表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
周回移動都市ヴェルサイユ《原案》  作者: 犬のようなもの
《セカンドオーダー編》             サキミネを探せ〈前日譚〉
39/78

〔第36話〕その儀式は事象にまで届く

悪い事をしたって、その人が悪い人間とは限らない。

という人がいる。

では、悪い人間とは何なんでしょうか。

悪い人間とはお前らです。

犬以外なのです。


そして今それを否定したお前なのです。

死になさい。

 

 円を作っているゾンビ達が一斉に手を前に出しスクワットの様な動きをしている。

 しかし、スクワットとは明確に違う点が1つある。

 首を振っているのだ。

 ゆっくりリズムに乗るみたいに、首を上下横に動かしている。


「ななな何にあれ…」


『何だ…この動きは、初めて見たな。踊っているのか?』


「ねぇ…なんかこのゾンビ集団で動いてる時点でヤバくない…?」


 当たり前のフブの発言にその場にいた全員の顔がこわばる。

 確かにそうだ。

 今までそれが当たり前かの様に話していたが、ゾンビが集団行動しているのだ。

 しかも、今回モニターに映っているゾンビの動きはただの集団行動ではない。

 恐らくだが、何らかの意図を感じ取れる動きに見える。


「ラジオ体操してるみたいデスネ…」


「確かに…ねぇ゛ーーーやばい!」


「ななななんか…ヤバい気がする…」


 そして、再びモニターの映像に動きがあった。

 円状に広がっていたゾンビが全員、中央の方に体を向けて座り始めた。

 すると次は中央部に倒れかかっていた数十人のゾンビ達が立ち上がり出した。

 立ち上がったゾンビの中の1人のお腹が(ふく)らんでいた。


「妊娠…?」

「ゾゾゾゾンビ映画っぽい…」

「ナンカやばそうデスヨ、コレ…」

『ヤバい…アイツら進化してんのか?』


 モニターに映ったゾンビ妊婦は空いた円の中央に仰向けで寝っ転がり両手両足を大の字に広げた。

 次の瞬間、円の周りのゾンビ達が一斉に中央の妊婦ゾンビに飛び掛かり、その体を食べ始めた。


「うげぇ?!」

「ななななっ?!」

「ワタシ今すぐここから逃げ出したいデス。」

『このままこのホテルに居てはマズいな…』


「ねぇ゛でも、どうやってこのホテルから出るの?!」


 フブの疑問に美少年は苦い顔をして答える。




 ———『非常階段の5階からロープを垂らして降りる…』




「ヤバいデスネ…」

「けけけ怪我しそう…」

「…ん?私は25階から降りてるから平気だけどな…」


『ん?やっぱり君達だけ◯ッドブルチャレンジとかしてる?』

「ナンナンデスカ…アナタ…」


「ははは早くここから逃げたい…」


「もう5階の非常階段から無理やり下に降りてどっか遠くに逃げようよ。」


『消火栓の(くだ)を引っ張って下へ降りる予定だが、安全面に多少の不安がある。途中で下に落ちて怪我でもしたらその時点で詰みだからな。』


「んー…あ!私が先に下へ降りて、消火栓の管の端を遠くににくくりつければ管が斜めに張れてロープウェイみたいに出来ない?」


『…それはいい提案だ。君の負担が凄いけどね。』


「5階ぐらいならちょちょちょ〜いっといけますぜ。へっ!」


 そんな事を言いながらフブはフッと私の方を見る。

 しかし、私はそれに返さず、壁一面にある大量のモニターをジッと眺める。

 さっきの画面と何かが違う。

 妊婦ゾンビを周りのゾンビが飛び掛かったとか訳分からんことは起きたがそういう違和感じゃない。

 あっ…。


「かか数が合わない…」


「ん?どうしたの兎?」


『数とは何の事だ?』


「もももモニターに映るゾンビの数の変動が…」


「難しいコト言ってるネ…」


「ぞぞぞゾンビが少しずつホテルのどこかへ流れてる…」


「それってヤバいんじゃ…」

『なっ?!』

「どういうコトデスカ?」


「いい1階から少しずつ…上がってきてるかも…ゾンビが…」


『…事を急ごうか。兎とフブは消火栓の管を探してくれ。外国人(サム)は19階で保存食を人数分バックに詰めといてくれ。僕はバリゲートの強化に行く。今日中にここを出るぞ。』


 皆が(うなず)きそれぞれの行動を開始する中、私は美少年を引き留めて言う。


「せせせ洗剤…階段に撒けば滑って物理的に上がって来れなくなる…試してみて…」


『あぁ。わかった。』


 そんな会話がなされた後、兎とフブは今いる10階のセキュリティ制御室の廊下で消火栓を探す。

 それぞれの階の窓の近くに消火栓はあったのでそれを開き管を出す。


「よし、まずは1本目!」


「さささ3本は欲しい…」


「それぞれの階まわれば楽勝だよ!」


「そそそそうだね…頑張ろう…」







 ———————————————#####



 消火栓の管を4本集めた私とフブは早速5階の非常階段の場所まで降り、それをくくりつけに行く。



 ——————ガチャッ。



 5階に着き非常階段の扉を開けた瞬間、私とフブは絶句した。

 美少年の言う通り5階から下の非常階段は無くなっていた…

 が、その無くなり方が異常だった。


「ねぇ…どんな怪物がコレやったの…」


「…」


 捻じ曲げられた5階から下の非常階段。

 有りとあらゆる場所が粘土の様に捻じ曲げられている。

 本当に美少年が言っていた3メートルのムキムキゾンビの仕業なのだろうか。

 メイトン…では,ないのだろうか。

 不安が胸を締め付ける。

 そんな私を見てか、フブは私の背中を軽く叩いてくれた。



 ——————トントンッ。



「大丈夫、メイトンはいつか私がぶっ殺すから!」


「…うん。私も殺す。」


 2人は消火栓の管を非常階段にくくりつける。

 大人3人がぶら下がっても解けないほど強く結んだ。


「んじゃ、下も結びに行ってくるね!」


「…え?」



 ——————ヒュッ、カランッカランッ。



「よっ!!!」



 ——————タッタッタッ。



 フブは消火栓の管の先端を投げ落とした後、建物の(くぼ)みを足場に軽々地面まで降りた。


「…さ、猿みたい。」


 地面に降りたフブは瞬時に周りを見渡しゾンビがいない事を確認した後、ホテルから少し遠く離れた電柱まで走り消火栓の管をその電柱に巻きつけ始めた。

 ピンときつく張られた消火栓の管。

 45度の角度になった消火栓の管はロープウェイに早変わりした。


「すすす凄い…」


 完成するやいなや、フブは自分で作ったロープウェイを登り始めた。

 ナマケモノの様に逆さになって非常階段5階まで登ってくる。

 なんか…フブって軍隊の精鋭とかの人ではなかろうか…。


「ただいま兎〜。」


「おおお帰り…」


 息一つ上げず、スンとしている所を見ると尊敬の念が湧く。


「後はここをハンガーとかでゆっくり降りれば、大丈夫!」


「はははハンガーじゃスピード出過ぎるからタオルにしよう…」


「タオルだと、手離しちゃわない?」


「ばばバスタオルに両手を通す穴を作る…持ち手完成。そそそこにバンドかなんかで片手首と固定すれば安全…」


「いいね、流石っ兎!頭めっちゃ回るぅ〜。」


 ちょうどそのタイミングでサムと呼ばれていた外国人が大きなリュック4つを背負って私とフブの前に現れた。


「これ1つずつドウゾ。」


「あああありがと…」

「ありがとうサムゥくふぅん。コレ中身は何?」


「中身はこのホテルにあった高級缶詰デス。めっちゃいっぱい詰めときマシタ。」


「ややややった…」

「おぉ!最高ー!」



「それにしても…このロードウェイ凄いデスネ。てか、フブさん…これ1階、地面まで降りてません…?」


「凄いだろぉ。」


「ヤバすぎるデショ…オリンピック出れマスヨ…」


「とととりあえず、ばばばバスタオル…持ってこよう…」


「そうだね!サムはここで待ってて!」


 私とフブは適当な客室に入りバスタオルを数枚回収した後、もう一度5階の非常階段へ向かう。

 その途中7階での事。


「ねぇ、兎。」


「なな何んですか…」


「私、気づいちゃったかも…」


「どどどどうしたの…」


「麦茶って少量で売ってないよね?」


「う…うん…大体500mlからだよね…」


「やっぱりゴクゴク飲みたいからかな?」


「え…あー…うん、たた多分そうかも…」


 そんな会話をしながら非常階段へ出る。

 後は5階の所まで降りるだけだ。




 ——————ドタドタドタドタドタッ!!



 私達の上から非常階段を駆け下りる音が聞こえた。

 見ると美少年が上から物凄い急いでこちらへ降りて来ている。


「どーしたのー!!!」


『まずい事になった!!急いでこのホテルから出るぞ!』


「ばばバリゲートが突破されたのか…?」


『正解だ!!急げ!!君の洗剤を撒く提案がなかったら今頃全員食べられていたよ!!』


「ひぃ…」


「やばいよ兎!サム!美少年!早く行こ!ねぇ゛ーーー!!!早くして!!!」


『あぁッ、わかってる!!!』


 そして、3人は6階で合流し、非常階段の5階まで急いで降りた。



 ——————ダッダッダッダッ。



「遅かったデスネ!って、何でそんなに急いでるんデスカ?」


『バリゲートが突破された!今すぐ急いで1階に降りろ!』


「ヤバすぎデスッ。」


 外国人はその長い手足を利用してロープウェイを消防士の様にスッと降りて行く。

 もちろん私の提案したタオルに手穴を作りリストバンドで固定する安全対策はバッチリだ。


『早く降りろ!!!』


「ねぇ゛ーーー!!!遅い!!!」


「…さささサム、可哀想に。」


 外国人がロープウェイを降ってる間、私とフブは持って来たバスタオルに急いで穴を開け両手を入れるスペースを作る。

 私、フブ、美少年、それぞれ3人のロープウェイに掛けるバスタオルが出来た。


『ほらサムお前が1番年上だろ!いけ!』


「ひ、ヒドイです…」


 半ば無理やりロープウェイを最初に降りさせられた外国人観光客サム。


 そして、タオルをロープウェイに挟み安全な速度で安定して滑り落ちていく。

 あっという間に外国人(サム)が地面に辿り着いた。

 それを合図に次は私だと言わんばりにフブがロープウェイにバスタオルを掛けた。


「見てて兎!」


 フブが兎にお手本を見せる様にロープウェイを滑り落ちる。



 ——————シュルルルルルッ。



 いや、速度、速ッ!


 一瞬で地面まで滑り落ちたフブ。


 あれで怪我しないの凄いな…。


 私もフブの真似をしてロープウェイにバスタオル掛け同じ様に滑り落ちる。

 言っておくが降りる速度は似せていない。



 ——————シュルルルルルッ…



 ——————ガツンッ!



「ッ!!!」



 兎は滑り落ちる途中、管の結び目でバスタオルが跳ね上がり勢いでバンドが千切れロープウェイから落ちる。


「あぁぁぁぁぁぁ!!!」



 ——————ヒュー。



 ここから地面まで10mはあるッ…。

 やばいッ…最小限の怪我で抑えるにはどう落ちるかッ…!


 あっ、ダメだ。

 これは骨折不可避だ…その後ゾンビに食われて死ぬんだッ。



 ——————トスッ。



「はい。キャッチィ。」


 フブが落ちた私をお姫様抱っこでキャッチした。


「ししし死ぬかと思った…」


「はぃ死なない!」


 その次、美少年がバスタオルでロープウェイを降りて来た。



 ——————シュルルルルルッ。



『よっ…』



 ——————スタタッ。



『よし、皆んな怪我は無いな。今すぐここから離れるぞ。』




 え…美少年とフブが問題なく降りれたロープウェイで落ちたのが私だけ…え…。私、運動神経悪いのかな…。







 ———————————————#####




 ——————タッタッタッタッ。



 4人は走る。


 いや、3人は走る。





 なぜ、1人走っている人数を抜いたかって?





 途中で誰か1人がゾンビに食われたからではない。


 まぁ言うと、


 私はフブにコアラ(おんぶ)されているだけだ。だから私は走っている人数にカウントしていない。


 多分、鈍臭い私はこの先すぐに死ぬと思う。





 しょーもない事で。





 多分、階段で(つまず)いて頭打って死ぬんだろう。





「うーーさーーーぎーーー!!!ボーとしないで!兎は走らなくて良いけど、頭使って考えて!この先どこへ逃げるか!」


「ごごごごごめんッ。」


「…ん?私は25階から降りてるけどな。」


※25階と言っているが高さ的に65階。


美少年が名前教えなかったの何ででしょうね、前職が有名なアイドルとかだったんじゃないですかね。違うけど。


【開けない夜はないとかじゃねぇんだわ。明かすんだわ。】

【大きな大きな死神さんかやぁ…】

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ