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異世界恋護奇譚 〜聖女のオマケ転移、狙われ少女の自立と結婚〜  作者: 三多来定


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18/22

18.就任式

 ミコトがリントに、今日やる必要あった? という内容の残業をやらされた次の日は、ロイとリントの騎士団長・副騎士団長就任式が行われることになっていた。


 就任式と言っても、騎士団内で、しかも午前中はロイはオジサンたちと会議があるとかで、午後に30分程時間をとって行うだけの小さなものである。


 それでも、午前中にやれる仕事は終わらせておくに限る、とミコトは朝から騎士団内をパタパタと動き回っていた。


 今は、傷薬の納品の検品をやっている。


「はい。全てに25本入ってますね。20ケースあるので、確かに500本です。ありがとうございます」


 ミコトは受領書に受け取りのサインをして、納品業者の男性に渡した。


 冒険者の仕事で薬草を採取したが、ミコトの採取した100本の薬草もこの傷薬に使用されているかもしれない。


 そう思うと、仕事って繋がっているんだなぁと感慨深い。


「あの、ミコトさん」


 よく薬品類の納品で顔を合わす、20歳くらいの男性がミコトを呼び止めた。


「今度良かったら、一緒に出かけませんか?」


「え?」


「美味しいお店があるんです! ぜひミコトさんのお休みの日に、どうですか?」


 ミコトの顔が熱くなる。


 もしかしなくても、これって、誘われている?


 そうか! 15歳になったからか。


 15歳からこの国は婚活するんだった。


「あの、私、休みの日も、いろいろ忙しいので…」


 ミコトはしどろもどろに答える。


 初めてのことすぎて、断り方がわからない!


「少しの時間でいいんです。お願いします!」


「えと、その…」


 この人はミコトが異世界人だと知らない。


 異世界人が誰かとお付き合いするなんて、絶対ダメな事だ。

 それに、休みの日は冒険者しなくちゃいけないし、本当に忙しい。


「前から、すごくしっかりしていて可愛いなと思っていて…」


 男性はミコトの右手をギュッと両手で握ってくる。


「いっ…!?」


 手を握るのはアリなのっ?


 振り払ったら失礼?


「あのー、騎士団内でそういうの、やめていただきたいんですけど?」


 振り返ると、本気で迷惑そうな顔をしたリントが立っている。


「す、すみませんでしたっ」


 男性はミコトから手を離して、急いで出て行った。


 ミコトは、はぁーっと息を吐いた。


「あ、ありがとう、リント」


「ミコトってさ、断るの下手すぎるでしょ。あんなの、恋人か婚約者がいますって言えばいいんだよ」


「でも、いないし…」


 誰ですか? ときかれたら、答えられない。


 リントはイライラしたように「あのさぁ!」と言ってミコトに詰め寄った。


「そんな小さな嘘もつけないの? そんなだから、何にも隠せてないんだよ!」


「リ、リント?」


 リントはハッとした様な顔をして、ミコトから離れた。


「と、とにかく、恋人いるって言えば、大抵の男は諦めるから」


「じゃあ、誰? ってきかれたら、リントって言ってもいい?」


 リントは今までで1番と言ってもいいくらいの、嫌そうな顔をした。


「何で俺? あ、ロイさんでいいじゃん。短剣貰ってプロポーズされたんでしょ?」


「いや、あれ、プロポーズじゃないから! って、何で知ってるの?」


 マリーかロイが言ったのかな?


 あの短剣に深い意味がないので、逆に恥ずかしい。


「ロイさんは何も考えてないから、勝手に恋人って言っても大丈夫だよ、多分。俺、忙しいから、あ、就任式の準備、よろしくね」


 リントは面倒くさいと言わんばかりにさっさと出て行ってしまった。


「多分って…。勝手に恋人って言うのはダメでしょ。いや、そもそも、もう誘われないか」


 ミコトは20ケースの傷薬を荷運び用の車輪付きの荷台に載せて、とりあえず倉庫に行く事にした。


「リント、なんか怒ってたな…」




 午後からロイとリント、二人の就任式が行われた。


 出席者は、第1エラルダ国代表のアレン、前騎士団長のカイル、後は騎士団員たちだ。


 今日ばかりは、ロイも髪を散髪して整えて、無精髭も剃っている。


 ロイもリントも、式典用の騎士服を着ていて、なかなか様になっている。


 うん。かっこいいよね、ロイ。


 ミコトは、心の中で、自分の問いに自分で頷いた。


 何でロイはモテないのだろう。


 この顔、この世界ではイケメンではないのだろうか。


 ミコトの事を可愛いと言う人もいるから、この世界の美意識? は地球と違うのかもしれない。


 でも、セイラとマリーは間違いなく美人だよね。


 リントはロイよりは小柄だけど、茶髪で目も大きいし、もしかしたらカワイイ系イケメン?


 そういえば、女性に人気だったセタさんって、どんな顔だったんだろう?


 ミコトがくだらない事をアレコレ考えているうちに、就任式は終わっていた。


 殆ど聞いていなかったが、始業式とか終業式と同じで、なんとか式系は聞かなくても大丈夫だとミコトは自分自身に言い聞かせ納得した。


 たった30分の式に、準備と片付けが盛りだくさんである。


 団員たちとミコトが椅子や絨毯などを片付けていると、アレンとロイが言い合いながら、こちらに来た。


「だから、今から各部門に挨拶に行くから、脱いだらダメって言ってんだろ」


「挨拶なんて、いつもの騎士服でいいですよー。コレ堅苦しいからもう着替えたいです」


「え! ロイ、もう着替えちゃうの? せっかくかっこいいのにもったいない…」


 その場にいた、ほぼ全員がミコトを見る。


 本音が声に出てしまった!


「え、そう? ミコトがそう言うのなら、もうちょっと着てようかな…」


 ロイは照れくさそうにする。


 横でアレンが「でかした!」とミコトにサイン? を送る。


 別にアレンを助けた訳ではないが、ミコトは頷いてサインを返す。


「ミコトさぁ、嘘つけないくせに、ああいう事言えるんだね」


 2人が行ってしまった後、リントがいつの間にか隣にきて、ニヤニヤしている。


「え? 嘘じゃないから」


 リントは驚いた顔をする。


 なんで驚くの?

 やっぱり基準が違うのだろうか。


 マリーにきいてみようかな。




「ロイがイケメンかどうか? そうね、見た目はイケメンかもしれないわね」


 聖女の部屋で、マリーはミコトの質問に答えてくれた。


「あんなヤツ、イケメンじゃない!」


 セイラの、謎にロイにだけ厳しいジャッジが下る。


「そんなことで、悩んでるの?」


 マリーはミコトの買ってきたリンゴを切り分けてテーブルに置いた。


「悩んでるというか、ロイがあんまりモテないから、何でかなって」


 マリーも席に座り、3人でリンゴを食べ始める。


「ロイは幸せね。ミコトにこんなに心配してもらって」


「ミコちゃん、冷静になってよ。アイツ、ミコちゃんを投げたり、胸触ったりするんだよ? 行動がカッコ悪いんだよ」


 セイラはフォークでリンゴを突き刺す。


「セイラの言う事も一理あるわね」


 マリーまで、そんな事を言う。


 うーん、残念イケメンという感じなのかな。


「ミコトは明日からロイと一緒に仕事をするんでしょう? きっといろいろ見えてくるから、自分で判断するといいわ」


「うん、そうだよね。そうする」


 リンゴをかじりながら、なんでロイの事をこんなに考えているのだろうと、ミコトは思っていた。


「あのさ、リントは、イケメン?」

「普通」


 セイラはすかさず答える。


 マリーは少し考えて、

「イケメンではないかな?」

 と答える。


 なんか、リント、ゴメン! と心の中でミコトは謝る。


「リントも気になるの?」


「気になるというか、今日なんか、朝から怒っていて…。私何かしちゃったかも」


 マリーは優しく笑った。


「怒ってないと思うよ。きっとミコトを心配してくれたのね」


「心配?」


 マリーは頷くと、立ち上がった。


「セイラがいい香りの石鹸が欲しいって言ってたし、ちょっと買い物に行ってくるね」


「いい香りの石鹸?」

 ミコトは首を傾げる。


「ミコちゃん用だよ」

 セイラはリンゴを食べながら言う。


「ミコちゃんと寝る時に、アイツの匂いがしたら嫌だからね! ミコちゃんをしっかり洗うから!」


「ええっ!? そこまで!? 何でそんなに嫌いなの?」


 セイラは好き嫌いがハッキリしているけど、ここまで人を嫌うのは珍しい。


 セイラは少し黙った後、「嫌いなの」と小さく呟いた。




 リントが明日の朝食用のパンを買って自宅へと戻る道中に、マリーが立っていた。


「マリー? こんなところでどうしたの?」


 リントは顔を輝かせてマリーに駆け寄る。


「リントを待っていたの。謝ろうと思って」


 日は傾きかけて、辺りは薄暗い。


「謝る? でも、こんな時間に危ないよ。呼び出してくれればすぐ行くのに…」

「昨日はミコトのことで取り乱してごめんなさい」


 マリーは頭を下げる。


「マリー、俺は頼ってもらえてすごく嬉しかったんだ。だから謝らないで」


 リントはマリーを覗き込んだ。


「ありがとう」


 マリーはニッコリと微笑む。


「それにさ、もし、マリーの言った事が本当で、元の世界にミコトが帰れなくても、ミコトはロイさんと結婚すればいいんじゃない? ロイさんはミコトを可愛いって言っていたし、ミコトも、あれ絶対ロイさんの事好きでしょ?」


 マリーは考え込む仕草をした。


「ミコトの好きは、憧れが強いのよ。明日からミコトとロイは一緒に仕事するのでしょう? ロイの事を好きなままでいてくれるかしら」


 リントも考え込んだ。


「あ、無理かも」


「そうよね。無理よね」


 薄暗い街の中、2人は溜息をついた。

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