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周回移動都市ヴェルサイユ  作者: 犬のようなもの
長くて短い君と私のエピローグ
4/6

4話 謎巨大建造物の中 着弾

誤字とか色々あったらごめんなさい。




『んー?これちゃんと映ってる?てか、電波届いてんの?すげっなぁー。あっどーも!俺の命は君の退屈を埋めるために使うぜ!配信開始ぃ!!!』


暗い廃墟のような通路を歩く、懐中電灯(かいちゅうでんとう)に照らされた先にも闇。その先も闇。


『俺達巨大建造物の足の部分から上陸したんすけど、中すげぇっすよ、なんつーか…廃墟。長らく使われてないような狭い通路がいっぱいでまだ抜け出せてないって感じっすねぇ…あっ!!』


光の差す方向から風が吹きカメラに映っている前髪が揺れる。先を進む足音と響く配信者の声が反響して不気味なハーモニーをかもしだす。


『とうとう本堂のお出ましって訳ですか!!いやぁーー…す、すげぇ…なんか廃れた街って感じだな…。」


配信者はその光景に絶句した。全長20kmの建造物に足が4本その足の1本の幅5km、街があったって何らおかしくない広さだ。でもだぜだろうか配信の画面から見える世界は退廃した今の日本の様な…いや、気のせいだろう。


『なんかあれだなファンタジーすぎてテーマパーク来てるみたいっすね。あ、そういえばね上見て下さい。』


カメラマンがカメラを上に向け配信の画面が一気に動く。そして見上げられた上に何かよく分からない青い発光体があった。


『あれのおかげで視界が明るい訳ですね〜なんか不思議っすね。あーやべぇ、ガチどこから来たんだよこんな建造物(笑)未知の技術って感じっすね(笑)』


ヘラヘラしている配信者に兎とフブは少しCGや合成を疑ったが今はこの意味不明なファンタジーを解き明かすことを優先した。まぁ解き方は配信を観るだけになるんだけど。


「えええ映画みたい…」

「そうだね〜…感ッ激ッだね…」


配信画面から妙な音がした。


ーーーブァァァァァァァァア


まるで遠吠えの様なしかし、狼や野犬といった鳴き声ではなく獣っぽくもない聞いたことのない様な“音”だ。


『うわぁ…エイリアンとかいるんすかね。こっちの武器サバイバルナイフぐらいしかないっすよハハハッ出会いたくないっすねぇ〜…え?おい、お前ら見つけろって酷すぎんだろ…まぁ投げ銭くれたら考えん事もない。』


コメント欄に一喜一憂しつつ配信は進んだ。ロープを張り下が見えない場所に降りる配信者。数分進んだ後地面にたどり着いたらしく配信の画面が真っ直ぐ前を向いた。そこに映っていた光景はまさに現代のコンビニだった。


『すげぇ…コンビニあんじゃんっ!タバコとか置いてねぇかなぁ?中には〜いや、ガラス汚れすぎててなんも中見えねぇよ…。』


配信者はコンビニの自動ドアをこじ開けようとするが何かに引っかかり開けれないようだ。出演者の1人が鉄パイプのような物をどこからか拾ってきて配信者に渡す。


『ん〜…バチ当たりな気がする…けどまぁいこっうぜぇ!』


ーーーバリィンッ!


自動ドアのガラスが割れてコンビニの中があらわになる。中は汚くいかにも廃墟の中って感じだ。


『うぇ棚の物腐って字すら読めねぇよはっはっ』


鉄パイプを持ってきた出演者の1人が配信者に声をかけてボソボソ何かを話している。配信者が何かを話し終わるとカメラの前に近寄ってきて何かを見せてきた。


『あー、これ見える?ピント合うかな…これ。奇跡的に生き残ってるポテチっぽい奴があったんだけど、ほらっこれ見てこんな文字見た事ないぜ俺。うわぁ〜ガチで宇宙人とか地底人なのかなぁ〜くぅ〜』


日本語でもロシア語でも英語でも中国語でも韓国語でも無い。見たことの無い異様な文字がそこにあった。配信者はポテチを開けて食べるふりをしては視聴者を煽って笑っている。


ーーーカァカァカァカァカァカァッ。


その時配信者の後ろで甲殻類が背中をぶつけ合わす様なホラー映画でモンスターが出す音が聞こえた。


『よし、お前ら一旦静かに身を隠せ。いいな?ガラスの音で何かに場所がバレたから散開(さんかい)してAプランだ。


なんと判断がよろしい様でただの馬鹿な配信者では無いんだなと視聴者の誰もが思ったであろう。その判断の早さに兎も納得する。


(あーこの人達、多分元軍人とかだな…)


フブは配信者の行動に感服(かんぷく)していた。

配信者は散開する前にカメラマンからカメラを奪い己を映す。


『皆んな俺が見たいだろ?』


相変わらず視聴者の扱いをわかってるなこの人…人気が出る理由もわかるなぁ。この人その音の正体をカメラに映すまでここに残りそうだな…


『え、俺は逃げないのかって?はっはっ笑わせんなよ。そんなモンスターが居るなら見たいな決まってんだろ!おい、コメントで好き勝手心配してくれるのはいいが男なら誰だってモンスターの一つや二つ見たいだろ!』


あっ、ほんとに残るんだ…兎の予想は見事に的中した。何というかプロ意識って凄いなぁ。男の子ってモンスターの一つや二つ見てみたいものなんだな…危険をかえりみず好奇心を満たす気持ちはわからんでもないが命を危険にさらしてまでもみたい物なのだろうか。


『しーッ…“ナニカ”きた…』


ーーーカァッカァッカァッカァッカカカカッ


配信の画面は地面を映しており辺りが見えないが音声はしっかり聞こえてくる。何とも言えない音が耳を舐める。


ーーーパリッ、パリッ、パリッ。


恐らくコンビニに入る時割ったガラスを踏んでいる音だろう。聞いた感じその“ナニカ”と配信者の距離は3メートルもないだろう。


『…』


ゆっくりカメラが持ち上がり画面の視点が上がる。


ーーーカッカッカラカラッカカッ。


画面に映ってのは配信者の顔だった。ジェスチャーで音の方を指さしてその方向にカメラを向ける。


ーーーカッ…カッカッ。


その画面に映ったのは脊椎(せきつい)が剥き出しになっている人の様なものだった。人にしてはシルエットが横に大きく縦に足りない。そして見た感じ四足歩行に見えるがあまり詳細が見えるまで映ってない。


ーーーパリッ、パリッ、パリッ、カッカッカッ。


不気味な音が棚の影に隠れている配信者に近づく。画面が急回転して配信者の顔を映し出す。ハラハラしている顔を映しながらコメントを見ている様だ。なんかここまでして承認欲求を満たしたいのかと思うと怖くもある。


ーーーカランッ…


コンビニのレジ下から何かが転がる音がした。その瞬間脊椎が丸出しな四足歩行のナニカが音の鳴った方向へ飛びかかった。


ーーーブァァァァァァァァアッ!!!


『う、うわぁ助けッ…』


ーーーブシュ


画面に映る配信者の顔は口をポカンと開けてこの世の物では無い物を見た目をしていた。再び画面が急回転して悲鳴が聞こえた方へカメラが向けられる。


ーーークチャックチュッバリバリッ。


映された映像はレジの後ろの壁に綺麗な放物線(ほうぶつせん)を描いた血飛沫(ちしぶき)があった。大きな四足歩行のヤツがレジ下の人間をムシャムシャ食べている。


『スタッフが1人やられました。ヤベェって…これ…とりあえず逃げます。』


ナニカが食べるのに夢中になっている隙に配信者は立ちあがろうとする。しかし、映された画面は静止した。


『待って…なんか…聞こえる…』


ーーーカタカタカタカタカタ。


小声で言う配信者。棚に置かれているジャムなどが小さく振動しだした。配信者は目に入ったジャムを手に取り自分が逃げる方向と反対の方向に投げ付けナニカの気を引く。


『残ったやつ今すぐ逃げろぉ!!!!!』


揺れが次第に激しくなる中、配信者はコンビニに残っているであろう他の仲間に向けて叫ぶ。ナニカは複数の事が同時に起こって少し周りをキョロキョロした後、最初の音のしたジャムの方へ行く。配信者は逃げる時もカメラを後ろに向けてナニカを映していた。


「ねぇ、凄いね兎…ほんとに映画みたいだよこれ…」


「なななんかそこら辺のホラー映画より緊張感ある、ね…」


ナニカから隠れていたであろう数人のスタッフがバラバラに走り出す。そんなにこの場に残っていたのかと少し呆れ気味になったがプロ意識というやつなのだろうか。


ーーーギュガァァァァァァァアッ!!!


2人は画面に釘付けになった。そこに映って居たのは大きな怪物でも獣でも脊椎が目立つモンスターでもない。


“ゾンビ”だ。


「うわぁぁぁぁぁぁあ」

「わぁぁぁぁぁぁぁあ」


2人はそれぞれ阿鼻叫喚(あびきょうかん)した。フブはゾンビの大群をみて恐怖で、兎はゾンビが映って嬉しくて…


『マジかヨォッ!!!情報量多すぎだろうボケェッ!!』


配信者はコンビニの入り口から入りきれないほどのゾンビが押し寄せる様に怯えながら走る。四足歩行のナニカはゾンビの大群の方に走って行く。四足歩行のナニカとゾンビの大群がぶつかってる隙に裏口から全員が脱出する。


『そろそろ真剣に逃げないと死ぬわ(笑)じゃぁ生きてたらまた配信つけるねぇッ!!!』


後ろから追いかけてくるゾンビの大群を映して配信は終了した。何とも刺激的な配信だった。何というか非現実を現実に落とし込んだみたいな印象がある。CGにしては生々しく鮮明にそれは脳裏に焼き付いた。


「つ、次の配信楽しみだね…」

「あいつ死んでないかなぁ〜」


「ああああの人なら多分しぶとい…」

「ねぇ〜、あっ今日何食べる?冷蔵庫に残ってる奴結構あるからね〜…」


そうして今日も始まる。配信も見終わったので画面を地上波に切り替える。


『ニュース速報です。暴徒化(ぼうとか)したデモ隊が人に噛み付くといった暴力行為を行った為、38人がその場で現行犯逮捕されました。』


2人はそれぞれ動き出そうとした体を止めて再びソファに座った。


「今の聞いた?ゾンビだよねこれ?ふふっ」


「こここれはゾンビ映画の序盤そのものだぁ…」


「私達これからこの世界が終わっても畑持ってるしねっ」


「そそそそうだね…あっ、建物のメンテナンスも一様しなくていいから…持続的…」


「え、?そうなの?なんか兎の家っていうかマンションほんとに凄いね…」


「うん…高かった…」


「えっ…賃貸(ちんたい)じゃないの?!」


「うん…」


「えぇ?!あ、あのぉぅ〜こんな事聞くのあんまりぃ〜よくないと思うんだけどぉ〜…ん〜…」


「もももじもじしないで、いいよフブなら…何でも聞いて」


「えへへっ恥ずかしい事いってくれるじゃねぇかぁっ!この部屋おいくら万円で?」


「え?」


「ん?」


「へへへ部屋?」


「あ、うん。」


「わわわたしこのマンション買った…」


「ん〜…ん?あー、んぇ?!スケールがち、違ったぁ…」


「ねね値段はあんまり覚えてないけど、やや安かった…」


「ほぇ〜…」


なんだかフブがクジラみたいになってる…私にお金目的で近づいてくる人は今まで山ほど居た。でも私は分かる、その人のナニカが。それは何か分からないけどフブのはなんかとても孤高(ここう)高潔(こうけつ)で|綺麗だ。だからわかる。純粋に私という人間と向き合ってくれているのだと、私はそれに少しでも感謝の形を示したい。でも私に出来ることなんてお金を渡すぐらいしかない、しかしそんな事をすればフブは嫌がるだろうし怒るだろう。私の取り柄(とりえ)ってお金とゲームぐらいしかないから…こんなこと考えてるのも情け無い…フブはお金に変えられない物を私にくれているのに私は何も返せて居ない。


「ねぇ!今日のご飯一緒に作らない?!」


「んへぇ?!」


いきなり我に戻された。その陽光の様な笑顔に(ひる)む。あーそんなに体を揺らさないでぇ今色々考え事してて頭がいっぱいで、フブって力強い…最近首が折れそうなぐらい揺らされるぅ…


「ねぇーえ!ハンバーグは?!?!」


「ハンバァーグァ〜〜」


揺らされながら喋ったら噛んだ。


「えぇ?!ハンバーガー?!いいねぇ私作ったことないよこれは某ハンバーガー店に喧嘩を売る時が来たと言う事だねぇ。」


「うん、そそそそうだね…倒そう…」


「あ、でも卵がそろそろ無いなぁ…でも外はゾンビだらけの設定だしなぁ…」


あ、そういえば…そういう遊びをしてるの一瞬忘れてた。急にフブが笑顔で兎の部屋の方へ走る。それを見計(みはか)らって兎がダッシュでフブの(すそ)を掴み引っ張る。


「兎の部屋にあるじゃん!!卵ぉお!!!」


「そ、そそそれは私が今孵化(ふか)させようとしてるヤツだからダメぇ〜!!!」


それを聞いてフブは諦めたらしい。フブは兎に向かって悔い改める様に言った。


「ごめんよ…そうだもんね、孵化したら何十個という卵を産んでくれるもんね…先の事を考えられない私をしばいてくれぇ…」


「いいい、いいよ…でも立派な鶏になったら卵天国だよ…外にはゾンビだらけで出られないしね…」


「うん、そうだね。後の祭りやでぇ!!!」


「にに肉いっぱいのハンバーガー作ろう…きっとジューシー…」


「そうだね。夢の欲張りバーガーを作ろう…」


そうして今日もキッチンに行くフブに付いていく兎。手を洗い料理が始まる。何だか理想的な日々に思えるなんか(つか)の間の夢を見てるみたいだ。実はこの世界が私の走馬灯で今死ぬ一瞬で数秒にも満たない時間なのでは無いかそう思えるほど楽しい…


その時、スマホから緊急速報のサイレンが鳴った。


ーーービィービィーッ


「んぇ?!また?!」

「んぉ?!」


2人はポケットのスマホを同時に見る。それよりも早く状況を伝えるテレビの速報。


『また速報です。突如太平洋に現れた謎の巨大建造物が旧首都(きゅうしゅと)東京(とうきょう)飛翔体(ひしょうたい)を発射したとの事です。尚、このミサイルと思われる飛翔体は既に着弾している模様です。この後緊急で記者会見が開かれる予定です。』


「えぇ、日本の防衛システムざるじゃん…」

「ごごごめん…」

「なんで兎が謝るのさ?」

「あっななななんとなく…」

「ふふっへんなの」


そしてテレビの画面が切り替わり記者会見に移った。


『サキミネ防衛大臣、このミサイルと思われる攻撃は宣戦布告(せんせんふこく)と受け取っていいんでしょうか?その国家とはどこの国家の事でしょうか?』


『えー現段階(げんだんかい)で把握はしておりません。が我が国家はこの事態を重く捉え友好国と共に収集をはかる予定であります。』


『つまり、現段階を持って私達の国は戦争状態に入ったという事で宜しいでしょうか大臣?』


『旧首都東京の焼け野原に飛翔体を落とす。この事は立派な宣戦布告であり許されざる事態で我が国は戦争状態に入ったと言えるでしょう。』


その重い言葉に世界が揺らぐ、いつもの平和はビー玉の様に真っ直ぐ転がり机から落ちた。


『サキミネ防衛大臣、私達の国家はどの様な方法で巨大な建造物に“報復”するのでしょうか?』


『その質問に関しては軍事機密に反している為お応えすることができません。』


防衛大臣の会見はあーでもない。こーでもない。と言った質問で時間が削れていった。


「ねぇ!!!兎!!!見てぇ!!!」


記者会見の最初の方だけ見て後は適当に窓の外を眺めていたフブが兎の体を揺らす。あー脳みそが揺れるよ…首痛い。何気なく首を自分で揉んだ後に言われた方向を見る。


「え…」


花火の粒より多く、降る雨より少ない。

目を疑うほどの戦闘機と戦闘機準飛行艇が旧首都の方向へ向かっていくのが見える。淡く光る戦闘機達のランプが散り散りにばら撒かれてにじむ。


「ねぇ兎、これって、花火みたい…」






フブ「花火みたい…」


兎(アメリカで大量発生するバッタみたい…)



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