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56 布の紙  

俺は神殿に戻り、ベルーダにもう一度確認をした。

「ベルーダは、羊皮紙よりも俺の紙が良いって言う根拠は何だ?」


「いっぱい作れそうだからよ。羊皮紙は優秀よ、パピルスよりも。でも数が取れないそれが難点なの」

「高価だからではないの?」

「お金なんてどうとでもなる」

「パピルスって言うのは作れないの?」

「あれは帝国の記録媒体よ。しかもあの地域にしか生えていない草なの。水には弱いし手間がかかるし最悪」


「そうか。ベルーダ、多分この国では、俺の異界に生えていた木はないと思う。だから違う紙を作ればいいと思うんだ」

「違う紙? たとえば、どんな?」


「ここには麻がたくさん生えているだろう? それで服を作っている。布は平たい。だったら薄く白っぽい紙が出来そうじゃないか」

「!ッそうね……そうだわ。分かった、やってみましょう」


ベルーダは、今までよりもさらにやる気に満ちて東奔西走し始めた。

俺は、ベルーダの執務室に入り浸り、ベルーダの執務机で写本をする。


コンコン

「どうぞ」

「コタルㇽッロ、司祭様はどこにおられますか」

「ノビスの集落か、隣村だろうな」

「……では、急ぎの案件はこちらで処理してもいいでしょうか」

「……ん」


よく分からないが、俺が考えるよりサクラたちが何とかしてくれるだろう。

故郷の村方式で、適当に相槌をしておけば勝手にいい方向に進んでいくさ。


夕方になれば、ベルーダが帰ってきて俺に今日あったことを話す。

「コタルㇽッロ。困ったわ」

「なにが?」

「麻の紙はすぐ出来たんだけど、インクが滲んでしまうのよ。あれでは紙として使えない……」

「ふーん。滲まないようになんか塗ればいいんじゃね」

「……そうよ、浸透しないようにすれば良いんだわ!」

「……」


こんな具合に勝手に自分で答えを見つけていくんだ。俺以外は……。


俺はひたすら写本する。分厚い魔法の本には細かい字でビッシリ書かれていた。

「紙足りるかな……」

俺が持ってきた紙は百枚くらいだ。

俺の文字は汚いし、小さくは書けない。

紙の残り枚数が心細くなってきた。


魔法の国エルタゴスに来てから一ヶ月経つ。

十二倍の速度で、異界の時間が進むとして、俺がいなくなってからヌアタラは一年経ったことになる。


魔法の本は厚い。これまで書き写した分は十分の一位か……。

「これだと十年帰れないことにならないか?」

俺は絶望した。ここで十ヶ月近く写本をしなければならなさそうだ。

俺が異界へ戻る頃は、チュム師も父ちゃんも死んでしまっているに違いない。


途端にやる気が失せてしまった。


珍しく落ち込んでいる俺を見て、ベルーダは眉をひそめた。

そして、俺の事情を聞いて彼女は「馬鹿ね」と言った。

「あなたはまず、文字を習うべきなのよ。写本はしてあげるわ。明日サクラをこっちに寄越すから。滅多に見られない魔法の本の写本だもの。喜んで来てくれるでしょうよ」


俺のために貴重な羊皮紙を大量に仕入れ、サクラを五人寄越した。


サクラの司祭というのは、中間の地位にいる。

大体三十人いて、学び終われば特権階級の子女や子息の家庭教師になったり、国の政策に携わったりするそうだ。この国を支えていく卵たちなのだ。


この上には、五人しかいない月の司祭プリエステ、

そして司祭の頂点である大司祭アルキプリエステがいる。


俺の文字の先生として来てくれたのは、あの魔法を教えてくれた主任”デルード”だった。

いや、デリュウド……デルㇽㇽド……俺が発音できない名前の主任だった。


「コタルṙṙッロ。久し振りだな。今度は文字の勉強か、よし! 書く方ならお前でも何とかなるだろう。任せなさい」


いつにも増して、巻き舌がさえている。デルードがやる気に満ちている。

発音できない俺への当てつけか!


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