6話 僕のいる地獄より僕のいない天国をつくれ
ツグネの本格的な物語開幕です。
俺はツグネ普通の高校生だった。“やり直し”ができる事をのぞいて。そしてある日、世界がゾンビだらけになった友達数人と逃げていたが死んだ。この事態になる前に色々物資や食料継続的に得られるエネルギーを…。
俺はやり直し地点を自由に決められる。数日のやり直しなら俺以外の人も対象に選べば記憶を保持出来る。
しかし、数ヶ月単位のやり直しでみんなの記憶は無くなっていた。俺は数ヶ月後の災難の為に準備した。ゾンビ騒動でしばらく生きていけた。やり直しのおかげだ。そこでタフナと出会い二人で生き延びてきた。タフナには目眩しの様な能力があった。それを使ってこの世界で足りない物を集めていた。発電機の部品や鉄。足りない食料。でも、どうしても足りない物があった。人手だ。もっと言うと特殊な“何か”を持った生き残れる能力のある人間だ。俺達はある日ある人に出会った。そいつは何処にどんな奴が居るか知っている人だった。俺達が日本に上陸した謎の巨大建造物からある雫を盗めば能力のある人の場所を教えてくれると言われた。俺は何回でもやり直しができる。勿論受け入れた。目をつむらされ気づいたら知らない場所に居た。色々調べたら謎の巨大建造物の上っぽいのだ。そこで俺達は探しに探した。そう探死に探死た。何回もそして見つけて奪った。途中、犬みたいに瓦礫を駆け抜けてきた人間…まぁバケモンみたいな奴とも戦ったと言うか逃げたの方が正しいか…。そしてセカンドオーダーが“来た”そいつは謎の巨大建造物“周回移動都市”を半壊させた。
俺達は抗った。
諦めた。
勝てなかった。
しばらくして仲間が増えたダールというらしい。俺達3人は半壊した周回移動都市で市民権無く隠れて生きてきた。3人で鍋を囲って野良の羊の様なにかを食べた。楽しかった。思い出したくも無い楽しい思い出が…思い出したら悲しくなってしまう。でもある時を境にダールお前は決まってたみたいに言ったよな。罪を贖う時が来たってセカンドオーダーを止めるってお前が俺のやり直しの能力知らないのに何言ってんのかと思ったよ。もう数年前に過ぎた事だろって。でも、お前元神様だったもんな…最初は嘘だと思ったよまぁ今も嘘だと思ってるけどさ、それが本当だったらそうだよな。それぐらい分かるよな。でも俺も何回も何回も何回もやり直したんだ。セカンドオーダーを止められなかった手も足も出なかった。この世界でチカラの無いダール、お前が居てもセカンドオーダーは止められないだからもう余生を楽しく生きよう。お前は言っても聞かなかったな。ただ俺の目を見て言ったよな真っ直ぐに言った。
「人間も、“君”も救われるべきなんだ。」
何言ってんだコイツと思ったよ。確かにまぁさ、いきなりゾンビみたいになる世界でしんどかったけど。お前とタフナが居ればどんな時も楽しかった。ずっとやり直しも使わずに暮らせてきた。半壊した周回移動都市でもいいのに。俺は怒鳴ったお前が犠牲にならなくても!もう良い充分だ!こんな事でこんな何処ぞの誰かのウイルスに負ける世界なら、そんな事で滅ぶ世界なら滅べばいいって。でもお前は真っ直ぐ目を見て言った、逸らしたくなる目で。
「僕のいる地獄より僕のいない天国をつくれ。」
お前はお前の全てを代償にしひとつの答えを示した。一粒の水滴を俺に飲ませてから数日後に朝食を食べた後お前は崩れて汚く消えた。その後何回もやり直したがダールお前はもう何処にもいなかった。その水滴を飲んでから1日が過ぎた頃、俺の耳元で誰かが囁いた。
「サキミネを探せ」と。
あぁアイツはこの一言の為に…
「も、戻った…」
あぁ…終わってしまった。
「ツグネさん…もう僕頭爆発しそうですよ…」
「とりあえず起きた事を説明してくれついでに今の地点は門番に出会う少し前だな?まぁ確認だ。」
あぁ泣きそうだ。ダメだ。タフナには見せられないそんな顔。タフナはもう何も知らないダールの事も。3人で過ごしたこの数年間も。このやり直しで俺以外記憶が残らないってのは何と無くわかっていた。今回のやり直しは時間が経ち過ぎて居たから俺以外の記憶は残らない。あぁ…
「はい。」
タフナはツグネにツグネが意識を失って死ぬまでに起きた事を話した。
「タフナ。時間がないからそういうものだと思って聞いてくれ。」
いきなり肩を両手で掴まれて体がビクッとなるタフナ。驚きの表情をしているが2人の信頼に溝はない。
「はい。」
「実は俺このやり直しは3回目だ。鐘の音とセカンドオーダーについてさぐってきた。単刀直入に言うとセカンドオーダーはどうにもならねぇ。」
「ちょ、ちょっと待って下さい。そのセカンドオーダーは僕達の目的の邪魔になるんですか?ドーベルランが来れない安全なユートピアで暮らす目的に…」
過去にいや、未来にと言うべきか色々調べたんだ。この周回移動都市は防衛都市でもある自らどんな厄災でも跳ね除ける。でも。
「あぁ。セカンドオーダーはこの都市を半壊させる。この都市が危なくなったら俺たちの目的以前に本末転倒だろう。」
「なッ、そんな事できる存在があると思えないんですが…核兵器とかの隠語ですか…?」
「違う、セカンドオーダーは神様…というか事象に近しい類らしい。」
「ど、どうにもならないじゃないですか!!神様とか事象って聞いてもギャグ言ってる様にしか聞こえないですよ。」
「俺も信じられねぇがこの目で見た…」
あぁ、泣くな。
「もしかしてその3回のやり直しの対象に僕を入れてなかった理由って…」
「“ドーベルラン”という単語を1回目のやり直しで耳にしたからだ。」
何とか誤魔化せただろうか?タフナに嘘ついちゃったなぁ俺、堪えろ。この周回移動都市にドーベルランは来ない。
「なっ…あ、現れたわけじゃないんですよね?!」
「あぁ、耳に入れただけだ。でもドーベルランがもし現れたらお前は俺のループの足でまといになるからな…」
未来の数年間でドーベルランが周回移動都市に現れた事はない。
少し肩を落として色々諦めた様子でタフナはツグネに問いかける。
「そ、そうですね。ドーベルランにセカンドオーダー…ほんと意味わからないですよ…で、僕は何をしたらいいんですか?」
ツグネは数年ぶりの自分の姿に懐かしさを感じた。そういえば最初この服装だったな…はっと思い出した何で忘れてたんだろう雫は最初から俺達が持っていたというか奪ってきた。バッグの中の瓶の中の雫を見る。中身が無い事に気づきダールが居なくなった事を実感した。もしかして、あの依頼人ってお前だったのかダール…?お前はもう過去に代償を払って残りの余生を俺達と楽しく過ごしたのか?…なんて奴だよ全く。
「俺達は“サキミネ”という人物をエヴァンへ連れてくるそいつは地上の世界にいる。そして俺達が持っている雫はもう要らない。」
「なんか色々ぶっ飛んできましたね。僕達が依頼者に渡そうとしていた雫、もう要らないんですか?」
「あぁ、というかもう“無い”」
「え?そんな馬鹿な…」
タフナはツグネがバックから取り出して見せてきた瓶の中を見る。無い…この瓶の様なものに蓋は無い、どうやって中の雫が無くなったのか?蒸発した?いや密閉されているツグネがすり替えたのか?それも違うだろう。我慢できずに聞く。
「ツ、ツグネさんあの雫は一体どこへ?」
「…」
あぁ悲しいなぁ。
「どうしたんですか?ツグネさん…」
その質問をした途端、ツグネの顔はとても悔しそうに見えた。唇が若干震え目尻に涙を溜めていた。本当にこの3回のやり直しで何を見て来たのだろうか、この都市が半壊…多分想像もつかない事なんだろうそして今悔しそうにしているツグネさんを見るとそれを止めたいのだろう。別にツグネさんはこの都市の住人に思い入れがあるわけでは無いんだろうけど…優しいのか、はたまたこの都市に別の大切な人がいるのか…
そんな考えても、埒があかない事で頭を使っているタフナにツグネは一言真っ直ぐ目を見て言った。
「ダールの全てだ。俺が飲み干した。」
その言葉は重たかった。ツグネが何を言っているか理解出来なかったがきっとこのやり直しでとてつもない何かを乗り越えて来たのだろう。そして今、何かに決着を付けようとしているのだろう。
「このやり直しで僕の知らない何かを終わらせるんですね。」
タフナの言葉に意志の炎を宿したツグネが言う。
「馬鹿野郎、全部救うんだよ。」
「いつから僕達、正義のヒーローになったんですか。」
「さぁな。」
ーーージジジッ…『222が発生しました。繰り返します。222が発生しました。…』
聞き覚えのある機械の音声だ。一体ツグネさんは…ツグネは何を経験して今に至るのだろう。聞きたいがツグネが話さないと言う事は聞かない方がいいのだろう。
ーーージジジッ…『222が発生しました。繰り返します。222が発生しました。…』
「よし、時間だ。タフナ、行くぞ。」
「はい。」
ーーーゴーンッゴーンッゴーンッ。
鳴り止まない鐘が都市を包む。
ツグネの喉は痺れていた。タフナに三回だけだと嘘を言ったが俺がやり直した回数は千に等しい、最初の方はセカンドオーダーの影響で何をしても死んだ。無慈悲な死に様だったと思う。大きなロボットの様な機械で一方的に周回移動都市も同じ様なロボットで対抗していたがその差は圧倒的だった。周回移動都市は有りとあらゆる火力を尽くしても半壊させられた挙句倒す事すらままならず追い返すことしかできなかった。なぁダール、サキミネウサギって奴をこの周回移動都市に連れてくればセカンドオーダーは止められるんだろ。
ダール。ダール。ダール。ダール。ダール。
死んでるかもしんねぇけど返事しろよボケ。
「あ、あの…どうやってこの周回移動都市から降りるんですか?まずこの周回移動都市は今、地球のどこの地点にあるんでしょう?」
タフナがツグネに質問する。ツグネが困った様に腕を抱えて悩もうとしたその時、耳元で誰か囁く。
【西に2日かけて歩きなさい。】
ツグネは驚きと鳥肌が暴走して変な声を出す。
「ヒョッンッ!」
タフナも釣られて驚きツグネに言う。
「き、急に何ですか一人でびっくりするのでやめてください。気持ち悪いですよ…今の声…」
だいぶ怒っている…というかやっぱり雫を飲んだ俺にしかこの声は聞こえないんだな。まぁサキミネに繋がるナビみたいなもんか言う通りに行こう。
「わりぃな…気持ち悪くて、でも行き方はわかった。行くぞ。」
「…はい。」
タフナは不思議そうにツグネを見ながら返事する。
ーーーゴーンッゴーンッゴーンッ。
この作品は長編になると思うのでまだまだ終わりません。なんか自分で書いてて最終回的な物を感じてしまっていました笑。全然そんなことないけどどうしてもそんな感じがしてしまいますね。これから開幕です。
【超ド級ね。】
【この世に起きている嫌な事全部貴方のせいにしていい?】