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周回移動都市ヴェルサイユ  作者: 犬のようなもの
《セカンドオーダー編》            [第二章]サキミネを探せ
29/52

〔第27話〕限りなく人工的であり幻想的な兵器

チ゛ヘ゛ッ゛ト゛ス゛ナ゛キ゛ツ゛ネ゛ェ゛ェェエ!!!

 


 教会の外に出ると大きな馬車があった。

 しかし、馬車というにはあまりにもデカい。

 ハイエース2個を上に並べたぐらいの大きさだ。

 前方に回ると、この大きな馬車を引く動物は“馬”ではないらしい事がわかる。


「なんじゃこの生き物…」


 大きな筋肉が背中にみっちり付いていてその癖、足の先端は細い。

 ゴリラと馬を足して割ったような、馬Lv.100(レベルひゃく)みたいな見た目だ。

 そんな動物が一匹、その場にしゃがんでいる。



 ——————「やぁ〜おっはぁよぉ〜ふぁ〜…むにゃむにゃ。」



 眠たそうにセネカが大きな馬車の中から出てきた。


「おはよう、セネカ。」


「今日もいい天気だねぇ、〜…」


 セネカに手を引かれ馬車の中に乗るツグネ。

(何だこの内装(ないそう)…)

 モダンな茶色い木材が敷き詰められ、所々にある赤みがかった煉瓦(れんが)がある。

 暖炉の様な物もある…そして所々敷いてあるフカフカなカーペットが心を落ち着かせる。

 改めてこういう場所が一番落ち着くって感じだ。


「セネカ…お前、センスいいな…」


「でしょ〜!センスには定評(ていひょう)があるんだぁ〜!」


 意外な才能に驚いているとセネカが立ち上がり部屋の前方の扉を開けて直接、前で待機していた“馬もどき”に指示を出した。


「よぉっ〜し!しゅっぱぁ〜つ!」


 セネカの声と同時に馬もどきはゆっくり立ち上がり、前に歩き出した。



 ——————ガラガラガラ。



 大きな部屋の様な馬車が簡単に動く。

 馬もどきの筋力は(はか)り知れないな…蹴られたら…考えるだけでも恐ろしい。

 セネカは動く馬車の中、飲み物を出してくれた。



 ——————コトンッ。



 馬車が多少揺れるので飲み物が半分ぐらいしか注がれていないが、その気遣いに心の中で感謝するツグネ。


「ここからちょっと時間掛かるからゆっくり雑談でもしましょうなぁ〜。」



 ——————クンクンッ。



「これは…?」


珈琲(コーヒー)だよ?知らない?」


 この世界に珈琲(コーヒー)がある事に驚愕する。


「マジか…周回移動都市に珈琲(コーヒー)あったのか…?!」


「ずっと昔からあるよぉ〜そんなに珍しいものかな?」


 セネカは続けてパンの様な物を持ってきた。



 ——————コトンッ。



「こここ、これって?!まさか?!パパパパンなのか?!」


「ハハハハッ!パンで驚きすぎでしょフフフッ…パパパパパパパンッってハハハハッ!」


「なんか…あれだな…もう都市の生態系がわかんねぇよ。」


「フフフッ…まぁねぇ〜、昔から変わらない物と進化する物があるからねぇ〜。」


 ツグネはセネカのその言葉にエヴァンテの歳の話を思い出した。

 もしかするとセネカも五千歳とかなのだろうか?


「もしかして、セネカも五千歳か?」


「んー僕はまだ生まれてから二千年も経ってないよぉ〜あっ、五千歳ってもしかしてエヴァンテ〜?オバァちゃんになんか吹き込まれたなぁ〜!」


 オバァちゃん…ってやっぱ、俺こいつと思考回路似てんな。


「二千年前にこの都市に拾われたとかなのか?」


「まぁ大体の人はそんな感じなんだけど、僕は違うよ〜。僕はこの都市出身だからねぇ〜。」


「この都市出身なのか…珍しいな。」


「僕の家はなんか特殊だからねぇ〜。」


「なんか大変そうだなお前も…」


「本当大変だよぉ…色々ねぇ…」


 小さな窓から日が刺す馬車の中の時間はゆったり流れる。

 ツグネとセネカは珈琲(コーヒー)を啜りながら話を続ける。


「ヴェルサイユはやっぱり、外の世界から使()()()人間を集めてるのか…?」


「まぁ〜そだねぇ〜。この都市は敵が多いからねぇ〜。」


 敵、か…この周回移動都市の市民権で得られる特典“不老”も、その原因のひとつなのだろう。


「めんどくせぇな…世界って…」


 ツグネは頬杖(ほおづえ)しながら呟く。

 セネカもツグネの見ている窓の方向見て、同じ様に頬杖(ほおづえ)し言った。


「皆んな仲良くすればいいのにねぇ〜…」


 しかし、2人は知っている。

 世界はそんな単純な仕組みになっていない事を。

 珈琲(コーヒー)(すす)り、パンをかじる。


「さっき、朝食くったばっかりなのにまだ食える…美味いなこのパンと珈琲(コーヒー)…」


「だよねぇ〜、僕は毎朝食べちゃってるよ。美味しいもんねぇ〜。」


 それから到着まで、1時間程セネカと何気ない話をした。

 したことあるイタズラの事や、普段食べてる物。

 趣味の話や、髪型の話。

 地上での話やセネカのお家柄も。


 そして到着した目的地。


 限界まで見上げても最上階が見えないほどの高い建物。

 それらがいくつか並んでおり、それぞれが連絡通路の様なもので繋がっている…うん。近未来だ。

 え、馬車のまま入るのか…?

 しかし、馬車は建物の前に来ても止まらず大きな玄関口の中にそのまま入る。

 中は外観と違い古く古風な黒いボロボロの煉瓦(れんが)で作られている。

 何というか…ボロい…。

 薄暗く(あか)りがたまにしかない為、独特な雰囲気を(かも)し出している場内。

 そこからしばらく2人の乗った馬車は進み、エレベーターらしきものに乗り込む。


「この馬車が入るエレベーターってすげぇな…」


「もぉ〜すぐ到着だよ〜。」



 ——————ゴウンッ。ゴウンッ。ゴウンッ。



(ん…?高層的な建物だったのに、このエレベーターは下へ向かってる様な…?)


「なぁ、目的地は下の方なのか?」


「そうだよ〜この地下にこの都市が保有(ほうゆう)する“兵器”があるよぉ〜。まぁごく一部に過ぎないけどね。今日はその紹介〜!」


 しばらくしてエレベーターの扉が開く。

 小さな馬車の窓からツグネの目に飛び込んできた光景はだだっ(ぴろ)い空間だった。

 遠くに見える壁は洞窟の様な岩にも見えるが、よく見ると隙間からたまに青白い光が走っている。


「窓から見ていないで、降りよぉ〜ぜぇ〜!」


「あぁ、そうだな。」


 ツグネはセネカに言われた通り、止まった馬車から降りる。

 小さな窓からは見えなかった壁の細かいディティールが見える。

 何というか現代人の技術を(はる)かに超えている古代の遺跡…的なイメージだ。

 例えが見つからないが自分でもよくわからない。

 見た事ない感じだ。


「どぉ…?」


「なんか…壁すげぇな…」


「でしょ〜キモいよねぇ〜!」


「キモい…か?にしても何もない…だだっ(ぴろ)い空間だな。」


「ふふ〜ん!見てて!」


 するとセネカがちょけた甲高(かんだか)テノール歌手の出来損(できそこ)ないの様な声で言う。


「セネェッカッが来ましたヨォッ!」


 そう言って手をパーに開いて地面にベタっと触る。

 するとその瞬間セネカが触れている地面が青く光出す。



 ——————フワォッフォンッファンッ。



 複雑な機械が絡まり合う音がする。

 その光はセネカを囲う様な形になり、メカメカしい模様(もよう)を形成して形を変えながらゆっくり動いている。

 その後すぐ、だだっ(ぴろ)い空間の壁を伝って、青い光が線を成し瞬時に広がった。


「これは…すげぇな…」


 さっきよりも青く明るく照らされた空間は限りなく人工的であり幻想的だった。



 ——————シューーーッ、ガシュンッ。



 ——————ゴゴゴゴゴッ!



 様々な音と共に青く光る巨大な空間の壁が()()し、大きなロボットや武器が現れる。



 ——————シューーーンッ。



「す、すげぇ…いきなりこんなもん見せられたら、言葉が出ねぇよ…」


「少年の夢が詰まってる光景だよね。」


「だな…」


 様々な武器が並べられている台が下から出てき、それに近寄る。

 どれも青白く光っており近未来的な造形をしている。


「セネカ…この刀超〜かっけぇな…持って帰っていいか?」


「いいよ〜好きに持って帰りな〜手続きとかしなきゃダメらしいけど、僕毎回やってないから大丈夫大丈夫〜。」


「大丈夫なのかよ…それ…」


「まぁまだ何も言われてないし大丈夫でしょ〜。」


 この刀は持ち手の部分が白く、時に青く光り、ミネ(持ち手のすぐ上の所)の部分が丸い。

 その丸い輪っかの中で何かがゆっくり回転していて、何だかかっこいい。


「なぁセネカ、この武器って持ち手にトリガーついてるけど、これ押したらどうなるんだ?」


「あー、別に危険はないから押してみなよ〜。」


 ツグネは言われた通りトリガーを握ってみる。



 ——————ガヒュンッ。



 刀が小さくなった。

 サイズ的には小刀ぐらいだろうか?


「おぉ、こりゃぁ便利だな。結構長かったのにコンパクトになりやがった。」


「それ良いよねぇ〜、でもちょっとクセ強いんだよねぇそれ…」


「え?」


「まぁ次のトリガー引いてみなよ〜」


「お、おう…」


 ツグネは2番目のトリガーを握る。



 ——————キュィィィィィイッ!



「うぉっ?!」


 チェンソーの様に回転し始める青白い刃。


「これのどこがクセ強いんだよ?かっこいいじゃねぇか?」


「いやぁさ、扱いが難しくてさぁ〜…毎年キックバックで数人怪我してるんだよねぇ〜。」


「あー、扱い方のクセか…」


「この都市の兵器って僕達が開発して作ってるんじゃなくて、元々そこにあった物使ってるだけだから、単純な操作のやつしか使い方わからないんだよねぇ〜。」


「意外だな…」


「皆んな使う武器はやっぱり使いやすくて、単純な物が多いからね。」


「へぇ〜。あっ、そういえば最初に会った時、俺をセルフレリアの攻撃から庇ったあの武器はどれだ?」


「あー、あれはこの都市のものじゃないんだよねぇ〜。」


「と、いうと?」


「アレこの都市の市民が趣味で作った奴らしくて…」


「えぇ?!マジかよこの都市にも発明家っているんだ…てか、普通に武器作ってんじゃねぇか!」


「作ってないとは言ってないもんねぇ〜。あっ、でも、開発者は秘匿(ひとく)されてるんだぁ〜多分上の人間とエヴァンテしか知らないと思うよ〜。」


「ほ〜ん…まぁ俺があんな馬鹿でかい武器持てるわけないけど。」


「あれくっそ重いよぉ〜携帯すんのも超〜ダルい〜!」


「まぁ俺が今持ってる刀も変形して小さくなっても、重さは変わんねぇからな。セネカの武器も重さはどうにもできねぇのか。」


「まぁそうだねぇ〜どうにもできない〜おもぉ〜めんどくさぃや。」


「今は持ってねぇのか?」


「あんなんずっと持ってたら疲れるよぉ〜…普段はエヴァンテに預けてる。メンテナンスとか必要だしね〜。」


「使い方わかってない武器も気になるが…って数と種類多すぎだろ…全部見きれねぇよこんなん。」


「ねぇー腐るほどあるよねぇ〜。」


「まぁ見た感じ俺はこの刀でいっかな。」


「クセのある奴ねぇ〜。決め手はどう言った点だったのでしょうかツグネさん。」


 セネカはインタビューをする記者のような体勢で聞く。

 ツグネは片方の口角をニヤッと上げて言う。



「見た目。」


“だだっ広い”の具体的な大きさは、縦50m超です。横はそれよりも遥かに大きいです…横は秘密です。

セネカは副隊という結構、凄い人なので勝手に武器を取っても問題ありません。ただ、ルールを破っているのは確かなので文句を言われます。

セネカは何も言われてない判定らしいです。

余談なのですが、兎の爆散したマンション他にも秘密いっぱいあります。爆散したんですが…後に出てきます。

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