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勇者は魔王を倒しました  作者: 匿名記号
幕間

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10/102

生き残りと忘れ形見

魔王が勇者に倒されました。


この世界、滅ぼそう。彼はそう言った。我は、同意した。

「勇者……逝ったのか。……終わらせると。約束を果たすのはまだ先か……」

「あなたが、勇者さまのご友人でしょうか?」




 ………………!?

 ここに、人間?魔力は……エーテル、どうやってこの魔王城の最奥部まで来れた……?マナへの耐性があるようにも見えない。どういう事だ。

 異様に大きな金属製の杖を持ち……古びた翠のコケ混じりの杖を背中に背負っている。魔法使いが杖を2本……?それに右腕……紅い割れた魔晶石のペンダント?……何者だ。


「あの……人違いでしょうか?あ、魂……違い?でしょうか?」

「……」

「……」


 長い沈黙が続いた。意図がわからない。今、消滅する訳にもいかない。


「確認が取れないのなら、仕方ないですね……勝手にやらせて貰います。もしも間違えていたならすみません」


 人間の女はそう言うと、魂回帰の秘術を唱えだす。


「ま、待て待て、器もなしに我をどこに、そもそもなんだその雑な詠唱は!何に固定化するつもりだ?!」

「………………」


 女は尚も無視し、唱え続ける。


「大門前、賢者の抜け殻に、固定」

「な、そんな事が?!」


 彷徨える魂は、魔神ダンタリオンとの戦いで魂の抜け殻と化した賢者の肉体に固定化された!


「無事に固定化出来たかな?もう一度聞きます。あなたが、勇者のご友人?」

「う……く、まさかまた肉体を得る事が出来ようとは。貴様何者だ?手練の術者でもそのような雑な詠唱で魂を他人の肉体に固定化など出来ぬぞ」

「……私の質問……」


 ダンタリオンの抜け殻が音を立て動き出す。


「ぬぅぅぅ、勇者、ゆうじゃああああ!」

「賢者さまも、雑な仕事してるじゃないですか。しっかりトドメ、刺してください」

「待て待て、我の管轄外だ、魂もアレには戻っておらん。意思無き悲しい魂の抜け殻ではないか」


 賢者?は口早に爆破呪文を唱える。

 ダンタリオンの顔が呆気なく吹き飛び。動きを止める。


「ふむ、良い体だな、だが……エーテル体での詠唱だとあの程度の爆発になるのだな。それに……やはり魔人も抜け殻、魔法耐性も全く無くなっていたようだな。しっかりとトドメを刺しておいてやろう。エーテル体は……風の魔法か」


 賢者?はまた口早に詠唱し、無数の風の刃でダンタリオンの屈強な肉体を刻み、塵へと還す。


「こやつら……どこからともなく現れ、我に仕えていたが、何者だったのだろうな」


パチパチパチパチ

 拍手の音が聞こえる。


「凄いです。魂移りたてなのに、賢者さまの体、もう使いこなしてますね」

「………………何者だ?貴様」


 女は口を膨らませる。


「あの……先に私の質問に答えて欲しいです。ずっと聞いているのですけど?」


 ハハハ、と賢者?は笑う。


「そうであった。面白い女だ。ああ、私が勇者の友人だ。間違いない、彼の……人生最後の仲間で、友人だ」


 女の膨れた顔が笑顔に変わる。


「良かった、間違えてたら魂ごと冥却させないといけないからめんどくさいなぁ、と思ってたんです」

「何だその造語、怖すぎるのだが」

「大丈夫です。確認が取れました。では、次に行きましょう」


 女は最初の大人しそうな様子とは裏腹に明るく朗らかに話す。


「ふむ、我も行くあてはないし、貴様の目的も気になる。しばらくは同伴しよう。我のことを知ってるようだから、自己紹介は省くぞ、道中で構わんから貴様の自己紹介もしてくれるのだろうな?して、次の目的地は?」

「諸々もちろんです!次の目的地は〜…………」




魔王は勇者に倒されました。


勇者は死にしました。しかし……勇者の遺志は、死んでいませんでした。

英雄譚

勇者死後、意思継ぐ者たちの戦い。

世界の終焉を詠う物語。

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