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周回移動都市ヴェルサイユ  作者: 犬のようなもの
《セカンドオーダー編》            [第二章]サキミネを探せ
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〔第36話〕その儀式は事象にまで届く

悪い事をしたって、その人が悪い人間とは限らない。

という人がいる。

では、悪い人間とは何なんでしょうか。

悪い人間とはお前らです。

犬以外なのです。


そして今それを否定したお前なのです。

死になさい。

 

 円を作っているゾンビが手をしっかり前に出しスクワットの様な動きをしている。

 しかし、スクワットとは明確に違う点が1つある。

 首を振っているのだ。

 ゆっくりリズムに乗るみたいに、首を上下に動かしている。


「ななな何にあれ…」


『何だ…この動きは、初めて見たな。踊っているのか?』


「ねぇ…なんかこのゾンビ集団で動いてる時点でヤバくない…?」


 フブの言葉に全員の顔がこわばる。

 確かにそうだ。

 今までそれが当たり前かの様に話していたが、ゾンビが集団行動しているのだ。

 しかも、今回モニターに映っているゾンビの動きはただの集団行動ではない。

 恐らくだが、何らかの意図が感じ取れる動きに見える。


「ラジオ体操してるみたいデスネ…」


「確かに…」


「ななななんか…ヤバい気がする…」


 そして、再びモニターの映像に動きがあった。

 円に広がっていたゾンビが全員、中央の方に体を向けて座り始めた。

 すると中央部に倒れかかっていた数十人のゾンビ達が立ち上がり出した。

 立ち上がったゾンビの中の1人のお腹が膨らんでいた。


「妊娠…?」

「ゾゾゾゾンビ映画っぽい…」

「ナンカやばそうデスヨ、コレ…」

『ヤバい…アイツら進化してんのか?』


 モニターに映ったゾンビ妊婦は空いた円の中央に仰向けで寝っ転がり両手両足を大の字に広げた。

 次の瞬間、円の周りのゾンビ達が一斉に中央の妊婦ゾンビに飛び掛かり、その体を食べ始めた。


「うげぇ?!」

「ななななっ?!」

「ワタシ今すぐここから逃げ出したいデス。」

『このままこのホテルに居てはマズいな…』


「でも、どうやってこのホテルから出るの?!」


 フブの疑問に美少年は苦い顔をして答える。




 ———『非常階段の5階からロープを垂らして降りる…』




「ヤバいデスネ…」

「けけけ怪我しそう…」

「…ん?私は25階から降りてるから平気だけどな…」


『ん?やっぱり君達だけ◯ッドブルチャレンジとかしてる?』

「ナンナンデスカ…アナタ…」


「ははは速くここから逃げたい…」


「もう5階の非常階段から無理やり下に降りてどっか遠くに逃げようよ。」


『消火栓の管を引っ張って下に降りる予定だが、安全面に多少の不安がある。途中で下に落ちて怪我でもしたらその時点で詰みだ。』


「んー…あ!私が先に下に降りて、消火栓の管の端を遠くににくくりつければ管が斜めに張れてロープウェイみたいに出来ない?」


『それはいい提案だ。君の負担が凄いけどね…』


「5階ぐらいならちょちょちょ〜いっといけますぜ。へっ!」


 そんな事を言いながらフブはフッと兎の方を見る。

 兎が壁一面にある大量のモニターをジッと眺めている。

 そんな兎が唐突にひと言ボソッと言った。


「数が合わない…」


「ん?どうしたの兎?」


『数とは何の事だ?』


「もももモニターに映るゾンビの数の変動が…」


「難しいコト言ってるネ…」


「ぞぞぞゾンビが少しずつホテルのどこかへ流れてる…」


「それってヤバいんじゃ…」

『なっ?!』

「どういうコトデスカ?」


「いい1階から少しずつ…上がってきてるかも…ゾンビが…」


『…事を急ごうか。兎とフブは消火栓の管を探してくれ。外国人(サム)は19階で保存食を人数分バックに詰めといてくれ。僕はバリゲートの強化に行く。今日中にここを出るぞ。』


 皆が(うなず)きそれぞれの行動を開始する中、兎が美少年を引き留めて言う。


「せせせ洗剤…階段に撒けば物理的に上がって来れなくなる…試してみて…」


『あぁ。わかった。』


 そんな会話がなされた後、兎とフブは今いる10階のセキュリティ制御室の廊下で消火栓を探す。

 それぞれの階の窓の近くに消火栓はあったのでそれを開き管を出す。


「よし、まずは1本目!」


「さささ3本は欲しい…」


「それぞれの階まわれば楽勝だよ!」


「そそそそうだね…頑張ろう…」







 ———————————————#####



 消火栓の管を4本集めた兎とフブは早速5階に降りてそれをくくりつけにいく。

 5階に着いた瞬間兎とフブは絶句した。

 美少年の言う通り5階から下の非常階段は無くなっていた…

 が、その無くなり方が尋常ではなかった。


「ねぇ…どんな怪物がコレやったの…」


「…」


 捻じ曲げられた5階から下の非常階段。

 有りとあらゆる場所が捻じ曲げられている。

 本当に美少年が言っていた3メートルのムキムキゾンビの仕業なのだろうか。

 メイトン…では,何のだろうか。

 不安が胸を締め付ける。

 そんな兎を見て、フブは兎の背中を軽く叩く。



 ——————トスッ。



「大丈夫、メイトンはいつか私がぶっ殺すから!」


「…うん。私も殺す。」


 2人は消火栓の管を非常階段にくくりつける。

 大人3人がぶら下がっても解けないほど強く結んだ。


「んじゃ、下も結びに行ってくるね!」


「…え?」



 ——————ヒュッ、カランッカランッ。



「よっ!!!」



 ——————タッタッタッ。



 フブは消火栓の管の先端を投げ落とした後、建物の(くぼ)みを足場に一瞬で地面まで降りた。


「…さ猿みたい。」


 地面に降りたフブは瞬時に周りを見渡しゾンビがいない事を確認した後、ホテルから少し遠く離れた電柱まで走り消火栓の管をその電柱に巻きつけ始めた。

 ピンときつく張られた消火栓の管。

 45度の角度になった消火栓の管はロープウェイに早変わりした。


「すすす凄い…」


 フブは自分で作ったロープウェイを登り始めた。

 猿の様に逆さになって非常階段5階まで登ってくる。


「ただいま兎〜。」


「おおお帰り…」


「後はここを改造したハンガーとかでゆっくり降りれば、大丈夫!」


「はははハンガーじゃスピード出過ぎるからタオルにしよう…」


「タオルだと、手離しちゃわない?」


「ばばバスタオルを3回折ってそこに両手を通す穴を作る…そしたら安全…」


「いいね、流石っ兎!頭めっちゃ回るね!」


 ちょうどそのタイミングでサムと呼ばれていた外国人が大きなリュック4つを背負って兎とフブの前に帰って来た。


「これ1つずつドウゾ。」


「ありがとうサムゥくふぅん。コレ中身は何?」


「あああありがと…」


「中身はこのホテルにあった高級缶詰デス。めっちゃいっぱい詰めときマシタ。」


「おぉ!最高ー!」


「ややややった…」


「それにしても…このロードウェイ凄いデスネ。てか、フブさん…これ1階、地面まで降りてません…?」


「凄いだろぉ。」


「ヤバすぎるデショ…オリンピック出れマスヨ…」


「ばばばバスタオル…持ってこよう…」


「そうだね!サムはここで待ってて!」


「ハイ…、私の名前勝手に開示サレテル…まぁ隠してナイケド…ナンカ…」


 兎とフブは適当な客室に入りバスタオルを回収した後、もう一度5階の非常階段へ向かう。


「ねぇ、兎。」


「なな何んですか…」


「私、気づいちゃったかも…」


「どどどどうしたの…」


「麦茶って少量で売ってないよね?」


「う…うん…」


「やっぱりゴクゴク飲みたいからかな?」


「え…あー…うん、たた多分そうかも…」


 そんな会話をしながら非常階段に出る。

 後は5階の所まで降りるだけだ。




 ——————ドタドタドタドタドタッ!!



 上から階段を駆け下りる音が聞こえた。

 見ると美少年が上の非常階段から急いでこちらに降りて来ている。


「どーしたのー!!!」


『まずい事になった!!急いでこのホテルから出るぞ!』


「ばばバリゲートが突破されたのかな…」


『正解だ!!急げ!!君の洗剤を撒く提案がなかったら今頃全員食べられていたよ!!』


 そして、3人は合流し、非常階段の5階まで急いで降りた。



 ——————ダッダッダッダッ。



「遅かったデスネ!って、何でそんなに急いでるんデスカ?」


『バリゲートが突破された!今すぐ急いで1階に降りろ!』


「ヤバすぎデスッ。」


 外国人はその長い手足を利用してロープウェイを消防士の様に降りて行く。


『早く降りろ!!!』


「ねぇ゛ーーー!!!遅い!!!」


「…さささサム、可哀想に。」


 外国人がロープウェイを降ってる間、兎とフブは持って来たバスタオルに穴を開け両手を入れるスペースを作る。

 兎、フブ、美少年、それぞれ3人のロープウェイに掛けるバスタオルが出来た。


 外国人(サム)が地面に辿り着いたらしい。

 それを合図にロープウェイにバスタオルを掛けるフブ。


「見てて兎!」


 フブが兎にお手本を見せる様にロープウェイを滑り落ちる。



 ——————シュルルルルルッ。



 一瞬で地面まで滑り落ちるフブ。

 兎がフブの真似をしてロープウェイにバスタオル掛け同じ様に滑り落ちる。



 ——————シュルルルルルッ…



 ——————ガツンッ!



「ッ!!!」



 兎は滑り落ちる途中、管の結び目でバスタオルが跳ね上がりロープウェイから落ちる。


「あぁぁぁぁぁぁ!!!」



 ——————ヒューッ。



 ——————トスッ。



「はい。キャッチィ。」


 フブが落ちた兎をお姫様抱っこでキャッチした。


「ししし死ぬかと思った…」


「はぃ死なない!」


 その次、美少年がバスタオルでロープウェイを降りて来た。



 ——————シュルルルルルッ。



『よっ…』



 ——————スタタッ。



『よし、皆んな怪我は無いな。今すぐここから離れる。』


(え…美少年とフブが問題なく降りれたロープウェイで落ちたのが私だけ…え…。私、運動神経悪いのかな…)







 ———————————————#####




 ——————タッタッタッタッ。



 4人は走る。


 いや、3人は走る。





 何故、1人抜いたかって?





 途中で誰か1人がゾンビに食われたから?





 まぁ途中でゾンビに食われるのは間違いなく、鈍臭い私、兎だろうなぁ。とか思ってるんですか?





 失礼な。





 私はフブにコアラ(おんぶ)されているだけだ。死んでない。まだ…。





 多分鈍臭い私はこの先すぐに死ぬと思う。





 しょーもない事で。





 多分、階段で躓いて頭打って死ぬんだろう。





「うーーさーーーぎーーー!!!兎は走らなくて良いけど、頭使って考えて!この先どこへ逃げるか!」


「ごごごごごめんッ。」


「…ん?私は25階から降りてるけどな。」


※25階と言っているが高さ的に65階。


美少年が名前教えなかったの何ででしょうね〜、前職が有名なアイドルとかだったんじゃないですかねぇ〜。


【開けない夜はないとかじゃねぇんだわ。明かすんだわ。】

【大きな大きな死神さんかやぁ…】

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