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周回移動都市ヴェルサイユ  作者: 犬のようなもの
《セカンドオーダー編》            [第二章]サキミネを探せ
32/52

〔第30話〕敵か味方かエヴァンテか。

そういえば、“ひとり”って言葉が作中でよく出てきますが“1人”や“一人”、“ひとり”の違いってわかりますか?美脚のトイプードルが街を歩けば、って奴ですね。何ですか?はよ下読んでください。

 


「ここの建物(たてもん)…名前当てていいか?」


 ツグネが前の大きな建物指差して言う。


「良いよぉ〜当ててごらぁーん。難しい名前だから絶対当たらないと思うけどなぁ。」


国会議事堂(こっかいぎじどう)だろ…これ…」


「おぉ?!凄ぉい!!何でわかったの?!」


 セネカは生まれて初めてマジックを見せられた子供みたいにはしゃぐ。


「いや…どう見ても東京…旧首都だろ…」


「地上でも同じ様な建物があったって事?」


 セネカはいまいちピンと来ていない様子だ。


「まぁそんな所だ。」


 2人は国会議事堂の門をくぐる。

 そのままセネカの後ろを付いて行くと、入り口にタフナと鷹田が居た。


「あっ、ツグネさん!」


「遅かったじゃんよ。」


 なんだかとても懐かしく感じる2人の声、タフナと…誰だ?

 あぁ、あの例の配信者か、別にコイツの声は懐かしく無いな。


 ツグネ、タフナ、鷹田はセネカと共に建物の中に入り国会議事堂、3階の傍聴席(ぼうちょうせき)に座った。

 そこから見える景色は日本の国会討論(とうろん)そのものだった。

 司会がいて、1人が喋り、それに誰かが代表して答え、ヤジが飛ぶ。


「なんかアレですね。普通に日本の国会討論みたいですね…」


「いや、待てタッフー。席の座り方が変だぞ?」


 タフナと鷹田…この短期間であだ名で呼び合ってんのかよ…なんかキモいな…ごめん…特に理由はないけど…キモいなあだ名のセンス…

 鷹田はノリがいい奴なのか?

 まぁ俺も人のこと言ってられんか。


『3人共ちゅうもぉ〜く、セネカ先生の授業が始まるよ〜!』


「授業ですか…?」

「えぇ嫌なんだけど授業とか。」

「普通に色々教えてくれ。」


 タフナ鷹田ツグネがそれぞれの反応を示す中、セネカは授業を開始する。


『この都市は主に4グループに分かれているんだ!まぁ雑魚グループ含めたら10個ぐらいあるけど、難しくなるから言わないねぇ〜。』


 ラフだ。


『え〜と左から、敵、敵、敵、味方、かなぁ〜。』


 ラフだ。

 ラフすぎだろ。

 しかも、そこそこ大声でセネカが話してるからちょくちょく下の会議に参加してる人がこっちを見てくる。


「はい!セネカ先生〜!」


『何だね。ツグネくふぅん。』


「具体的にどういう感じのグループなんでしょうか?」


 セネカは再び左から4つのグループを順番に指をさしながら言う。


『あのグループはネチョネチョした油汚れみたいな感じでぇ〜、あのグループは部屋の角に詰まった掃除しにくい埃みたいな感じ、それとぉ〜…』


 すると突然、下にいた会議中の人々がセネカを罵倒し始める。


 [誰が部屋の角の埃じゃぁぁあ!]

 [軍部の分際でワシらを見下すな!!]

 [殺っぞぉぉおおお!!!]

 [降りて来いごっるぅらぁ!!!]


(((うっわ…こっわ…)))


 セネカ以外の3人は下からの獰猛(どうもう)な圧に萎縮(いしゅく)する。


『あっ、角の埃方(ほこりがた)の皆さんこんにちは〜!セネカ•ミル•レイディで〜す!もう昼ですねぇ〜!』


 [殺っすぞぉぉぉ!!!]

 [軍部にはウンザリだぁぁあ!]

 [レイディ一族の恥めぇ!!謝れぇやぁぁあ!!]

 [ミルの一族にも謝れぇぇぇえええ!!]


『あっ!油汚れの皆さんもこんにちは〜!!』


 [降りて来いやゴルァアア!!!]

 [死ねぇやぁぁあ!!!]

 [帰り道、きぃつけろぉやぁぁあ!!!]

 [殺すぞぉ!!!!]


 もう後半はシンプルな罵倒になり始めてる。

 罵倒をもろともしないセネカの態度に、尊敬の念すら覚えるが…でも、…


 (((多分全面的に悪いのはセネカなんだよなぁ…)))


 荒れ狂う国会で行われている会議は最早(もはや)進行すらままならない。

 下に居る半分の人は席を立ち上がり、セネカの方向いて罵倒している。

 司会役のおじいちゃんは、たじろぎしている、可哀想だ。



 ——————バンッ!!!



 大きな扉が開かれる音と共に1人の女が姿を現す。



 ——————『ごめんあそばせ皆さん。只今、到着致しましたエヴァンテです。』


 重そうな装飾に高貴な白いシスター服。

 目隠しした異様な姿からは、朝のちょけていたエヴァンテの面影(おもかげ)は無い。


「誰だアレ…エヴァンテに見えねぇ…」


 ツグネの独り言に鷹田が反応する。


「俺あんまエヴァンテと喋ってねぇけど、セルフレリアって人から聞いたぜ、なんかすげぇ偉い人なんだってな。」


「らしいな…俺はあんまり実感ないけど…」


「ツグネさんはもっと鷹田さんを見習って下さい。礼儀を覚えましょう。」



 ——————タッタッタッタッ。



 全員の視線をまとめあげるエヴァンテの国会ランウェイ。

 歩く速度は決してゆっくりではない。

 どちらかと言うと早歩きに近いだろうか?

 上品とは別の何かを感じさせる歩き。

 足をしっかりあげ地面を踏み抜く、爽快感。

 テンポよく刻まれる足音。

 そんな中、目立つ目隠しの異様さ。

 その絶対的な存在感が心を少し躍らせる。




 ——————『さぁ、続きを始めましょうか。』



 全員が大人しく席に戻る。

 鶴の一声とはこの事だろう。

 しかし、敬愛や尊敬で動いているわけではなさそうだ。

 (むし)ろ畏怖や、恐れといった類の…


「ツグネさん…なんかセネカの時とは違う…雰囲気になりましたね…ピリピリというか…ビリビリというか…」


「あぁ…そうだな。」


 その時、謎にセネカがタフナに突っかかる。


『えぇー!ツグネと鷹田くんにも“さん”付けるなら僕にも“さん”つけてヨォ〜!セネカさんって言ってヨォ〜!』


「嫌です。」


 そんな会話を横目に会議を見る。

 どうやらセネカとタフナがアレやコレやワーワーしてる内に国会は進んでいるらしい。

 あ、会議は進んでいるらしい。

 っていうか、もうこの人数とこの進行の形式…普通の国会討論じゃねぇかよ…

 そう思った瞬間、エヴァンテの声が聞こえた。



 ——————『第982代目ネフテル•ミル・エンズ防衛監視官、ツグネについて貴方は保守的な意見を述べていましたね。今一度(いまいちど)お聞かせ下さいますか?』



 ———「あぁ、良いだろう。この都市にはもう222(セカンドオーダー)に対抗できる兵器スフィアがあるではないか!なぜお前はこの都市に怪物を入れたがる!さては、貴様!この都市を武力で乗っ取って連合に…」



 ——————『もう十分です。貴重なご意見心より感謝申し上げます。』



 ———「貴様、何故人の話を遮っ…」



 ——————『第982代目ネフテル•ミル・エンズ防衛監視官。貴方、六防の1人を権力のチカラで私的利用した疑いが有りますが〜…』



 ———「貴様!!!話を逸らすな!!!今はッ…グァッ…辞めッ…ろ…ォ………。。。」



 ネフテルという男はみるみるうちに体が黒く、シワシワになり倒れた。

 ツグネ達含めた国会にいる人間がざわつく。

 目の前で起こった事の答え合わせをするかのようにエヴァンテは話出す。



 ——————『さっ、150年ぶりに我ら市民から堕落者(だらくもの)が現れましたが〜…222(セカンドオーダー)に対抗する為の最強の切り札。ツグネは周回移動都市にとって必要な存在か否か。天秤(てんびん)を始めましょう。』



 その瞬間、会議に参加している人が皆、席から立ち上がり白目を剥く。


「こっわ!なんかのホラー映画かよ!」


 鷹田の反応にセネカ含めたら残りの3人ツグネ、タフナ、セネカが心の中で思う。


(何だ…この怖い光景は…ホラー映画みたいだな…)

(この異様な光景…昔見た映画に似てますね…エクソシストでしたっけ…)

(毎回多数決の取り方怖いんだよなぁこの都市は…)


 それぞれがそれぞれの反応を心の中に留める。



 ——————『さぁ、貴方の選択を聞かせて下さい。』



 会議に参加して白目を剥いているお偉いさん方全員が体を脱力させて宙に浮き上がる。



 ——————ドタッドタッ。



 宙に浮いた状態から2人が地面に落ちた。



 ——————シューッ。



 地面に落ちた瞬間、それは黒くシワシワになった。

 まるで一瞬で歳を取ったみたいだ…。

 その瞬間ツグネはハッとした。


 そうか、もしかして今シワシワになって死んだ奴らは“市民権”をエヴァンテに剥奪されたのか?!いや、死んだと決まった訳ではないが…まぁあれは絶対死んでるだろ…ほら、動かないし…

 だとすると、エヴァンテはこの都市の住民、お偉いさんを含めた全ての人々の市民権を剥奪する事ができるのか?

 今見た光景が間違いでなければ、エヴァンテはとてつもない権力を持っているらしい。

 でも、おかしい。

 だとしたら何故ヴェルサイユは民主制の様な会議をしているのか。

 いや、滅ぶ前の世界もそうだったが上っ面だけの民主制で上流階級が全てを操り甘い蜜を吸うみたいな事はあった。

 もしかして、エヴァンテも市民権を剥奪するチカラでこの都市を独裁しているのだろうか…?

 ん?じゃぁなんでエヴァンテに堂々と反対意見言う奴がいたんだ?

 殺されるとわかっておきながらそんな無謀な事するだろうか?

 ダメだ。

 考えれば考える程わからなくなる…

 んー…いや、いつもの事だな。



 ——————『さぁ、天秤はワタシに傾きました。この時をもってして、ツグネに市民権を与える許可がおりました。』



 その瞬間、白目を剥いて宙に浮いていた人々が解放される。

 ダイレクトに席に着地する。

 普通にお尻痛そうだ。

 再び、会議に参加している人々がざわざわしだす。



 ——————『ご静聴(無理矢理)及び、協力(強制参加)感謝致しますわ。』



 そしてエヴァンテはツカツカ歩き、足早(あしばや)に国会から姿を消した。


 そして今回わかった事がある。

 まぁわかった事というか…

 なんだろう…

 感想の方が近しいかもしれない。

 まぁ多分新人組3人(ツグネ、タフナ、鷹田)は同じ事を思っているだろう。


「エヴァンテが味方に見えないですね…」


 タフナの言葉に鷹田が反応する。


「まぁ敵、味方っていうより“エヴァンテ”という立ち位置のが正しいかもな…俺何言ってんだろうな。うん。」


 鷹田の言い(ぶん)もわかる。



 ——————ハァ…。



 ツグネはため息を吐き言う。



「敵か味方かエヴァンテか、か…」



周回移動都市のお偉いさんが死んだのは150年ぶりです。

んー、エヴァンテみたいに五千年生きてる人からしたら最近なのかな…よくわからないね…。

ツグネの考察は考察に過ぎません。

まあ大体合っていますが。

何ですか?

トイプードルしますよ?

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