僧侶の遺した日記 8 「女神の聖森」
騎士は多くの私財を投げ打って準備を整えてくれた。
装備、道具、馬車の手配まで……。
「旦那様……どうか……ご無事で……。」
「うむ……皆も元気でな、魔王を討ち果たすのが先か、寿命が先か……。」
「何年帰らない気ですか!?ちゃんと帰ってきてくださいね!!」
メイドや執事、庭師に取引先の人達までの見送り……余程慕われた騎士さまだったのだろう……。
成り行きで私も同行する事になったが……心配事だった勇者本人の実力も、騎士や魔女はしっかりと把握しているように思う。
神託……王に任命されただけの勇者にも啓示はあるのだろうか……?
「ふむ、王都を出てすぐそこなのだろう?馬車で行く必要も無いだろうに。」
「まぁせっかくですのでな、王都に置きっぱなしよりは良いかなと思いまして。」
魔女と騎士……もう打ち解けている……。
「やっとあの忌々しい結界の外に出たか……。」
脳に直接響くような声……これは……
「……ちっ、何も感知に引っかからんとはな。貴様ら外に出ろ!!」
「え?えぇ?!」
バァアアン!
馬車に大きな光の矢……?が刺さり、バラバラに砕けている。間一髪だった……。
「おや?お仲間かな。不憫な……全員神の御許に送って差し上げましょう。」
「……何百年と会話可能な奴など来なかったのだが?今更どうしたというのだ。」
「クハハ!1000年!!守られていた自覚もなしとは恐れ入る!!あのような邪悪な場所に我が踏み入れるはずもなかろうに……。」
何が……何が起こっているのだろう、魔女に会った時に見た天使とは違う。普通に会話している……羽根は初めて見た天使よりもかなり大きい……。
「こ、これは……こんな事が……本当に天使が……。」
「降臨とは違うようだ、こいつらは気配なく現れる。攻撃の前に必ず……話しかけてくる。特徴はそんなところだ。」
「ああ、私がこの女を処分出来るとは……あぁ、神、神に感謝をおおおお。」
パアアァン!と天使の顔が爆発する。大したダメージは無かったようだ。
「うるさいぞ、お前。」
「んんんなぁぁあにを!!私の祈りを!邪魔して!!」
「ハハハ!戦いの最中に祈るバカなんだな!お前!!やはり会話出来る方がいいな!煽りがいがある。」
天使は怒りにまかせて翼から細い光線を乱雑に乱射していた。
「少し時間が掛かりそうだ!お前たちだけで神殿には行ってこい!」
「うむ、あの戦闘、私はともかく、今の勇者殿では足手まといになりかねませぬ……ここはお言葉に甘えましょう。僧侶殿も……さぁ。」
「くっ……僕は……。」
「あ、、、わかりました。」
森へ入る間際だった。
「魔族魔物の入れぬ女神の森か……果たしてそこは安全かなぁ?」
「貴様……私相手に何度も隙を晒して勝てると思っているのか……?」
魔女の光弾をギリギリでかわしながら……確かに……こちらを見てニタニタと笑っていた……。
深淵の魔法使いの結界
かなり広範囲にわたって大天使以上の侵入を防ぐ結界を張っていた。天使に対してだけ絶大の効果があったその結界は、1000年、とある魔女を守っていた。




