第十話
木の枝にかけておいたシャツは、もうすっかり乾いていた。
干している間、ずっとウェラが熱い視線を注いでいたので、より早く乾いたのかもしれない。シャツが風にあおられる度に、ウェラの頭もほわほわと揺れるのだった。
ケイがシャツを着ようとしている間も、ずっとまじまじと見ていた。
「それって、どこでみつけたの?」
「みつける、ってものではないんだけど……」
ウェラに訊ねられて、ケイはようやく気が付いた。おそらくウェラはシャツが、もとい、服が着てみたいのではないだろうか。
「これがほしいの?」
と、シャツの裾を引っ張ってみせると、ウェラはこくこくと頷いた。期待に満ちてウェラの眼に光があふれだすと、ケイは何だか申し訳なくなってきた。
一度、自分のシャツを着てみれば、それで満足するだろうか?とも考えたが、ケイよりもウェラの方が身体が一回り大きいし、何よりもあの鼻が引っ掛かってきっと、頭が通らない。無理矢理着ようとして破れたりしようものなら大変だ。自分の着るものが無くなってしまう。
「自然にできるようなものじゃなくて、誰かが作るものだから……人がいる所、いた所になら、あるかもしれないけれど……」
「じゃぁ、なおのことがんばって探さなきゃだね!」
ウェラがふんすと鼻を鳴らす。その単純明快な思考の前に、ケイも自然と顔がほころんだ。
「うん、そうだね」
動き始める理由なんて、きっと何だっていいし、なんなら後付けだってかまわない。
そんなことに気が付いた、ただそれだけのことで、ケイの心と体は随分と軽くなっていた。それこそ今までは、人がみつかるなんて到底思えなかったのに、今ならきっとみつかりそうな気さえする。
三歩先でウェラが、明後日の方向を指差して笑っている。
「ほら、行こう?」
「うん!」
大きく頷いて、ケイもそちらへと歩き出す。
こころなし、大きめな第一歩だった。
冬コミC97で頒布したのはここまで。
なんか「僕たちの冒険はこれからだ!」的な終わり方してますが。
肝心な大きな栗も温泉回もやってないので。
まだまだこれからだ!!




