〔第14話〕サッカーボールは割れ物ですか?
兎とフブが暮らして居る場所は大阪です。
元々、旧首都に住んでいた2人。
幼かった頃、旧首都が壊滅する戦争があったので大阪に引っ越してきました。
今の所、設定上ストーリーで詳しく語られる無いのでここに書いておきます。
「ひ、広っろい…」
だだっ広いその場所は兎のマンション、20階の運動場だ。
サッカーコートが下に書いてあったり色々なスポーツの線が書かれてある。
「す、凄い…サッカーコート芝生ぢゃん!!し、しかも端っこの方にバスケ用のコートもあるじゃん…」
凄すぎて若干、引くフブ。
「と、とと友達と遊ぶ予定で作った…今日初めて使う…」
「よしよし、これから沢山使おうね…」
最近あんまりニュースを見ていないから今、世界がどう言う状況になってるか分からないけれど…
あの委員長と2人で遊んでいる。
サッカーボールを蹴って、パスしている。
間違いなく私が世界で1番幸せ者だと思う。
「ねぇ゛ーー兎!何処に蹴ってるの〜!!」
「ご、ごごめん…!え、えぇえいっ…」
ボールを蹴って話して蹴って取りに行って。
多分、明日は筋肉痛で動けなくなると思うけど…
楽しい。
凄く楽しい。
「ねぇ゛ーーー!!!兎、私の全力シュート見てよ!!」
「えっ…み、みみみ見たい!」
「いっくよぉぉぉお!!」
そう言ってフブは充分な助走をつけ、ボールを蹴った。
——————パァッッッンッ!!
「うわぁぁぁあ!!!!!」
「わぁぁぁぁあ!!!!!」
「ちょぉうぇえ?!ご、ごめん兎ー!!ボール割れちゃった!!」
「なななななななッ。」
フブがサッカーボールを破裂させた事実に兎は驚き、壊れたロボットの様になる。
「あちゃ〜…ごめ〜ん、油断すると毎回こうなんだよねー…」
「え?」
「え?」
「いいい、いつも、ボール…わ、わ割れない様に気を使って蹴ってるの…?」
「いやぁ〜、そうなんだよねぇ…ほんと悪い癖だよ…」
「え?」
「え?」
「あっ、その点バスケは良いよね!たまにしか破裂しなあからね!」
「え?」
「え?」
「そそそそ、そもそも普通の人は、ボボボール破裂なんて出来ない…」
「んー…そうかな?結構そこら辺に居ると思うけど…?」
「え?」
「え?」
「そそ、そのチカラも才能…凄い…」
「別にワタシそこまでチカラ強い訳じゃないけどなぁ。」
「え?」
「え?」
「あー、アレだよ?体の使い方がね、私、上手だと思うんだけど……どうかな…?」
「ももも、もう1回全力で蹴ってる所、みみ見たい…」
「でも、ボール…割っちゃった…」
申し訳なさそうに話すフブに対し兎は答えを示す。
「咲嶺兎の権限を持って命令する。残りのサッカーボールは何個あるのか答えろ。」
——————メインサーバーのワタクシがお答え致します。残りのサッカーボールの在庫は249個です。
「兎…割っちゃった私が言うのも何だけどさ…買いすぎじゃない?サッカーチームでも買うの?」
「ななな、なんか…買ったんじゃなくて…こ、ここ20階の運動場作った時…ぞ、贈与された…」
「ぞ、ぞぞぞ贈与ぉお?!金持ちワードだ…もしかして、別のスポーツのボールもあ…」
フブの話を遮ってこのマンションのシステムが話し出す。
——————他に何か要件はございますでしょ…
更にその話を遮る様に、兎がシステムに命令する。
「お前、誰の話を遮っているんだ?」
兎の目が暗闇で光る。
肉食獣の様にギラつく。
「ねぇ゛ーーー!!!怒んないであげて、ほらさ!元はと言えば私がボール割ったせいだし…」
——————誠に申し訳ございません咲嶺兎様。
「謝る相手…違うだろ。」
再び兎の目がギラつく。
——————フブ様。この度は無礼な行動、及び態度、誠に申し訳ございませんでした。
「ねぇ゛ーーー!!!私のせいなのに謝らせてんの可哀想なんだけどぉー!!」
「ききき、教育は大事…」
「え、教育…?まぁ、AIを育てる的な感じ?」
「う、う〜ん…修正……う〜ん…、つつ積み重ねさせるに近いかも…」
「あー、何となくニュアンスは伝わってきた。」
「メインサーバー、サッカーボール1つ出せ。」
——————かしこまりました。
———バシュンッ。
サッカーボールが天井から1つ出てきた。
というか、落ちてきた。
兎は真上から落ちてきたボールに対してトラップしようとする。
トラップに失敗しボールが地面から跳ね返って、兎の頭に直撃する。
———ポカッ。
「ちべっ。」
「フフフッ…ハハハハハッ!何それ!超ぉ可愛いんだけど!兎ぃフフッ。ヒヒヒヒッヒィーッ!!」
「ちっ、違っちちちちっ!!」
しばらく恥ずかしさでジタバタする兎からボールを取り、ゴール前にセットするフブ。
「しっかり、目に焼き付けといてよね。私の全力シュート!」
「うん。」
——————パァッッッンッ!!
———————————————#####
「いっくぅよぉー!!!」
「ううう、うん…」
——————バンッ!
フブが蹴ったサッカーボールが兎の足元目掛けて飛んでくる。
——————トンッ。
「ととと、トラップ成功した!せせ、成功したぁ!」
「うわぁぁぁあ!やったなぁ!」
「は、はは初めてトラップ出来た…」
「やるじゃ〜ん、じゃー次!私の所までパス届くかなぁー!!!」
フブが兎を煽る様に言う。
兎は芝生を少し踏み窪み作った後、ボールをそこに置く。
「い、いい行きます…」
「おっ、プロの人がよくやるやつじゃん〜。」
「やっ、やぁーーーー!!!」
——————スカッ。
———コロンッ。
——ドサッ。
兎はキックを空振りした勢いでひっくり返る。
背中から落ちたせいで、しばらく息ができなかったが、
そこじゃない。
(違う、痛みじゃなくて恥ずかしいが勝つ…)
「ねぇーーー!大丈夫ー!!兎!!!」
「ぃひぃッうッ…ひぃー…」
フブが兎のそばに駆け寄り、仰向けで倒れて居る兎を起こし背中をさする。
「ほら、ゆっくり息して〜吸って〜スゥーー…吐いて〜…フーー。」
「フーーー…スゥーーー…」
「ねぇ、大丈夫…?」
「ん゛ん゛…だだだ、大丈夫…で、でも、別のやつしよ…」
「ねぇ゛ーーー!!!心折れてるぢゃん!!!はーやーいー!!!ねぇーーー!!!」
「べべべ、別に心…お、折れてない…」
「ねぇ゛ーーー!!!」
「じじじゃあコツ…とか、あ、ある?」
フブはしばらく自分の体を見た後言う。
「んー…“骨盤”かな。」
「こここ、骨盤…?」
「私は、だけど。動きの全部を骨盤で動かしてる感じかな?」
「むむむ、難しい…そ、想像出来ない…」
フブは兎の腕や足を掴み説明を始める。
兎は急に体を掴まれた事にびっくりしつつ説明を受ける。
「足を蹴り出す前に骨盤を動かす、ほら!こう!やってみて!」
「やややってみる…」
「じゃボールセットしてあげる。」
そう言ってフブは兎の助走の歩幅に合わせてボールをセットする。
「い、い行きます…」
「うん。」
——————タッタッタッ。
———バンッ!
兎が蹴ったボールは遠くへ飛ぶ。
「うぉー飛んだねぇ兎!!」
「わ、わ私…チカラ弱いのに…こ、ここんな遠くまで…」
「兎ってさ、呑み込み早いよねぇ〜頭やらかいんだろうなぁ〜いいなぁ〜!」
「そ、そそそう…?」
“自分に出来ない”と思っていた事が、
案外、簡単に出来て驚きだ。
素直に嬉しい。
「わ、わ私…今までスポーツなんか、まともに出来た事なかったのに…」
委員長の…フブのおかげだ。
私がフブと出会っていなければ、スポーツ事態、挑戦すらしなかっただろう。
君と居ると新しい自分に出会える。
そんな想いに浸っていると突然、顔の真横から声がした。
「ねぇー、次は何する?」
「わっ、び、びびっくりした。」
「ばぁ〜あ。」
「もも、もうちょっと…ボール蹴る……」
「そぉこなくっちゃ。」
———————————————#####
「“1回目”の鐘の音消えましたね…」
昼下がりの気持ちいい空、野原に敷かれた布の上に並べられる料理。
「そうですね。222がやってくるのも時間の問題でしょう。」
エヴァンテという女はいつも教会支給の服を着て居るが、今日は違う。
今日の服はまるで昭和の頃、流行った白いワンピースに教会の上品さを足した様な服だ。
「エヴァンテ様…ところで、これは一体なんですか…」
セルフレリアという女はエヴァンテとは違い教会支給のシスター服を着ていた。
「今日はピクニック日和です。外に布を敷いて青空の下、食べるご飯はどんな調味料をかけた物より美味しいんですよ?」
「そ、それは…そうですけど…」
エヴァンテからの返事に、不安を隠しきれないセルフレリア。
「尚、このピクニックに一緒してくれたのでもっとご飯が美味しくなりそうです。」
「あぁ…。そうですか…。滅相も御座いません。私もそう言って頂き光栄の…」
———ペチッ。
軽く手を叩いて、セルフレリアの話を詰まらせてから話し出すエヴァンテ。
「セルフレリア。社交辞令は置いておいて、今は目の前の料理に早く手をつけましょう。」
「しゃ、社交辞令などではっ…ハッハムア…」
エヴァンテに無理やり料理をねじ込まれるセルフレリア。
「えっ、えゔゃんて様…にゃっ、にゃにを…」
口からこぼれ出そうになるご飯を上品に手で抑え、エヴァンテの顔を見る。
「美味しいですか?」
「んも、んぐもも…お、おいひいでひゅ…」
「貴方が今食べた部分は、この料理で1番美味しい部分です。」
——————もぐもぐ…。
頑張って咀嚼するセルフレリアを見ながらエヴァンテは話を続ける。
「私達が“今”行なっている行為も、それらと変わりないでしょう。しかし、どうでしょうか。私はこの料理の全部を食べたいのです。」
——————もぐもぐもぐ…ゴクンッ…。
やっと飲み込んだセルフレリアがエヴァンテに向かって抗議する。
「し、しかし、私達が行なっている行為は世界の為の崇高なものです。わ、私も出来れば全部この料理を食べたいです…が…」
「そうですね。この料理を食べ切るには少し時間が掛かりそうですね。ふふっ。」
「……地上ではそうもいかないって事は分かってます。」
「そうですね。地上が腐るまでそう時間は掛からないでしょう。」
セルフレリアが再び料理を口にして呟いた。
「美味しい部分だけ…ですか…」
その時、エヴァンテの背後から音が鳴った。
——————カチャッ。
『よぉ、久しぶりだな、エヴァンテ。』
頭の真横で鉄の塊りを頭に突きつけられるエヴァンテ。
後ろから現れた男の声に対し、エヴァンテは振り向こうとしなかった。
「あら、こんにちは。今日はいい天気ですね。」
『俺が誰かなんて今、どうでもいい…質問に答えろ。』
その時、エヴァンテが少し大きな声を出した。
「レリア!!」
エヴァンテを脅している男はすぐ横のレリアと呼ばれた女を見る。
その女は大きな天使の羽の様なものを生やしてた。
それは白く若干の光を放ち、ゆっくり若干動いている。
よく見ると羽では無かった。
平たくて鋭い白い“ナニカ”が集まって出来ている。
そして、その平たくて鋭い“ナニカ”は小さく細かく振動している様に見える。
『おい、レリアという女。動くな。コイツ、殺すぞ。』
「エヴァンテ様!」
———ツー。
喉元に突きつけられたナイフが若干の皮膚を裂き血が滴る。
『ところでお前。なんで“コレ”の事、知ってんだ?』
「さぁ、何の事でしょうか。」
——————カチャッ。
『とぼけるな、エヴァンテ。お前はこの鉄の塊がどういう物か知ってるみたいだな。』
「だって快晴ですもの。少し口が多くなったのはご愛嬌という事でお願いしますね。ふふっ。」
『話を逸らすな。次は殺す。』
「えぇ、私は知っています。司教なんですから。“拳銃”の事も、“ツグネ”さんの事も。」
ツグネさん久しぶりに出てきましたね。
今後の活躍に期待です。
【で、デスチワワだ…】




