表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
周回移動都市ヴェルサイユ  作者: 犬のようなもの
《セカンドオーダー編》            [第二章]サキミネを探せ
37/51

〔第34話〕安全地帯

 


「ふふふフブ…一様、クリアリングとかしながら進もう…」


「お、了解〜。」


 2人はホテルの屋上プールからホテルの中へ入る。

 屋上プールの受付に人影は無かった。

 今、外の世界がどれだけ終末に近づいているのかわからない以上、慎重に動いた方が()いに決まっている。

 もしかしたら、今このホテルの中もゾンビだらけになっているかもしれない。


「兎、客室に出るよ。」


 非常階段を降りていた2人は客室に繋がる扉を開ける。


「ふふふフブ…待って…」


「ん?どうしたの?」


「こここ…ここのホテル高級…」


「ん?それがどうかしたの?」


 フブは不思議そうな顔で兎を見る。


「えええエレベーターも客室のキー使わないと動かない様なホテル…だと思う…。せせセキュリティちゃんとしてるはずなのに、今…非常階段の扉、全部鍵あいてた…」


「んーと…つまりどう言う事だってばよ?」


「もも…もしかしたら、中でゾンビが発生して皆んなが逃れる様に非常階段の扉の鍵…あけたのかも…」


「なるほど…中でゾンビがでて、えらいこっちゃになった可能性があるんですね兎探偵。でも、血とか全然見かけてないよ?」


「たたた確かに…じゃぁ、もしかしたら…生存者がこのホテルを要塞(ようさい)化してるのかも…」


「まぁ考えても仕方ないし注意して行こう…ぜ!へっ。」


 2人は非常階段から客室に繋がる扉をゆっくり開ける。



 ——————ガチャッ。



 流石高級ホテルなだけ客室の廊下(ろうか)の幅が広い。

 高そうな赤いカーペット、金色の額縁(がくぶち)に入れられた絵画(かいが)、それに彫刻…は無いが凄く豪華だ。

 所々天井からぶら下がっているシャンデリアにも目がいく。


「凄ぉい…」


「ふふふフブ…クリアリング…」


「あ、そそうだね!」


 2人はそろりそろりと廊下の角を左右それぞれ見に行く。

 鍵があいている客室はないか一部屋一部屋確認する。



 ——————ガチャッ。



 ——————ガチャッ。



 ——————ガチャッ。



「んー…全部鍵かかってないじゃん…兎!何これ!でも中、入るの怖い!」


「ととととりあえず一室借りよう…ふふ服着替えたい…ビチョビチョ…」


「そうだね…私も着替えたい!じゃぁこの部屋でいっか!おっじゃましまー…」


「あああ危ない…慎重に行こう…」


 兎とフブはゆっくりホテルの一室に入る。

 フブが前に立ち兎が後ろに隠れる、なんとも立派な隊列だ。


「…兎、あれ見て。」


「…な、なにあれ。」


 部屋に入ってすぐ目に飛び込んできたのは、赤い大きな文字だった。



 ———“クリア”



 そう書かれている文字に兎が反応する。


「ももももしかして、もうホテルの部屋は誰かが全部確認したのかも…」


 フブが走って部屋の隅々まで確認する。

 トイレの中、浴槽の中、ベッドの下、収納の中。

 どこにもゾンビは居なかった。


「大丈夫そうだね!とりあえず部屋閉めといて!あ、U字ロックかけといてね!」


「わわわかった…」



 ——————ガシャッ。



 フブはタンスからホテルのアメニティのバスローブをだしその場で着替え始める。


「ここここれにするの…?」


 戸惑う兎。


「せっかくの高級ホテルだよ!バァスゥローブ着るに決まってるぢゃん!!」


「う、動きやすそうなやつもある…」


「え、兎…バスローブ着ないの?」


「あ、え…」


「え、着ないの?」


 フブのなんとも言えない圧が兎を追い詰める。


「なっ、なななな…」


 一歩一歩追い詰められる兎。


「なななななッ?!」




 何故かバスローブを着せられた兎。

 その後、フブと共にこのホテルを根城(ねじろ)にしているであろう生存者を探す事にした…が、その前に。


「でも、その前に屋上プールで冷えた体を温める事にしよう。この部屋の風呂…温泉ね。入らないともったいないよね!」


「ばばばバスローブ着る前に、言って欲しかった…」







 ———————————————#####



「ねぇ、さっき風呂沸かしてる時、ホテルのTVつけてニュース見てたんだけど。警察署がゾンビに潰されて、軍もゾンビに潰されたらしい…でも、なんでテレビ局生き残ってんのってなるよね…なんでぇ?!」


「たたた多分…TV局の中に超優秀な人がいる…のかな…ごごごめん…私もわかんない…なんでだろ…」



「しかも、電気が使えてるって事は発電所も持ち堪えてるって事だろうし…謎…だな、世界。」


「よよよ予想外…デスネ…」


「だね〜。」



 ——————チャプンッ。



 大きな温泉の湯船に浸かる2人。


「ねぇ、兎。」


「なななナニ…」


「兎の家の風呂の方が大きいね。」


「ま、…まぁね。」


 兎は少し口角を上げる。

 フブはそんな兎の体をジロジロ見る。


「ななななに…」


 (いぶか)しげなフブの視線に兎は危機感を感じる。


「兎の体って…やっぱり、他の人とはちょっと違うよね…」


「ふ、ふふふ太り過ぎかな…」


「いや、全然太ってないじゃん…そうじゃなくて、なんて言うんだろー…なんか胸の下辺り、(あばら)かな。」


「ああ肋の骨ちょっと(いじ)ってる…」


「えぇ?!改造人間ってこと?!」


 フブは兎の腹に顔を近づけてベタベタ肋を触って確認する。


「あ!!!なんか確かに肋骨一本違う!!!」


「わわわ私の肋…一本デバイス化してる…」


「お〜、ん?なにそれ。」


「ひ、ひひ秘密兵器…これは…」


 その時、部屋の扉が激しく叩かれる。



 ——————ダンダンダンダンダンッ!!!



 ——————『誰だ!誰かいるのか!?』



 突然の訪問者に兎とフブは驚き飛び上がる。


「やばい!!誰か来た!!」


「せせせ生存者!!!」



 ——————ガチャガチャッ。



 ——————『U字ロックかかって入れねぇよ!誰かいるなら返事して!!』



 フブは返事して良いのか兎にアイコンタクトで確認した後、返事する。



「待ってぇぇぇぇぇ!今風呂入ってるからー!!!」



 ——————『えぇ???あぁ…わ、わかった…』



 そして2人は湯船から上がり、高級ドライヤーで髪を乾かした後、バスローブを着た状態で玄関に向かう。


「お待たせしました〜!」


『また流石だよ…もう15分経ってるよ嬢ちゃん…』


「あ、ごめんなさい…待たせ過ぎちゃいましたね。」


 フブはU字ロックを解除し扉を開けようとするも、扉はビクともしない。



 ——————ガンッ。ガンッ。



「もしかして、なんだけど…なんかそっちから扉、抑えてない?!」


『大正解。』


「ねぇ゛ーーー!!!なんでそんな事するのぉー?!」


 フブの文句を扉越しに聞く生存者が答える。


『1階から5階までは閉鎖してあった。入り口も1箇所にしている。そこを通らずどうやってこのホテルに入ってきた?』


「上から飛んできましたぁ!」


『嘘つけぇ!!そんな雑な嘘つくなよ!つくならもっとマシな嘘つけよ!』


「ねぇ゛ーーー!!!嘘じゃないよ!!本当だもん!!」


『パラシュート出来たっていうのか?!』


「違うよ!ウイングスーツでだよ!」


『え、ウイングスーツ…なんだそれ。』


「鳥みたいに飛んで〜その後、屋上プールに着地したんだ!」


『君だけレッド◯ルチャレンジでもしてんのか…ぶっ飛んでるな…』





【まるでこの世界のエンドロールに居るみたいねー!】

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ