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妖異変超  作者: 青赤黄
感情大戦
25/39

11月14日 感情大戦 開戦直前

 200年以上前からある12人が使っても広すぎて手に余る大きさの狐火家に、感情大戦(仮)の対策本部が設立されたのは11月5日のことで、今日までいろんな妖怪などを誘ったのだが、全然集まらなかった。

 理由は

妖魔王(零火)がいるなら大丈夫だろ、と全員が言っていたな」

「そんな強いんですかねぇ、あの人は」

 異形狩りの第一部隊隊長上土(かみど)と第三部隊隊長水木(すいぼく)の二人が狐火家の中で迷子になりながら話していた。

 二人は今日も妖怪の勧誘に行っていたのだが、どれだけ悲劇的に状況を説明しても、零火がいると聞いた瞬間に妖怪達の顔から曇りがなくなり、全員同じことを言う。

 だからどれだけ強いのだろうと予想していたのだ。そして迷子になった。

「いやーマジでここどこなんでしょ、早く戻らないと鳳凰さんにドヤされる」

「あーお前は鳳凰さんの管轄に入ったんだっけ?俺はぼたゆきさんとこだからな。羨ましいか」

「羨ましいよ!そっちはパシリまがいのことされないでしょ!訓練の時やりすぎなんてこともないでしょ!」

「おう、ないぞ!」

 キィ〜!と右側に立っている男がどこからともなくハンカチを取り出してそれを噛む。

 左側に立っている男がそれを笑っていると、目の前で襖が開いて、中から人が出てきた。

「「あっ、どうもです」」

「ぴゃぅ!」

 二人が声をそろえて挨拶すると、その人は変な声を出した。

 その人は8日ほど前に二人と知り合っており、二人も名前は知っている。

 狐火哀火(あいか)と言う名前の零火の2番目の妹だ。

「あっあっ、ど、どどどどうも、こっこんにちは、えっとえとえと、おおおふたりはいったいど、ドコヘ」

 哀火は二人を前におどおどした口調で言って、体を少し丸め、胸の前で手を組み歪な笑みを浮かべる。

「あー俺たちはちょっと迷子になってまして、できれば作戦本部室と呼ばれてる部屋まで連れて行ってもらいたいんですけど」

 哀火のおどおどした話し方に慣れている右側の男が哀火に言う。

 すると哀火の歪な笑みが少し和らぎ、「う、うんいいよ、私も今からお兄ちゃんのところに行くつもりだったから」と、自然な話し方で話す。

 丸まっていた背筋が伸びて、「こっ、こっちだよ」と哀火は案内を始める。

 そんな哀火をみて、二人は

(相変わらず服のデザインと性格が合ってないなぁ)

 と思う。

 今日の哀火の服は、オフショルダーと呼ばれている両肩を出すタイプの服で、服にはデカデカと髑髏が印刷され、髑髏の上からさらに英語でYou are deathと印刷されており、首からは同じく髑髏が付けられているネックレスが下がっており、下はジーンズでチャラチャラとしたチェーンをぶら下げており、初見で会った時にも似たようなファッションだったので、異形狩りのほぼ全員が警戒した。

(なぁ、なんであんな格好してるのかな)

(しらねぇよ、というか聞こえたらどうすんだよ)

 コソコソと二人は話し、哀火について行く。

 余計なことをいってまた泣かさないようにと二人は黙り込み、数分歩いて目的地に着く。

「お、お兄ちゃんいるぅ?」

 哀火が言いながら襖を開けると、そこには異形狩りの中で四天王と呼ばれている人たちと両側に妹を座らせている妖魔王、狐火零火がいた。

 零火の右側には四女造火(ぞうか)が零火の肩に頭を預け、自作のゲーム機で何かのゲームをやっていて、左側には三女冬火(とうか)がマフラーのようなものを編んでおり、その冬火の膝を枕にして寝転んでいる五女狼火(ろうか)がその作りかけのマフラーを首に巻いている。

「お兄ちゃん、何してるの?」

 当たり前のように哀火は零火の膝の上に座る。

「造火が新しいゲーム作ったって言ってたから見てるんだ、それより、今日もかっこいい服着てるな、哀火、似合ってるぞ」

「えへへ、ありがとうお兄ちゃん」

 そう言って哀火は腕を零火の首に回し、抱きつくようにして口を耳元に近づける。

 何かを囁かれている間零火は哀火の頭を撫でる。

「おーい、上土(かみど)ぉあんな可愛い彼女欲しいって気持ちわからんでもないが話さなきゃなんねぇことあんじゃねぇのか?あいつらの仲良しさに見入ってんじゃねぇよ」

「あっはい」

 上土と呼ばれた男は慌てて返事をし、自分の上司の方を向いて、天狗達からの協力も得られませんでしたと報告する。

 鳳凰は分かっていたように「まーそーだわな」といって深いため息を吐く。

「質問いいでしょうか、ぼたゆきさん」

 上土の横にいた男は自分の上司に言う。

「何、水木(すいぼく)

 ぶっきらぼうな言い方でぼたゆきは訊く。

「いえ、これだけの人物が集まっているのはどう言うことなのだろうと思いまして、もし何か作戦を行うなどのことがあれば部下達に伝えますが」

「作戦じゃない、訓練でもない、敵が現れる予測を立てる」

「了解しました。俺たちは要りますか?」

「いる、あと3人待ってから決める」

 そうですかと水木は返事をして、誰かが入ってくるのに邪魔にならない位置まで上土を引っ張り、座る。その二人の前を哀火は歩いていき、2人に手を小さく振ってから出て行く。

(なぁ、なんか脈あるっぽくない?)

(知るかってば、つーかそんなことが妖魔王の耳に入ったらどうする、消されるぞ)

(それはやだなぁ〜)

 2人がそう言って、振ってから水木は周りをみて、相変わらず自分達の組織のボスがいないことを確認して、小さく息を吐く。

 斬駒は自分の愛刀、修羅斬(しゅらぎり)(異形狩り全62名がそれぞれ名前を考えくじで引き当てたのがこの名前、考えたのは4番隊の下っ端だそうだ)の手入れを行なっており、鋭霊はこの家で見つけたのであろうお手玉を10個でやっている。

 すこしまっていると、残りの3人のうち2人がきて河童の協力は得られなかったと、水木達と似たような報告をし、水木の横に座る、水木の横に座ったのは第二部隊隊長、猩猩しょうじょうと名乗っている男で、その奥に座ったのは5人の隊長の中で唯一の女である第四部隊隊長、狛犬(こまいぬ)で、相変わらず落ち着きなく体を揺らしている。

 そしてそれから10分ほど立ってから、5隊長の中で1番強いと言われている男が女を2人連れてきた。

 その女は見た限りでは一切の武術もやっているように見えず、11月中旬だと言うのに哀火のオフショルダーよりも露出の高い、肩出しのヘソ出し短パンという服装だった。

 そして目を惹きつけるのはその肌を埋め尽くすような痣暴力によってできたものではなく、元からあったものだとわかる痣だった。

 もう1人はモコモコとしたジャンバーを着ている女で、まるで痣のある女を守るかのように周りを睨みながら歩いている。

 そしてその2人を見た四天王はそれぞれ嫌そうな顔を浮かべ、(1番露骨なのは鳳凰さんで1番分かりにくいのはぼたゆきさん)「おい、連れて来んなって言ったよな?」と霧駒が言う。

「すみません。説得しきれませんでした」

 鬼月(きづき)は申し訳なさそうな顔をしながら言って、だから言っただろうと横にいる痣の女に言う。

「あはは、まぁまぁいいじゃん、聞くだけ聞くだけ」

「それが迷惑なんだがな」

 鬼月はそう言いながらも邪険には扱わず、2人の女を部屋の端の方に連れて行く。

「おー、全員揃ったんだよな?ならほれこれ」

 スッと狼火が一枚の紙を出して、鳳凰がそれを受け取る。

「あー、じゃ、ぶつけるところを言うからなー、憤怒には第一、ニ部隊、孤独には第三、五部隊、猜疑には霧駒、侮蔑には第四部隊と犬神黒、恐怖には鋭霊、憂鬱には俺とぼたゆきがあたる、憎悪は零火、絶望は我らがボスがあたる。憤怒は足立区、孤独は江戸川区、猜疑は港区、侮蔑大田区、恐怖は杉並区、憂鬱は板橋区、憎悪は千代田区、絶望は新宿区だ、じゃあ準備!」

 鳳凰が言った瞬間、5人の隊長達は動き出し、ほかの人たちは動かず、少し話した。

「これ本当に当たるのかよ、そこの狼の勘なんだろ?」

「おー、そーだそーだ、今までで一回も外れたところを見たことのねぇ勘だけどな〜」




「はいはーい!みーなさーん!そろそろ始まるけど準備はできてますか〜!」

 狂滎凶介はボウリング場の机の上で両手両足を広げて、にぱーと笑いながら目の前で跪いている手駒たちに言う。

 右から奇異、假偽、怠惰【寝っ転がっている】、暴食、憤怒、色欲、強欲、黒羽【スマホでゲームをしている】、魂魄【あぐらをかいてニヤニヤしている】と並んでおり、狂滎は変な姿勢をしている3人に特に何も言うこともなく、話し続ける。

「いやーそれにしてもさ、みんなよくやってくれたよー、ありがとねぇ、色欲、今どれくらい?」

 狂滎が色欲に訊くと、色欲はほぅと恍惚の表情を浮かべ、甘い猫撫で声で自分の仕事の成果を言う。

「6ヶ月の間に東京以外の日本全国に赴き、約1000万の人間と交流を持ち、そのうち私の能力を弾ける者はおりませんでした」

 そうかそうかと嬉しそうに狂滎はいって、

「それじゃあ、命令。全国で暴動を起こさせて、全員同時になんでもいいから叫ばせて、銃を持ってなくてもいいからカッターでも、包丁でも、バールでもなんでもいいから人を殺せるものを持ってなるべく人を多く殺させて、この命令には日本の警備を混乱させる意味があります」

 人差し指を立てた狂滎が得意げに言って、右手の大振りが避ける仕草も防ぐ仕草も見せない狂滎の喉に当たる。

 狂滎の体が飛び、レーンで跳ね、奥の壁に当たり跳ね返って来たところを色欲が受け止める。

 狂滎が色欲に受け止められるまでの間に、強欲と憤怒が狂滎を殴りつけた者に殺す気で攻撃をし、簡単にあしらわれる。

 その者は引きちぎられた拘束着をきており、昨日の奇異にはかけられていた闇魔法もかけられていないためフシューフシューと獣のような声を出す。だがその顔はボロ布で隠れていてみることはできない。

「あ・・・あ・・・あ・・・あ、ああ、あああ!本当に、本当に本当に本当に、忌々しい。苛立たしい。腹立たしい。妬ましい。憎々しい。グシャグシャグチャグチャボロボロドロドロズタズタ」

 感情大戦最高戦力、憎悪が言う。

 憎悪は地団駄を踏み、グシャグシャグチャグチャボロボロドロドロズタズタと繰り返し叫び続ける。

 憎悪が踏み込んだ地面がグシャグシャと崩壊し、グチャグチャと蕩けてゆき、ボロボロと周りの壁が崩壊し、ドロドロと溶けてゆき、ズタズタと周りの人の皮膚が裂けてゆく。

 その傷は狂滎が触れるたびに異常なほど早く治ってゆく。

「憎悪、落ち着いて」

「ああ⁈落ち着け⁈落ち着けけけ落ちちち落ちおおおおお憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い怨み怨み怨み怨みおおおおおおおおおお‼︎‼︎‼︎」

 狂滎が喉を押さえながら憎悪に言い、憎悪が反応して叫ぶが、それはすぐに言葉にならなくなる。

「はっ、無様ね。そんなふうびっ!」

 喋った奇異に憎悪が襲いかかる。

 奇異が押し倒されて、床に頭を押しつけられ、床が陥没する。

 憎悪が奇異に馬乗りになり、頭を掴んでもう一度床に叩きつけようとし、奇異が憎悪の腕を掴み握りつぶす。

「いきなりやってくるなんていい悪意じゃない。さすが憎悪、悪って言葉があるだけはあるわね」

「ああ?何を言ってるの?私が持ってるのは悪意以上の憎悪だけよ。特にあんたを殺してやりたい」

 奇異がちぎった腕を捨てて、その腕が憎悪の傷口と繋がってゆく。

「ねぇ、いつまで乗っかってるつもりかなぁ、いい加減おりろよ、グズ」

「うっぜぇなぁ、憤怒程度に負けたやつが、憎悪に勝てるとでも?殺してやる」

「負けた?はっ、負けてなんかない、不意打ちに対応できなかっただけ」

「うっざいうっざいうううっざ、ざざざざざ。ざざうっうううざざざざさ」

 憎悪が床を殴りつける。

 その拳は奇異の耳スレスレにあたり、床を抉る。

「と、ととと、んんんん、なななかとんなとととんななか」

 感情が昂り、姿を人型に保てなくなってきた憎悪の体は肥大化し、人の形から外れてゆく。

 狂滎はそれを無理やり押さえつけ、

「いい加減うるせぇんだよ?ちょっと黙ってよ」

 狂滎がいつもと変わらない声色で言って、憎悪の全身が砕け散る。

「なぁにやってくれてんのよおぉ」

 憎悪が歪に体を治して、人の形に戻る。

「いやさー、今殺し合われても困るからさー。はー、ほんと使えねぇ生き物しかいねぇや」

「狂滎様!私達は役に立てます!」

「そう?じゃあ役に立ってね」

 色欲の言葉を軽くあしらって、狂滎が軽く自分の能力を使う。

 足立区で極端な憤怒を、江戸川区で極端な孤独を、港区で極端な猜疑を、大田区で極端な侮蔑を、杉並区で極端な恐怖を、板橋区で極端な憂鬱を抱き、既に自我を持ち、己の形を作っていた絶望を新宿区に、憎悪を千代田区に配置する。

「色欲はいつでもいいよー。好きにやりな」

 東京タワーの頂点から狂滎は命令し、

 地上で起こった爆発のようなものを見る。

 大戦は開幕した。

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