〔第15話〕下品ですよ。
新キャラ【アネロ•ネッサ】【虫っ子】
「お前、何で俺の名前知ってんだ。」
「ツグネさん、私は貴方の敵ではありません。ですからどうか、落ち着いて下さい。」
「あぁ、そうか。いきなり名前言い当てられて落ち着けってか。」
「ええ、司教ですからそんな事知っていて当然です。」
「お前の中の司教ってどんなだよ…」
ツグネは思わずツッコミを入れてしまった。
ていうか、この状況まずい…。
隣の女、名前はレリアと言われてたがそいつがマズい…。
多分、フルネームは“セルフレリア”だろう。
この街で情報を集めているとその名前は自然と耳に入る。
司教エヴァンテの護衛、セルフレリア。
聞くところによると周回移動都市には“ロード”という称号があるらしい。
ロードの名前を与えられた人間の数は周回移動都市の住人何十万人の内の、たった4人しかいないという。
そして、今目の前にいるコイツ。
セルフレリアは今、最もロードという称号に近しいとされている人間らしい。
セルフレリアが5人目のロードになるかもしれないって噂が流れてる時点でコイツはヤバい。
そんな奴が目の前に居る。
エヴァンテを人質にしていなかったら今頃、俺は肉のかけらも残らないぐらいに細切れになっていただろう。
………。
ロードと言えば…
俺があの時、小屋で出会ったアイツがそうだった。
【カンネ•ロード】その底知れなさは身を持って知っているつもりだ。
「ツグネといったか貴様、今すぐエヴァンテ様から離れろ。」
「ダメだ。目的を果たすまでは解放できねぇな。」
「ゲスめっ…」
そしてツグネは誰にも聞こえない様にエヴァンテの耳元で小さく呟いた。
「お前はどこまで知っている?」
エヴァンテは耳元で喋られるのが苦手だ。
体を少しブルッとさせた後、言った。
「やめてください、下品ですよ。」
エヴァンテのその様子を目の当たりにしたセルフレリアが顔を真っ赤にして怒鳴る。
「おまっ!おまぇ!エヴァンテ様に何をしている!!」
「………え、?」
エヴァンテの変な反応により、セルフレリアがとても大きな勘違いをしていそうだ。
マズい。
「ゲスめぇえええ!!」
「ちょ、…と。ま、待てよ……え…ぇえ…」
怒れる獣、セルフレリアを横目にエヴァンテは落ち着いて話し出す。
「冗談はさて置き、私は貴方の“聞きたい事”ぐらいは知っています。」
「何で知ってる…?」
「私はこの周回移動都市と特別な“約束”をしています。」
「詳しく話せ。」
「え、エヴァンテ様!!」
追求するツグネ、淡々と話すエヴァンテ、焦るセルフレリア。
「ん゛ん゛ー、さて、何から話しましょうか。」
エヴァンテは頭に銃を突き付けられていながらも、大きく腕を伸ばし背伸びする。
「全部だ。」
「今日は何だか良い天気なのでついつい口が滑ってしまいますわね。」
恐らく口が滑ったと言う意味のない定を作っているのだろう。
「早く話せ。」
セルフレリアが怒りの形相でこちらを睨んでくる。
正直、コイツらより人質とってる俺の方が内心、怖いよ。
コイツらおっかねぇ…。
「私はヴェルサイユという子と“約束”をしています。その子が色々な事を私に教えてくれます。」
「………何故“周回移動都市”から“ヴェルサイユ”に言い換えた?」
「今ヴェルサイユに怒られました。自己紹介の時は名前で呼んでほしい、と。」
ツグネは周りをキョロキョロ見回した後に言う。
「どこから怒られたんだ、ヴェルサイユに。」
「私にしか声は聞こえません。」
「……まぁよく分かんねぇけど、続けろ。」
「えぇ。この都市の未来に必要なのが貴方です。ツグネさん。」
「…。」
「ヴェルサイユは“貴方”を欲しがっています。」
「俺がこの都市の味方につけって言うのか…?」
「はい。是非、私達とこの都市の未来を背負って下さいまし。」
「俺がお前らの方につくメリットはなんだ。」
ツグネの質問にセルフレリアが横槍を入れる。
「そんな事、自分で考えて下さい。ゲス野郎…」
しかし、エヴァンテはツグネの質問に丁寧に答える。
「そうですね。貴方はドーベル•ランに身を狙われているのではありませんか?」
「何で知ってんだよ………気持ち悪りぃなお前…」
ツグネは本心からつい声が漏れ出てしまった。
「おまっ!貴様っ!口をつつしめぇ!!!」
「セルフレリア、大丈夫ですよ。この方は味方ですわ。」
ツグネは拳銃のセーフティバーを親指で上げ、エヴァンテの頭に銃口を向けるのを止める。
そして、真っ直ぐエヴァンテの前に立った後、足を崩して座る。
「交渉だ、エヴァンテ。」
「えぇ、なんなりと。」
「随分余裕じゃねぇか。場慣れしてんのか。」
「まぁ司教ですから。」
「だからっ…もういい、本題だ。俺はヴェルサイユから市民権と“ヴェルサイユの雫”を貰う。この2つでお前らの味方につく。」
「………んー。」
「どうした、嫌か?なら俺はー…」
「いやいや、そんな事で良いのかな、と思っていまして。」
「あー…じゃぁ権利を1つから2つに変更だ。」
「大丈夫ですよ。では、私“方”からは3つ。1つ、貴方の【ギア】を切り札として使わせて下さい。」
「…良いだろう。次は、?」
「2つ、222の撃退に全面協力して下さい。」
「…やってやるよ。」
「3つ…」
ツグネはその刹那、3つ目にどんな条件がくるのか考える。
222を2つ目の条件として出しているという事は、その次もっとエグいのがくるのか?!
まずいぞ、そんな事、想像もできない…。
もしかして、人体実験させてくれとか言うんじゃねぇだろうな!
それとも、“やり直し”をエヴァンテの自由に使わせろとか…?
何だ、怖すぎる…。
「3つ目、私とお友達になって下さい。」
「はぁ?何言ってんだエロ女。」
やばい、反射的に言ってしまった。
怒れる獣セルフレリアを刺激する様な事を言ってしまった。
「貴様ぁ!!!誰に向かってぇぇぇえええ!!!」
セルフレリアの“羽”がツグネの方に向かって振りかざされる。
(まずい…流石に、死んだか…次はもっと上手くや…)
——————ガキンッ!!!
金属と金属がぶつかり合う音が鳴り響いた。
セルフレリアとツグネの間に男が割って入り、攻撃を受け止めている。
「ねぇ、君。後でセルフレリアをここまで怒らせた方法教えてよ。」
その男は馬鹿みたいに大きな武器を持ってセルフレリアの攻撃を防いでいた。
そして、エヴァンテが嬉しそうにその男に話しかけた。
「帰ったのね、ミル•レイディ。」
「ただいまぁ戻りましたぁ、ていうか!ミル•レイディの方で呼ばないでよね!セネカの方で呼んでって毎回言ってるじゃん!」
セネカの後ろには、フードを深く被った4人と場違いな服装の男1人が立っていた。
なんか片手にカメラ持ってるし…なんなんだコイツ…とりあえず一旦触れないでおこう。
フードを深く被った4人は一斉フードを下ろし、それぞれがエヴァンテの方を向き挨拶する。
「ただいま戻りました。ダーレンです。」
「ニヴァです。」
「アネロ•ネッサです。」
「虫っ子です。」
「セネカでぇ〜すぅ…」
セネカはやる気の無い感じで立ったまま挨拶していた。
ん?
虫っ子?
それは、名前なのか…。
「セネカ!!!ちゃんと挨拶しなさい!!!」
セルフレリアが母が子を叱る様にセネカに言う。
しかし、セネカも負けじと言い返す。
「べーっ、君はもうちょっと加減を知るべきだと思うなぁ〜べーっだ。」
「死なない程度に腕を切り落とすつもりだったわよ!!」
「ひぇ〜おっかないねぇ〜ほら、あの女怖いねぇ〜。ツグネ〜。」
(やっぱり、コイツも俺の名前を知ってんのか…)
ツグネの肩に手を回しラフに接するセネカ。
ツグネは馴れ馴れしい男に嫌気を感じながらもちゃんと守ってくれた事についての感謝を伝える。
「悪かったな、守ってくれて…」
「いいよぉ〜、そんな事よりぃあの真面目ちゃんのセルフレリアをここまで怒らせれるなんて僕、以来の才能だよぉ。」
ツグネが思わずツッコミを入れる。
「お前も怒らせた事あったんかい…でも、お前とは仲良くやっていけそうだな。」
ニヤニヤ笑うセネカとツグネ。
セルフレリアは2人に近付いて1発ずつ腹に拳をお見舞いする。
———ドスッ。
———ドスッ。
「うぐぬぬぬッ…」
「おぇぇぇ…」
セネカはただ痛そうにしているが、ツグネは吐いてしまった。
「いいきみですね。」
蹲るツグネを見下ろすセルフレリア。
「ク、クソ女ぁ…」
ツグネは、しばらく動けずにセネカに背中をささってもらっていた。
しばらくして起き上がり茂みに向かって叫んだ。
「タフナーーー!交渉成立だー!!出てきて良いぞー!!」
——————ガサガサッ。
「えーと…こ、こんにちは…皆さん…お、お元気ですか〜…」
タフナが声を出すと全員の視線がタフナの顔の方に向いた。
「えーと、エヴァンテ。もう1人追加だ。話は全部聞こえてたなタフナ。」
「は、はい…」
「良いでしょう。タフナさん、貴方もツグネさんと同じ条件でいいですね?」
「は、はい!こ、光栄です…」
「てことで、とりあえず交渉は終わりだ。俺達は置いてきた荷物を取りに…」
その時、茂みの方へ歩いて荷物を取りに行こうとしたツグネの手をエヴァンテが握り、引き止める。
「…なんだよ。」
「まだ、交渉は終わっていません。」
「あ?もう終わって…」
「まだ、3つ目が条件が承諾されていません。」
少しムッとした顔で言うエヴァンテにツグネは呆れた様に言う。
「わかった、承諾する。」
コイツは何を言っているのだろう。
ファンシームーブは正直“イタイ”がコイツは腐っても周回移動都市の超権力者。
あの“エヴァンテ”だ。
きっと政治的戦略があるのだろう。
再度荷物を取りに行こうとするツグネを引き止めるエヴァンテ。
「今度は何だよ…」
「今から私達は友達になりました。よってツグネさんではなくツグネと呼ばせて頂きます。」
「何コイツめんどくせ…勝手にどうぞ。」
ダーレンにガッシリ四肢を固定されたセルフレリアがジタバタしながら叫ぶ。
「ムキィー!!!貴様ぁ!!!心の声が漏れてるぞッ!殺ぉす!ころぉす!!」
5人組のセネカ以外が全力でセルフレリアを抑えつけている。
「ひぇ、アレおっかないっすねセネカ先輩。」
「おっかないねぇアレ、ツグネ後輩。」
タフナがツグネの手を半ば強引に引っ張り言う。
「は、早く荷物取りに行きましょうよ…ツグネさん…」
自分達の荷物を取りにツグネとタフナは茂みの奥へと姿を消したのを横目に確認したセネカはエヴァンテに話出す。
「エヴァンテさんや、いつもと調子が全然違う様に見えるんだけどー…服装といい〜態度といい〜、プライベートモードですかね?」
セネカが揶揄う様に言うとエヴァンテが嬉しそうに返事した。
「▽△▽△▽△▽△▽△。」
「え、エヴァンテこっわ…流石の僕も引くわ…」
なんの話をしているんだコイツらは…と思う人もいるかもしれません…ごめんなさい。
多分本編に入ったら全部繋がると思います本当にすみません。
△▽の中の文は本編やストーリーには関係ない事を言っています。また数十話進んだ時、△▽の中の文を答え合わせしましょう。
その頃の配信者。
「あっ、あのぉ〜…か、カメラ返してくれますか…?」
タフナ
「ヴェルサイユの涙、守る係…で茂みに隠れていましたが…なんか何もしてないっていう罪悪感が…」




