表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
勇者は魔王を倒しました  作者: 匿名記号
焚章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

101/102

再会の約束

右手に杖、左手に箱を持ち


進んだ

最後の大門を開く


そこには

小さな女の子がいた


一人


泣いていた


「お主が我の死か?」

「……わからない」


僕も


泣いていた


「さぁ、無の連鎖の続きを紡げ」

「その前に、少し、話をしないか」

「異な事を言う奴だな。構わんぞ」


 彼女と、色んな事を話した。

 何日もかけて……話した。


 彼女は魔人の事をよく知らなかった。僕も多くは語らなかった。

 魔王になり、時節ダンジョンの運営報告を受ける程度。魔族も稀にしか現れない。

 何をすればいいのかもわからないまま、魔王と呼ばれた。

 倒したはずの魔王に、何故自分が……。それを理解するのにすら数百年もかかった。

 魔物たちからの報告も、魔族の訪問も徐々に減り、この1000年、数回見たかどうかだった。

 マナも碌に貯めず。魔王城からも出ず。魔王になってすぐ、慕ってくれた魔物も魔族も死に絶えたそうだ。時に勇者に、時に身内に、殺されたそうだ。

 少なくとも北の王族の大半は魔族に支配された魔族そのものか……傀儡……。


僕も自分の話をした。


「笑わせる。家族がいるではないか。死んでいようといまいと。家族がいる。このままでは、お前は何も守れない。早く帰れ。」

「僕は恵まれていたんだな……」


彼女も自身の話をする。


「望まないままに魔王に……」

「魔王について、何も知らずにこの地へ赴き。こうなった」


彼女の知る限りの話を聞いた。


 世界は無数にある事。聞いた事もない単位で説明していた。

 だが、数多ある世界の中『九界』の一つのこの世界は重要な役割があるらしい。

 本来は……死者も生者も、様々な力さえも巡り廻らせ数多世界に回帰させる世界……。

 創世の女神が創る事に失敗し、ただでさえ失敗したというのに……()()()()()()『楔』というこの歪な世界の改編すら行えない呪いを打ち込んだという。


「輪廻の止まった世界……。楔……」

「人の手と身に余る。神の所業の業の深さよ」


 しっかりと確認してみた。


「廻らぬ世界の理を正す者はおらぬ。だから、淀んでしまったのだ。死者も生者も……力さえも淀む……。淀みが深淵に至り、魔物ともなる。東の者どもはヨウカイと呼ぶ者もおるようだな。万物に宿る異形と聞く。女神は疲れ眠り。使いは世界を侵す。竜はいつしか姿を消した」


決意する。


「魔王、この世界、滅ぼそう。一緒に……来てくれ」

「魔族の悲願をお主が……?何故だ?」

「人も、魔族と呼ばれる他の世界の人も、あるべき形に戻るべきだ。歪に争う、この醜い世界を……美しくするために……」


 彼女は笑いながら後ろを向く。

 そして

 長く、綺麗な髪をたくし上げ、首元を見せた。


「ならばその、最初の所業は、やはり我の首だ」

「……どうしてそうなる?」

「魔王も楔の一つなのだよ。マナをほぼ無限に蓄えるこの体。消すべき楔の一つだ。その箱があれば可能だ。次元を揺蕩い望んだ得物を呼び出すその箱なら。魂をここに繋ぎ、体のみ滅する魔剣も呼び出せよう」

「なるほど……そんな事が……」

「後は……これを渡しておこう。魂回帰の秘術の術式だ。我が人だった時に編んだ物だ。お主では難しいだろうが、魔に通ずる者なら理解出来よう。入れる器は死体でも人形でも構わんが、かわいい物にしてくれよ?」

「わ、わかった……。さて、魔剣か……取り出せるのだろうか……」


 女戦士の持っていた貧者の箱から禍々しい剣を取り出す。


「ああ、そうだった、お前は魔王化せぬだろうが……一応伝える事があった」

「……何かまだあるのかい?」

「『俺は失敗した。次は……お前の番だ』だそうだ。始まりの魔王と呼ばれるモノから伝わる……遺言?かな」

「…………重い言葉だな……。必ずまた戻る。探したい人がいるんだ。その人に秘術を伝えて……戻る」

「あぁ……まぁ期待せずに待ってるよ」




 ザン


 勇者は魔王を倒しました


 おしまい

勇者のメモ 2

彼女の言った美しい世界にするために僕は……何者にでもなろう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ