〔第41話〕海岸の水中にUFO
心の声が兎の時とフブの時がややこしくなってしまいました。すみません…。
出来るだけ物語を兎視点で書きたいです。
「なんだ…?」「一体何が目的だ!?」「どうすればいい!」
みたいな感じで読める様にしたいです。
ビルを出るとすぐ横に首の無いムキムキゾンビが倒れていた。
「ななななッ…」
「アタシが殺った奴だ。もう動かねェ気にすんな。」
カンネ•ロードがこれを…。
やはりこの3人はとんでもなく強いらしい。
味方…になったら心強い事この上ないが、世の中そんなに都合よく行かないだろう。
空は相変わらずロボットと大量の飛行艇が争っている。
前にカンネ•ロード、エウレカ、後ろにカスミ、前後で守られる形の隊列を組んで歩いている。
何というか、この人達が信用に足る人物か否かは置いておいて、今私達の目の前にどんなバケモノが現れても守ってくれそうな安心感がある。
少しだけ気を緩めたフブが前にいるカンネ•ロードに話しかける。
「結局222って何?」
カンネ•ロードが空を指差して言った。
「アレだ。」
「…え?」
フブは戸惑いながら空を見る。
恐らくマンションが爆散する前に望遠鏡で見たあのロボットだ。
アレが222なのか…?
「アイツ飛行艇、沢山堕としてるけど…。あんなロボット一機がこの国の軍を何とかできると思わないけど…」
「どんだけ強くても流石にあの数を相手するのにはァ時間掛かると思うが、正直アタシもお前と同じ意見だ。アイツ一機で同行できるとは思えねェ…けど、いずれわかる。」
「え…それって、」
その言葉に詰まるフブを横目に兎が空を見て呟いた。
「すすす凄く強いけど…1人っていうのが弱点…。数で押せばボロが出るかもしれない…ねねね燃料だって無限じゃ無い…はずだから…」
兎の言葉を聞き、カスミが関心した様な表情で兎の頭を撫でた。
「そうだ、サキミネ兎。まだ子供だが非常に頭が回るな。偉いぞ。でも、事象と呼ばれる存在はそんなに甘く無い。」
急に頭を撫でられた兎は怯えて腰を抜かす。
——————ドスッ。
「ひひひひぃッ…」
「兎、大丈夫!?カスミに何かされたの!?」
カスミは戸惑い弁明する。
その姿を見たカンネ•ロードは神妙な顔でエウレカに言う。
「この情け無いのが222に対抗する為のカードっかァ…。信じらんねェな。」
カンネ•ロードの罵倒めいた言葉に腰を抜かして歩けなくなった兎をコアラした状態でフブが怒る。
「そっちの勝手な事情の癖に!悪く言わないで!」
「お前ェもめんどくせェなァ!」
一同は一台も車が通らない大通りに出た。
静かだ。
私達が歩いている足音しか聞こえない。
ていうか…私またフブにおんぶされてる…。
惨めだ。
情け無いな…。
静かな大通り兎はある物を見つけた。
「ふふふフブ…フブ!」
「どうしたの?」
「あ、あああれ!」
兎の視線の先、広い道路の中央にポツンと置かれた見覚えのあるドローン。
フブが背中に兎を連れてドローンの,元まで走る。
「このドローンってあの時マンションから飛ばした兎のやつじゃない?!」
「そそそそう…」
小学生のランドセル程ある大きさのドローン。
「結構でかかったんだねこのドローン。」
「そそそう、結構でかい…」
ドローンをまじまじと見る2人。
急に隊列から外れた2人をやれやれと言った表情で見守るカンネ•ロードとカスミとエウレカ。
しかし、カスミは棒の様な武器に手をかけている事から警戒は怠っていない様だ。
「ねぇ、ドローンに何か書いてある。」
「そそそそういえばあの時、サイン描きたいって言ってたね…」
「んーなんて名前なんだぁ〜え…」
フブがその文字を読み始めた瞬間絶句する。
「ななな何が書いて…」
兎がフブの背中からドローンを覗き込む。
そしてそこに書かれた文字を読み上げる。
——————「お帰りなさいベリエッタ。」
「え、あの噛まれて死にかけていた女の人がこれを書いたって事だよね?これサインじゃないよね?!」
「ななな何…ベリエッタって何…だだだ誰…」
2人の疑問が絶えない。
その謎の自分ベリエッタに酷似していると言われ続けたフブ。
そして何より不思議なのはドローンカメラから私達の顔が見えるはずもない事だ。
この文字を書いた女は一体、私達の何を知っていてこの文字を書いたのだろうか。
「ねぇ゛ーーー!!!ベリエッタ誰って!教えてよ!カンネ•ロード!!!」
怒るフブにカンネ•ロードは冷静に答える。
「昔いた仲間だ。」
「しょ、しょしょしょ詳細も教えて…」
兎が更に追求しようとした所、空から毎度の事飛行艇が落ちてきた。
それに瞬時に反応したカスミが腰につけていた機械を瞬時に通常の状態の大きさに戻して空を飛んだ。
そして、カスミは再び青白い光と共に堕ちてきた飛行艇を粉砕する。
——————ドゴォォォオンッ!!!
カンネ•ロードはそれを一瞬チラッと見た後、まるで何事もなかったのかの様に話を続ける。
「エウレカと同じ種類の人間だった。が、突然居なくなった理由はわからない、以上だ。」
話すカンネ•ロードの顔はどこか、さびさや懐かしさを感じさせる表情になっていた。
「私がそのベリエッタって人と瓜二つなのはわかったけどさ、そのベリエッタって人エウレカと同じで死なないの?」
「あぁ。」
カンネ•ロードは上から落ちてくる小さな飛行艇の残骸をノールックで横に交わした。
それに兎は驚きビクッとするがフブはカンネ•ロード同様そこに突っ込まない。
「ねぇ、貴方達の仲間残り何人いるの…?」
「あ…?今、地上でサキミネを探している人数か?それェとも、周回移動都市での事かァ?」
「その、周回移動都市ってのがよくわからないけど…サキミネを地上で探している人の人数を教えて。」
「5万人だ。」
「え…」
「ななななッ?!」
「全員エウレカの様ォに、その身分を偽装している。そしてェ数ヶ月前から作戦を開始して今日やっとお前を見つけたサキミネ。」
え、5万人って一十百千万の万だよね?!
周回移動都市っていうのがまだちょっとよくわからないけど、そんな大人数に私が探されていた…?
「クソガキィ2人、行くぞ。」
ドローンを見に来た2人はカンネ•ロードに言われるがまま道を進み始める。
またさっきと同じ陣形で歩く。
意外な事にゾンビかなかなか姿を表さない。
まだ大通りに出てきてからは見ていないが、その代わり空から飛行艇がよく堕ちてくる。
そしてカスミがそれを粉砕し、カンネ•ロードとエウレカが細かい落下部品から私達を守っている。
「お前らァ、ドローン?って奴に書いてた“ベリエッタお帰りなさい”っての、本当に書いた本人について知らねェんだろうなァ?」
歩きながら威圧的に聞くカンネ•ロード。
兎はフブの背中で震えているだけで何も答えようとしない。
その代わりに毎度の事の様、フブが答える。
「私が知りたいぐらい。その人に関してはカンネ•ロードも把握していないんだね。」
「あぁ。行方不明になったァベリエッタの情報があれば拾っておきたい。」
「仲良かったんだね。いつぐらいに行方不明になったの?」
「ずっと昔だ。」
「つまりいつぐらい?」
「何千年も前の事だ。」
「ふふっ、ふふふっ。ちょ、そんな不意打ちで笑かさないで…」
くすくす笑うフブ。
カンネ•ロードはフブの頭を1発ドツいた。
——————ゴッ。
「痛ァッ!!!ねぇ゛ーーー!!!」
「ぞぞぞゾンビ…見かけないね…」
カンネ•ロードとやいやい言い合っているフブに兎が話しかける。
「確かに…言われてみれば、全然見かけないね。」
「P個体が出てきてねェからだ。まだほとんどこん国ィの人間、死んでねェだろ。」
「みみみ皆んな隠れてるって事…?」
「あぁ、そォーだ。ホテルや密集地帯にいた奴らは流れで死んだだろうがなァ。」
「P個体が出てきただけでそんな事になるの…?」
フブの疑問はもっともだ。
「あぁ。今のゾンビは家の壁を破壊できねェだろ。だがな、P個体は家の壁どころか鉄の壁すら破壊できる。」
「つつつつまり…隠れる場所が無くなるって…事…?」
「えぇ?!やばいぢゃん!でも、そいつをカスミの武器とかでバーンッ!って殺せばいいぢゃん!」
「出来ねェんだよ。首の頸椎が硬すぎてどんな鋼鉄でも破壊できない。普通のやつと違って頭潰しても死なねぇんだよ。」
するとそこに、エウレカが話に割り込んできた。
「でもね、カンネ•ロード様だけはP個体の首を落とせるんだ。」
「えぇ?!鋼鉄より硬いのに?!ていうか、私その手で殴られたの?!」
「プッ。」
その言葉にカスミが吹き出した。
「ねぇ゛ーーー!!!笑わないで!」
「あぁ、すまないすまない。」
フブは何だか今日も、いつも通り誰とでも気軽に話して仲良くしている。
こんな状況でもそれは変わらない。
「なななな何で…カンネ•ロードは、そそそその鋼鉄より硬いP個体の頸椎落とせるの…」
カンネ•ロードは自分の両手を使って説明し出した。
「んーそォだなァ…捻り方ァってのがあんだよな。なんつゥーか、弱いポイントがあんだよ。」
それを聞きエウレカが誇らしげに言う。
「それが出来るのがカンネ•ロード1人なんだ。僕達もそれが出来たらいいんだけどねぇ…」
「カスミや、エウレカのチカラを持ってしても、そんなに難しい事なの?」
フブはが悪意の無い純粋無垢な表情で聞く。
その言葉にエウレカが自分の不甲斐なさを噛み締める様に笑いながら返す。
「そうなんだ。僕ももっと強くならなければならないな。ハハッ…。」
———————————————#####
何時間歩いたのだろうか。
私はずっとフブにコアラされていただけなのだが…。
「かかかカンネ•ロード…後どれぐらいで目的地に着くの…」
たどたどしく聞く兎にカンネ•ロードが答える。
「明日の昼ぐらいだ。」
それを盗み聞きしていたフブが文句を言う。
「長いぃ…。ねぇ、どこまで行くつもりなの。」
「そこまで距離は進まねェ。」
「あああ後ちょっとで着くの…?」
「P個体がまだ居ないからって気ィ抜くなよ。敵はゾンビだけじゃねェ。その短距離を慎重に進んでんだァよ。」
それを聞きフブが神妙な面持ちで呟く。
「メイトン…みたいな奴が…兎を狙ってる…のか…」
「メイトンが所属する連合、ソイツらは常にサキミネを殺そうとしている。」
「わわわ私…人気者…」
兎の気の抜ける様な発言に周りがざわつく。
「え?」
「は?」
「ぷっ。」
「え?」
そろそろ日も落ちてくる頃だ、飛行艇もかなりの頻度で落ちてきている。
もう普通の建物の中で休む事はできないだろう。
地下でないと飛行艇が毎度のこと落ちてきた時、無事でいられないだろう。
「海岸まで行く。」
カンネ•ロードの提案に兎が少し大きな声で返す。
「だだだダメ…海岸は飛行艇が落ちてきても逃げる場所無いし…まま周りが開けているし…そそそれに、うう海から攻撃されるかもしれない…。」
カスミは兎の頭を撫でてもう一度さっきみたいに褒めながら話す。
「なかなか鋭いな。しかし、海岸に私達の仲間が待機しているきっとどこよりも安全だ。」
頭をカスミに撫でられた兎はフブの背中で小刻みに震えている。
「ねぇ゛ーーー!!!兎に触らないで!シャー!!!」
まだ、フブの警戒心はマックスだ。
その事実にカスミは少し哀愁漂う顔をした。
「何だか、その顔と声で話されると本当に…」
大通りを抜け、真っ直ぐ。
緑豊かな自然の目立つ道を進む。
いよいよ海岸の側まで来た事を感じさせる若干の塩の匂い。
久しぶりの海。
少し、ほんの少し心が躍る…。
こんな状況じゃなければ素直に喜べたのに。
今や私達2人はカンネ•ロード達の捕虜同然だ。
私の技術を奪いたい海外のスパイ…なんて事もあるかもしれない。
しかし、カスミのSF的な機械といい…カンネ•ロードの常人には到底出来なさそうな動きといい…エウレカのドス黒い騎士の姿といい…現代の技術を遥かに超越している。
もし、もしだ。
都合の良い話甚だしいが、カンネ•ロード達が味方になったら、きっとこんな世界でも楽に生きていけるだろう。
でも、そんな人が私に何かを求めている。
その要求に答えられなければ私達は殺されるのだろうか?
あっという間に海岸沿いへ着いた。
漁師の船が数隻並んでいるだけのなんて事ない港。
カンネ•ロードの仲間らしき人は1人も見つけられないが…。
——————ガヒュンッガヒュンッ。
カスミが自分の腰にひっさげている巨大な機械から銃の様な形状の何かを取り出した。
(形的に信号銃…か?超小型のバズーカ…?)
そして、海の“中”に向かって信号弾の様な物を撃った。
——————プシュンッ。
その信号弾が水中を数メートル進んだ後、大きく閃光を上げた。
その一瞬、水中の中が照らされ凄い大きなナニカが見えた。
「兎…アレって…」
「すすす凄い…大きい…」
海岸の水中には巨大な機械があった。
もっと詳細に言うと、細かい歯車が折り重なった様な巨大な機械が青白い光と共に水中に鎮座していた。
潜水艦…か?
いや、潜水艦にしては形状が歪すぎる気がする。
まるでUFOみたいな…。
「よし、乗んぞガキ共。」
エヴァンテの発言と現実のズレに気づく人はいないと思いますが伏線です。
細かい発言すぎて僕も忘れてしまうかも…(。∀ ° )




