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周回移動都市ヴェルサイユ  作者: 犬のようなもの
《セカンドオーダー編》            [第二章]サキミネを探せ
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〔第35話〕いざ、高級ホテルへ

兎とフブの話の心の声はほぼ兎です。


『』は美少年の、声です。話し方にあまり特徴が無いので区別するためにそうしてます。

 


『嘘ついてないんだな?本当だな?』


「うん、私嘘ついてないよ?」


『じゃぁ屋上にそのウイング?スーツって奴があるはずだ。今仲間にそれを確認させに行く。だからもう少しそこで待っていてほしい。』


「了解で〜す。」


 フブは後ろに隠れている兎の手を引き、大きなベッドに寝転がる。

 兎は寝転がる前、テーブルにあるリモコンを手に取り、TVをつけた。



 ———ピッ。



 ———『今夜のニュースです。突如(とつじょ)太平洋に現れた巨大建造物が少し動きその後三重県沿岸で停止しました。尚、この巨大建造物が再び動き進行を続けると現首都(げんしゅと)大阪方面に上陸するとの事です。』



「えぇ?!私達の知らない間になんか凄いことになってるじゃん?!」


「ううう動くんだ…」


「しかもここ目掛けて歩いて来てるってさ!あの四足歩行で!」


「きょ、巨大建造物、全長20キロあるね…街、踏み潰されそう…」


「ひぇー、その視点は無かった…潰されたくないねぇ。」


「そそそうだね…」


「そういえば、(あばら)のデバイスってなにぃー?」


「おおお覚えてたんだ…」


「それはだって超〜気になるじゃん。」


「じじ自分の座標…衛生と共有してる…」


 フブはその言葉に首を傾げる。


「座標共有したら何ができるの?」


「ひ、ひひ秘密…」


「ねぇ゛ー!!!気になるぢゃーーん!!!」


「ま、まままたいつかの…お楽しみ…」


「絶対今度教えてねッ…絶対だからね…」


「ううう、うん…」



 ——————ドンドンドンッ。



 その時、部屋の扉がノックされた。



 ———『確かに君の言う通り、屋上にウイングスーツがあった。にわかには信じがたいがどうやら事実だったらしい。謝罪しよう。』



「ねぇー、兎。やっぱりホテルに来たからにはビュッフェとか食べないとね。あ、鍵掛かってないから入って来ていーよー!」


「え、いいい今ホテルでブュッフェ提供されてるかな…」



 ———『では、お邪魔します。』






 ——————ガチャッ。






 ———『…えっ、1人じゃない…2人だった…てか、めっちゃ満喫(まんきつ)してんね…』



 バスローブを着た兎とフブは大きなベットの上でテレビを見ながらだらけていた。


「お〜初めまして〜!私ぃフブって言います!」


「ははは初めてまして…私、兎って言います…」



『え、兎って名前なの?』



「あ…は、ははははい…」


「超ぉ〜可愛い名前だよね〜!」



『珍しいな…。僕の名前は…伏せておこう好きに呼ぶといい。仲間達がいる所に案内するよ。ついて来て。』



 名前を伏せる事に突っ込まない様にする2人、こんな世界だ。

 まぁ名前の一つや二つぐらい隠したくなる時があるだろう。

 何のためか知らないがまぁ何か事情があるのだろう。


「あのぉ〜1つ質問いいでしょうかぁ〜…」


 何故か気まずそうに聞くフブ。



『何?』



「貴方って男の子ですか…?女の子ですか?」



 中性的な声と見た目、美少年か美青年といったところか…。



『僕は男だ。よくその質問されるよ。』



「ほげぇーイケメンだ…」


「いいいイケメン…」


 そして2人は美少年の後ろついて歩く。

 ホテルは相変わらず豪華な内装だ、金で目が眩むとはこの事か…と実感する。

 客室を抜けて進み、更に非常階段で下に降りる。

 屋上から十数階(じゅうすうかい)降りた所でやっと止まった。

 標識には20階と書いてある。


 そして長い長い階段を降りる旅も終わる。

 兎はもうバテてフブにコアラ(おんぶ)されているが、ついに非常階段からホテル内へ入る。



 ——————ガチャッ。



 その階は大きな結婚式場だった。

 白で統一(とういつ)された装飾に大きなチャペルが備わっている。

 広い空間に机や椅子が並んでいる。

 ちょっとの階段でへばってフブに甘えコアラ(おんぶ)して貰っている私とは縁の無い世界だ。


『紹介するここのメンバーだ。』


((ベタなセリフだぁ!!))


 白い机に座っている大きな男の外国人がいる。


「コンニチワ、このホテルに泊まって日本観光する予定でしたがゾンビで家帰れなくなりマシタ。タマーです。」


『この人はタマー、母国に帰れなくなった可哀想な人だ。』



((超可哀想(ちょうかわいそう)…))



「他な人とか居ないんですか?」


『…居ない。』


「え…それって…ゾンビに食べられ…」


『違う。僕達もわからないこのホテルに来た時には、もう既に間抜(もぬ)けの空だった。まぁそれぞれお互いについて話し合おう。』


「ほげぇー…不思議な事もあるもんですねぇ…」


「ほほほホテル…全部見回った…んですか…?」


『あぁ、見れる所は2()()から屋上まで全部見たがゾンビはいなかった。』


「いいい1階は…みみみ見たんですか…?」


『それが…下にゾンビが数十人たむろしてるんだ。だから、1階に繋がる内部の階段には椅子や机でバリゲートを作っておいた。』


「えぇ?!ゾンビ?!ちょっと覗きに行っていいですか。」


 フブの言葉に美少年がすかさず返す。


『ダメだ。アイツらの“数”は脅威だ。もしかしたら1階のバリゲートも“数のチカラ”で破壊してくるかもしれない。』


「えぇ〜…まぁ確かにぃ…そうですけどぉ…」


 落ち込むフブの背に隠れて、兎が美少年に質問する。


「ななななんで…全部の部屋の鍵あいてたの…普通ならオートロックされるはず…」


『あぁ、鋭いな君。その質問に対する答えは、簡単だ。このホテルのセキュリティ制御室で僕がそうなる様に操作した。』


「ななななんで…そんな事できたの…」


『ホテルのゾンビから部屋の扉を扱える管理者権限の“キー”を奪い取った。』


「そそそそうなんだ…」


 2人の会話を無視して外国人が話す。


「アノ、ワタシお腹空きました。」


 それにフブも乗っかる。


「私もお腹空いた〜、兎もそろそろお腹グーの時間だよねぇ〜。」


「うん…」


『君達、ママと子供みたいな会話するね…』


 そして4人は非常階段を降りて19階へ行く。

 19階は高級レストラン街があった。

 まるで大きな洞窟の中に居るかの様な錯覚を起こしてしまいそうになる階だ。

 天井や壁が岩造りになっていて、たまに鳥居もある。

 床は小川の様なものが流れていて青白くライトアップされている。

 神秘的な(まつ)られた洞窟って感じだ。


「ほげぇ〜…すごぉ…」


『ここの奥にレストランの食材を管理する場所があるんだ。』


 進んで奥にある従業員以外立ち入り禁止と書かれた扉を開ける美少年。



 ——————ガチャッ。



『ここは調理場だ。まだ、ほとんど何も腐ってないから好きに食うといい。』


 フブはキラキラした目で美少年を見て言う。


「えぇ?!この食材使って色んなもの作っていいの?!」


『まぁこのホテルの従業員すらゾンビで出勤しなくなった現状だ。誰も文句は言わないだろ。』


「やったー!」


 なんだか今日のフブはテンションが高い。

 私と違って、一般庶民高校生のフブはこういうホテルとか初めてなのだろうか。


「私が腕を振るってご飯を作ったげるよ!」


「メッチャありがとうございます。楽しみデスネ。」











 ———————————————#####



 客がいなくなった静かな夜のホテルに騒がしいレストラン街。

 4人はフブお手製コース料理を堪能(たんのう)している最中だ。


「じゃ、じゃ〜ん!高級食材だけで作った高級肉鍋ぇ、と!焼き鳥風牛肉くし〜!」


『おぉ〜、凄いな君…』

「メッチャ凄いデスネ。」

「さささ流石デス…」


 他にもサラダやみそ汁、白ごはんやごぼうを使った料理などが用意された。


『頂きます。』

「イタダキマス」

「いいい、いただきます…」



 ——————カッカッカッ。



 カトラリーが皿とぶつかり甲高い音を出す。

 そして、フブ以外の3人は料理にかぶりつく。


『おいしっ?!』

「これはプロみたいデスネ。」

「おおお美味しい…」


「たんと、お食べ!」






 ———————————————#####


 そうして一同は腹ごしらえした後、再び20階の結婚式場に戻った。

 空いている椅子に4人が座る。

 しばらくフブの料理の感想を話した、あれが美味しかったや、どの調味料を使ったのか、どこで料理を習ったのかなど、雑談した。

 会話が続きフブと美少年、外国人は仲良く話す。

 兎はフブの(かげ)に隠れて会話には参加せずジッと自分のスマホと睨めっこしている。

 それに気を使ってフブが兎に話をふる。


「兎〜。そういえば、まだ電波繋がってるの?」


「う…うん…。ままままだ、ネット死んで無い…」


「なぁ〜に見てるの!」


「ななな謎の巨大建造物について…」


「どう?なんかわかった?」


 美少年と外国人はお互いに兎とフブ2人の話には参加せず、まだフブの料理の話をしている。


「ああああの四足歩行の建造物を上から見ようとしたら撃ち落とされるらしい…」


「えぇ?!建造物の上飛んだら落とされるの?!」


「ももももしかしたらあの建造物の上に…人住んでるのかも…」


「◯ピュタじゃん。」


「そそそそんな事より1階に居るゾンビなんとかしないと…」


「え?なんで?」


「めめめメイトンからちょっとでも距離、離したい…逃げなきゃ…」


「あー、確かに。でも、このホテルにこのまま隠れとくって言うのもありじゃない?」


「たたた確かにそれもありだけど…ウイングスーツで飛んだ方角から潜伏場所ちょっとずらしたい…」


「まぁ念には念をだね!」


 そんな2人の話が一旦落ち着くと外国人が話に割って入る。


「1階のゾンビどうスルノ…ワタシ達、動けない。」


『そうだな。1階のゾンビがどこかへ行くのを待とう。幸い食料は山ほどある。』


「ああああの…セキュリティ制御室の防犯カメラ…みたい…」


『わかった。』


 兎の提案により10階のセキュリティ制御室に行くことになった。

 が、フブがその会話を止める。


「今日はもう夜だし、明日起きてからにしない?」


 フブの言葉に皆が一瞬考えた後、美少年と外国人がその意見に賛成する。


『まぁ確かにそうだな。』

「ワタシもちょうど眠たかったデス。」


 そんな中、兎だけが不安そうな顔をしていた。

 確かにメイトンの事を考えるなら急いだほうがいいのはわかる。

 しかし、メイトンと同様ゾンビも充分脅威だ。

 油断できない。


「大丈夫!メイトンも流石にあの大爆発はくらってるって!」


「ふふふフブが言うなら…」


『大爆発…?』

「ダイバクハツ?」


「じゃ!明日の朝9時、ここ20階に集合ね〜!おやすみ〜!」


『お、おやすみ…』

「ダイバクハツは…?」








 ———————————————#####



 窓から差し込む光が兎を深い眠りから呼び覚ます。

 見慣れない部屋の天井、壁。

 そして、隣にフブが寝ている。


「今は…何時…」


 フブより先に起きる事なんて今まで1度もなかった。

 私がフブより窓側の所で寝たせいだろうか。

 初めてフブの寝顔を見た。


 一緒に温泉入った時も髪の毛はタオルでまとめてたから、完全に髪を下ろしている状態は初めて見る。

 いつもポニーテールなだけあってやっぱり髪の毛はそこそこ長いんだな…。


 フブの直毛(ちょくもう)のサラサラ髪を手で触ってみる。

 癖っ毛でくるくるの私とは違いスッと指の間を通り抜ける。


「おぉ…」


 初めての感触に感嘆の声を漏らす兎。

 もう一度髪の毛を触る。

 いつも私はフブに髪の毛をくるくるされている、今やり返すチャンスなのではないだろうか。



 ——————シュルシュル…



 髪の毛がサラサラ過ぎて私の髪の毛でした時より何だか手応えがない…。


「んー…」



 ——————『ワァァァア!!!』



「うわぁぁぁあッ!!!」


 フブがいきなり飛び起きて、兎に飛び掛かった。

 兎がそれに驚き体を跳ね上げ、飛び掛かっていたフブの腹にぶつかる。


「ぐぇッ…」



 ——————ドスンッ。



 兎の頭部が鳩尾(みぞおち)に直撃したフブ。

 そのダメージで兎の体の上で横たわる。


「おおお…重い…」


「ウゥ…」


 兎はフブの下敷きになった状態で部屋にある時計を見た。



 ——————6時。



 20階に集まる約束をした時間まで、あと3時間もある。


「ぐぇ……」


「…大丈夫?」


「う、うん。そんな事より、ねぇ兎。朝ごはん作りにいこ〜。」


 フブは立ち上がりながら自分のお腹をさすさすして兎に言う。


「うん…じゅ19階(あさ)りに行こ…」



 2人はそんなこんなで騒がしい朝を過ごした。






 ———————————————#####



『…なんか、本当に高級ホテルに泊まってるみたいだな…いや、まぁ…ホテルに泊まってるんだけど…なんて言うか…うん…お金払ってないじゃん僕達。』


「これはブラボーデスネ…」


 20階、集合場所、結婚式場の机の上。

 サンドイッチとシーフードサラダ、デザートのヨーグルトにフルーツポンチ。

 兎とフブが(偶々(たまたま))早起きして作った朝食に感動する美少年と外国人。


『ちょうどご飯を食べていなかったから有難(ありがた)い。いただきます。』


「ワタシも食べル」




「ああああの…」



 昨日からずっとフブの(かげ)に隠れていた兎が美少年の正面に立って質問する。


「ななななんで…5階から下の非常階段…無かったんですか…」


 兎の質問で場にいる全員の視線が上がる。

 外国人とフブは“そうなの?!”って表情をしているが、美少年だけは違った。



『まぁそうだな…その説明も先にしておくか。とりあえず朝食は置いて、全員僕についてきてくれ。』



 その意味深な言葉に流されて、全員が美少年について行く。

 再び非常階段を降る。

 10階まで降りセキュリティ制御室の前まで来た。

 美少年はカードリーダーにゾンビから奪ったカードをかざし、セキュリティ制御室の扉を開けた。

 中には、ホテル内が映った大量のモニターと大きな機材が並んでいた。

 広さは…んー8畳…いや、10畳はあるか?



『皆んなこれを見てくれ。』



 その中のモニターの1つを指差して言う美少年。



「何これ…」

「ななななにこれ…」

「なんですかコレハ…」



((外国人の方…1階の事、知らなかったんだ))



 モニターには1階のロビーが映し出されていたが、その映像は不気味そのものだった。

 ロビーの真ん中に()()()()()()()()があった。

 ゾンビ一人一人が棒立ちで突っ立って大きな縁を作り出していた。

 それぞれが円の外に目を向けている様に見える、まるで中心を護衛するかの様に。

 その円の中心には10〜20人程のゾンビが山形(やまなり)に覆い被さっている。


「気味悪いね…何これ…」


「ちゅ、ちゅ中心は…ななな何に覆い被さ立てるんだろう…」


「気持ち悪いネコノゾンビ。」


『あぁ、ここ数日前からずっと1階のロビーはこんな感じだ。』


「ひひひ非常階段は…そこかは下へ降りて逃げよう…」


『5階から下の非常階段は1人のゾンビに“壊された”。』


「え?」


「そそそんな事できるゾンビがいるの…」

「えぇ?!」


 兎とフブは驚きを隠せず動揺する。

 そんな事できる奴、メイトンぐらいしか思い浮かばないが…。


『1階のゾンビの中に1人だけ3メートル程の巨体を持ち、ムキムキな奴がいる…そいつに非常階段を潰された。』


 兎はそれを聞いて内心安心した。

 メイトンじゃなかった…まぁゾンビなら何とかなるか…。


「そそそそいつはどこにいるの…」


『わからない。数日前から防犯カメラにソイツが映らなくなった。もうどこかへ行ったのかもしれないが…まぁ、どのみち、まだ下には降りれない。あのロビーのゾンビの円がある限り…』





「あ!見て!」





 フブの声に釣られ、全員がモニターの方を再び見る。




 モニターに映る1階のロビー、さっきまでは円を組みただ棒立ちに突っ立っていたゾンビが突然動き出したのだ。


 その動き方はまるで…




『ゾンビが、踊ってる…?』




ウイングスーツが2人用である事を一目見てわかる人はあまりいない。という設定なので、部屋に入るまで美少年はフブしかいないと思ってました。


兎の返事「うん…」がフブ相手だと、どもっていない時があります。成長ですね。


めっっっちゃホテル内での話しハショリました。

高級レストラン街でのフブ料理長フルコールの話と、

夜解散した後、部屋に戻った兎とフブの話と、

兎とフブが朝、集合場所に持って行くごはんを19階で作る話、

この3つをハショリました。

本当は書きたかったのですが、それを書いてしまうとあまりにもダラダラし過ぎてしまうので…また、機会があれば書きたいですね…絶対。うちぃほのぼの系がすっきゃねぇ〜ん↑


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