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古代魔術師の業務日誌  作者: 手白木燈真
第一章 騎士学校へ着任す
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再開と依頼

 ソディル王国王立騎士学校、先の大戦で多くの国から戦士たちを集め魔王討伐隊を編成した王国にある、由緒正しい騎士団の養成学校である。入学の条件はないものの、卒業には相当の努力が必要と言われている厳しい学校でもある。留年や退学者も少なくないことで有名だが、卒業後は王国が誇る七星騎士団へ入団することができる。そんな騎士学校の校門には、みすぼらしいローブを着た青年が立ち尽くしていた。




「なんで、俺がこんな目に合わなければならないんだよ……」




 事の発端は数日前にさかのぼる――――――






 青い空、輝く太陽、吹き抜ける風――――――


 いつもと変わらぬ朝を迎えた、青年ことゼクス・クレスティアはいつも通りに起床し、身支度を整え、冒険者ギルドへ向かっていた。




「あ、ゼクス君おはよう。」




 声をかけてきたのはこの街の冒険者ギルドの受付窓口担当の女性だ。




「おはよう。今日はどんな依頼がおすすめ?」


「あなた用に依頼はとってあるわよ。でもその前に、あなたに会いたいって人がいて、今、応接室にいるの。丁度来てくれてよかったわ」


「俺に会いたい!?俺、言っちゃなんだけど、そんなに友達いないよ!?どんな奴?」


「なんか、鎧着ている男の人らしいけど……私が直接対応したわけじゃないから詳しいことは分からないわ」


「そっか。ありがとう。じゃあ、さっさと会ってくるかな」




 面倒事にならなければいい、そう心の中で不満を吐き出して、ギルドの応接室へと向かうとそこには、見覚えのある男が立っていた。




「こんなところに暮らしていたんだな」


「お前っ!」


「まあ、そんな邪険にするなって」


「そうさせているのはお前だろうが!」


「このままでは、本題にも入れないじゃないか」




 やれやれと首を振っているこの男は、かつての盟友《聖騎士》アーサーであった。アーサーという男は、金髪碧眼、同性もあこがれるほど見目麗しい容姿である。恐らくお忍びできたのであろう、普段身に着けている強力な加護が付与された鎧ではなく、一介の兵士が身に纏うような安物の鎧を身に着けているが、愛剣はきちんと持ってきたようだ。確か現在は、王立七星騎士団の要職についていたはず。忙しい身である彼がなぜここに?




「あ、疑ってるね?あの時のことは、すべてが終わってから国王様に教えてもらったんだよ」


「分かっているさ。俺もあえて話していなかったからな」


「そうか。でも君ならば、他の手段も考えられたのではないかと思ったりもしたんだけどね?」


「それはないな。あったとしても、あれ以上悲惨な思いをしなければならないに決まっている。」


「そうか……それで、体の方は?」


「大したことないさ。それよりも、こんなこと話しに来たわけじゃないだろ?」


「そうだね、じゃあ、本題に入ろうか」




 今までの優男の雰囲気はどこへ行ったのやら、真剣なまなざしになり、声のトーンも落として話しかけてきた。




「君に一つ指名依頼を受けてもらいたい」




 指名依頼、それは、冒険者ギルドに所属する冒険者個人、もしくはパーティを依頼人が指定する依頼形式である。基本的にはCやBランク以上の高ランク冒険者が指名されることが殆どである。まれにランクの低い冒険者でも指名されることがあるが、そういう場合は特殊なスキルや知識を持ち合わせている者のため、一般的な冒険者が指名されることはないと言っていい。

では肝心のゼクスはというと、Fランクで下から二番目のランクだ。二十そこそこの男性冒険者にしては低い方だが、本人の才能や冒険者としてのスタンスによっても違うため一概には言えない。そしてゼクスの場合は、低ランクでも良いと思っているため、あえて現状維持しているのだ。




「これは僕、というよりは国からの依頼、と思ってくれた方がいいと思う。報酬は色々あるけれど、ある程度君の希望に沿うことができると思うよ。」


「ちょっと待て、なんで低ランクの俺に対して指名依頼が来るわけ?普通に考えてあり得ないだろ」


「王宮から僕宛にこの仕事の相談を受けたんだけど、生憎と騎士団の仕事が忙しくてね。上もそれをわかっているから、僕が推薦する人物に委任する形でも良いって言ってくれたんだ」


「そもそも依頼内容聞いてないし、俺受けるなんて一言も……」


「依頼内容は、王立騎士学校の臨時講師ね。多分、君しかできないと思うよ?」


「はぁ?俺が教師?無理だろ」


「出来るよ。だって、あの時もみんなのことをきちんと見ていたし、アドバイスも的確だっただろ?」


「俺が使っているのは、騎士団で通用するような正統派なものじゃないんだぞ?寧ろマイナーすぎる」


「でも君は強い。それに今は世界情勢が怪しい。戦争なんてすべきではないけれど、国民を守る義務がある。そのために軍を強化することは重要なことだろう?」




 これ以上反論しても意味がないと悟ったシリウスは、折れることとなった。




「はぁ……わかったよ。受ければいいんだろ?それで、期間は?」


「取りあえず一年の予定さ。その間の生活拠点はこちらで用意しておくよ。給料も出るように手配するよ。勿論、何かあれば僕の名前を使ってもらって構わないから」




 それじゃあ、と用件が済んだのか、アーサーはそのまま帰ってしまった。それから数日後、ギルドを介して俺宛に正式に依頼状が届けられたのであった。






――――――ゼクス・クレスティアを王立騎士学校臨時講師として任命す――――――



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