僧侶の遺した日記 10 「当面の目標」
再度、聖森に赴き
神殿へと足を運んだ。神託を聞くために……
「僕には……。」
「ううむ……女神さまからの御言葉は……残念ながら……。」
真の勇者に神託は降される……伝承通りではある……。私ももしかしたら、という淡い期待はあった。
「ふむ、無駄骨だったか……一度騎士の館に戻ろう。亡き後も自由につかせてもらえるとはな……準備が良すぎる。」
騎士の館、客間に戻る。
「えと、どうぞ……。」
魔女にも少し慣れたのだろうか、メイドがお茶と菓子を置いていく。相変わらず美味しい。
この館は孤児院として運営されている、寄付と少しばかりの王都からの支援金、騎士の全ての私財が投じられ、館の元メイドや元執事たちが運営している。
「さて、当面の目標だが、いくつか手はある。私の故郷に戻り研鑽を積むか、1度勇者の故郷に戻り研鑽を積むか。どちらにしろ勇者、お前は実力不足だ。僧侶、お前もだぞ。年齢不相応には出来るが……それだけだ。」
「うっ……。」
そもそもが無茶な話なのだ、魔族を倒したのも……あの巣を破壊したのも……勇者ではない。
「気になっていたのだが……聞いていいか?魔族を討伐した、と言ったな。あれは事実か?」
勇者は事情を話す。
「ハハハ!確かにパーティとして討伐はしたのかもしれんが、それじゃほぼその勇者の祖父頼りではないか?」
「面目次第もない。。。」
「だが、その爺さんの血はひいているのだろう?事実魔力は光るものを感じる。老いてなお魔族を一瞬で切り伏せる実力、貴様にもあるはずだ。」
私は……研鑽を積むだけなら恐らく、傭兵団に一度戻る方が良い、だがまた旅に出るのは容認してくれるだろうか……。なら私のやることは。。。
「私は王都に残ってもう少し、神官としての研鑽を積もうと思う。勇者はどうする?」
「僕は……故郷に今もう戻る事は出来ない。貴族だった父の家の復興のために魔王討伐を果たすと約束しているんだ。ただ……今すぐ魔王領に行ったところで、何も出来ないだろう事も理解している……。魔女の所で暫く鍛えるべきかな……と思った。」
「そうだね……頼れる勇者にならなくちゃね。」
彼の父……貴族だったのか……でもどうしてそこまで強いこだわりを彼にも押し付けたのだろう……。騎士の犠牲……もう後戻りは出来ないのだろうか。彼の決意を私は……。
「ふむ、見つめあっている所悪いのだが、事は早い方が良い。さっさと向かうぞ。小娘も、気になるのならたまには来い。こちらから王都に赴く事は……恐らくないからな。」
そういうと魔女は目に包帯を巻き、勇者を引き摺るように連れ、出て行ってしまった。
……転移の魔法……ここで使うのは何か不都合があるのだろうか?
「お茶も菓子もありがとう……あの二人はあまり来ないかもしれないけれど、私は……たまに顔を出すね。」
「あぁ、はい、是非に……お願いいたします。」
メイドや執事に見送られ。私も館を後にする。
向かう先は……王都の教会。。。
神託の勇者
女神の神託に導かれし勇者は世界に1人だけです。




