〔番外編第1話〕ゲロゴミのお前らへ
初めまして貴方の脳みそを直接パンチ!どうも犬のようなものです。
これ以前の話、1話〜48話は前日譚みたいなものです。
そして今回は番外編です!
番外編といっても本編から少しだけ先の話なので未来を覗くみたいな感覚で読んでくれたら嬉しいです。
目を瞑ったら終わっているそれが現実です。
人生は簡単に呆気なく…っていう感覚で作りました。
では、
《ミステリー&ホラー&ロボット&異能力バトル&戦記&ゾンビ》
色々詰め込まれた本作をどうぞ共によろしくお願いします。
——————【周回移動都市ヴェルサイユ】——————
ー西暦7023年ー
地上はゾンビにまみれになり、人類は衰退の一途を辿る中、突如現れたノアの方舟。
直径2000kmの超自立型歩行建造物、
通称、【周回移動都市ヴェルサイユ】が現れた。
この都市は四足歩行で移動し、一年で地球を一周する。
常に動き続ける事で地上に居るゾンビや怪物からの集中、攻撃を避けているらしい。
しかし、安全なのは周回移動都市ヴェルサイユの地上だけの話だ。
周回移動都市ヴェルサイユの中には大量のゾンビが居る。
生存戦略というべきなのかは知らないが、中にゾンビが居ることで、地上の敵から下手に攻められる事が無いのだとか…。
そして、そこに住む者には市民権という特権が与えられる。
その特権を与えられた者は不老のチカラを手に入れる事ができる。
だが、私はこの都市に生まれたのにも関わらず不老の特権、市民権を持っていない。
理由は母親が地上から不正に移住してきた移民だからだ。
本来、周回移動都市ヴェルサイユへの地上への侵入はほぼ不可能とされているのだが何か母は入れたらしい。
私が物心つく頃に死んだから直接聞いたわけではないが、私が市民権なしでここにいるという事はきっとそういう事だろう。
しかし、そんな私にも市民権を得るチャンスがあった。
ようは金だ。
移民が市民権を買うには膨大な初期費用金いる。
多分だけど、都市はただの金欲しさにそんな事をしているのでは無いと断言できる。多分だけど…。
きっとその人間がそれだけの資金を集められるかどうかを見られているのだと思う。
そんな私は子供の時からずっと市民権を買う為、必死に働いている。
私は京生まれた時から16年間ずっとこの街で暮らしてきたキュートな普通の不幸な女の子…。
「…ふぁ〜、最近何度も同じ夢を見る気がする…まぁ内容は覚えてないけど…。」
朝起きて、鏡の前で冴えない顔を確認した後、髪の毛をとく。
「…可愛く無いな。もっと笑えよ私…。うぐッ…。可愛く無いな…」
そして朝ごはんを食べ…って…
今日乾パン切れてたんだった…。
——————ガラッガラッガラッガラッ。
毎日、安っぽい馬車の荷台に乗せられて、仕事場へ連れて行かれる。
給料はそこそこ高い、が…私には借金がある。
別にギャンブルしてたとか病気の母がいるとかでは無い。
「おい、お前さんの様なガキが何でこんな所で働いてんだ?」
馬車の荷台に揺られる中、くたびれた服を着た中年の男に話しかけられた。
「…ここでそーゆー話はNGってママに教わらなかったのか?」
「いいじゃねぇ〜かぁ。どーせ明日にはお互い別の現場なんだしよ今日ぐらいは聞かせろよ〜。」
そうだ今日は月に一度の現場交代の日、私達ヴェルサイユ市民は市民権を買い続ける為に仕事をしなければならない。
そして私の様な貧乏人はその広大な都市をメンテナンスする仕事をしなければならない。
とても危険な仕事だ。
なぜその仕事をするかって?別に仕事は沢山あるが借金を返しながら市民権を“買う”にはこの仕事しかないからだ。
ここにいる者の大半は借金を抱えて無理やりここへ連れて来られた人間のクズばかりだ。
なので、私はクズにこう返す。
「…じゃぁ、その林檎1つ頂戴…くれ。そーしたら教えてやるよ。」
「はぁ…これ今日の朝飯なんだぜぇ?勘弁してくれよぉ。」
「…」
この世界では一歩引いた方が負ける。
私は無言で間を伸ばす。
そしたら大体は…
「…ッたく。やるよ、ほれっ。」
相手の方が折れる。
勿論、こちらの提示した条件が強い時の話だが。
——————ヒュッ。
——————パシッ。
「…確かに、林檎は貰った。」
「チッ、早く教えろよ。1ヶ月一緒に作業した仲じゃねぇか。名前も知んねぇけどなッ、ウシシッ!んで、理由は?」
「…」
コイツは情報屋か?噂では他人の情報を売り飛ばして小銭稼ぎをしてるクズだな。
「おい、まさか。俺の朝飯奪っといて言わねぇって事は無ぇだろうな?!それとも何か言いにくい系の奴か?」
「…別に。ただ、子供の頃に人殺しちゃって賠償請求されてるだけ。」
嘘だ、私は人なんか殺した事はない。
「へ〜…お前みたいな華奢な男がねぇ〜。」
私が嘘を吐くのには理由がある。
このアングラな人間が多い現場では如何に見栄を張れるかで安全性が決まってくるからだ。
まぁ1ヶ月の現場交代で全員知らない顔になるが…最後の1日でも気が抜けない。
ついでに私は男じゃない、見た目が男っぽいのを利用して男のフリをしてるだけだ。
ゴミ人間が集まるこの場所では女というだけで危険が伴う。
まぁ、でも…私は最初から何もしていなくとも男って思われてたけど…。
思われてたけど…。
ぶっちゃけ借金を作った理由もしょーもない。
普通に詐欺にあった。
絶対儲かるって言われたギャンブルで負けた。
それが無ければ今頃市民権が買えたのにぃ…。
——————ガラガラガラッ…ガッ。
馬車が止まり荷台から降ろされる。
そして馬車の操縦をしていた現場監督の“軍人”がいつも通り指を下へ、さして指示を出してきた。
『は〜い、いつも通り作業に入ってね〜。降下制御装置付けて〜ぇ〜ね〜、はーい。』
——————ガチャガチャッ、カッカッ。
勿論、私達はヴェルサイユの外壁メンテナンス担当だ。
高さ“何百km”ある外壁を1日1箇所ずつ、1ヶ月かけ降下しながら点検して行く。
——————ガシャンッ。
早速、降下制御装置を腰に巻き付けヴェルサイユの外壁を降りて行く。
さぁ、労働の時間だ。
——————ヒュッーンッ。ガヒュン。シュルルルッ。
一斉に降下を開始する総勢15人程の作業員。
いつも月末は作業場まで降りるのに1時間から3時間程度掛かる。
本来ならもっと早く降下出来るのだが、気圧差に体を慣れさせる為、段階を分けて降下している。
皆その間に本を読んだり、仮眠を取ったりするが私はいつも朝日が綺麗でボーっと空を眺めている。
——————ヒューーンッ。
外の風が心地よい朝、下降制御装置の機械音が鼓膜を揺らし、私の短い髪の毛が靡く。
頬を撫でる風は柔らかくヒヤッと冷たい…唯一この仕事をしていて良かったと思える所だ。
「おい、お前。いっつも外見てんなぁ、なんか面白いもんでもあんのか?」
さっきの情報屋か?最終日だからって、やけに話しかけてくるなこのおじさん…。
「…悪いか?」
「チッ、調子乗ってんじゃねぇよガキが…せっかく話しかけてやったのによ…」
「余計なお世話だったな。」
ここでは誰も信用出来ない、ここにいる奴らはカスばかりだからだ。
口を開けば己の利益の為に騙そうとしてくる。
私は実際詐欺られたから知っている!!!
——————シューッ、ガキンッ!
降下制御装置が止まり降下が終わる。
いっつも急に止まるからちょっと止まる瞬間体痛いんだよな…。
さっ、今日も作業するか…。
——————カチッカチッカチッ。
各々が作業を開始し出す。
——————カンカンッ!カチャッ。カチャッ。
私達が住むこの都市は人智を越える力を有していながら人に頼らなければ生きていけない機械型の寄生生物と言われている。
まぁ、噂程度に過ぎないがこの説は結構良い所行ってると思う。
そんな何でも無い事を考えながら、いつも通り作業をしていると15メートル下の方から叫び声が聞こえてきた。
「ギャァァァァァアッ!!!」
——————『グワァァァァァアッ!!!』
機械仕掛けの外壁の隙間からゾンビが飛び出し、1人の作業員に襲いかかっていた。
その作業員は首元を噛みちぎられ、噴水の様に血を撒き散らしている。
周回移動都市、外壁メンテナンスが危険と言われる理由がこれだ。
「ゾンビが出たぞ!!!皆んなルール通り30メートル上へ上がれ!!!」
その声を聞き私は急いで降下制御装置を使い上へ上がろうとする。
が、降下制御装置が誤作動を起こし上へ上がるどころかどんどん下へ下がって行く。
——————シューッ。
「なッ?!何で?何でぇ?!」
——————『グワァァァァァアッ!!!』
作業員を食い散らかす事に夢中なゾンビの横を私は静かに通過する。
「…ッ。」
…バレてない。
良かったけど、どうしよう私だけ上へ避難できなかったどころかどんどん下へ行ってしまう…。
ヤバいッこのポンコツ全然言う事聞かないッ!!!
——————ガキンッ!
頭上のゾンビから15メートルほどの高さで降下制御装置が急停止した。
「えっ…」
——————プシューンッ…。
(本当にここで壊れる奴があるか!!!動けよ馬鹿!!ここで壊れたらどうやって上に上がッ…)
ふと見上げると上にいるゾンビと目があった。
——————『グワァァッ…』
「あっ…、コンニチハ…」
——————『グルゥワァァァァァァア!!!』
ゾンビは食い散らかしていた作業員から、その下に居る私へ向かって飛びかかってきた。
——————『グルゥワァァァァァァア!!!』
「ワァァァァァァァァア!!!!」
体を限界まで捻り、落下してくるゾンビを交わす。
——————ヒュンッ!!!
体のすぐ横をゾンビが落下していった。
「ハァッハァッハァッ!ひ、ひぃ…で、でも何とか…かわせたッ…」
ゾンビを回避できたと安心した瞬間、上から何かが降ってきた。
——————ベチョベチョベチョッボトッ!
生ぬるいナニカが頭に直撃した。
真っ赤なソレはトロミを持っていて、ベッタリと作業服へ絡み付く。
「こ、これは…。ッ?!こ、これ絶対さっき食べられてた作業員の内臓だ!!!最悪ッちょっと口に入ったァァッ!」
——————ピチョンッ。ピチョンッ。
最悪だ…最悪だッ…最悪だァア!!!
何だよ降下制御装置も壊れて内臓シャワーくらって!!!
あー…でも…ッ。
生きてて良かったッ…。
その瞬間、鼓膜が破れそうな程の轟音が空に響き渡った。
——————パキッ、パキパキッ!!!
目線を上げると空に大きな空間が開いていた。
「…何だアレ。」
黒くて大きな丸が空にある。本当にソレしかわからない。
「でかい…一体何キロあるんだアレ…」
——————ゴォォォォォーーーンッ!!!
「鐘の音…?」
口に入った内臓をペッと吐き出し、口元についた血液を拭い考える。
——————ゴォォォォォーーーンッ!!!
鳴り響く鐘の音を聞いて思い出した事がある。
何か有事のあった時や、避難が必要な時に限ってヴェルサイユが鐘を鳴らすと聞いた事がある。
私はまだ16年しか生きていないからこの都市で頻繁に起こっている有事なんか経験した事ないからわかんないけど…。
——————ゴォォォォォーーーンッ!!!
——————バシャッンッ!
また誰かの内臓が落ちてきた。
「ヒェッ!!!」
しかし、この内臓の量…何かおかしい。
さっきゾンビに食い散らかされた作業員1人が出せる内臓の量じゃない。
上へ避難した作業員に何かあったのか…。
いや、絶対なにかあっただろ!!!
頭を整理する間も無く事態が動いた。
空に開いた空間から、人を蔑んだ様な傲慢な声が聞こえて来た。
《こんにちは動物の皆さん。ゲロゴミのお前らに名乗る名前なんてないけど、そうね。“222”とでも呼んでちょうだい。》
さっきゾンビに食い散らかされた作業員1人が出せる内臓の量じゃない。
“1人が出せる内臓の量”
パワーワード過ぎる。




