第1話 転生したと思う
魔物に転生した主人公が友達と色んな場所を巡る話です。
よろしくお願いします。
突然だけど。
今、おれは混乱していた。
あ、別に頭の上でヒヨコが回ってるとか、そういうのじゃなくてね?
自分の今の状況が分からないから、混乱しているということだ。
何でかって?分からん。
だって、おれの身に何が起こったのか、そもそも此処が一体何処なのか、本当に何も分からないんだから。
…いや、本当に、何!?どういうこと!?何でいきなり森の中なの?!
誰か教えてくれ!!
誰かーーーーーッ!!!
“バサバサバサッ!!”
おれの声に驚いたのか、近くの鳥達が一斉に羽ばたいていった。
な、なんかごめん。
…はぁ。
叫んではみたものの、こんな森の中じゃ誰も来やしない。しかも叫んだから疲れた。
だけど大声を出したお陰か、少し気分がすっきりした気がする。
…うん、まずは落ち着いて考えてみるか。
とりあえず、何があったのかを出来る範囲で思い出してみよう。
えーと、確か…学校からの帰り道で、友達は部活があったから一人で帰ってて、猫が車道に飛び出していくのが見えて。
ちょうど信号がギリギリで、猛スピードの車が来たから、咄嗟、に…。
そこまで思い出しておれの脳裏に浮かび上がったのは、あの瞬間の光景。
クラクションが鳴り響く音、急なブレーキにタイヤが悲鳴を上げる音。
…あ。
そっか、おれ…あの時死んだのか。
車に轢かれそうになった猫を庇って。
朧気な記憶の中で恐らく最期に見たと思われるものは、こちらを覗き込む白い猫の宝石みたいに綺麗な瞳の赤い色。
その目が何だか一瞬光った様な気もするけど、多分光の加減でそう見えただけだと思う。
何はともあれ、猫の方は助かった様だと分かりホッとする。
うん。何はともあれ、あの猫が無事で本当に良かったと思う。
・・・
思い出せた範囲で分かったのは、おれはどうやら既に死んでいるらしいという事。
それなのにこうして見知らぬ場所にいるのは、恐らくおれは既に、新しく生まれ変わっている?のかもしれない。
実態があるから幽霊になったとは思えないし、死後の世界にしては周りの環境の風や匂いに現実味があり過ぎる。
…いや、死後の世界があるのかとか実際の所は知らないけど…行った事ないし。
だけどそう考えると、何で死んだはずなのに生きているだとか、突然森の中にいるんだとかの、色々と感じていた違和感にも納得がいくんだよな。
所謂、〈転生〉という奴だ。
前世に未練が全くないと言ったら嘘になるけど、死んじゃったもんは、まあ仕方ない。
せっかく転生したんだったら、楽しく生きていけたら良いな、と思う。
…さて、今の状況が少し判明した所で。
もうひとつ、確認しないといけない事がある。なんならこれが一番肝心だ。
それは…
おれは一体、何に生まれ変わったのか、だ。
え、人間だろ?と思うかもしれないが、その可能性は低いだろうと思っている。
まず、おれの目線で見える視点が低すぎる。
そもそも人間に転生したのなら最初は赤ちゃんになるはずだ。だけど言葉も自由に話せるっぽいし普通に動き回れるっぽいから、ひとまず今のおれは人間…少なくとも生まれたての赤ん坊では無い。
そして…というかここが重要なんだけど…今のおれの体は、なんというか、全身が白くてモフモフしてる、みたいなんだよね。
だから恐らく何らかの動物になってると思うんだけど。うーん、鏡か何かがあれば確認出来るのに。
でもこんな所に鏡がある訳な…あっ!
当てもなくウロウロしていたおれは、ある物を見つけて走った。
…なんか自然に四足歩行になってるけど気にしないでおく。
見つけたのは水溜まりだ。最近雨が降ったのか地面の窪みに水が張っており、水面に周囲の風景が写り込んでいる。
よし、これなら確認出来そうだな。
おれは恐る恐る、水溜まりに写る自分の姿を覗き込んだ。
そこに写っていたのは、ぱっちりとした黒い瞳、その色とは正反対に真っ白なモフモフの体、ヒクヒクと動く小さな鼻に丸いフワフワな尻尾、そして極め付けは特徴的な長い耳。
うん、ウサギだ。
これは紛うことなきウサギだ。
なーんか額に角が生えてる気もするけど、そんなことは今はいい。
何と言ったって、
『…可愛い…!』
そう、この一言に尽きるのである!!
動物は元々好きな方だけど、それにしたってこのウサギは滅茶苦茶可愛いと思う。
…ん?待てよ、これはおれの姿を写してるはずなんだから、つまりこのウサギは今世のおれの姿ということになるのか…?
え…?どうしよう。
自分で言うのもなんだけど、おれ、可愛すぎない?
あまりの可愛さに思わずナルシストっぽくなっちゃったけど…改めて観察してみると、おれが転生したのはただの…普通のウサギという訳ではないみたいなんだよね。
あ!勿論、可愛さが普通じゃないとかそういう意味ではなく…え、誰もそんな事言ってないって?あ、そ、そうすか…。
つ、つまり何が言いたいかと言うと!
なんと、おれの額には一本の立派な黒い角が生えているのだ!
小さなウサギの額から生えているものだから、そこまで長さや太さは無い。それでも真っ直ぐに伸びた角は、見た感じちょっとやそっとじゃ折れたりしそうには無かった。
ただ、その分かなり頭が重く感じる。
試しに後ろ足で立とうとしてみたらバランス崩して引っくり返ってしまった。…ちょっと恥ずかしいから誰にも見られてないといいけど。
まあ、自分の顔の半分くらいの長さの角が額から生えてるからな…。
普通に歩く分には問題無いけど、馴れるまで気を付けないといけないな。
それは、まあ置いといて…。額から角が生えたウサギ…つまり、おれは〈魔物〉に転生したんだろうと思う。
そして魔物が存在するとなると、此処がおれが元いた地球とは考えにくい。
という事は、地球とは違う世界…〈異世界〉…って、事になるのか、やっぱり。
異世界に転生、しかも人間から魔物にかぁ…。
……。
うん。まあ、可愛いからいっか!
種族名とかも何も分からないから、とりあえず〈角ウサギ〉という事にしておく。
安置だって?いーいーのー!!
こういうのは、分かりやすいのが一番なんだから。
自分が異世界で魔物に生まれ変わった、という事を知ったおれにはここでひとつ試してみたいことがあった。
異世界転生といえば、そう!
ステータスやスキル、魔法などの、その世界ならではの要素だ!
こういう場合、転生者特典で高いステータスや強いスキルや魔法を最初から持っていたりするんだよな!
わくわくした気持ちを抑えつつ、おれはお決まりの台詞を口にした。
『ステータスオープン!』
…シーン。
あれ?おかしいな。
こう唱えたら大体、自分のステータスが表示されたパネルか何かが現れるものなんじゃないの?
もしかして唱えるワードが違うのかな。
『ステータス!ステータス表示!情報開示!開けゴマ!』
しばらくそうやって色々なワードで試してみたけど、結局おれのステータスが表示されることは無かった。
うーん、もしかするとこの世界にはステータスという概念は無いのか、はたまた自分でステータスを見れないようになっているのか。
まだ試してないワードもあるだろうけど、これ以上は時間の無駄な気もするので諦めた。
スキルや魔法はあるかもしれないけど…ステータスを見れない以上どんな種類のものか分からないし、そもそもスキルや魔法をおれが持っているのかも、ましてや使えるのかも分からない。
うーん、どうしたものか。
……。
まあ、いっか!
よく分かんないけど生きていればこの先、色々と分かっていくだろ、多分!
うん、きっと何とかなるって。
細かいことは気にしない!
難しい事ばっか考えて悩んでたってどうしようもないからな。それにそういうの性に合わないし。
まあこういう感じだから友達とかにお気楽だとか能天気だとか、よく言われるのかもしれないけど。
お前は少しは色々気にしろとか、危機管理がなってないとか、呑気過ぎて逆に心配になるとか。
“ガサッ ガサガサッ”
『うわっ!?』
背後から突然聞こえた音。完全に油断していたおれは思わず声をあげた。
音の正体は草むらだった。しかし、生えている草がおれの目線よりも高く伸びているせいで、おれから相手の姿は見えない。
草むらに隠れて見えない相手は、ガサガサと音を立てながらこっちに近付いて来るみたいだ…というか。
え、あ、これどうしよう。逃げた方が良い…よな?
でももしかしたら、話とか聞けるかもしれないし…。
“ガサガサッ ガサッ!”
『…あっ。』
なんて事を考えている間に、草むらの中からそれは姿を現した。
プルプルと揺れる丸い形、半透明の体。
薄ら透けて見える体内には骨や心臓などの臓器は無く、そもそも目や鼻すらも存在しないようだった。
おれの知っている知識から照らし合わせて考えて、こいつはもしかして…。
『…スライム?』
スライムはゲーム等でお馴染みの有名なモンスターだ。
目の前にいるこいつは、おれの知ってるスライムの特徴と共通点も多いし、恐らく間違いないんじゃないかな…多分。
続けて、おれは恐る恐る声をかけてみた。
『お前は…スライムなのか?』
『……。』
しかし、返事は無い。
…当たり前か。口が無いなら言葉を話せないし、耳が無いならこっちの声も聞こえないんだから。
ただその場で、プルプルと揺れているだけ。
残念ながら会話をする事は出来ないみたいだけど、それは仕方ない。
でも、これは、やばいだろ…。
だって…。
おれ、本物のスライムに会っちゃったよ!!
読んで下さりありがとうございます。
橙です三c⌒っ.ω.)っ
以前書いていたのを書き直したものになります。
設定とか変わってたりする部分もありますが、前に読んで下さっていた方も、これから新しく読んで下さる方にも楽しんでいただけたら幸いです。
気ままに書いていきますので、よろしくお願いします。




