67.ロイの威圧
政務棟の会議室で、キダンは驚いていた。
つい先程、カーサとソマイの尾行から戻ったばかりで、一番、この場のこの状況に困惑していた。
「キダンさん、カーサとソマイはどうでした?」
ロイに聞かれ、キダンは慌てて報告する。
「カ、カーサとソマイは、結局、国立宿泊所には行かず、観光もせず、第1エラルダの首都を出たよ。隣町に続く街道に入ったところで、尾行を部下たちと交代した」
「承知しました。次はリント、お見舞いの全容を報告して」
ロイに指名され、リントは、ロイに話した内容と同じ事を報告する。
会議室にいる、アレンとカイルとゼノマは、かなり関心を持って聞いている。
キダンはお見舞いという名の、奇妙なお茶会を2階から見ていたので、リントの話はそこそこに、ロイをじっと観察する。
「それで、俺から見解があるんだけど、話してもいいかな」
アレン、カイル、ゼノマ、キダン、リントは異論なく頷く。
というか、異論出来るような感じではない。
ロイから威圧感のようなものが出ている。
ロイは、リントと話した、ミコト誘惑説を話す。
「俺はこう見ているんだけど、他の見解や、意見のある人は教えて下さい」
キダンは、勇気? を出してスッと手を上げる。
「キダンさん、お願いします」
「えーと、ロイ君? だよね? これ、どういう事なの? みんなは、何か知ってるの?」
「キダンさん、関係ない話は会議後に…」
ロイの言葉に、キダンは首を横に振った。
「無理無理無理! ロイ君がいつもと違いすぎて、何にも頭に入ってこないよ!」
気持ちは分かる、と全員頷く。
「あの、ロイさんは今日、調子が良いそうですよ」
キダンの隣の席だったので、リントは仕方なく、キダンに教える。
「いやいやいや! 説明になってないよ! 調子がいいと、人格変わるの?」
ロイはキダンを睨む。
「わ、分かったよ。えーと、ミコトちゃんを誘惑しようとしたか、でしょ? カーサは間違いなく、けしかけてたね。ミコトちゃんもかなり困惑していた。ソマイは平静を装っていたけど、あまり乗り気には見えない仕草もあったよ。でも結局は、カーサの言いなりに動いていた。だから、ロイ君の見解に異論はないよ。ただ…」
キダンはロイをチラッと見る。
ロイは頷く。
「逆に、ミコトちゃんが、ソマイの気を引いたんじゃないかなーと、思うんだけど…」
リントはサッと手を上げる。
ロイはリントに、どうぞ、という仕草をする。
「俺にはそんな風には見えませんでした。ミコトの睨みも、怒りを伝えただけだと…。確かに、ソマイは謝ってはいましたが、それは普通でしょう?」
「リント君さ、ソマイが話したのは、その一言だけなんだよ?」
リントはキダンとロイを交互に見た。
ロイはキダンを見て、「キダンさん、続けて下さい」と言う。
「僕は第2でずっと諜報活動をしていたから、ソマイをよく知っている。騎士団内では普通に話すけど、女性とは一切話さない。同性愛者説さえ出ているくらいにね。何故そこまで女性と話さないかというと、ソマイは女性と話すと、その女性に惚れられてしまうからなんだよ」
アレンとカイルは顔を見合わせて、何とも羨ましいと言っている。
「まあ、イケメンってのもあるけど、一種の特異体質だよね。唯一、イトコのカーサのみ、話せるんだ。そんな悩める青年が、自分に一切なびかない女性に出会ってしまったんだよ? 恋情とは言わないけど、気にはなるでしょう?」
リントはロイをチラッと見る。
ロイはこの事を知っていたのだろうか。
ロイは、「そう仮定すると」と話し始めた。
「ソマイは、何かミコトに仕掛けてきますか? それとも、リオにその気持ちを利用される方ですか?」
キダンは、ロイから、目を逸らす。
「ソマイの性格からすると、自分からはないと思う。リオの性格からすると、必ず、利用する、と言える……、あの、ロイ君、威圧やめてぇ…」
キダンはパッタリと机に突っ伏した。
「ロ、ロイ!」
カイルはガタンと席を立つ。
「意見ですか?」
ロイはカイルを見る。
「え! あ、ああ。その、ミコトを誘惑するつもりだったなら、最初から、ソマイが話しかければ良かったんじゃないか、と、思うんだが…」
カイルとロイはキダンを見たが、キダンは話せそうにもない。
「おそらくですけど、ソマイは話さないことを条件に、仕方なく、カーサに協力していたのではないかと思います。つまり、ソマイはこんな事したくはなかった、ということですよね?」
ロイの言葉に、キダンは机に突っ伏しながら、頷いている。
リントは会議の面々を見渡した。
キダンはダウン、アレンとゼノマは、かなり前から口を開けない。
カイルは話せるが、ロイに押されている。
リント自身も、少し鼓動が早くなっている。
このままでは、まずい。
リントは手をあげた。
ロイは頷く。
「伝え忘れてたんですが、ミコトが、今夜、聖女棟に来てって、言ってました」
本当は、緊急がなければ、なので、絶対ではないが、あえてそこは言わないでおく。
ロイ以外の全員が、その発言大丈夫なのか!? という目で見てくる。
現在の時間は午後8時だ。
ミコトは就寝が早いので、行くなら、ギリギリの時間のはずだ。
「え、そうなんだ。じゃあ、意見がないなら、ここまでにしようか」
全員、ホッとしたように異論なしと頷く。
ロイはさっさと会議室を出て行こうとする。
「ロイさん! 俺も行きますので!」
リントも後を追おうと会議室を出る。
アレンは小声で、助かった、と言った。




