表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界恋護奇譚 〜聖女のオマケでバグ転移した私、15歳で天然最強騎士団長と偽装結婚しました〜  作者: 三多来定


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

20/242

20.国家特別人物懇親会②

 第2エラルダの国立宿泊所のホールで、懇親会が始まった。


 第2の代表のリオが、始まりの挨拶をした。

 

 リオは40歳前後で、身長170センチ程の濃い茶髪の男だ。

 第2エラルダの国家特別人物でもある。


 そのため、第2エラルダの出席者は、リオと金髪美女の1番目の奥様だけである。


 リオは政治にとても優れた人、らしい。


「懇親会って、立食パーティーなんですね」


 ミコトがアレンに言うと、アレンは苦笑した。


「俺のようなおじいさんには、立食なんて苦痛だよ。食事はやはり座って食べたいし、持ってきて欲しいよ」


 きっと、交流しやすいように立食なのだろうが、アレンの言う事はもっともである。


「アレンさん、壁際に椅子があるから、座っていて下さい! 私、お料理はこびますよ」


 すっかり孫気分のミコトが張り切ると、アレンは首を横に振った。


「そうもいかないんだよ」


「お久しぶりですね、アレンさん、ロイさん。そちらが婚約者の方ですか?」


 目の前に先程挨拶をしたリオとその1番目の奥様が立っている。


「お久しぶりです、リオさん。はい。ロイの婚約者のミコトです」


 ロイとミコトは会釈をする。

 

 アレンには、極力喋るなと言われている。


 そうだった。

 この懇親会はアレン頼みなのだ。


「とても可愛らしい方ですね。随分お若いようですがおいくつですか?」

「15歳になったばかりです。いや、ミコトが15歳になるまで待ちましてなぁ」


 アレンの嘘がすごい。


「そうなんですね。ミコトさんを待つほどミコトさんは優れている、ということでしょうか?」


 リオは完全にミコトを疑っているのだろう。

 質問もミコトを見る目も疑いの色を隠していない。


「ミコトは第1エラルダ国の唯一の女性騎士団員なんですよ。実力は保証します」


 アレンも負けていない。

 真実を交えると、婚約者役も真実味が出る。


「ああ、やはり、聖女様の護衛をしている方ですね。女性の護衛とは珍しいと思っていたのですよ。でも、女性の方が良いかもしれませんね。聖女様はとてもお綺麗ですので……」


 含みのある言い方をしてくる。


 ミコトが身構えると、突然、女性の大きな声がホールに響いた。


「でも、ロイさんのお相手が脳筋女なんて、いけないと思いますわ!」


 ホールにいたほぼ全員が、声の主を見る。


 真紅の髪をアップにした、赤いドレスの女性がこちらに向かって歩いて来た。

 ロイと同じくらいの年齢だろうか。

 キツイ目つきをしているが、なかなかの美人である。


「第3の国家特別人物の奥様だ」

 アレンはロイとミコトに小声で伝える。


 第3エラルダの国家特別人物は、古代魔法研究者だ。

 その人の1番目の奥様が、ロイに色目たっぷりで近づいてくる。


「ロイさん、お久しぶりです。婚約者をお連れするときいておりましたので、私とても悲しかったんですよ?」

「はあ……」

 ロイは気のない返事をする。


 ロイのことだから、この人のことを覚えていないのだろう。


「でも、まだご結婚はされていませんよね? ロイさんには、こんな冴えない女なんて似合いませんわ。私とぜひ一緒になりませんか?」


 この人、何を言っているのだろう。

 第3エラルダの国家特別人物の奥様なのに、正気だろうか。


「ご冗談を、ライラさん。サンドさんが悲しまれますよ」


 アレンは2人の間に入る。

 ライラは、わざとらしくハァーと溜息をついて、ホールの隅にいる男を指差した。


「ご存知の通り、旦那様は古代魔法以外興味ありませんの。私のことも、自由に行動して良いって言われていますわ」


 確かに、男は本に目を落としたまま、こちらを一度も見ない。


 それでも、自由といっても限度がある。

 これでは不倫だ。


「そもそもあなたね、その程度の容姿でロイさんに釣り合うとでも思っているの?」


 ライラはミコトを指差した。


 ああ、この感じ、久しぶりだ。


 異世界に転移してから、周りにいた人たちがいい人ばかりだったから、忘れていた。

 この世界にも、自分勝手で理不尽な人がいるのだ。


 ミコトがライラを睨むと、突然、隣にいたロイがミコトをギュッと抱きしめた。


「俺はミコトが一番可愛いので、あなたには興味ありません」

「なっ!?」


 ライラは顔を真っ赤にして、ミコトを睨んだが、ミコトはそれどころではなかった。


 ロイの胸板の厚さとか、腕の筋肉とか、ロイの匂いとか、一番可愛いと言われたこととか、全てに、思考停止状態だった。


「ありえませんわね!」

 

 ライラは、踵を返して去っていく。


 アレンは胸を撫で下ろして、ロイを見た。


 ロイの事は幼少期からよく知っている。

 嘘やお世辞を言ったり、ましてや演技が出来る男ではない。


「ロイ、お前……」

「え?」

「あ、いや、ほら、ミコトが苦しそうだ」


 ロイの腕の中のミコトがぐったりしている。


「ミコトごめん! 大丈夫?」

「う、うん。何とか……?」


 自分の心臓のバクバクとした音がものすごいスピードで聞こえる。


「ライラさんにも、困ったものですね」

 リオは溜息混じりに言う。


「はは、6年前はセタを狙ってましたかな」

 アレンも苦笑する。


 どうやらライラは、かなりの問題奥様のようだ。


「あんた、初めての人だよね?」


 先程までホールの隅で本を読んでいた、第3エラルダの国家特別人物のサンドが、いつの間にか近くに来て、ミコトを指差している。


 身長はミコトと同じくらいで黒髪の30歳くらいの猫背の男だ。


 それにしても、何の挨拶もなしに、夫婦揃ってかなり失礼である。


「サンドさん、お久しぶりですね。はい。ロイの婚約者のミコト……」

「名前は興味ないからいい」


 サンドはアレンの挨拶と紹介を途中でぶった斬った。


 第3には、失礼な人しかいないようだ。


「一応初めての人には、検査してもらってるんだ。あんた、コレに触って」


 ミコトの前に水晶玉のような透明の球体を差し出して来る。


「それは、古代魔法の適性を図る道具ですね。サンドさん、研究の方はどうですか?」


 リオがサンドに話しかけたが、サンドは完全に無視してミコトにチッと舌打ちをした。


「早くしてくれない? 言葉わかんないの?」


 ミコトの中の何かが、プチッと切れた感覚がした。


 ミコトは水晶玉をそっと触りつつ、サンドを素早く軽く押した。


 他の人から見ると、ミコトは水晶玉を触っただけのように見えるはずだ。


 サンドはその場にドッと尻もちをついた。


「な、なんだ、お前っ?」


 誰から見ても、勝手に尻もちついただけだ。


 周りから、クスクスとした笑い声が聞こえる。

 と、同時に、水晶玉がパァッと光り輝いた。


「ま、まさか……?」


 サンドは尻もちをついたまま、水晶玉を凝視している。


「こ、古代魔法の適性が、ある!?」


 サンドの声に、ホールにいた全員がざわついた。


 ミコトは、古代魔法は神様が不要だと判断して消してしまったと思っている。

 もしかして、異世界人だから、何か反応が出てしまったのだろうか。


「おい! お前、今すぐ一緒に来い! すぐ第3に帰国するぞ!」

 

 サンドがミコトに怒鳴りつける。


 古代魔法なんて、冗談じゃない。

 この世界を変える事は禁止されているのだ。


 ミコトはロイにしがみついて首を横に振った。


「嫌です!」

「ミコトはロイの婚約者です! 連れて行くのは……」


 アレンはミコトの前に出る。


「どうせ、嘘なんだろう!?」

 サンドはアレンを見てニヤッと笑った。


「皆言ってるよ。第1は国家特別人物の結婚に反抗的だってね。その女も今回だけの婚約者役だろ?」

「ちが……」

「だったら、古代魔法の研究の方が重要なんだよ! 全エラルダの悲願なんだ、古代魔法の復活は!」


 古代魔法とはそこまでなのか。

 

 サンドはアレンをどかし、ミコトの腕を掴もうとしたので、ミコトは思いっきり振り払った。


 手を振り払われたサンドは、ワナワナと震えた。


「な、何なんだ! おい、そこの衛兵、この女を捕まえて連行しろ! 今すぐ第3に帰る。実験したい事が山ほどあるからな! 全く趣味じゃないが、便宜上、私と結婚もしてもらうからな!」


「結婚っ!?」


 こんな奴と結婚なんて、死んでもお断りだ。


 ホールにいた警備の騎士たちが困惑しながらも集まってきた。


 と、同時に、何か、重苦しい空気のような、そんな風が吹いたと思うと、周りにいた全員が、その場にドッと倒れた。


「えっ!?」


 サンドはすでに泡を吹いて失神している。


 他の人たちも苦しそうに、ホールの床に倒れ込んでいる。


「ロイ! やめろ! 死人が出る!」


 アレンはロイの腕を必死に引っ張る。


 これ、ロイの力なのだろうか。


 一瞬で、ホールにいた全員を倒してしまった。

 

 こんなの、もう魔法だ。


 アレンの言葉が届いたのか、倒れ込んでいた全員が、はぁはぁと息を吐いて起き上がり出した。


 ロイは静かに、しかし、怒りを露わにして、口を開く。


「俺はミコトと結婚する。ミコトに手出ししたら、許さない!」


 リオは息を整えながら、「わかりました」と言った。


「ですが、アレンさん、ロイさん。その結婚式には、ぜひ、出席させていただきたく、よろしいでしょうか?」


 リオはアレンとロイを順番に見た。

 まだ疑っているのだろう。


「もちろんです。元々1か月後に挙式予定でしたので」


 アレンはニッコリ笑って了承する。


「もういいですか? ミコトが疲れているようなので、休ませたいです」


 ロイは、ミコトをひょいと抱えると、ホールの出口に向かって歩き出した。


「ロイ、待て、あ、私も失礼しますね?」


 アレンも逃げるようにロイを追いかけてホールを出たのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ