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周回移動都市ヴェルサイユ  作者: 犬のようなもの
《セカンドオーダー編》            [第一章]ようこそ新世界へ
24/51

〔第22話〕防衛省襲撃

 

「ねぇ…兎。これ…普通の犬じゃないよね…」


「こここ、これは、チワワ…?」


 2人は運動場に設置されているモニターから外の様子を見る。

 防犯カメラに映ったのは人の生首を(くわ)えている()()()、メインサーバー(いわ)く名称はデスチワワらしい。

 一体どこの国の何の基準で定められた名前なのか知らないが…センスが独特だ。



 ——————キャンッ!キャンッ!



 小さなチワワがこのマンションの警備ロボに向かって()えている。



 ——————「対象を排除します。ピッピッピッ…」



 ——————シュンッ。シュンッ。シュンッ。シュンッ。



 ——————キャンッキャンッヒィーンッ!!!



 画面の外で警備ロボとチワワが戦闘を始めた。

 警備ロボのテーザー銃がデスチワワと呼ばれるチワワの首元に刺さる。

 苦しそうに感電しているのが見てとれる。


「ねぇ…兎。ちょっと可哀想じゃない?デスチワワって言っても普通のチワワみたいだよ…小っちゃいし…心が痛むよぉ…」


「みみみみ見て!」


 兎が驚いた様に声を出して、フブの肩を掴む。



「ん…、ってどぅわぁぁぁああ!!!」

「うわぁぁぁぁぁぁあ!!!」



 ——————グルゥゥゥゥゥゥウブワァ!!!



 小さいはずのチワワが熊の様に大きくムキムキになる。

 他の警備ロボより先にデスチワワの元について、戦闘していた警備ロボNo11(ナンバーイレブン)が薙ぎ倒される。



「ねぇ゛ーーー!!!このチワワやばいぃ!!!!」


「ほほほ本当に、デデデデスチワワだった…」


「そもそもデスチワワってなにぃよぉ!!!」



 ——————メインサーバーがお答えします。防衛省が正式に感染したチワワゾンビを“デスチワワ”と命名しました。



「ねぇ゛ーーー!!!可愛くないーー!!!」


「ぼぼぼ防衛省が名前決めたんかいっ…」


 運動場に設置されたモニターに釘付けになる2人。

 デスチワワは複数の警備ロボットに囲われテーザー銃を乱射される。



 ——————グルゥゥゥゥゥゥウアアア!!!!



 ムキムキのデスチワワは警備ロボを吹っ飛ばして暴れ回っている。

 そして何台もの警備ロボがテーザー銃や捕獲網を発射するがデスチワワは止まらない。



 ——————シュンッ。ファサッ。



 ———ビリィッ!



 ——————グルゥゥゥゥゥゥウア!!!



 ——————シュンッ。シュンッ。シュンッバリビリビリ!



 ———グルゥゥゥゥゥゥウ!!!



「うわぁぁぁぁぁあ!!!」

「うわぁぁぁぁぁあ!!!」


「ねぇ゛ーーー!!!全然警備ロボの攻撃効いてないよ!」


「やややややばい…も、もう手段を(いと)わない…め!メインサーバー!“全力を許可する”!!!」


 兎の命令が出た瞬間、警備ロボの目が赤くなる。



 ——————ファンッ…ドドドドドドドドッ!!!



「う、兎!これって!!」


「ううう…うん…“銃”…」


「銃刀法が緩くなったとは言え大丈夫なの…?」


 心配そうに聞くフブに兎は親指を立てて言う。


「けけけ権力のチカラで…なんとかなるっ…」


「まぁゾンビいるし…いっか!」



 ——————ドドドドドドドドッ!!!



 デスチワワは警備ロボから乱射される。

 体の血が()()てふらふらするデスチワワ。

 体に空いた穴から血が出なくなった頃、ようやく倒れる。

 嵐が過ぎたと安堵(あんど)する2人。

 その時、画面の端っこに黒い何かが映る。

 大量に映る。


「まさか…」


「そそそそういえば…メインサーバー、ささささっきデスチワワの報告してきた時…()()って言ってた…」


「わぁー!!!」



 ——————ドドドドドドドドッ!!!



 ———グルゥゥゥゥゥゥウア!!!



 ——————ドドドドドドドドドドドドッ!!!



 ———ブルゥァァァァァァァア!!!



 モニターに映る光景はまるで戦争の様だった。

 警備ロボが撃つ銃弾にデスチワワが対抗して突進する。

 一台の警備ロボを犠牲に数匹のデスチワワが倒される。



 ——————ドドドドドドドドッ!!!



 ———グルゥゥゥゥゥゥウア!!!



 ——————ドドドドドドドドドドドドッ!!!



 ———ブルゥァァァァァァァア!!!



 その繰り返しで数分が経過した。

 兎が所有するマンションの前の入り口に大量の肉塊が乱立する。


「…うぇ…ぇ。ぐっるぅろぉ…」


「…ききき、きっも。」



 ——————メインサーバーから報告いたします。35匹のデスチワワを処理。総動員警備ロボ65機、内損壊(そんかい)5機。残弾数……



「メインサーバー、もういい…ありがとう…」



 ——————かしこまりました。対象の後処理(あとしょり)は焼却でよろしいでしょうか?



「それでいい、灰にしろ。」



 ——————かしこまりました。



「デスチワワより、私達の方がよっぽどエグいね…」


「わわわ私達のテリトリーに、はは入ってきたワンコが悪い…」


 すると突然、運動場のモニターから聞き覚えのある声が聞こえてきた。



 ——————『エグい事すんなぁアンタら。』









 ———————————————#####



「サキミネさん今日は2時間後に記者会見があります。更にその後、ベリエル国立研究所へ訪問の予定でございます。」


「ハァ…」


「やはり、お疲れですか大臣。」


 大きなオフィスの真ん中で自分の目頭をつまみ、ため息をする中年の男。


「こんだけ働いて高校生の娘より手取りが少ないんだよ…」


 秘書の女はサキミネに(いぶか)しげな表情をして言った。


()えある防衛省トップより、稼いでらっしゃる娘さん…株トレーダーとかですか?」


「いいや、メカニック系だ。あー、アレだ。最近だと“ナノシステム”の開発に(たずさ)わっていた。」


「娘さん凄いですね…」


 秘書は驚愕の顔を見せ、感心する。


「俺も結構頑張ったんだけどなぁ〜…父親として、ちょっと自信無くすよ〜…」


 その時、秘書とサキミネが居るオフィスのドアが勢いよく開いた。



 ——————ガチャンッ!!!



 ——————大臣はいらっしゃりますか!?!?!



 勢いよく開けられたドアに立っていたのは、汗だくの職員の男だった。


「ど、どうした。」


 あまりに激しい勢いで呼ばれたので、少し困惑するサキミネ。


「とうとう()()()()()が現(あらわ)れました!!!!」


 広いオフィス内が(あわ)ただしくなる。


「ま、まずい。それは確かなのか?!」


「は、はい。目撃情報と現場の被害からソースは確実かと…」


 サキミネは急いでスマホを取り出し、娘に電話をかける。

 その間、秘書はありとあらゆる機関に報告の連絡を入れ始める。



 ———プルルルルッ。プルルルルッ。



「兎、久しぶりだな。いきなりだが落ち着いて聞いてくれ。お前なら出来るはずだ。」







 ———————————————#####



「あぁ。そうし…」


『大臣!!今、再び報告が入りました!!!』


「ん?どうした、今娘と電……」


『声を使って玄関を開けさせるゾンビが確認されました!!!』


「なんだと?その話本当か?あぁわかった。その件は追って伝える。」


『は、はいっ!』



 ——————『どどどどうしたの…』




「たった今、新しい情報が入った。人の声を話して玄関を開けさせるゾンビが出たらしい。決して誰もマンションにいれるな。それと…」


 その時、巨大な轟音と地鳴りが響く。



 ——————ズッドォォォォォォォォオオオオ!!!!



 オフィスが揺れに揺れ、ぶら下げている蛍光灯も割れる。

 職員全員がその場に倒れ込み、立ち上がることが出来ない。

 サキミネの手からスマホが落ち、揺れで倒れてきた棚に潰される。

 それを気にせずサキミネは叫ぶ。


「なっ、何だ!!!何があった!!!」


 書類やPC画面が倒れ荒れたオフィスにサキミネの大声が響く。


 [じ、地震…?]

 [イッタイ…足に何か落ちてきた…]

 [デカい地震…]

 [怪我は無いかー?!?!]

 [足首イッタァ…]


 各々(おのおの)の職員が話出し、オフィス内がガヤガヤする。

 サキミネはオフィスの窓に急いで近寄り外の様子を見る。


「お、おい。嘘だろ…」


 防衛省の入り口の門が無くなっている。

 この国の防衛省は他国のテロリストなどの侵入を防ぐ為、建物自体が高く大きな壁で囲われている。が…


(いた)たっ…って、大臣…これ、隕石でも落ちたんです…か?」


 秘書の言葉に恐怖の感情が混ざっていた。

 その光景にサキミネが声を漏らす。


「何がどうなったらこんな…」


 大きく(えぐ)れた地面に地割れした様な穴。

 縦に伸びた穴の底は見えない、深く割れている。

 地割れした地面を視線で辿るとそこに1人の少女が立っていた。

 サキミネは困惑した。

 何故、ここに少女がいる?

 何故、破壊された門の前にいる?

 もしかして…あの少女が破壊したのだろうか。



「チャイナ服…?」



 秘書は各機関にこの状況を連絡する為、速攻で電話の受話器を取り番号を入れる。


「大臣!電話が繋がりませ…」



 ——————ドォゴォォォォオンッ!!!



 [キャーーーッ!]

 [うわぁぁあッ!]

 [あぁぁぁぁあ!]

 [きゃぁぁあ!]


 各々の悲鳴がオフィスに響く。

 天井の一部が剥がれ落ち怪我人が出る。

 そんな中ひとり、窓の外を見るサキミネ。

 悲痛な声が飛び交う中、大声で叫ぶ。


「防衛省にチャイナ服を着たバケモノが侵入した!!ただちに警戒体制a(アルファ)からz(ゼータ)へ移行しろ!!!」


 その号令を機に職員はオフィスから走って出ていく、負傷者を置いて…。

 サキミネの叫びから7秒後、建物の窓が厚い鉄板に覆われる。



 ——————ガシャンッ。



「私はまだ死ぬわけにはいかない。相手がいかようなバケモノでも…」


 サキミネはチャイナ服女に対抗する為、全ての職員に無線で指示を出す。





 ——————「対象、チャイナ服女の殺害を開始せよ。」


頑張れ兎パパ( ̄^ ̄)ゞ



【躓くお前に、明日はない。】

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