〔第32話〕トワイライト5000 《セーブポイント》
獣々(ケモケモ)!!!
ツグネはケモノの腹の上で目を覚ます。
んぁ?
あ、まだ、俺服ん中か…
正直出たくないがそろそろ出なければ尊厳が失われる気がする…。
デカケモはまだ寝ているらしい、今のうちにっ…。
締め付けられてキツイ服の中からゴソゴソ出る。
ここの宿は朝ごはんとか出ないのだろうか…。
んー…そういえば俺拉致られてたんだったな。
出るわけないか朝ごはん…。
昨日、街を見た感じ皆んなボロボロの服を着ていて苦労してそうな感じだったからなぁ。
昨日の王座に座っていたやつも服装はちゃんとしていたものの、装飾の少ないメッキのハリボテ城に見えた。
まぁ…躊躇なく天井をスフィアでぶち壊すほど、どうでもいい建物だったんだろうけどな。
アレで建物自体が崩れてたらどうしていたんだろう…。
そんな事を考えながら、デカケモを見る。
「お前…俺を監視すんじゃねぇのかよ。」
スヤスヤ寝ている姿に呆れる。
チッ…。
ウゲ…昨日コイツに殴られた腹、青タンできてる…。
まだ、コイツに殴られた腹痛い、しね。
助けを待つか、自分から逃げ出すか…。
ケモノに手を貸すか…。
ケモノに手を貸すとなるとエヴァンテとは敵になるかもしれない。
いや、きっとあの感じだと敵になる。
まぁエヴァンテとは敵になりたくねぇよな。
んー…昨日セネカに見せてもらった兵器の数々…。
あんなもん見せられたらケモノ達がエヴァンテに敵う訳ないと思っちまうんだけどなぁ…。
ここにスフィア2、30機飛んでたけど…
セネカに見せられたあそこには数百数万を超えるであろう“様々な形状”のスフィアがあったからな。
んー…デカケモが寝てる今ここから逃げ出すか?
いや、それはダメだ。
まず周回移動都市の地上から数百メートルか落ちたこの場所がどこかわからないし、1人で帰れる保証がない。
となると…
“助けを待つか”
“やり直す”か…
電気の通っていない薄暗い部屋。
もちろん外も薄暗い。
まだ多分早朝で市場も人が居ないだろうけど、この街がどんなものか見に行きたい。
そんな事をすれば逃げたと思われるだろうか…
このデカケモ起こすか?
んー…こんな気持ちよさそうにスヤスヤ寝てる奴を起こすの申し訳ねぇな。
いやいや、俺コイツに思いっきり腹パン喰らって誘拐されたんだったわ。
同情はいらんな、しね。
「朝だぁぁぁぁあ!起きろバカケモノォォォォォオ!!!」
耳元で叫ぶ。
「うわぁぁぁぁぁあッ?!」
デカケモが飛び起きた。
「何だヨ!」
「俺、外見に行きた〜い。ついてきて。」
「1人で行ってヨ…まだ眠い…」
デカケモはベットに潜り再び布団を被った。
「いいのか〜俺の事、監視すんじゃなかったのか〜。」
「…後、1時間寝かせて。頼むヨ。逃げないでヨ…」
布団の中から発せられる言葉。
お前はそれでいいのか…。
にしても、人に物を頼んでいる姿に見えないなぁ。
ちょっといじめてやるか。
「すっば〜らし〜い〜アッサガ来たぁぁぁぁあ!!!」
——————バサッ。
勢いよくめくった布団が宙に舞う。
ケモノは仰向けになった状態で長いベロをしまい忘れ、アホズラを晒している。
何ともだらしない姿だ。
改めてデカケモを見てみる。
白と茶っぽい毛並みに少し大きな耳、犬の、ゴールデンレトリバーみたいだ。
とりあえず、大きな垂れている耳をパタパタ触る。
——————パタパタパタ。
「ん〜…何するんヨ…」
やる気なさそうに反応してくる。
次にデカケモの手のひらを観察してみる。
肉球がついている。
触ってみる。
——————ぷにぷに。
これは癖になるな。
——————ぷにぷに。
『グー…zzZ。グー…zzZ。』
コイツ俺の事、監視する気あんのかよ…。
もうちょっかい掛けても反応すらしなくなったし寝たよコイツ。
もういいや、1人で外行こ…
———————————————#####
外は店を開く準備をしているケモノがちらほら居たが客はまだ1人も居ない様だ。
まだ夏の終わりぐらいなのにここはとても寒い。
ケモノ達は毛が生えているから寒さは平気なのだろうか?
「もうちょっと厚着してくればよかったな…」
周回移動都市のエヴァンはそこそこ暖かかったのにな…、
太陽光の有無は結構大事なんだな。
周りに“人間”は居ない様だ。
だからと言って俺を珍しそうに見てくる事もない。
昨日の市場で人間は見かけなかった。が…
ケモノ以外の種族も買い物に来るのだろうか。
『おい、兄ちゃん!』
グレーのおじケモに声を掛けられた。
「ん?俺になんか用か?」
『市場はまだ開かれちゃいないよ。』
「あぁ、そうか。所でここに両替所はあるか?」
『ん?兄ちゃん、この都市はたとえこんなへんぴな場所でも統一通貨だぜ?あ、さては兄ちゃん。新人だな?!なんで新人がこんなアングラな所にいんだ?』
「お前らに拉致られてきたからだよ!」
『人攫いなんて珍しいな…可哀想にな。これでも食べて元気だしな!』
そう言って渡されたのは、くしに刺さった大きなフランクフルト。
タダ程怖いものは無い。
俺が“現世界”に居た時どれだけそれで騙された事か…。
「おい、毒味しろ。」
それを聞いたグレーのおじケモは目を丸くして絶句する。
そして、その後しばらく固まってからおじケモは言う。
『兄ちゃん…とんでもねぇ野郎だな…どんな世界で生きてきたんだよ…』
そう言いながらもおじケモはフランクフルトを一口かじって毒味した後、もう一度ツグネにそれを渡す。
「…わりぃな。また、機会があれば誰か連れて買いに来るよ。」
『約束やで、じゃあな。』
なんで急に関西弁…
まぁ何はともあれ普通にいい人だった。
いや、いいケモだったな。
迫害…差別…偏見…そんなもんあんのかこの都市に。
まぁどこにでもそういうのはあるか。
んー…そういえば、門番は普通に地上で暮らせていたな。
しかも、ケモ達の敵であるエヴァンテに跪いていた。
まぁ“ケモ達の敵がエヴァンテである”という情報は王座のケモから得た情報でしかないのだが…。
なーんか、複雑な事情がありそうだな。
俺はフランクフルト片手に朝の薄暗い市場を探索する。
まぁ昼でもここは薄暗いんだけど…。
全体的に岩の建築物が多く、洞窟都市そう思わせるほど原始的な建物が多い。
しかし、所々、中世風な木材を使った建物が建っており独特な雰囲気を醸し出している。
「しっかし、まぁ…この周回移動都市の下ってゾンビだらじゃねぇのかよ…。普通にケモ暮らしてんじゃねぇか…」
俺は昨日派手に死にかけた周回移動都市の横腹まで歩く事にした。
理由はアレだ…なんか海が見たくなったからだ。
トカゲ乗って落ちてる時に見えたあの景色が忘れられなかった…。
とても綺麗で澄んだ空と海、水面に反射する煌びやかな太陽光、もう一度見てみたい。
数十分程歩くと外からここへ飛び込んできた場所へ出た。
若干の塩の匂いが鼻を撫で、外に近づけば近づく程、光が強くなる。
そして、とうとう外に出た。
「うわっ…改めて見たら海面まで遠すぎんだろ…」
波音も聞こえない上空とまで言える場所に立つツグネ。
錆びた鉄柵が剥がれ落ちそうなっている。
この場所を例えるなら高層ビル廃墟のオーシャンビューだろうか…。
ツグネは錆びていなさそうな鉄柵に手を置き外を眺める。
「俺、とんでもねぇ所に来ちまったなぁ…」
汚ったない錆だらけの地面。
外に近づけば近づく程、鉄でできている部分が多い。
「ん?」
ツグネは錆だらけになった一枚の板を見つけた。
「なんかの…看板か…?」
板を手で取り、読めそうな文字だけを読む。
「トワイライト5000…?」
元々ここにあった店の名前なのだろうか?
それともこの場所の名前か…?
そもそもこんな所に店があったって誰も…あっ、
そういえば、ここへどうやって客が来るのだろうか。
俺がここから上へ帰れるヒントになるかも知れねぇ!
——————ダッダッダッダッ。
ツグネは走って市場の方まで戻る。
市場を見ると客の様なケモノがぞろぞろ集まってきている。
「人間は〜…居た!!!」
ケモノ達の中に1人の人間が居た。
その人間は骨董品がズラッと並んだ出店の前でたむろっていた。
ツグネは1人の人間を発見し駆け寄る。
「なぁ、お前人間か?!ここまでどうやって来たんだ?」
——————『お前、エヴァンテの傀儡か…?』
そこに立っていた人間は“和服男”だった。
(うん、俺は死んだかも知んねぇ。やっぱりやった事って帰ってくんのかねぇ〜…)
『何故、エヴァンテの傀儡がこんな場所におんねん。』
「あー、…。お前の関西弁エセで…めっちゃ腹立つねん↑」
『チッ。』
ツグネの煽りに舌打ちで返した和服男はここまで乗って来たであろう一軒家程の馬車に乗り込む。
その窓からオツキの巫女さんと大きなあのバケモン女も見えた。
そして馬車が動き出した。
——————ガラガラガラッ。
ひぇ、とりあえず殺されなくて済んだぜ。
よしっと。
ツグネは帰り道を探るヒントを見つけるべく尾行を開始する。
こんな大きな馬車でここまで来れる道があるのかと期待したが、馬車の行き先は近くの大きな宿の様な場所だった。
帰還への何の参考になりそうもないな。
「まぁ、いい…俺は帰り方を探すまでだ。どーせアイツは俺に何も教えてくんねぇだろうからな。」
そして市場に戻って再び人間を探し始める。
しかし、なかなか人間を見つけることができない。
徐々に少なかったケモ達も多くなり、市場は瞬く間に賑わい始めた。
ケモノ達や、ケモじゃ無いナニカの種族もいるが、人間は居ない。
しかし、この空気嫌いじゃない。
皆んながワイワイしている、もちろんワイワイといっても喜びや歓喜の声だけじゃ無い。
喧嘩や賭博の際に出た怒号、沢山ある。
何だかアングラな空気と市場の賑やかさが混ざって不思議な感じだな。
両替はどこでするかとか聞いたけど、俺この都市の通貨とか持ってねぇからなぁ…
拉致られた時に全部落としてた事にさっき気づいたわ…
買い食いとかしたら超楽しそーだけど…
腐ったもんとか売られてるけどな…
食うなら人間の俺も食えるもんがいいな。
まぁ金ないけど。
…今更だけど、あの和服男ここに何買いに来てたんだろう。
骨董品…集めんのが趣味なんか?
見た感じクッソ大きな馬車にオツキが沢山居て、金持ちそうに見えたが…。
あっ、もしかして盗品目当てか?
ここでしか手に入らない何かがあったのか?
——————「上がってきたぞぉ!!!戦える奴は集まれぇぇぇええ!!!!!!」
1人の男の叫びが市場に響いた。
周りがざわつき焦る獣々。
そしてその中でも市場にいた屈強なケモ達が足並みを揃えて声の方へ走っていく。
ツグネも声の響いた方へ行こうとしたが、隣にいた大きなケモに腕を掴まれた。
「どこ行くノ!危ないヨ!!」
「てめぇ、デカケモ!起きたか!んで、この状況はなんだ?!」
「下からゾンビが上がってきてるんだヨ!」
「やっぱこの都市の下って本当にゾンビいんのか?!」
「当たり前だヨ!!」
ツグネはデカケモの腕を振り払い叫び声の方へ走る。
「ちょっト!!!」
——————ダッダッダッダッダッ。
獣々の流れに逆らって走る。
『おとせぇぇぇぇえええ!!!!』
『やれやれ!!』
『早くなんか持って来い!!』
『アレはまだか?!』
叫ばれた場所に辿り着くと縦横1メートルの正方形の穴に岩や瓦礫を投げ込むケモ達がいた。
ツグネも岩を持って穴の近くに立つ。
「これ使え!」
『あんがとよッ。』
ケモは重たい岩を軽々持ち上げ、穴の下へ投げつける。
そして、岩の砕ける音と共に聞こえてくる低い唸り声。
——————ヴァァッ!!!
「…ガチでゾンビいんじゃねぇか。」
さらに覗き込むと急な階段からゾンビが無数に登ってきている。
『おい!人間!もっと岩持って来い!!』
「お、おうよ。」
ツグネは手当たり次第そこら辺に落ちてる瓦礫を渡す。
「ぐッ…重ッ。」
——————ヴァァッ!!!
『うっりゃぁぁあ!!!』
『やばいぞ!!アレ使えアレ!』
アレ使えという合図が出た瞬間1人の屈強なケモがロケットランチャーを持ってきた。
「おいおい、ロケットランチャーなんかあんのかよぉおお?!」
次の瞬間、ゾンビ目掛けて弾頭が着弾した。
——————ドゴォーーーーンッ!!!
黒い煙が舞い上がり穴の先が見えなくなった、しかし、ケモ達は止める事なく岩や瓦礫を投げ続ける。
(俺、実は腹にセネカと一緒に選んだ小刀持ってんだけど今使うか?!いや、こいつらケモ達が飛び道具で戦ってるからまだいいか…てか、なんでここにロケランあんだよ!!最初っから、それ使っとけや!)
黒い煙が徐々に薄くなる。
『…もういないか?』
1人のケモが言う。
——————………。
静かになった穴の中、急な階段がロケットランチャーのせいで一部抉れている。
「やっぱ、闇市ってロケランも売ってんのか…」
旧世界から引っ張ってきたのか?
1人呟くツグネに隣のロケットランチャーをぶっ放したケモが言う。
『お?これに興味あんのか?安くしとくぜ?兄ちゃん。』
「いるか。」
——————ヴァァッ…。
『まだ一匹いるぞ!!!』
1人のケモの声が響く。
しかし、そのゾンビは砂埃に紛れて俺にロケランを売りつけようとしてきたケモに飛び掛かっていた。
クッソ……使うしか…間に合わねぇ!
ツグネは腹の中にしまっていた刀を取り出し、目の前にいるゾンビ一匹の首をはねる。
——————バスッッ!
トリガーは握らなかった。
ただの短剣状態で使ったが切り味が段違いだ。
『兄ちゃんやるじゃねぇか!』
「あぁ、ちょっと切りたくなってな。」
『キザな事言いやがってー!ハッハッハッ!助けてくれてあんがとよ!安くしてやんよ!』
「だから、いらねぇって!」
(まぁゾンビ相手に刀の試し切りしたかっただけなんだけど。)
———————————————#####
そしてツグネは屈強なケモ達に連れられて、大きな飲み屋の様な場所に入った。
全体的に汚い。
人間の俺が食えるもんが出てきたら良いが…。
——————ガシャン。
まず最初に黄色い飲み物が出てきた。
「これ…何だ…?アレか?アレなのか?!」
『ビールだよ兄ちゃん!ほら、のめのめぇ!』
「マジか…!」
『こんな場所でもビールの味はどこにも負けてないぜぇ!』
ツグネは酒の勢いで屈強なケモ達と仲良くなった。
話してみると案外ノリのいい奴らだった。
やれ筋肉の自慢や足の速さの自慢、若干小学生男子と話している様な感じもあったが、男として普通に尊敬する。
突っ込んだ事は話さず、何の気ない会話を楽しんだ。
途中、はぐれていたデカケモが飲み会に参加したが変わらず楽しかった。
どうやらこのケモ達は穴の下のゾンビがいる所に潜り込んで、貴重な資材や食べれる物を取りに行く仕事をしているらしい。
…それは仕事なのか?トレジャーハンターじゃねぇかそれ。
その関係でゾンビが穴から上がってこない様に管理も頼まれているのだとか。
まぁ小難しい話もあったが流した。
俺は流した。
酒の勢いで一緒に歌ったり、モフらせてもらったりと、とにかくその後も色々遊んだ。
そんな中、ツグネは酒で回らない頭を使い考える。
(エヴァンテと敵対したくはないが、コイツらとも敵対したくねぇな…今日会ったばかりの酒飲んで仲良くなった薄っぺらな関係だけど、悪い奴らじゃなさそうだし…なんとかなんねぇもんかな…)
飲み会は朝から昼過ぎまで続いた。
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「ねぇ、兎。ここホテルの屋上プールだよね?」
「ううう、うん…多分…そう…」
「じゃぁ、下にアメニティの着替えとかもあるかもしれないから見にいこ!」
「ゾゾゾゾンビいるかも…」
「今更何言ってんの!このままだと風邪ひいちゃうよ!行くよ!」
フブは兎の手を引っ張り、屋上プールからホテルの中へ入った。
もうすぐ戦闘描写きます。
一方その頃エヴァンテ達は。
「何故、蛮族がセネカ•ミル•レイディの馬車に近づけたのですか?」
「わ、わからないです。」
「セネカ、私の聞く所によると…貴方のイタズラのせいで防衛が乱れた。と聞いていますがそれは本当なんですか?」
「はい…」
「何をしたんですか?」
「後輪外しました…」
「はっきりお願いします。」
「お偉いさんの馬車の後輪外して嫌がらせしました。」
「そのせいでツグネは攫われました。」
「はい、猛省してます…」
「貴方がイタズラするのは勝手にどうぞ。しかし、ツグネを巻き込まないで下さい。」
「はい…」
「次やったら頭に大聖堂落としますよ。」
「ひぇ…」




