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妖異変超  作者: 青赤黄
遊園地
22/39

超編5話 11月4日「多量〜人殺しの対応策〜』

 目の前の白色はわざわざしゃがんで、私の顔を覗き込んでくる。

 この女の子を見るのは初めてなはずなのに、悪寒も震えも涙も嗚咽も止まらない。

 全てを止めることができずにいて、「ねぇ」と言う白色の綺麗な声が死神からの呼び声のように思えてしまう。

 さっきからずっとズキズキと脇腹が痛む。

 ものを食べた後運動してくるようなキリキリとした痛みではなく、鋭利な刃物で切り裂かれたような、それこそ嬉々さんの傷の様な傷がついたらこんな痛みになるだろう。

 なんで、私はそんなことがわかるのだろうか。

 どうしてだろう。

 白色が何かを言っているのに、言葉が耳に入ってこない。

 白色の表情が明るいものから曇り始める。

 どうしよう。何かした方がいいのだろうか、それとも、なにをしても一緒?

 白色が腕を上げる。

 なぜか振り下ろされた時、自分が死ぬとわかってしまった。

 なんでだろう。

 前にどこかであったのだろうか。

 ああ、何か後ろで叫んでる。

 おきろ?おきろって何?誰に言ってるの?

 声がよく聞こえない世界で、白色が腕を振り下ろした時、私ごとその世界を切り裂いた様に、声が聞き取れた。

「わかってるって」


 痛みはなかった。

 体が二つになることはなかった。

 それどころか、白色が遠いところにいて、私の前に爆永君と樹ちゃんがいる。

 そして1番前には、假偽君と假偽君に寄りかかって立っている怠惰ちゃんがいた。

「たっ、立ってる」

 樹ちゃんが驚いた様に呟くが、その驚きは私も同じだ。

 いや、私だけでなく、他の人もそう思っていて、

「怠惰が立った」

 と爆永君が呟いた。

「あの、確かに立ったんですけど、そんなに驚かないであげられませんか?」

「無理っすね、驚きしかありません」

 樹ちゃんが言って、その言葉に假偽君は肩を落とす。

 だがすぐに落とした肩を上げて、「時間がないので説明しますね」と假偽君が言う。

 時間がない?どういうことだろう。

「彼女の能力で僕がわかるのは六つです。一つ目が青さんの能力、結果を2倍にする能力です。二つ目が赤さんの動物たちと五感を共有する能力。三つ目は伸ばした腕の先から50センチほどの長さの不可視の鋭い刃を出す能力。四つ目が地面を自由自在に操れる能力です。五つ目は自動再生能力。最後の六つ目は、殺した相手の能力を奪う能力です。ですので誰も死なない様に、特に!橙さんは」

「待って!」

 淡々と言う假偽君の言葉を愛ちゃんが止める。そして、悲痛な声で言う。

「じゃ、じゃあ大輝さんは・・・・・・殺されたの?」

「そうですよ!青さんは死にました!橙さん!絶対に殺されない様に、死ぬと思ったら自殺してください!そうするだけで能力は奪われません」

 なんで理解できないんだと責める様な口調で假偽君はいって、淡々と話し続ける。

 その内容は、信じられない内容で、それでもなぜか私はその殺した相手の能力を奪う能力のことを知っている気がする。

 さっきから、記憶が飛び飛びになっている気がする。

 それに、私は一体あの状況でどうやってここまできたんだ。

 あの白色はどうして腕を振り上げたまま動かないんだ。假偽君はどうしてあの白色のことをそんなに知っているのだ。

「ねぇ、假偽君、君はなんでそんなに色々と知ってるの?」

「後で話します!それとそろそろ能力が切れます!なので1分間耐えられるだけの作戦を言いますので!とりあえず信じて!」

 假偽君が切羽詰まった様に叫び、ぶつぶつと目を見開いて呟いている愛ちゃんのそばに歩いて近寄る。

「じゃあ言いますよ!」




 腕を振り下ろす。

 殺せた感覚はない。

 目の前からあの女がいなくなっていた。

 あの、私の言葉を無視した女。

 私の言葉を無視するのはいい、でも、前は話してくれたのになぜか今回は無視した。

 私の、なんでこんな短期間であの傷が治ったの?と言う質問に答えなかったことより、

 あの後に、零火さんにあった?と言う質問を無視した。

 それは、やましいことがあるからだ。

 そう判断して、殺そうとしたのに、なんでいなくなった。

 どこに。

 ?

 大木の中はこんなに狭かったか?

 いや、これは壁だ。木でできた壁だ。あの小さい子供が作ったものだろう。さっさと壊して、中にいる5人を殺そう。

 この大木の中に巻き込まれた四人は関係ない。殺さなくてもいいか。

 まずはこの邪魔な壁を壊す。

『土竜』

 土で金槌を作り、それを腕の動きと連動させて横に振って壁を壊す。

 体のあちこちが貫かれて、内臓も皮膚も、脳みそすら抉ってすり潰して、何かが貫通してゆく。

『肉体自動再生』

 体が勝手にグジュグジュと治ってゆく。相変わらずこの感覚は慣れない。

 壁の向こうから白煙が見え、『観察眼』で見る限り、奥には拳銃が複数、浮かんでる。

『感覚加速』

 全感覚を強化して、見ると、白煙から銃弾が多数飛んできて、避け切れるわけのない速度でそれはきて、私の体に入って、皮膚を捻り、引きちぎり。筋肉も同様に引きちぎり、焼き切り。内臓を焼き切り、貫き。意識が飛びそうな痛みが体に襲いかかり、『感覚加速』を解除。

 弾丸は一瞬で体を貫いて、次から次に雨の様に弾丸は私の体を穿って、貫いて、

 それでも自動再生の方が遅く、このままだと死ぬ。だが先程獲得した結果を2倍にする能力で、回復量は2倍になるだから死ぬことはない。

 ああ!こんなに強くなっても追いつけないなんて!零火さんはどれほど強いんだ!

数数え(カウントアップ)

で数えた限り、弾丸数は千。

 一体誰のどういった能力なのだろうか。ああ欲しい!

 目の前に大きな石が飛んできたことまでは近くした。

 意識が戻った時には両膝が地面に着いていた。

 まずい、今度は一体なんだ、なぜ頭が砕けた。

 パラパラと何かのかけらが降ってきてから上を見ると、大木の上の方が綺麗さっぱり無くなっていた。

 なんだこれ、私は驚いたが、なら相手の方も驚いているはず今がチャンスだ。

 前を向くと、また大木の壁ができていた。

 チッと舌打ちをして、また壊す。

 また銃弾が降り注いできて、

『加速』『感覚加速』

 自分の速度を上げ、一回地面を蹴ったと言う結果を2倍にする。そして倍増した動体視力を使って弾丸を避ける。

 それだけで、銃弾を避けられる速度になるのだから私はもう人の側にはいないだろう。

 でも、それでいい。

 零火さんは妖怪。人ではないのだ。人の範囲を抜けていないとダメなのだ。

 さあ、近くの人から殺してやろう。

 私の動きが見えたわけでもないだろうに、男に背負われている女がグルンとこちらを向いて。

 弾丸が体を貫いた。

 ⁈

 どうして⁈なんで私に銃弾が当たる⁈

 そしてなぜあいつら全員がわたしから離れた場所にいる⁈

 私も持っているテレポート系の能力か?

 まあいい、全員を押しつぶしてしまえば関係ない。

『土竜』

 土を持ち上げて、サンドイッチの様に全員を挟み込む。

 だが、その土は爆破されて破壊し、地面から生えた木が土を全て絡めとる。

 足元の地面が盛り上がる感覚があり、体勢が崩れる。

 そこにもう一度石が飛んでくる。

 さっきは気づかなかったが爆音つきだ。

 爆発を起こせるやつがやったのだろう。

 くそっ、また頭が破壊される。

「はいはーい、そこまででーす」

 場違いなほどに軽い声がして、目の前にひとりの男が現れる。

 そいつは、バレンタインの日に、私にこの力をくれたあの施設の場所を教えた男だ。

 その男は人の頭を簡単に破壊する石を防ぐことなく胸で受け、何事もなかったかの様に、胸についた細かい石の破片を手で払う。

「やっほー、久しぶり、僕のこと覚えてるかなぁ?」

「覚えてる。とりあえずそこをどいて、邪魔だから」

 私がそう言うと、男は胸の前でバツをつくり、「やーです」と気持ち悪い猫撫で声で言ってくる。

「ねー、僕のところに来ればもっと簡単にあの人たちを殺すことができるようになるよ」

 む、それはどう言うことだ。

「言葉通りの意味だよ、君を僕の組織の嫉妬の称号をあげるからさ、僕のところに君はこなくちゃいけないんだよ」

 なんだその傲慢な言い方。

 だが、いいだろう。入ろう。少しでも強くなって零火さんに並ぶためだ。

 それじゃあ、早く私を連れて行ってくれないかしら。

「オーケーオーケー、それじゃあ行こうか」

「待っ、ちなんぐん〜!」

 声を出したのはひとりの女の子で、なかなかに可愛い見た目をしている。中学生くらいだろうか。そんな子がさっき私の方を向いた女を背負っている男に後ろから口を塞がれる。

「あっ、気にしないで、どうぞどうぞ、行ってください」

 男が言って、その言葉に反応して

「それじゃあ行こうか」

 男が私の手を取っていって、気づいたらジェットコースター前にいた。

 そこには二人の男がいた。



「なんっで、止めたぁ!」

 愛ちゃんが假偽君に殴りかかる。

 假偽君は避けようともせずにそれをくらい、愛ちゃんの肩を掴む。

「あのさぁ!せっかく全員生き残ったの!それをわざわざまた危険な方に連れていこうとしないでくれるかな!今までのが全部無駄になるんところだったじゃないか!」

「知るかそんなもの!あいつは!あいつは大輝さんを殺したんでしょう⁈なら私があいつを殺さなきゃいけないんだ!」

 假偽君の話を聞いて最初は放心していた愛ちゃんは、1分間の死闘が終わり、多少冷静になり、あの白色が大輝君を殺した人だと理解したんだ。

 だからこそ、愛ちゃんの気持ちはよくわかるし、淡々とみんなの命を優先する假偽君は気持ち悪い。

「ねぇ、假偽君。君はなんであんなに色々知ってたの?」

 私が訊くと、假偽君は怠惰ちゃんを背負い直して、

「えーと、それは単純に僕が予知の能力を持っているからですよ」

「それ、本当?」

「うん、本当です》

 假偽君は軽く言う。

「それが本当なのかどうかはわからないが、それが本当なら、もっと助けることはできたんじゃないのか?嬉々さんも、大輝君も助けられたんじゃないのか」

「それは無理です」

 私が言うと、すぐに假偽君は否定する。

「ここではどうやっても必ず1人死んだ。この中で1分間耐えるためには藍と黄と橙は絶対に必要だ。だから死ぬなら緑か赤、そこはもうどっちでもよかったんだけどさ、やっぱこういう時はリーダーを助けるべきだろうと」

 何を言っているのか、あまり理解したくなかったが、理解してしまう。自分が今こうして意識を持って立っていられて命を持っている理由が、ただ、自分がリーダーだったからなんていう理由だということだと。

「青は知らない間に死んでた。もう助けられる範囲にはいなかったんだ。だから助けられなかった」

 淡々と事実だけを假偽君は言う。

 まるで人が死ぬのに慣れているように、

 もしかしたら予知で何度も私たちが死んでいるところを見ているのかもしれないが、だとしてもだ、私たちにとっては初めての死の様なもので、そんな淡々と言われると、お前は人が死んでるのにどうしてそんなに冷静なんだと怒りたくなる。

 しかも、今自分の唯一の家族が死んだと慣れば、当然怒る。

 愛ちゃんは顔を赤くして假偽君を睨みつけて、何かを言おうと口を開いて、何も言えずに閉じて、能力を使って無理やり大木に穴を開けて、外に出て行く。

「じゃあ、僕たちも帰りますね、さようなら」

 假偽君は、そんな愛ちゃんの様子を見ても淡々といって、愛ちゃんの開けた穴から本当に帰って言ってしまった。

「あ、あの、私たちは、どうすれば」

 樹ちゃんは顔を青くし、体を震えさせ、男口調もなくなり、私に訊いてくる。

「帰っ、ても、いいんじゃないかな、もう、どうしようもないし」

 自分の声を自分で聞いて、疲れた様な声をしていると思った。

 疲れる。そりゃそうだ、殺し合いなんて初めてだ。

 今回は時間制限があるものだったが、いつか、どちらかが死ぬまで続く殺し合いに参加してしまうことになるかもしれない。

 そう考えると、怖くてしかない。

 未練しかない。

 死にたくない。

「それじゃあ、帰りますね。それじゃあ」

 樹ちゃんはふらふらと歩き出し、その横に爆永君が行き、樹ちゃんは爆永君の服の袖を掴む。

 爆永君が平然としているように見えるのは、昔目の前で人が爆発したのを見たからだろうか。

 長いため息を吐いて、その場に座り込むと、隣に幸恵ちゃんがくる。

「あの、気休めかもしれませんが、大輝さんとあの女性のかたは、ちゃんと幸せな世界に行きましたよ」

「あはは、そうだといいなぁ」

 ああ、これから、どうなるのだろう。

 今死んだら、私もその幸せな世界に行けるのだろうか。

 ・・・・・・まだ、死にたくない。

 私は立ち上がって、幸恵ちゃんに言う。

「帰ります」

 本当に、どうなってしまうんだろうか。私たちは。

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