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透明な転生少女  作者: 森の手
第三章

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魔王ロアvsシュア

お待たせしました。待っておられるかたおりますでしょうか。ちょっと休んで、少しずつ書き進めておりました。不定期になりますがポツポツ連載再開します。よろしくお願いいたします。

 勝負開始まで目の前にいた少女が、始まった瞬間煙のように消えた。

 とっさに空に逃げることをロアの本能が選択する。

 だが彼はすんでのところで踏みとどまる。

 小娘とはいえ、直属騎士の顔を立て真剣勝負を挑む無謀な少女にやれやれと胸を貸した魔王が、始まった瞬間に空に逃げたとなれば誰も慰めてくれない。


「聞いてください」


 その囁きは右の耳元で聞こえた。

 とっさに薙ぎ払う。


「聞く気があるならもう一度右のこぶしでその辺薙ぎ払って」


 こいつ、この俺を操る気か。


「私の言うこと聞いてくれたら負けます」


 無言で空に逃げる。言うことを聞くより増しだ。部下の顔は見ないようにする。


「ああ、いいですね、ここならゆっくりお話できそう」


 少女の声はまた右耳から聞こえた。肩に乗ってる? だがそんな感じしないぞ。


「動かないでもらいたいんですけど。なんてお頼みすればいいのでしょう」


「わかったわかった。なんだ悪魔」


「いや悪魔って。もう少し高くお願いできますか」


 無言で高度を上げる。


「いいか?」


「私、もしかして振り落とされます?」


「お前が上げろって言ったんだろう」


 ただの小娘が実力で魔王を従わせたのだ。


「ロア様は、ネフェさんの恋人ですか?」


 女王はどんな地獄からこんな化け物を引っ張ってきたんだ。


「こたえる必要あるか?」


「殺しますよ」


「できるとは思えんな。俺死ぬとお前も死ぬし」


「魔王と相打ちした王女の騎士は誉れでしょう」


「……今俺に何してる?」


「ナイフを首に、と言いたいですが、ズボン切りました。あと一切りで変質者確定です」


 こいつ、きらい。


「わかった。要求は?」


「空を飛べる魔法石を作ってください」


「いやだ」


「お願いします!! お尻にナイフをねじ込みましょうか」


「お願いしたそばから脅迫するな」


「取引しましょう」


「俺のケツと?」


「ロア様、あなた様のケツと恋人は、私が助けます」


「お前がいなくなれば一つは今すぐ助かるんだが」


「それは助けを求めている、ということでしょうか」


「話をする気がないのか。このままだと取引自体なくなるぞ。一つ俺の要求を飲め」


「どうせよと?」


「お前が俺の女になる。それで考えてやる」


「魔王様には子供のご趣味が?」


「十年後だ」


「そうやって歴代女王様などにも青田刈りしてたわけですね。それはいささかダサいと思います」


「俺もそう思った時期もあった。だが長年生きると、別にどうとも思わなくなるな。責任をもって愛するぞ」


「ではネフェ様とは別れると?」


「なぜそうなる」


「私は一人の方に愛されたいのです」


「俺の愛は深い」


「深ければなんでも許されるものではありません。例えば私は海ならば浅瀬の方が好きです」


「なら交渉は決裂か?」


「いえ、私が将来あなたの物になる余地はまだあると言ったら?」


「話せ」


「あなた様も一緒に私たちの目的を遂行する仲間に加わるのです」


「魔王に城を離れろと?」


「共に行動をしてお互いを知る。仲良くなるのはそれからかと」


「俺があいつをあのままにして黙っていると思っていたか?」


「私にお手伝いできることは?」


「ないと突っぱねようと思ったが、お前には確かに他に代えがたいものがある」


「それでは交渉の席についていただけると?」


「空を飛ぶ魔法はやれないが、代わりに俺を使うというわけだな」


「いいえ。魔王様の旅に私たちが同行いたします」


「物は言いようだが、空を飛ぶだけでそれは足りるのか?」


「それが必要なんです」


「獄の魔女が欲しているということか」


「話が早くて助かります」


「そんなこと俺が思いつかないと考えなかったのか?」


「考えました。その道をあきらめ、別の道を探されているのでしょう」


 とんだ悪魔がいたものだ。これまですべてこいつの手の内だったということだ。

 そしてこの娘は、魔王さえ拒んだ魔女と取引をさせようとしているのだから、世も末である。


「ネフェが目覚めたら、お前は魔王城にくるのか?」


「魔王様は恋人を束縛する度量の狭い方には見えません」


「おお、なんだか知らんが今の言葉でお前をもっと好きになってきた。将来が楽しみだ」


「ネフェ様が目覚められたとき、目の前で同じことを言ってくれたら考えてあげます」


「くくく、それも一興。降りるぞ」


 天を見上げていたロイエが、シュアを肩に乗せた魔王を目にしたのはほどなくのことだった。

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