代償
あれから一か月後、俺たちはガレキの街での訓練と討伐、そして装備の拡充に努めた。
「BAの装備もなんとかなったし、そろそろ賞金首でも狩ってみるか?」
「まだ早いんじゃないかしら。アキラの装備がそろってないわよ?」
「BAに乗るんじゃし、そこは大丈夫じゃろ」
「あのね、アキラお兄ちゃんが危なくないならいいよ?」
と、それぞれ酒を片手に話し合う。それよりムイムイちゃん酒飲めるんだね。しかも全く酔ってない感じがする。
「ああ、俺自身の装備はともかく、BAの装備はもうこの街だとこれが限界だしな。軽めの賞金首な
らやってみたい」
と俺の意見を言うと、一部不安そうな顔をしつつ納得してくれた。
「じゃあ、明日は逆関でも狙ってみるか」
“逆関”とは逆関節のロボットであり、エイリアンが作ったと言われている。操縦タイプでは無く、無人で動くロボだ。BAがあればそこまで強くないらしい。
「四つ脚は出ない?大丈夫?」とかなり不安気にリリアがルフに向かって言う。
「アレは俺たちの手に余るからなぁ。それに噂じゃここから北東で出たって話だから、多分大丈夫じゃねーかな」
安心出来ない処か、フラグじゃないですかねぇソレ。
「まぁ、大丈夫じゃろ。そんなことより今日はアキラの奢りじゃ。食って食って飲みまくるんじゃ」
手加減という文字を宇宙に投げ捨てたかのようなセリフを吐くヒゲ。
「そうね、有難うね、アキラ」と美人にお礼を言われると嬉しくなるね!
「ありがとよ、まだ全部返してもらってねーけどな」
笑いながら俺の肩を叩きつつ、肉を頬張るルフ。
「アキラお兄ちゃん、明日も頑張ろうね」
とニコニコしながら自分の顔より大きいジョッキを傾けるムイムイ。飲み方は両手で可愛いのに、ペースおかしいです。
俺の財布に大ダメージを与えた食事という名の飲み会は深夜遅くに終わった。
次の日、右にバズーカ、左手に盾を持ったBAに乗り込み、仲間と逆関が出たと噂の荒野に来た。
「昨日聞いた話だと、この辺に出たって聞いたんだがよ」
とルフがぼやきつつ俺に言う。風と砂ぼこりでボサボサ頭がひどいことになっている。
「私の目でも見えないわね」とスコープも無いのにライフルを構えて周りを警戒するリリア。
「ふむ、待つにしろ進むにしろ、警戒はせんとのう」
カンタの言う通り、どっちにしろ警戒は必須だな。
「どうする?私が探しに行こうか?」
ムイムイちゃんが偵察を提案する。最高速度40キロしか出ないBAには偵察など無理というものだ。
「いや、俺が行こう。噂を取ってきたのは俺だしな。アキラ、何かあったら皆を頼んだぜ」
「分かった。気を付けてな」
「じゃ、行ってくる!」とルフは獣人らしい速度で荒野を走り去った。
狭さと暑さにやられて、BAから出て待っているとリリアがライフルを覗きながら声を上げる。
「ルフが帰ってきたわ。でもおかしい、何か焦ってるわ!」
嫌な予感がしてきたが、不安そうな顔をしてるムイムイちゃんの頭を撫でつつルフがことらに来るのを待つ。
カンタが人ほどの大きさのハンマーを片手に立ち上がり、方に担いで「四つ脚でも出たかの」などと縁起でもないことを言う。本当だったらどうすんだ。
「四つ脚だ!逃げろっ!」
リリアがヒステリックに叫び、カンタが腰に下げた水袋から酒を飲み、ムイムイちゃんが涙目で俺を見上げる。
「戦おう!最悪、俺がお前らを逃がす!」
この世界で少ししか生きていないが、それでも生きていけると思えたのはこいつ等のお陰だ。
別に悲劇のヒーローになりたい訳じゃない。でも、どうせ死ぬなら人のために死にたい。
「アキラ……。よし、やるか!俺たちならやれる!」
ルフが悲壮感溢れた顔から獰猛な顔つきになった。俺のような新人がやる気を出したからだろう、いつもより気合が入った感じがする。
そして、リリアの銃弾が遠くに見えた四つ脚に撃ち込まれた。
四つ脚との戦闘は死力を尽くしても勝てるかどうか分からない。
缶詰に脚が生え、蓋の上に目と大砲がこちらを見ている。
「くっそ、剣が通じねえし弾も切れた!」
「ふんっ!奴の左足を砕けたぞ!」
俺の盾で敵を止め、その間に仲間が敵を攻撃する。今までの戦法だが、今回そう甘いもんじゃなく、敵の足が盾を超えて当たる。すげえ痛いが我慢だ!
「早く沈みなさい!よし!武器は壊したわ!」
「みんな頑張って!」
リリアの土魔法で大砲が曲がったらしく、四つ脚が怯む。ムイムイちゃんは戦闘が苦手なので離れたところで警戒と応援だ。
「残り一発しかないバズを打ち込む!離れてくれ!」
五発あったのに、もう一発しかない。これは賭けに近いな。
「相手はもう瀕死だ!決めちまえアキラ!」
壊れた左足を無理やり動かそうとする四つ脚を蹴り上げてひっくり返す。
「くたばれ缶詰野郎!」
バズーカを打ち込み、すぐさま盾を構える。
ドカンともドンとも言えない音を立て、敵にとどめを刺すべくルフとカンタがそれぞれの武器でたたきつけようとする。
しかし、最後の足掻きか敵の振り回した脚がルフの足を切り裂いた。
「ルフ!」
俺が盾で敵を押さえつけ、ルフを見やるとリリアが回復魔法で止血をしていた。
「うおおおお!」
鬼神のごとくカンタがハンマーを上から何度も叩きつけ、ようやく四つ脚はその活動を終えた。
ルフの右足と引き換えに。




