〔第17話〕わっかんねぇな〜
門番に殺された後、ツグネとタフナはこの周回移動都市やセカンドオーダーについて色々情報を集めていました。
犬のかたまりは濁点をゲットした。
雲ひとつない快晴の空に草原の大地。
ツグネ達は高い草木が生い茂る森に入る。
隣には司教エヴァンテがいる。
ツグネ史上こんな安心できる場面があったか?
いや、ない。
しかし、タフナはどこか落ち着かない様子でソワソワしている。
おしっこでも我慢しているのだろうか。
大きな髪の長い女、アネロ•ネッサに担がれているセルフレリアは相変わらず脱力して、されるがままだ。
「なぁ…エヴァンテ…」
「どうなされましたか?ツグネ」
ツグネはエヴァンテにずっと聞きたかったことを聞く。
「いや…さぁ…何か、アレだよな。お前だけ場違い感半端なくないか?」
ツグネはそう言うとエヴァンテを下から上まで舐める様に見る。
その次に、周りを見る。
俺とタフナは動きやすい迷彩の雑な柄の服。
アネロネッサは黒の布でできたザ軍人っぽい服。
セルフレリアはシスター服。
エヴァンテは…昭和っぽい白いワンピース。
うん、場違い感が…。
「オシャレという奴です。貴方と出会う最初の日ですからね。」
「…やっぱり、お前ピクニックのフリして俺を待ってたんだな。後、街で情報収集した時のエヴァンテという人物像と今のお前の人物像が全く違うんだが…どっちが本当のお前なんだ?」
「ドラマツルギー的な話ですか?それなら、司教のエヴァンテとしてはツグネが集めた情報のエヴァンテ。いち女の子としてはツグネの前のエヴァンテですわ。」
「あぁーうん。そうかー。」
「えぇ♫」
エヴァンテのアプローチを華麗にスルーして、次の質問に取り掛かるツグネ。
「それと、222に関して、どこまで知っている…?」
「そうですね。過去に一度だけ、この目でその姿を見たことがあります。」
「どんな姿だった?」
「この周回移動都市に馴染み深い、姿でしたわ。」
「おい、どういう事だ…それ…」
ツグネはエヴァンテの意味深な言葉に眉をひそめる。
「この都市が所有する兵器に、その姿が良く似ていましたの。」
「この都市の兵器…。裏切り者とかか何かなのか?」
「違います。この周回移動都市に“市民権”が存在する限り、裏切る事など不可能ですの。」
「…なら、なんでその姿がこの都市の所有する兵器に似ていたんだ?」
「それは、わかりません。」
「そうか、エヴァンテにもヴェルサイユにも分からない事があるんだな。」
「司教として不甲斐ないです。」
「だから、お前の中での司教ってどんなだよ…。俺の中で想像する司教とだいぶズレてんだけど…」
エヴァンテはツグネに突っ込まれても嫌な顔一つせず、ニコニコしている。
まるで、遊園地に来た小さい子供みたいだな。
「んで、具体的にはどんな姿だったんだ?」
「要約すると大きなロボットですわ。」
「ッ?!ロボット…なのか?222は?」
「正直に申し上げますと、詳細は分かりません。しかし、私がこの目で見た姿は他でもありませんでしたの…。」
そんな話をしていると荷物の置いてある場所まで辿り着いた。
そこには、前と同じ様にケモノ女がフードを深く被って荷物を匂っていた。
——————クンクンクンクンッ。
ツグネとタフナはその光景に内心、心休まらないものの今回はエヴァンテが来てくれているからという理由だけで安心する。
エヴァンテが早速、茂みから己の姿を晒し、荷物を匂っているケモノ女に話しかけた。
「お取り込み中、失礼します。」
ケモノ女はそれを見るや否や、素早く被ったフードを下ろし、片足を立ててしゃがみ、胸に手を立てて敬礼の様なポーズを取る。
「お会い出来て光栄です。エヴァンテ様。この度はどの様なご用件でお伺いなされたでしょうか?」
学の無い様な声で叫びまくっていた奴の姿とは思えない。
丁寧な態度で応対するケモノ女。
「この方の荷物を取りに来たのですが、回収してもよろしいでしょうか?」
「とんでもございません。どうぞ。」
エヴァンテの後ろに立っていたツグネとタフナが荷物を回収する。
ケモノ女がツグネとタフナを見た後、エヴァンテに聞く。
「つかぬことをお聞きしてよろしいでしょうかエヴァンテ様。」
「はい、許します。」
「この2人は新人…ですか?他の国の使者ですか?それとも…」
ケモノ女はツグネとタフナに疑念の顔を向けながら聞く。
エヴァンテはニコニコした表情を崩さずケモノ女に返答する。
「どちらかと言うと新人です。それと、私の“友達”です。」
エヴァンテとケモノ女が話していると横からパジャマ姿の電ノコ少女が現れた。
「何してるのケモちゃん…………えっ、エヴァンテ様…」
電ノコ少女は即座に片足を立てて敬礼する。
「お会い出来て光栄です。エヴァンテ様。」
敬礼し、ケモノ女と同じ挨拶をする電ノコ少女。
それを見てエヴァンテも微笑みながら挨拶する。
「えぇ帰っていたのね“ドレス•ロード”。私も久しぶりに会えて光栄だわ。」
ツグネとタフナはお互いの顔を見合わせた。
ツグネは、エヴァンテに挨拶する電ノコ少女、ドレス•ロードを見て内心驚愕していた。
(今、エヴァンテはコイツの事、ドレス•“ロード”って言ったのか?しかも、あの“ロード”の称号が…なぜ今この都市にいる?いやそんな事より“ロード”がエヴァンテに片膝立てて挨拶している。エヴァンテは一体、何者なんだ…)
するとドレス•ロードはアネロ•ネッサに担がれているセルフレリアを見た瞬間、目を丸くして言った。
「あの、エヴァンテ様〜…うちの妹は何か大きな罪を犯したのでしょうか…」
それはそうだ。
目隠しと耳栓して担がれている人をみたら誰だってそういう解釈になる。
(そんな事よりアイツ今、妹って言ったか?!)
アネロ•ネッサは担いでいるセルフレリアを下ろし、目隠しと耳栓を取る。
「ちょっと、いきなり下さないで…えっ、姉さん?!」
「我妹よ…どんな大罪を犯したのか…」
「何の大罪も犯してないわよ!!それより、帰ってたんなら顔ぐらい出して下さい!!」
ツグネはその会話を聞いて納得した。
ドレス•ロードの使った能力の“電ノコの翼”は、どことなくセルフレリアの出した能力の“翼”に似ていたからだ。
といっても、セルフレリアの様な天使の翼と違いドレス•ロードの翼は…なんか…こう、悪魔みたいだった。
あの黒色の高速回転する電ノコ、それら大小が重なり耳を塞ぎたくなる様な高音を出す。
あ〜…思い出すだけで胃が痛くなる。
「んーっ。ケモちゃん〜よしよし…んーっ。んーっ。」
「ちょっと!ちゃんと人の話を聞きなさいよ!ドレス!」
ドレス•ロードはケモノ女の顔に自分の顔を擦り付けて、セルフレリアの話を半ば無視する。
しかし、そんな事お構いなしだと言わんばかりに俺はエヴァンテに聞く。
「今、この周回移動都市の上にロードはいないはずだ。なぜロードがいる?」
「ドレスが帰ってきている事を私も把握しておりませんでした。ドレスは年中連合列車で世界を回っていますから。帰ってくるタイミングは大体の時期ぐらいしかわからないのですわ。」
ドレスロードにも周回移動都市の“市民権”が適用されているはずだ。
でも、エヴァンテはドレスロードの居場所を把握していなかった。
つまり、整理するとヴェルサイユにもドレスロードの居場所が分からなかったと言う事になる。
市民権を得ても、プライバシーは厳守されると言う事なのだろうか。
正直俺も“市民権”のことに関しては大きな利点ぐらいしか知らないから何とも言えないが…。
利点と言ってもそれも大まかにしか分かっていないからな〜…。
ヴェルサイユの事も…。
後で、エヴァンテに聞こう。
「ドレス、報告を。」
エヴァンテの一声でドレスロードが仕事モードの顔になり、ケモちゃんから顔を離し報告し出す。
「連合列車から…」
ドレスロードが話し出そうとした時、タフナがその会話に割り込んだ。
「あのぉ…場所、変えませんか?」
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上を向くツグネ。
空ではなく天井が見える。
ただの天井ではなく、絵画が大きく描かれた天井だ。
さぞ歴史があるんだろうな…。
俺は感嘆の声を抑え、前を向く。
大理石で出来た大きな丸い机を囲う様に置かれた椅子。
そこに座るは、個性あふれるメンツ達。
それぞれ俺に近い順から左回りに…
【エヴァンテ】
【ドレス•ロード】
【セルフレリア】
【ケモノ女】
【セネカ•ミル•レイディ】
【虫っ子】
【アネロ•ネッサ】
【ダーレン】
【ニヴァ】
【タフナ】
【俺】
が座っている。
そして今いる場所はエヴァンテの住んでいる教会の中らしいのだが…もう城みたいに大きい。
奥から、おぼんに飲み物を乗せたシスターがぞろぞろやってきて、それぞれの机の前に置かれた。
——————コトンッ。
誰も飲もうとしない。
そんな重々しい空気の中、セネカが話し出す。
「そういえば、鷹田くんって今、セルフレリアの部屋のベッドで寝かせてあるけど大丈夫だった?」
セネカの疑問にセルフレリアが答える。
「えぇ、彼にとっては、今回とても過酷な旅になったでしょうから、しばらく休ませておきましょう。ッて?!何で私の部屋なんですか?!」
「え〜ボクナニモシラナイ〜。」
次に、エヴァンテがドレス•ロードに向けて話す。
「報告の続きをお願いします。」
ドレス•ロードがエヴァンテにえしゃくをした後、先ほどタフナに中断された報告の続きを話し出す。
「連合が本格的に222の調査に乗り出した。そのおかげで私は今ここにいる…やったー…」
「地上の日本からここまで誰に迎えにきてもらったのですか?」
「六防のカスミ様の部下にスフィア出してもらいました〜。」
「あら、そうなんですね。」
ん?
なんだ、スフィア?六防?
俺の知らない単語が出てきた。
例のエヴァンテが言っていたこの都市のロボット…なのか?
聞きたい。
凄く聞きたいが自分の番が回ってくるまで一旦我慢しよう。
てかこれ、俺の番回ってくんのかな…。
ドレス•ロードは立ち上がり、ケモノ女の座っている椅子までスタスタ歩き出す。
そして、無言でケモノ女に圧をかけている。
——————ジーッ。
ケモノ女は黙って椅子を後ろに引いた。
ドレス•ロードはケモノ女に“対面”して跨り背中から黒い電ノコの翼を出した。
しかし、電ノコは回転していない。
「えっちょっおまっ!!」
ツグネがそれに驚き声を出す。
——————ガンッガンッガンッ!
ドレス•ロードは電ノコで椅子を掴み、自分の視線が前を向く様に持ち上げ、椅子自体の方向を180度回転させた。
「ドレス。教会内で、ギアは控えて下さいまし。」
「うん。」
エヴァンテに言われた瞬間、ドレス•ロードの背中から黒い電ノコの翼が消えた。
そして、また知らない単語が出てきた。
ドレス•ロードはケモノ女の顔に自分の顔を擦り付け、話の続きをしだす。
「連合はもうメイトンというコマを動かしている。」
ドレス•ロードの言葉にセネカが疑問を投げかける。
「でもなんで今、連合はメイトンを…」
セネカの言葉に対して、巨漢の男ダーレンも呟く。
「連合にとって、メイトンはものすんげぇ大きな戦力だと思うんだけどなぁ…そんな大きな戦力を今動かす理由…わっかんねぇなぁ〜。」
再び一同が黙る。
それをチャンスとみたツグネが話し出す。
「ちょっと待ってくれ。俺とタフナにもそのスフィアやギアについて教えろよ。」
それにタフナも賛同する。
「そ、そうですね。僕達だけ蚊帳の外みたいな感じになってますからね。(あれ?ツグネさんギアについては知ってると思うのですが…まぁ嘘と真実を混ぜて話すと良いっていう彼を実践してるんですかね…?)」
そしてエヴァンテは申し訳なさそうな表情で説明を始める。
「そうですね、失礼いたしましたわ。スフィアはこの都市が所有する巨大ロボット型の兵器です。ギアは、一部の人間だけが所有する特別な異能といった所です。」
ツグネがタフナの方を見た。
(そうだ、俺達はその異能についてよく知っている。)
それはここ、周回移動都市に来る前の話…
普段エヴァンテはドレス•ロードの事をドレスと呼ぶのですが、毎回最初の挨拶だけドレス•ロードとフルネームで呼びます。
まぁお堅い恒例行事みたいなものです。
「お会い出来て光栄です。エヴァンテ様。」
「えぇ帰っていたのね“ドレス•ロード”。私も久しぶりに会えて光栄だわ。」
このシーンですね。
次回、ツグネとタフナが目を瞑り周回移動都市に飛ばされる前の話を思い返します。まぁ回想です。あっ前半は兎とフブの話です。




