同キャラ対決
:おいおいマジかよ
:ケイオスレッドVSケイオスレッドじゃん
:同キャラ対決か
やはり前と同じ。鏡合わせのように立つ武石ジョー。前回と違うところがあるとすれば、今度は二人とも兵装を着用しているところである。
「メガデスが開発した『グルナヴェⅡ』はお前の装備している『グルナヴェ』と全く同じ能力を有する」
クローンジョーがスタンスを広くとって深く構える。
「つまり今度こそヒーローとしてどちらが優れているかの結論が出るという事だ」
:なにいってだこいつ
:前回地力負けしてんだろうが
:同じことやって違う結果が出ると思ってんのは「バカ」っていうんよ
「リン、お義母さんを連れてなるべく遠くへ逃げて」
いつの間にか兵装『ヘウヘネ』を装着した杉山ミカが鈴木リンに耳打ちして、帯と着物を押し付ける。下着姿で兵装を身に着けているのだろうか。
「私は一般人の避難を誘導する。ナツキも手伝って」
対峙する二人をよそに、すみやかに周囲の人間の避難が行われる。
「来い。ヒーローの戦いというものがどんなものか、教えてやる」
「シッ!」
遠間からのジョーのローキック。クローンジョーはスネでカットする。確かに、前とは何か、雰囲気が違う。
一瞬のスキを突いて、クローンジョーがジョーの顔面への飛び膝蹴りを敢行する。ジョーは上体を逸らしてそれを躱すが、クローンはそれを目視してから空中でジョーの肩に手をかけ、そこを起点に体勢を整え、今度は後頭部へと回り込んでさらに膝蹴りを放つ。
「何ィ!?」
攻撃がヒットしながらも前方に跳んで衝撃を殺す。
「なんだ今の動きは」
ジョーの戦闘スタイルのベースは、彼が幼いころから修練を積んでいる空手である。それこそが彼の対ドグマ時と対怪人時の強さの違いなのであるが、まさしくその違いが出た。
跳び膝蹴りから、空中で体勢を立て直しての再度の膝蹴り。人間の身体能力ではできない技。それへの対応ができなかったのだ。
「大丈夫か、ジョー君!」
泥を舐める羽目となったジョーにナツキが駆け寄る。
「来るな!」
「ジョー君、君の性格からして一般市民に助けられるのは己の志に反するのかもしれないが、ボクには怪人としての力が……」
「そうじゃない。執行猶予中にやらかすのはマズい」
「あ、ハイ」
元々ヒーロー活動というのは非常にグレーなゾーンである。そもそもビーバークサリガマは変身するだけで凶器準備集合罪や銃刀法違反に該当する可能性が高い。
しかしそれはそれとして、今は目の前の敵だ。
確かに変身前の状態ではジョーが圧倒していた。ただそれは、互いに「人間の能力」であった場合の戦いだ。
おおよそ想像しうる限りのアクロバティックな動きのほとんどを実現できる、兵装によってパワーアップした肉体同士の戦いにおいて、クローンジョーは最適化された戦いができる。
一方オリジナルジョーは人間の時の戦い方の延長、といった風情である。
速射砲の様なジョーのジャブが空気を押し退ける。
真空の弾丸をかいくぐりながらクローンジョーは反撃の鉄槌を試みる。
戦い方のスタイルは対照的ではあるものの、二人の戦いはまさに互角であった。重量物同士がぶつかり合う音と、踏み込みの地響きが辺りにこだまする。
:この二人、こんなに強かったんか
:この間と全然違うじゃん
今までの戦いと全く違う事は、ジョーも戦いながら肌で感じ取っていた。
それまでも漠然と感じてはいたものの、慎重なファイトスタイルで対処できていたり、ティラノサウルタンクの様な一種異様すぎる敵と対峙したために表面化してこなかった問題。
それが今、「自分と全く同じ身体能力を有する敵との戦い」を通じて可視化されてきたのだ。
すなわち、今までの自分の戦いは所詮生身の時の延長に過ぎず、「兵装」の実力を十分の一も退きだしていなかった、という事である。
この体なら、今までと全く違う戦い方ができる。
それを理解した時に、ジョーの戦い方が瞬間的に変化した。
自らの身体を抱きしめるように縮こまり、体当たりのように距離を詰める。その突飛な行動にクローンジョーの対処が遅れた。
「夫婦手!!」
両手による同時攻撃。
一端は顔へ。これはクローンジョーの受け手によって弾かれていた。
しかしもう一旦は鳩尾に見事にめり込んでいる。
いわゆる「手打ち」になってしまい、十分な破壊力を確保できない。そのため近代スポーツ格闘技では実践で使われることのない両手同時攻撃を、「できる」と判断して咄嗟に使用したのだ。
「ぐっ……」
クローンジョーが一歩、後ろへと退く。
体を折り曲げて首を垂れるほどのダメージではない。しかし間違いなく効いている。
聞いているからこそクローンジョーは上半身を捻転して「溜め」に入った。
しかしこれに追い打ちをかけると思われていたジョーはまたも予想外の行動に入る。
まるで鏡写しのようにクローンジョーと同じように上半身を大きく捻転したのだ。
「野郎……」
クローンジョーが肺腑から言葉を絞り出す。ここにきて自分の行動をコピーするなどとは思いもよらなかった。
おそらくは全身全霊をかけた拳の一撃を繰り出す予備動作に入ったのだ。
「あの技は、まさか……!!」
民間人の誘導を終えたミカが驚愕の声を上げる。クローンジョーとジョーの二人が取っている構えは、前回生身の戦いのときに、最後にクローンがとった構えと同じなのだ。
「メガスマッシュ!!」
二人の声が折り重なって神社に響く。
空を切り裂き、衝撃波を発生させながら右拳が押し出され、そしてそれは両者の胸にめり込んだ。
完全な相打ち。
全く同じタイミングで、同じ位置に、両者の拳がヒットしたのである。
「相打ち……?」
「いや、違う」
ミカの呟きに、ナツキが応える。
ぐう、とうめき声が漏れる。どちらが発した声なのか。
だが、次の瞬間、それははっきりとわかった。崩れ落ちたのは、オリジナルのジョーの方だったのだ。




