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FAKE HERO  作者: 月江堂
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鳥居の上

「いい御身分だな、武石ジョー」


 一行に語り掛けてくるジョーと同じ声。


「貴様は……!!」


 罰当たりなことに、その声の主は鳥居の上に立っていた。


「偽武石ジョー!!」


 ジョーが叫ぶ。


 確かに彼の言う通り、鳥居の上に立っているのはジョーと全く同じ容姿をした人物であった。


 前回あれだけボコボコにしたのでもう二度と出てくることなどないと思っていたのだが、そのあまりに元気いっぱいな姿に虚を突かれる。


 ミカは慌てて上空の『ヘウヘネ』に指示を出し、ドローンカメラを射出して配信の環境を整える。


「え……なにこれ」


 しかしこの中で一番驚いているのは当然ながらジョーの母親であった。彼女はキャプテンケイオスの配信も見ていないので当然ながら偽ジョーの事も知らない。


「そうだお母さん、聞こうと思って忘れてたんだが」


「忘れるな! 自分事だろう!!」


 即座に偽ジョーのツッコミが入るが仕方あるまい。あの話は戦いで決着がついたからもうあそこで終わりだと思っていたのだ。今更舞い戻ってくるなどと考えもしていなかった。


 本人(偽ジョー)からしたらふざけるな、無かった事になんかならないぞ、という話であるが。


「俺に、生き別れの双子の兄弟とかいないよな? まああいつのことなんだけど」


 偽ジョーの方を指差しながらジョーが尋ねる。母は狼狽えつつも自分の息子と鳥居の上の人物を見比べる。少し距離はあるものの、やはりどう見ても同一人物にしか見えない。親の目で見てもそれは変わらなかった。


「答えてくれ。戸籍謄本はもう調べた。書類上は確かにそんなのはいなかったけど、たとえば何か理由があって本当は双子だったのに書類上一人ってことにしたとか……」


 必死で語り掛けるジョーであるが、母はまだ現実を受け入れられないようである。ジョーは激しく母の肩を揺らして尋ねかける。


「答えてくれお母さん!」


 その瞬間、ジョーの頬を平手打ちが襲った。


「そんなことあるわけないでしょ!」


 明確な否定。


「逆ならともかく。二人産んどいてわざわざ一人分少なく申告するとか! 人一人産むのがどんだけ大変だと思ってるのよ!!」


 それはそう。


 そして、つまり彼の存在は何を意味しているのか。


「俺の名はクローンジョー。秘密結社メガデスがキャプテンケイオスを倒すために生み出したクローン人間だ」


「やっぱりそうなのか!」


:クローンの件終わってなかったん?


:なんでこの間はクローンって言わなかったんだよ


 突然の元旦からの配信であったが、視聴者が即座に集まってくる。みんな正月の午前中は暇を持て余しているのだ。テレビの番組もつまらないし。


「フッ、前回は俺が記憶喪失になっていたんでな。自分がクローン人間だということを忘れていたのさ」


:都合よすぎない……?


:キャプテンケイオス関係の奴ら記憶喪いすぎだろ


「俺には十七年間の、武石ジョーとしての人生の記憶と、ケイオスレッドの記憶がある。しかしそれはクローン人間としての偽の記憶に過ぎなかったんだ。前回は一時的な記憶の混乱によって自分が本物の武石ジョーだと勘違いしてしまっていたが……」


 言いながらクローンジョーは違和感を受ける。


 自らの記憶に関する事だ。


 何か、妙だ。


 自分のこれまでの十七年間の記憶。それについて彼はクローン人間として作られた際に人格形成の材料として植え付けられた『コピー』記憶であると結論を付けた。


 だが先ほどの武石親子のやり取りを見ていて受けた違和感。


 自分の中には母の記憶がある。


 これはおそらく本物の武石ジョーの記憶を複製したものだと思っていた。しかし自分の記憶の中の母と、今目の前にいる武石ジョーの母の容姿が、何故か、違うのだ。


 あんな顔だったか。身長も、もう少し高かったような気もする。あれが武石ジョーの実の母親なら、自分の記憶の中にあるこの「母」はいったい……?


「ま、いいか」


 しかしクローンジョーは考えるのをやめた。面倒だった。


:しかし偽物ってはっきりわかってんのに何しに来たんだよ


:普通そういうのは名乗らずに色々裏で暗躍するもんじゃねえの?


:本物のふりして悪いことしまくるとかな


:大抵失敗するけどな。その作戦


 それは視聴者の言うとおりである。逆に堂々と目の前に出てきて名乗ったという事は、おそらく目的は一つしかあるまい。


「いずれにしろ前回正面から戦って完全敗北してる。今更ざこが出てきたところで脅威にはならない」


 辛辣なミカの言葉であるが、その通りなのだ。


「フン、こいつを見ても同じことが言えるかな」


 そう言ってクローンジョーは鳥居から飛び降りる。


「装着!!」


 そう。鳥居の上に立っていたクローンジョーはアタッシュケースを持っていた。前回は持っていなかった。そのため両者とも生身での戦いとなったのだ。


「その姿は……」


 ずしんと大きな音を立てて着地する。一行の前に現れたのは間違いなくケイオスレッドの兵装に身を包んだ男だった。


「なるほど。前とは違うようだな」


 だがジョーは驚きの色を見せない。彼の右手にもアタッシュケースがある。


「変……身ッ!!」


 今度はジョーのアタッシュケースが分解し、ジョーの身体に張り付いていく。


 こうなるとはだれも予想していなかった。鳥居の前にはケイオスレッドが二人。前回とは違う。ヒーロー対ヒーローの戦いなのだ。


「メガデスがお前との戦闘経験からリバースエンジニアリングによって作り上げた兵装『グルナヴェⅡ』だ。前のようにはいかんぞ」

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