〔第4話〕謎巨大建造物の中 着弾
誤字とか色々あったらごめんなさい。
『んー?これちゃんと映ってる?てか、電波届いてんの?すげっなぁー。あっどーも!俺の命は君の退屈を埋めるために使うぜ!配信開始ぃ!!!』
暗い廃墟のような通路を歩く。
ジメジメして辛気臭い…カビの匂いもする。
懐中電灯で先を照らすが、光は奥まで届かない。
うん、何も見えんな…。
『俺達、巨大建造物の足の部分に上陸したんすけど、中すげぇっすよ、なんつーか…廃墟。長らく使われてないような狭い通路がいっぱいで、時々部屋みたいなんがあるな。まぁ、まだ抜け出せてないって感じっすねぇ…。』
しばらく歩くと通路の奥から青白い光が見えた。
やっと通路の出口に辿り着いたのだ。
そこから見えた光景に圧倒される。
『いやぁーー…す、すげぇ…なんか廃れた街って感じだな…』
全長20kmの建造物に足が4本。
その足1本の幅、約5km。
その中に街があったって何らおかしくない広さだ。
先が見えないほど巨大な空間が広がっている。
でも、何故だろうか配信の画面から見える世界は退廃した日本の様な…旧首都の様な…いや、気のせいだろう。
『なんかあれだな、ファンタジーすぎてテーマパーク来てるみたいだな。あ、そういえばね。上、見て下さい。』
配信者がカメラマンに指示を出した。
カメラマンがカメラを上に向け配信の画角が一気に動く。
カメラは巨大な空間の天井に向けられた。
そこには大きなよく分からない青い発光体があった。
それは丸っぽくて、巨大でふわふわ浮いている。
この街の月…みたいな感じなのだろうか。
『あれのおかげで視界が明るい訳ですね〜なんか不思議っすね。あーやべぇ、ガチどこから来たんだよこんな建造物(笑)未知の技術って感じっすね(笑)』
ヘラヘラしている配信者に兎とフブは少しCGや合成を疑った。
が、今はこの意味不明なファンタジーを解き明かすことにした。
まぁ解き方は配信を観るだけになるんだけど。
「えええ映画みたい…」
「そうだね〜…感ッ激ッだね…」
配信画面から妙な音がした。
——————ブァァァァァァァァア。
まるで遠吠えの様に聞こえる。
しかし、狼や野犬といった類いの鳴き声には聞こえず、獣っぽくもない聞いたことのない様な“鳴き声”だ。
『うわぁ…エイリアンとかいるんすかね。こっちの武器サバイバルナイフぐらいしかないっすよ。ハハハッ出会いたくないっすねぇ〜…え?おい、お前ら見つけろって?酷すぎんだろ…まぁ投げ銭くれたら考えん事もないな。』
配信者は、コメント欄に一喜一憂しつつ配信は進んだ。
ロープを張り下に降りる配信者。
数分降りた後、地面にたどり着いたらしくカメラの視点が真っ直ぐ前を向いた。
その視点の先には、まさに現代のコンビニだった。
『すげぇ…コンビニあんじゃんっ!タバコとか置いてねぇかなぁ?中には〜いや、ガラス汚れすぎててなんも中見えねぇよ…。あっ、カメラマンからカメラ奪っちった。』
配信者はコンビニの自動ドアをこじ開けようとするが何かに引っかかり上手く開けれないようだ。
出演者の1人が鉄パイプのような物をどこからか拾ってきて配信者に渡す。
『ん〜…バチ当たりな気がする…けどまぁいこうぜぇ!』
———バリィンッ!
自動ドアのガラスが割れる。
中はとても汚く、いかにも廃墟の中って感じだ。
埃がすごい。
『うぇ棚の物腐ってる。んー…商品も字すら読めねぇよはっはっ。』
鉄パイプを持ってきた出演者の1人が配信者に声をかけてボソボソ何かを話している。
何かを話し終えるとカメラの前に近寄ってきて何かを見せてきた。
『あー、これ見える?ピント合うかな…これ、奇跡的に生き残ってるポテチっぽい奴があったんだけど、ほらっこれ見てこんな文字見た事ないぜ俺。うわぁ〜ガチで宇宙人とか地底人なのかなぁ〜くぅ〜。ロマンあるねぇ〜。』
日本語でもロシア語でも英語でも中国語でも韓国語でも無い。
見たことの無い異様な文字がそこにあった。
配信者はポテチを開けて食べるふりをしては視聴者を煽って笑っている。
——————カァンッカァンッカァンカァンッ。
その時、配信者の後ろで硬い何かををぶつけ合わす様な音が聞こえた。
『よし、お前ら一旦身を隠せ。いいな?多分自動ドアのガラス、割った音で“ナニカ”に場所がバレた。んー散開してAプランだ。』
なんと判断がよろしい様で、ただの馬鹿な配信者では無いんだな、と視聴者の誰もが思ったであろう。
その判断の早さに兎も納得する。
(あーこの人達、多分元軍人とかかな…)
フブは配信者の行動に感服していた。
「ねぇー、出たよ。プランAとかプランBとかの奴!」
「わわ私も初めて本格的に使ってる人見た…」
配信者は散開する前にカメラマンから再びを奪い取り、己を映す。
『皆んな俺が見たいんだろ?』
———相変わらず視聴者の扱いをわかってるなこの人…。
兎は感服する。
『え、俺は逃げないのかって?はっはっ笑わせんなよ。そんなモンスターが居るなら見たいに決まってんだろ!おい、コメントで好き勝手心配してくれるのはいいが、男なら誰だってモンスターの一つや二つ見たいだろ!』
あっ、ほんとに残るんだ…。
何というかプロ意識って凄いなぁ。
男の子ってモンスターの一つや二つ見てみたいものなんだな…。
危険をかえりみず好奇心を満たす気持ちはわからんでもないが命を危険にさらしてまでもみたい物なのだろうか。
『しーッ…“ナニカ”きた…』
———カァッカァッカァッカァッカカカカッ。
配信の画面は地面を映し辺りが見えないが音声はしっかり聞こえてくる。
何とも言えない音が耳に入ってくる。
———パリッ、パリッ、パリッ。
“ナニカ”がコンビニの入り口にいる。
その“ナニカ”が配信者が割った自動ドアのガラスを踏んでいる。
その“ナニカ”と配信者の距離は3メートルもないだろう。
『…』
地面を映していただけの画角がゆっくり持ち上がる。
———カッカッカラカラッカカッ。
画面に映ったのは配信者の顔だった。ジェスチャーで音の方を指さして、その方向にカメラを向ける。
———カッ…カッカッ。
その画面に映ったのは脊椎が剥き出しになっている人の様なバケモノだった。
人にしてはシルエットが横に大きく、縦に足りない。
そして見た感じ四足歩行に見えるがあまり詳細が見えるまで映っていない。
———パリッ、パリッ、パリッ、カッカッカッ。
不気味な音が響く。
棚の影に隠れている配信者に“ナニカ”が近づく。
画面が急回転して配信者の顔を再び映し出す。
ハラハラしている顔を映しながらコメントを見ている様だ。
なんかここまでして承認欲求を満たしたいのかと思うと怖くもある。
———カランッ…。
コンビニのレジ下から缶が転がる音がした。
その瞬間、脊椎が丸出しの四足歩行の“ナニカ”が音の鳴った方へ飛びかる。
———ブァァァァァァァァアッ!!!
『う、うわぁぁあああっ…!!!』
——————ブシュッ。
画角は配信者を映している。
配信者は口をポカンと開け状況を読み込めていない様子だった。
再び画面が急転回して悲鳴が聞こえた方へカメラが向けられる。
———クチャックチュッバリバリッ。
映された映像、レジの後ろの壁に綺麗な放物線を描いた血飛沫があった。
大きな四足歩行の“ナニカ”がレジで人間をムシャムシャ食べている。
『スタッフが1人やられました。ヤベェって…これ…とりあえず逃げます。』
“ナニカ”が食べるのに夢中になっている隙に配信者は立ちあがろうとする。
しかし、映された画面は静止した。
『待って…なんか…聞こえる…。』
——————カタカタカタカタカタ。
小声で言う配信者。
棚に置かれていたジャムなどお酒、小瓶系の物が小さく振動し出した。
『やばい、これはなんかヤベェ奴がこっち来てる…奴だ。」
配信者は最初に目に入ったジャムを手に取り、自分が逃げる方向とは真逆の方向に投げた。
———バリィンッ。
“ナニカ”は音のなった方へ飛びつく。
が、そこには割れたジャムしか無い。
『残ったやつ今すぐ逃げろぉ!!!!!』
揺れが次第に大きくなる中、配信者はコンビニに残っているであろう他の仲間に向けて叫ぶ。
“ナニカ”は複数の事が同時に起こったからなのか一瞬、硬直する。
しかし、すぐに声の出した配信者の方へ向かう。
配信者は全力で逃げる。
カメラを後ろに向けて“ナニカ”を映しつつ逃げる。
「ねぇー、凄いね兎…ほんとに映画みたいだよこれ…」
「なななんかそこら辺のホラー映画より緊張感ある、ね…」
“ナニカ”から隠れていたであろう数人のスタッフがバラバラに走り出す。
食われた1人を除いて5人ぐらいだろうか、そんなにこの場に残っていたのかと少し呆れ気味になったがプロ意識というやつなのだろうか。
しかし、何かがおかしい。
配信者がコンビニを出て遠くへ逃げる様子が映っているのだが脊椎剥き出しの“ナニカ”の鳴き声以外の音が聞こえる。
逃げながら配信者も気になっていたようでカメラを後ろ向きから真っ直ぐ前に持ち替えて周りをキョロキョロ見渡している。
それはいた。
大量にいた。
コンビニから後ろを追いかけて来ているアイツでは無い。 その更に後ろにいた。
———ブルァァァアアアアアアアアア!!!
2人は画面に釘付けになった。
そこに映っていたのは大きな怪物でも獣でも脊椎が目立つモンスターでもない。
“ゾンビ”だ。
「うわぁぁぁぁぁぁあ。」
「わぁぁぁぁぁぁぁあ。」
2人はそれぞれ阿鼻叫喚した。フブはゾンビの大群をみて恐怖で、兎はゾンビが映って嬉しくて…。
『マジかヨォッ!!!情報量多すぎだろうボケェッ!!』
配信者はゾンビが押し寄せる様に怯えながら走る。
四足歩行の“ナニカ”は配信者を追いかける事を辞め、ゾンビの大群の方へ180度回転して走って行く。
四足歩行の“ナニカ”とゾンビの大群がぶつかってる隙に逃げる。
『そろそろ真剣に逃げないと死ぬわ(笑)じゃぁ生きてたらまた配信つけるねぇッ!!!』
配信は終了した。
何とも刺激的な映像だった。
何というか非現実を現実に落とし込んだみたいな印象がある。
CGにしては生々しく鮮明にそれは脳裏に焼き付いた。
「つ、次の配信楽しみだね…」
「あいつ死んでないかなぁ〜。」
「ああああの人なら多分しぶとい…ゴキ…みたい…だった…逃げ足…」
「ねぇ゛〜、ゴキッて…失礼でしょ…。あっ今日、何食べる?冷蔵庫に残ってる奴、結構あるからね〜…」
そうして今日も1日が始まる。
配信も見終わったので画面を地上波に切り替える。
『ニュース速報です。暴徒化したデモ隊が人に噛み付くといった暴力行為を行った為、38人がその場で現行犯逮捕されました。』
2人はそれぞれ動き出そうとした体を止めて再びソファに座った。
「今の聞いた?ゾンビだよねこれ?ふふっ。」
「ここここれはゾンビ映画の序盤そのものだぁ…」
「私達、これからこの世界が終わっても畑持ってるしねっ。」
「そそそそうだね…あっ、建物のメンテナンスも一様しなくていいから…持続的…」
「え、?そうなの?なんか兎の家っていうかマンションほんとに凄いね…」
「うん…高かった…」
「えっ…賃貸じゃないの?!」
「うん…」
「えぇ?!あ、あのぉぅ〜こんな事聞くのあんまりぃ〜よくないと思うんだけどぉ〜…ん〜…」
「もももじもじしないで、いいよフブなら…何でも聞いて。」
「えへへっ恥ずかしい事いってくれるじゃねぇかぁっ!じゃー…この部屋おいくら万円で?」
「え?」
「ん?」
「へへへ部屋?」
「あ、うん。」
「わわわたしこのマンション買った…」
「ん〜…ん?あー、んぇ?!スケールがち、違ったぁ…」
「ねね値段はあんまり覚えてないけど、この部屋作るのは…やや安かった…」
「ほげぇ〜…。安いわけねぇだろ!!」
そうなのか、価値観がわからない。
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私にお金目的で近づいてくる人は今まで山ほど居た。
でも私は分かる、その人のナニカが。
それは何か分からないけどフブのはなんかとても孤高で高潔で|綺麗だ。
だからわかる。
純粋に私という人間と向き合ってくれているのだと、私はそれに少しでも感謝の形を示したい。
でも私に出来ることなんてお金を渡すぐらいしかない、しかし、そんな事をすればフブは嫌がるだろうし怒るだろう。 私の取り柄ってお金とゲームぐらいしかないから…あっ…メカニックも出来るけど…。
こんなこと考えてるのも情け無い…フブはお金に変えられない物を私にくれているのに私は何も返せて居ない。
「ねぇ!今日のご飯一緒に作らない?!」
「んへぇ?!」
いきなり我に戻された。
その、日の光の様な笑顔に怯む。
あーそんなに体を揺らさないで今、色々考え事してて頭がいっぱいで、フブって力強い…最近首が折れそうなぐらい揺らされる。
「ねぇーーー!!!ハンバーグは?!?!ハンバーグは?!?!」
「ハンバァーグァ〜〜。」
揺らされながら喋ったら噛んだ。
「えぇ?!ハンバーガー?!いいねぇ私、作ったことないよ!これは某ハンバーガー店に喧嘩を売る時が来たと言う事だねぇ。」
「うん、そそそそうだね…倒そう…」
「あ、でも卵がそろそろ無いなぁ…でも外はゾンビだらけの設定だしなぁ…まぁ別にそこまでルール守る必要もないけど…」
あ、そういえば…そういう遊びをしてるの一瞬忘れてた。 急にフブが笑顔で兎の部屋の方へ走る。
それを見計らって兎がダッシュでフブの裾を掴み、引っ張る。
「兎の部屋にあるじゃん!!卵ぉお!!!」
「そ、そそそれは私が今孵化させようとしてるヤツだからダメぇ〜!!!」
それを聞いてフブは諦めたらしい。
フブは兎に向かって悔い改める様に言った。
「ごめんよ…そうだもんね、孵化したら何十個という卵を産んでくれるもんね…先の事を考えられない私をしばいてくれぇ…」
「いいい、いいよ…でも立派な鶏になったら卵天国だよ…外にはゾンビだらけで出られないしね…」
「うん、そうだね。後の祭りやでぇ!!!」
「にに肉いっぱいのハンバーガー作ろう…きっとジューシー…」
「そうだね。夢の欲張りバーガーを作ろう…」
そうして今日もキッチンに行くフブに付いていく兎。手を洗い料理が始まる。
何だか理想的な日々に思えるなんか束の間の夢を見てるみたいで実感が湧かない。
実はこの世界が私の走馬灯で今、死ぬ一瞬で数秒にも満たない時間なのでは無いだろうか、そう思えるほど楽しい…。
その時、スマホから緊急速報のサイレンが鳴った。
——————ビィービィーッ。
「んぇ?!また?!」
「…ん?」
2人はポケットのスマホを同時に見る。
それよりも早く状況を伝えるテレビの速報の音。
『また速報です。突如太平洋に現れた謎の巨大建造物が旧首都東京に飛翔体を発射したとの事です。尚、このミサイルと思われる飛翔体は既に着弾していると報告が上がっています。この後緊急で記者会見が開かれる予定です。』
「えぇ、日本の防衛システムざるじゃん…」
「ごごごめん…」
「なんで兎が謝るのさ?」
「あっななななんとなく…」
「ふふっへんなの。」
そしてテレビの画面が切り替わり、記者会見に移った。
記者会見早ッ…。
戦争が多いい嫌な社会だからかな…。
『サキミネ防衛大臣、このミサイルと思われる攻撃は宣戦布告と受け取っていいんでしょうか?その国家とはどこの国家の事でしょうか?』
『えー現段階で把握はしておりません。が我が国家はこの事態を重く捉え友好国と共に収集をはかる予定であります。』
『つまり、現段階を持って私達の国は戦争状態に入ったという事で宜しいでしょうか大臣?』
『旧首都東京の焼け野原に飛翔体を落とす。この事は立派な宣戦布告であり、許されざる事態です。我が国は戦争状態に入ったと言えるでしょう。』
その重い言葉に記者達が揺らぐ。
『サキミネ防衛大臣、私達の国家はどの様な方法で巨大な建造物に“報復”するのでしょうか?』
『その質問に関しては軍事機密に反している為お応えすることができません。』
防衛大臣の会見はあーでもない。こーでもない。と言った質問で時間が削れていった。
「ねぇ!!!兎!!!見てぇ!!!」
記者会見の最初の方だけ見て後は適当に窓の外を眺めていたフブが兎の体を揺らす。
あー脳みそが揺れるよ…首痛い。
何気なく首を自分で揉んだ後に言われた方向を見る。
「え…な、なにあれ。」
花火の粒より多く、降る雨より少ない。
目を疑うほどの戦闘機と戦闘機準飛行艇が旧首都の方向へ向かっていくのが見える。淡く光る戦闘機達のランプが散り散りにばら撒かれてにじむ。
「ねぇ兎、これって、花火みたい…。」
フブ「花火みたい…」
兎(アメリカで大量発生するバッタみたい…)