133 領主編27 復興
SIDE:ダロン4 晶羅 (一人称)
「よくもまあここまで徹底的に破壊工作を行ったものだね」
決闘の結果、第8皇子領と、共犯の第9皇子領が僕の支配星系となった。
だが、目の前のダロン4の惨状は目を覆いたくなるものだった。
政府機能の完全破壊。工業惑星としての生産力の徹底破壊。住民に対するライフラインの破壊。
穀倉地帯の焼滅による食料不足。
「何が『星系は君のものだ』だよ!
完全なお荷物。所謂ヘイト戦略としての焦土作戦じゃないか!」
証拠隠滅の口封じで第8皇子を殺害、僕達が利用できないように工業生産力を潰し、食料もなく生活が困窮している全く生産に寄与しない難民を押し付ける。
そんな難民を僕が見捨てたら、帝国中から批難されるという搦め手付きというのが質が悪い。
それが第9皇子の主星系でも行われているのだ。
星系視察にやって来た僕と神澤社長は、この後に待ち受ける膨大な仕事に頭を抱えるのだった。
「第4皇子ルーカス、どこまで性格が悪いんだ!」
お前が主犯だろと指摘したいところだけど、第4皇子側の調査力が僕達より上で第9皇子を炙りだせたと説明されたら秘密の暴露でもなんでもなくなってしまう。
だがこのように徹底的な証拠隠滅や嫌がらせ的な破壊を見せられると、奴が主犯なのは誰もが疑いようがないと思うだろう。
幸いなのは、僕がハブ次元跳躍門を押さえて星系の出入りをロックしていたため、第10皇子が生き残っていることだ。
この粛清を見たら第10皇子も次は自分がターゲットだってことぐらい理解出来るだろう。
第4皇子の専用艦は次元跳躍機関搭載だが、僕のような次元格納庫は持っていないはずだ。
単艦攻撃力は不明だが、戦力的に彼は第10皇子には手が出せないはず。
僕の保護と引き換えに第10皇子に第4皇子の関与を証言させるのも有りだな。
まずは新たな支配星系の安定を図る。
ダロン4と第9皇子の主星だったグレイド3は住人をエリュシオン星系に送って自分達で食料を確保させよう。
こっちで収穫して輸送する余裕も人手もない。ならば自分達でやってもらおう。
思想チェックは念入りに。テロリストや第4皇子の工作員が紛れ込んでいたら最悪だ。
第8皇子、第9皇子の支配星系は反乱対策もしないとならないか。
ここは住民のヘイトを第4皇子に集めるように情報を流しておこう。
「社長、いや准男爵、いや陞爵させて男爵! 今回の第8皇子、第9皇子粛清は第4皇子の仕業だってPV作ってくれない?
こちらは感謝の意を示すものの、やりすぎだという遺憾の意を強調するかたちで。
それを第8皇子、第9皇子の元支配星系全体に流すんだ。
第4皇子にダロン4とグレイド3の住民のヘイトを集めてよ」
神澤社長は自社アイドルのPVやDVDなんかを自ら撮影編集して商品化までやってしまうほどのスキルがある。
沙也加さんにも簡単な3Dアニメの制作能力があるという。
そのスキルを存分に発揮していただこう。(ニヤリ)
「お前、えげつないなw」
社長がゲンナリした顔をしてこっちを見るが、目は笑っている。
大ノリで仕事をしてくれるだろう。
「僕達には援助の用意があるけど、物資はエリュシオンにある。
その収穫輸送に人手が必要だ。
住民たちには、自ら家族を助けるんだって所を煽って労働力を供出させて。
あくまでも強制じゃなく自主的にやろうって気を起こさせてね」
「わかった。人手が増えればエリュシオンの経済も発展する。
希望者にはそのまま移住を認めてもいいよな?」
その手があったか!
さすが神澤社長だ。抜け目ないな。
「男爵にはエリュシオンの代官になってもらう。
権限は渡すから自由にやって。
くれぐれもスパイや破壊工作員の流入には気を付けてね」
「なら首都にブラッシュリップス専用劇場を建ててやるからな!」
「あはは。いいよ」
冗談は置いておいて、第4皇子ヘイト作戦と労働力供出作戦が発令された。
人心掌握に情報戦を仕掛けるなんて、どこの独裁者だよと思う僕だった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◆
SIDE:某所 第4皇子 (三人称)
「なんだ!? この映像は!」
第4皇子の目の前には、子供にも良くわかるように作られたプロパガンダ映像が流れていた。
これは第8皇子、第9皇子の領土から第6皇子の領土となった星系向けに繰り返し流されている。
ライフラインを破壊された住民たちだったが、腕輪システムでこのような映像が流され、視聴することが出来たのだ。
『みなさん、こんにちわ~。みなさんの星系に今何が起こっているのかを説明しま~す』
そこには美少女が5人映っており、第8皇子、第9皇子による地球人誘拐とクローン兵化という忌避行為、それを糾弾する第6皇子という状況が子供にも判るようにアニメ映像入りで説明されていた。
そのキャラの声を美少女5人が生アテレコしている。
そこに現れた第4皇子のキャラ。
『悪い奴を懲らしめてやる! 僕は正義の第4皇子だ!』
破壊される街、生産設備、焼ける穀倉地帯。
『第6皇子アキラよ、僕が悪を始末してやったぞ。1つ貸しにしておくよ』
得意になる第4皇子のキャラ。
『ありがとう第4皇子ルーカス。
でもこれじゃ住民が困っちゃうよ?』
第6皇子のキャラが、第4皇子に感謝しつつも困った顔をしている。
そして第6皇子のキャラが一所懸命自分の主星系から食料を運び、住民を助けようとする。
でも人手が足らなくて困っている。
『誰か収穫と輸送を助けてくれないかな?』
ついに値を上げてしまう第6皇子のキャラ。
『俺達家族のためだ俺が手伝おう!』
難民の中から屈強な男が立ち上がる。
その民族衣装からダロン4の住民だとわかる。
それに呼応する人々。グレイド3の住民も立ち上がる。
食料輸送は順調に運び、インフラも修復され元の生活が蘇っていくアニメが流れる。
【第6皇子アキラはみなさんにご協力をお願いしています】
『みなさんのご協力をお待ちしていま~す』
そしてスタッフ募集の告知と連絡集合場所――腕輪のシステムで最寄りの地が選ばれている――が案内される。
それを見ていた第4皇子は手にしていたグラスを床に叩きつけた。
グラスが割れる甲高い音が響き、グラスの破片と飲み物が飛び散る。
第4皇子はワナワナと身震いしている。
「これじゃ僕が悪者じゃないか!」
第4皇子が顔を真っ赤にして怒る。
「間違ってませんが……」
後ろに控えていた老執事がボソっと呟く。
「ぐぬぬ」
第4皇子は悔しくて地団駄を踏んだ。
「セバスチャン、僕の名前で援助物資を送れ。インフラ設備の修復にも協力しろ。
援助物資の箱や復興に使う重機には僕の名前を大きく書いて、僕の援助だってわかるようにしておけよ!」
こういった人気取りには抜け目のない第4皇子だった。
今回は証拠隠滅の焦りからしくじってしまっただけのようだ。
こうしてダロン4、グレイド3は復興していった。
「ありがとう第4皇子ルーカス(皮肉)」




