも始めてだったらしい凛香が、ドリンクバーに感心して、自宅に導入しようか真剣に考えていたのが面白かった。



「今日は……ありがとう……ございました……せんぱい」

「いや、俺こそ楽しかったよ。来てくれてありがとう」


 本日の最初の目的である淀の気分転換には成功したらしく、淀の口元がにっこりと笑っていた。

 竜二と真央、楓も帰ってしまい、残るは優花と花恋と凛香。


「今迎えを呼んでいますから、少し待っていてくださる?」

「はーい!」


 優花が持っている凛香達が買ったお土産の分別を外でやるのが面倒だという理由で、優花と花恋はまた凛香の家に泊まることになった。


「お待たせいたしました、お嬢様。ゆうか様、花恋様」


 迎えに来てくれたのはめいだった。

 めいが車から出ると、いつもより少し丈が短く広がったスカートをしたメイド服を着ているのがわかる。

 運転用のメイド服なのかもしれない。


「めいさん、すいません車で迎えに来てもらって……」

「いえ、今日はお嬢様を遊びに誘っていただきありがとうございました。お嬢様は今日を大変楽しみにしておりまして、昨日も……」

「めい! 話は良いから帰りますよ! ほら、あなた達も早く乗りなさい!」


 めいの言葉を凛香が慌てて遮る姿に、凛香以外の全員が笑った。


「何を笑っているんですの!」

「あはは、すいません凛香さん」


 凛香が本気で機嫌を損ねる前に謝り、車で凛香の家へ。


 後部座席に座った凛香と花恋は安心したのか、目を閉じて眠ってしまったみたいだった。助手席に座っている優花はちょうど良いので隣の運転席にいるめいにディスミー君のぬいぐるみのことで相談をすることにした。


 七百円のくじを二十回もやって得た戦利品は、もちろん優花が自分のために欲しかったわけではない。ディスミー君を気に入った凛香のために欲しかったのだ。


 もしもあの場で渡したらまた真央の主人公補正によって、世界からの謎の力を受けて真央に渡してしまう可能性があったので、みんなと別れるまでは凛香へのプレゼントだとは伏せたままにしていた。


「あの、めいさん」

「なんですか? ゆうか君」


 めいさんは、優花のことを「ゆうか様」と「ゆうか君」という二つの呼び方で呼ぶ。優花がお客様として来ている時は基本的に「ゆうか様」で、優花が執事をしている時や二人しかいない時は「ゆうか君」と呼んでくる。

 なんだか年上のめいにゆうか君と呼ばれると背中がこそばゆくなるが……まあ今はどうでも良い。


「あの大きいぬいぐるみのことですけど……」

「あの黒い猫のですか?」


 やっぱりめいもディスミー君を知らなかったらしい。まあ凛香が知らないんだからそうなんじゃないかと薄々思ってはいた。


「あれ凛香さんへのプレゼントなんですけど……」


 そう言った瞬間、後ろでがたっと音が聞こえた。

 思わず振り向くと、凛香が寝返りを打ったらしく、目を閉じて眠ったままの横顔が見えた。

 聞かれてなくて良かったとほっとして話を続ける。


「あれ一応凛香さんが好きなキャラクターのぬいぐるみなんですけど、凛香さんって普通に渡しても受け取りそうにないじゃないですか?」


 凛香がいつもの感じで「庶民からの施しは受けませんわ!」なんて言うのが目に浮かぶ。


「ええ、そうかもしれませんね」

「何か渡す方法ないですかね?」


 物が物だけに、どうやったら凛香に受け取ってもらえるのか、めいに相談すると、めいはくすっと笑ってすぐに答えてくれた。


「そうですね、ゆうか君が執事服を着て渡せば良いんじゃないですか?」

「執事服を着て……ですか?」


 なんでそれで凛香が素直に受け取るのかわからないが、めいがそう言うならそうなのかと思うことにした。

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