スーパーソニックサムライ
ストックがなくなってしまったのでしばらくお休みします
「この声は……」
ジョーの言葉に緊張感が帯びる。
「まさか、メガデスの社長?」
ジョーの言葉を相藤ナツキが継ぐ。
:マジか。とうとうラスボスが出てきたってこと?
:サムライじゃん
具足、和風の前身鎧に身を包んだサムライ、といった風情の姿である。こんな特異な形の兵装は誰も見たことがない。
「よくもやってくれたのぅ。ええ根性してるやんけわれら」
腰に差していた刀を抜くと、刀身全体が青白く光った。当然ながら普通の具足とは違うようだ。
「じぶんらのせいでメガデスの計画はわやくちゃじゃ。この落とし前、きっちりつけさせて貰うからな。ワシの名前はスーパーソニックサムライじゃ」
:す……スーパーソニックサムライ?
:渋い外見かと思ったらすげーネーミングセンス
:やっぱりニンジャダイナソー出してる会社なだけはあるな
「むッ!!」
その時、アキラが何かを感じ取ったようである。
「青い稲妻、ケイオスブルー!!」
名乗りチャンス。
ヒーローと悪の組織との戦いという体裁をとっているが、実際にはダンジョン内でのエンカウントバトルという形式のため、圧倒的にアンブッシュ・アタックが有利。そのため普段は実際にヒーローとしての名乗りを上げるチャンスが圧倒的に少ないのだ。
そのためアキラは名乗りを上げる機会に飢えていたのである。
「怪しく絡めとる蜘蛛の糸、ケイオスピンク!」
「野生の刃、ビーバークサリガマ!」
「……あ」
「あっ、いや」
「いや、どうぞ」
「いえいえ」
「ちょ待て! 待ていおまえら! ストップストップ!」
ビーバークサリガマのところまではスムーズに名乗りを上げられたのだがジョー1とジョー2のところでどちらが先に名乗りを上げるのかで譲り合ってしまい、止まってしまった。そこですかさず社長によるストップがかかった。
「全ッ然息合っとらへんやんけ、ちゃんと練習したんかじぶんら」
正直に言えば、していない。
以前に名乗りを上げようとした時も、全く息が合っていなかったし、そもそもそういう流れを作るという意識すら薄い。いつも急なアキラの無茶ぶりから始まるのだ。
「じぶんらヒーローやんなあ? 五人戦隊の」
「まあ……ハイ。そういう感じで、やらせてもらってます」
ジョー1が代表して答える。
「じぶんは?」
「あ、ケイオスブルーです」
「まあええわ。じぶんは?」
「……ケイオスピンク」
「ここまではええわ。で? じぶん何なん?」
「何なん、って……ビーバークサリガマですけど……」
「おかしいやろがい」
どうもナツキに引っかかったようである。仕方あるまい。
「ブルー、ピンク、ってきてなんでいきなりビーバークサリガマやねん。じぶんなんかおかしいと思わんの?」
「いやぁ……な、なにが?」
ジョー1に話を振るものの、彼はいまいち社長の指摘に納得がいかないようである。
「ブルー、ピンク、ってきてやで? じぶんらレッドやろ? まあじぶんらにもちょっと言いたいことあるけども、ちょっと後にするわ。ほんでなんでビーバークサリガマやねん。一人だけおかしいやんか。名前に色ついてへんやん」
「ええ~……そんなこと言われても。ボクはずっとこれでやらせてもらってるんで……周りにもこれで納得してもらってるし」
:いや、納得はしてない
:おかしいとはずっと思ってる
:それとこれとは別問題
まさかの視聴者による裏切り。ナツキはこのコメントを見られないのがまだ救いである。
「そこはもう、多様性として理解してもらうしか」
「何が多様性やねん」
パン、と社長がナツキの頭をはたく。
「多様性がなんやねん! 統一感がないやろがい!」
「ちょっと! 女の子にそういうアレは……」
「お前やねん! お前が一番問題やねん!」
すでにヒーローとして場に立っている人間に対して女性への暴力どうのこうの言うのも的外れな気もするが、とにかくジョーが社長の行為を咎めると、逆に社長が彼を叱責してきた。
「じぶん名前何なん?」
「ケイオスレッドです」
「じぶんは?」
「ケイオスレッドです」
「はぁ~……チッ」
大きくため息をついた後舌打ちをしてその場を離れる社長。すごく感じが悪い。しかしそれを咎められる人間はここにはいない。
社長はフルメタルカブトムシの体に腰かけた。
「座れ」
おとなしくその場に全員が腰を下ろす。
「正座や!!」
「ぇぇ~……ハイ」
小さく抗議の声を上げながらも全員が素直に従った。
重苦しい雰囲気がダンジョンの中にあふれる。何となくイヤな予感がする。「飲まれ」てしまっているのだ。この雰囲気に誰も逆らえない空気になっている。
「ええか、一人ずつ聞くぞ。まずじぶん、名前は?」
「ケイオスブルー」
「じぶんは?」
「ケイオスピンク」
「ん」
「ビーバークサリガマ」
「ケイオスレッド」
「ケイオスレッド……五人揃って!」
「やめぇや! 誰が名乗り上げろ言ぅた!!」
えっ、そういう流れじゃなかったの、とジョーが意外な表情をする。
「戦隊の中に色被っとる奴がいたらおかしいやろがい! 視聴者が混乱するやろ!」
:正直混乱はする
:社長はみんなが言いたくても言えなかったことを代弁してくれてる
:というか本人たちも混乱してるだろ
なんと、視聴者までもが社長の味方である。
「じぶん、名前……本名は?」
「武石ジョーです」
「ほなら、じぶんは?」
「武石ジョーです」
「せやろ? 一人一人違う名前があって、それぞれの個性があって……ってなんでおんなじ名前やねんッ!!」
これがノリツッコミというものである。しかし言われた方はたまったものではない。
「おかしいやろがい! なんでおんなじ……じぶんらあれか、兄弟か?」
「いえ、赤の他人です」
そもそも兄弟だったら下の名前は違うだろう。
「え、なに? たまたま同姓同名の奴がおんなじチームにおるってこと? わっかりづらいなぁ……もうええわ。ほならワシが適当にあだ名付けたるわ。ちょ、ほら、メット取って。はよ取って」
渋々ジョー1とジョー2はヘルメットを外す。
「ほらな。こうして覆面取ってみれば、それぞれに個性があって、ってなんで同じ顔やねんッ!!」
てんどんというものである。
「何なん? じぶんらクローン人間なん?」
一同は心の中で大きくため息をつく。
いまさらその話なのか。
またそこを蒸し返すのか、と。




