〔番外編第2話〕大聖堂
よくわからなくても大丈夫!何故こうなっているのかも話が進めばわかります!安心し、パッションで呼んでください!
《こんにちは動物の皆さん。ゲロゴミのお前らに名乗る名前なんてないけど、そうね。“セカンドオーダー”とでも呼んでちょうだい。》
空に響く声は傲慢と見下しに満ちていた。
——————シューーーンッ!!!
——————「ギャァァァアッ!おい!早く逃げろぉ!!!!!」
先ほどゾンビが出た時、上へ逃げて行った作業員達が下降制御装置を使い凄い勢いで降りてくる姿が見えた。
「な、何があっ…」
——————ゴォォォォォッン!!!
——————ゴォォォォォッン!!!
——————ゴォォォォォッン!!!
鐘の音が鳴り響く午前、私の質問に答える声は無い、が代わりに叫び声だけが鼓膜を揺らす。
——————「早く逃げろぉぉぉおお!!!」
やばい何かが起きている。
でも、私の下降制御装置は壊れていて、ここから動けない。
やばいやばいやばい何起こってるか知らないけど、死にたくない!!!
——————ゴォウンッゴォウンゴォウンッ。
その時、直感した“ナニカ”が上から来る…。
——————ガシュンッ!ガンッ!ガンッ!ガンッ!!!
その直感は的中し、ヴェルサイユの外壁が可動し始めた。
「ッ?!何が起きてッ…」
——————ガヒュンッ!ガンッ!ガンッ!ガンッ!!!
はるか先の頭上から順に壁の1部が飛び出し大胆な変形を見せる。
——————「ギャァァァアッ!!!!」
——————ブシュッ…!!!
その変形に巻き込まれてひき肉にされて行く作業員達が遠くに見える。
必然的にその作業員達の血と肉のシャワーが頭上から降り注ぐ。
——————ドバドバドバッ、ベチョベチョベチョッ!!!
「あ゛あ゛あ゛あ゛!頼む!下降制御装置ッ早く動けよ!逃げなきゃ死んじゃう、死にたくないッ!死にたくないッ死にたくないッ!!!」
——————バンッバンッバンッ!
下降制御装置を必死に叩きながら迫り来る音に危機感を抱き上を見る。
——————ガヒュンッ!ゴウンッ!ゴウンッ!ゴォォォォォッ!!!
迫ってくるヴェルサイユの可動に巻き込まれて死んでいく作業達の声が徐々に減ってゆく。
それと相対する様にシャワーの量は増えて行く。
——————ドバドバドバッ、ベチョベチョベチョッ!!!
「あ゛あ゛あ゛ッ…」
(私は何で死ぬのだろう。これは何なんだろう。この仕事が高給なのは外壁の中のゾンビに襲われる危険があるからであって、こんな訳のわからないヴェルサイユの可動に巻き込まれるからではない。)
走る思考から走馬灯に切り替わろうとした。
ヴェルサイユの可動が目の前まで迫り諦めかけた瞬間、体を大きく動かされた。
——————「こっちだァァア!!!」
「ッ?!」
知らない男に手を引かれ、体を少し横へ移動させられた。
——————ガヒュンッ!ガンッ!ガンッ!ガンッ!!!
ヴェルサイユの外壁が体の真横スレスレで複雑な可動をみせる。
ひぃ…これに巻き込まれてたら車輪の間に挟まれて…肉団子に…ッ!!!
——————ブゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥッン…。
「ハァッ…ハァッ…ハァッ…た、助かったありがと…」
「危ない所だったなぁ嬢ちゃん。」
「あ、はい…」
この仕事をし始め、初めて嬢ちゃんと呼ばれた。
血管が破裂しそうな程、激しく心臓が動く。
焦る心と息を整えながら手を引いてくれた仲間の作業員の方を見る。
この男も私と同じ逃げ遅れた奴…か?
私が女と見抜いたのはこの男だけだ。
年齢は40〜50歳と言ったところか?
「最初血だらけだったからゾンビかと思ったぜ、がはははッ!」
「…上から血肉が降ってきただけだ怪我はしてないし、ゾンビに噛まれてすらいない。」
「そうかそれなら良かったぜ。しっかし、嬢ちゃんも不幸だな。何千年に一回あるか無いかの有事に…しかも“大聖堂”に巻き込まれるなんてよぉ。」
「なんだ、その大聖堂…?ってのは…。」
「まぁ今回は確実にアレに対して発動しただろな。説明するよりもなんだ…ほら、もうすぐ始まるぞ見とけ。てか、外壁の窪みから落ちねぇようになんか安全な場所に掴まれ。」
男が指差した先、空に開いた大きな黒い空間。
傲慢な女の声が聞こえてきた場所…か?
——————ゴォォォォォッゴォォォォォッゴォォォォォッ!!!
ヴェルサイユの有りとあらゆる壁から円柱形の筒状が出てくる。
そしてその攻撃対象と思われる開いた空間の真上に大きな歯車が何重にも重なって現れた。
その歯車は半透明な金色をしており各々が重なり合って複雑な回転を見せている。
——————ゴォォォォォォォッン!!!ゴォォォォォォォッン!!!ゴォォォォォォォッンッ!!!
鐘の音が鼓膜から脳みそへ直に響く。
「…来るぞ!揺れに備えろ!」
——————ドドドドドドドドドドドドドドドドドドッ!!!!!
激しい揺れで体の重心がズレる。
そして、無数の円柱の筒から無数のミサイルが発射された。
——————ゴォォォォォォォッン!!!ゴォォォォォンッ!!!ゴォォォォォッン!!!
——————ゴウンッ!ゴウンッ!ゴウンッ!
激しい機械音がミサイルの発射音と共に響きわたる。
放たれた無数のミサイルが対象に向かって真っ直ぐ飛び、直撃する。
——————ドゴォォォォォッン!!!
——————ゴォォォォォッン!!!
——————ドガァァァァンッ!!!
——————ドンッ!!!
無数に放たれたミサイルが終わる事なく永遠に止まらない。
次から次へと発射される。
激しい揺れと轟音の中、男が叫んだ。
「もっと、こっちに寄れぇ!!!もうワイヤーは切れてんだぞ!下に落ちたらどーすんだ!!!」
「えっ…?」
腰に目を向けると下降制御装置のワイヤーが無かった。
そうか、さっきの壁の可動に巻き込まれてワイヤーが切れたのか…。
この鋼鉄で編まれたワイヤーが切れのか、上に逃げた他の作業員達の体が簡単にバラバラになるわけだ…。
「おい!揺れで落ちんぞ!!!」
「あッ、マズい…!」
——————フラッ。
落ちそうになった時、ガタイのいい中年の男に体をがっしり掴まれ寄せられる。
「しっかりしろ!死にてぇのか!!!」
「おっ…あッ…えっと…す、すまない。」
——————ドンッドンッドンッドンッドンッドンッ!!!
ミサイルが空いた空間に対して止まる事なく撃ち続けられている。
その絶え間ない轟音で耳がイカれそうだ。
その時、目の前に大きな25メートル程のスフィアが2体、取っ組み合いをして目の前を高速で通過した。
——————ヒュゴォォォォォンッ!!!
「ッマジかよッ!!!こんな所で戦うかよぉ!?」
「おい、アレはスフィアか?!何でこんな所にッ?!」
「こっちが聞きてぇよ嬢ちゃん!!!危ねぇ来るぞ!!!」
——————ヒュォォォォォォォッ!!!
——————ドゴォォォォォォォォォォォォッン!!!
頭上の外壁に激突したスフィア2機、砂煙と外壁の残骸を撒き散らしながら再び空中で戦い始めた。
「勘弁してくれぉよぉおッもう!!」
「何だ!一体何が起きてるんだ!おっさん!!!」
「もしかして、222か?!とうとう攻めてきたのか?!おい、嬢ちゃんこのままじゃやべぇぞ!!!」
「222って街で噂になってた事象の奴か?!」
「あぁそうだよ多分なぁ!!!」
—————— ドンッドンッドンッドンッドンッドンッ!!!
大聖堂の轟音が鳴り響く中、目の前でスフィア2機が目の前で暴れている。
走馬灯が走り出しそうになる中、一つ思い出した事があった。
「おっさん!!!もしかしてアレが都市の英雄サキミネか?!」
サキミネは3年前、この都市に突如現れた天才パイロットだ。
連戦連勝所か、連合軍艦隊ベクターの集団を1人で壊滅させた英雄だ。
「アレがサキミネ様かどうかなんて一般庶民以下の俺らにはわかんねぇよ!!!おい!!!次来るぞぉぉ!!!」
——————ドゴォォォォォォォォォォォォッン!!!
私達が居る場所から横、再びスフィア2機が外壁に激突した。
砂埃が舞う中、スフィア達が寄り近く鮮明に見えた。
鋭く光る眼光、水色と緑が混じり合った混濁のエネルギー球が体の各々に散りばめられている。
その姿は見る者が見れば崇め讃えたくなるだろう。
しかし、妙だ…スフィア2機共少しの違いはアレど同じ様な機種に見える…。
「危ねぇぇぇええ!!!」
おっさんに頭を地面に押し付けられた。
——————ヒュンッ!!!
スフィアが高速で外壁を蹴り移動した事で、外壁の残骸が飛び散り頭上を掠めたのだった。
おっさんが私の頭を無理矢理下げさせてくれていなかったら頭と胴がサヨナラしてただろう。
「あッぶぅ?!」
「おい、大丈夫かッ?!嬢ちゃん?!ボーっとすんな!!」
次の瞬間、1人の作業員が上から落ちてきた。
——————ヒューッ、ドカッ!
「お、おい!大丈夫か!…生きてる!まだ生きてるぞ!嬢ちゃん、ここの傷口抑えてくれ!!!」
「あ、あぁ!」
私とおっさんが避難している6畳程の外壁の窪みに負傷している男を寝転がす。
両足がへし折れドクドク血が流れているが出血量は少なそうに見える、もしかしてまだ生き残りがまだ上に居るのか…?!
そう思った瞬間さっきのスフィアの内、1機が吹っ飛んできた。
————————————ヒュォォォォォォォッ!!!
——————ドゴォォォォォォォォォォォォッン!!!
勢いで体が吹っ飛び外壁の窪みから落ちそうになる。
おっさんに体を掴まれ落ちることは無かったものの、先ほど上から落ちてきた作業員がそのスフィアの下敷きになった。
——————ベチャッ!!!
「ッ!!チクショオ!!!」
「…くッ、いっ、いたた。」
そのスフィアは一瞬、私達の方に顔を向けた後、下敷きになってグチャグチャに潰れた作業員を手で掴み、まるで手をハンドソープで洗うかの様に、死んだ作業員の血肉を手に塗り始めた。
「…何してんだアイツ…ッチクショオ馬鹿にしやがってぇぇえ!!!!」
私は何故かその動きを見て直感した。
「滑り止めにしてるの…か…?」
血肉を手に塗りつけたそのスフィアは私達の少し下に飛び降り、外壁を思いっきり殴りつけた。
——————ドゴォォォォォッン!!!
「何してんだぁアイツ?!」
「ッなんだ?!」
そして再び外壁を蹴り、少し遠くの戦線へ戻って行った。
大聖堂のミサイルが止まらず発射され、轟音が鳴り響く中、何も出来ない無力感と絶望と恐怖が体の底から迫り来る。
しかし、何故かその恐怖が周り周り一周し隣のおっさんと相対するかの様に、私を冷静にさせた。
「何なんだよぉ!アイツ、作業員を手に塗りたくりやがった!!!しかも、壁を殴って八つ当たりなんかしやがって!!!」
本当に八つ当たりか…、そしてあのスフィア2機の内どっちが噂のサキミネの機体なんだ。
八つ当たり…なのか…この戦闘かで…
もし、さっきの機体がサキミネなら……そうかッ!!!
「おい、おっさん!!!下殴ったのは八つ当たりじゃない!!外壁から中へ避難できる様に風穴開けてくれたんだ!!!」
「ッな?!で、でも、中にはゾンビが居んだぞ?!」
「ここで確実に死ぬか、中に入って一か八か生きるか、どっちがいいんだよ!!!」
「わーたよっ!!!風穴から中入んぞ!!!」
潰れた作業員を手に塗りたくって滑り止めにしたスフィアに乗っていたのは味方のスフィア(サキミネ兎)です。
ぬりぬり…




